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密室のサクリファイス - (2013/08/07 (水) 15:26:05) の編集履歴(バックアップ)


密室のサクリファイス

【みっしつのさくりふぁいす】

ジャンル トラップアドベンチャー
対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 D3パブリッシャー
開発元 インテンス
発売日 UMD版:2010年2月4日
DL版:2010年3月4日
定価 UMD版:5,040円(税込)
DL版:3,990円
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
分類 良作


ストーリー

その先にあるのは希望か?絶望か?

地底奥深くに建造された巨大な地下生活施設"ファウンデーション"。
いつ、何の目的で作られ、誰が、そこへ人々を導いたのか——
真実は長い年月の中に風化し、その歴史ははるか昔に消え去ってしまった。
そして、ファウンデーションだけが人々の唯一の「世界」となっていた。
しかし、その「世界」を突如異変が襲う。
人々は消え、無人と化したファウンデーションは時折来る大振動とともに崩落し始める。
そんな中に取り残された、ミキ、アスナ、オルガ、クロエ、イトカの5人の少女。
それぞれ過去に闇を負った彼女らが出会った先に訪れる、友情、疑念、裏切り、殺意、葛藤、サクリファイス(犠牲)。
少女たちに最後の、そして長い試練が、今訪れる——。

概要

SIMPLEシリーズを中心に多くの脱出ゲームを製作しているインテンスが製作した脱出ADV。
同社開発の『THE 密室からの脱出』シリーズをベースに、脱出ゲームにおいて希薄であることが多いキャラクターやストーリーといった面も深く作りこんだ作品で、「脱出ゲームとサスペンスが融合したトラップアドベンチャー」とされている。

ちなみに、本作発売前の2009年12月にスパイクから「脱出ゲーム×サスペンス」という同様のコンセプトのニンテンドーDS用ソフト『極限脱出9時間9人9の扉』が発売されている。
こちらもインテンスが脱出ゲームパートを製作しているのだが、脱出ゲーム向きのDS用ソフトであることや知名度の高いチュンソフトがシナリオを製作していることなどから、本作はその影に隠れてしまったところもある。

特徴・評価点

システム

  • ゲームは、テキストを読み進めていくADVパートと、アイテムを見つけ使用したり暗号を解くなどして、その際陥っている状況を乗り越える探索パートとに分かれている。
    • 探索パートがいわゆる脱出ゲームのパートとなるが、単に脱出するだけでなく、「何かを探す」「目的地への扉を開ける」など目的は様々である。
  • キャラクター5人は全員が主人公であり、各シナリオはそれぞれのキャラクターをメインに設定されたシナリオがほぼ均等の数に割り振られている。
  • エンディングも各キャラクターごとに用意されており、ステージを選ぶ順番によりルートが変わるマルチエンディングとなっている。
  • 一度クリアした後は「やりなおしプレイ」として、一度クリアしたステージを何度もプレイできるようになる。また、クリア済みのステージはADVパートも探索パートもスキップすることが可能となり、他のルートのためのやり直しがあまり苦にならなくなっている。

シナリオ

  • ストーリーはよく作り込まれており、ADVパートのみでもかなりのボリュームがある。
  • 全体を通して重苦しい雰囲気であり、後半はルートにより違うが殺人や事故などにより次々とキャラクターは死んでいく。
  • だが、小出しに少しずつ明かされていく各キャラが抱える重い過去やキャラ同士の繋がり、現在襲い来る異変に関する謎、そして衝撃的な展開など、早く続きを読みたいと思わせる内容・構成になっている。
    • 世界設定やキャラの背景はルートにより判明する内容が違うため(キャラが違うので当たり前だが)、全てのシナリオをプレイしてようやく完全に把握できるようになっている。
+ エンディングについて ※軽いネタバレを含むので注意
  • 上記の通り、各キャラクターにそれぞれエンディングが用意されているが、イトカルートのエンディングは作品そのものの真のエンディングという位置づけになっており、他の4人のエンディングを見た後でないと正しいルートで進んでも見ることはできない。
  • ちなみに、イトカ以外の4人のエンディングは、マルチバッドエンドのごとく救われない展開ばかりであり、元々暗い世界観と相まって今作を鬱ゲーと言って差し支えないものにしている。
    • しかし、最後の最後に見られる真エンディングでは、全てが繋がり全員のトラウマが解消された上で生還する、文字通りのハッピーエンドを迎える。それまでがひどい鬱展開である反動も相まって、その感動は一際際立ったものになっている。
      • スタッフがインタビューにて、「脱出ゲームに必要なのは"折れない心"」と言っていたが、ストーリー的にも最後まで折れてはいけない。

探索パート

  • 全36ステージ中探索パートが2~3回あるステージもあり、かなり簡単なものからとても難しいものまで全てでおよそ4~50ある。
  • 本作を象徴するのがこの探索パートであり、最大の特徴としてその高難易度が挙げられる。
  • 基本的にノーヒントで何をしたらいいか分からないところから始まり、全てを手探りで進めていかなくてはならない。謎解き上ヒントが必要なものにはもちろんヒントはあるが、それ自体がものによってはかなり複雑な暗号になっている。
    • そのため、ステージによっては理不尽と呼べるほどの超絶難易度のものも。特に後半。また、ドットレベルの大きさのアイテムなんてのもザラである。
  • この何も分からない状態から、「必要なモノを自分で集めて仮説を立て、それを試し、ダメならもう一度」という幾度もの試行錯誤を行うことが醍醐味であり、そのやりごたえは十分すぎるほど。自力で解決させたときの達成感と爽快感には凄まじいものがある。
    • 逆にいえば、こういった作業が苦手な人にはとことん合わないといえる。
  • 探索の舞台となる場所も、近未来的な現実空間の他に、ストーリー設定を活かして夢の中やサイバー空間で謎を解くステージもある。
    • それらの一部ステージではギミックにある程度現実性を持たせるという「縛り」に囚われない構成がなされていて、脱出ゲームというジャンルと世界設定がうまくマッチしている。
  • 多くのステージがあるが探索パートにおける描画の使い回しはほとんどなく、ゲーム全体では相当数のグラフィックが使われている。
    • 探索パートのギミック自体もバリエーション豊かであり、多くのステージがあるが「似たようなの前にやったなあ」という既視感に囚われるようなことは少ない。
  • 操作に関しては、カーソルを動かし対象に合わせて調べる方法。対象が調べられる場合、分かりやすいようにカーソルにサークルが出るようになっている。アイテムはじめ調査可能なものが、良くも悪くも違和感なく背景に溶け込むように置かれているため非常に役に立つ。
    • ただし、調査判定が結構シビアなので、調べられる場所の近くに小さなアイテムがある場合、直接の視認がしにくい上サークルの有無による判別ができないためかなり見落としやすい。

キャラクター

  • 「まはん。」氏によるキャラクターデザインは間違いなく萌え絵の範疇に入るデザインであり、メインキャラクターが全員学生年齢の女の子であることもあって一見ギャルゲー的。
    • 若干ながらサービスシーンもあるなどそういった面が全くないことはないのだが、上述したようにシナリオ自体は基本的にシリアスかつシビアである。
    • パッケージだけ見てギャルゲーだと思って買うと、ガチサスペンスなシナリオや超難度の探索パートなど色々と痛い目にあうことになるが、一方でそのギャップに魅きつけられたプレイヤーも多い。
  • 主人公である5人の少女は皆大なり小なり過去に闇を負っており、またそのために各々が独自の信念や目的の元に動いている。
    • そのため、協力したり仲良くしたりといったシーンもあるが、ギスギスした険悪なシーンも少なからず描かれている。
    • これと危機的な世界背景も相まって、緊迫したこのゲームの独特の空気を作り上げている。
  • フルボイスであり、声優陣の演技も、緊迫した状況や和やかな状況など、シーンにより違うキャラクターや雰囲気をより引き立てるのに貢献している。
  • ちなみに、登場はほぼ回想の中だが、主人公たち以外にも話に深く関わる登場人物が3人いる。表立った登場人物は主人公を含めたこの8人のみで、そのうち7人が女性であり、男性は1人のみである。

欠点

  • 高難易度の探索パートはこの作品の売りである反面、詰まってしまい、ストーリーの先が気になるのに進むことができなくなってしまうことも多く、批判点としてあげられることも多い。
  • 2度目以後のスキップ機能だが、前回までと違うルートを通ったことでストーリー内容に差が生じた場合、それは同じステージでも初プレイステージ扱いとなり初回のみスキップができなくなる。
    • 変更箇所だけでなくステージ全て。変更点が現れるのは専らADVパートだが、変わらない探索パートも飛ばせなくなる。
  • 最終ステージはクリア後そのままタイトルに戻るため、クリアデータのセーブができない。そのため、最終ステージはスキップできるようにならない。
  • 読んだ文章を読み返せるバックログがあるが、読み返せる量がせいぜい文字送り20~25回分程度と少なく、使い勝手が良くない。
  • よく練られ綺麗にまとまっているシナリオではあるが、一部若干無理やりっぽいところや放置されたままになる謎などもあり、全体的に良いだけに多少気になる。
  • テキストの細かい誤字脱字が目立つ。
    • 文字では「やっちゃった」なのにボイスでは「やっちゃってた」というような、微妙な文字とボイスのズレも散見される。
  • 特定の場所でセーブするとPSPの電源が落ちるなどのバグが存在する。
  • 作中には一枚絵のCGイラストが多く登場するが、それらを自由に見返すことのできるギャラリーモードがない。
    • イラストと同様にBGMも鑑賞モードがない。曲数は多くないが、どれも質の良いものなので残念。

総評

昔の脱出ゲームを彷彿とさせる高難易度は、このゲームを最近あまり多くない大きなやりごたえを得られる作品にしている。
また、魅力あるキャラクターや重苦しいながらも壮大でよく作り込まれたシナリオはプレイヤーを世界観に引き込み、メインであろう脱出ゲーム部分を食ってしまうほどの出来である。
ギャルゲー風のデザインや鬱展開、高難易度など人を選ぶ要素もあるものの、作品の全体的な完成度は高く、やってみる価値のある隠れた良作と言える。
最近のゲームにあまり歯ごたえを感じられないという人には特にオススメしたい。

その他

web限定の体験版が、本編の公式サイトで2つ、下記のイトカDLCの公式サイトで1つ公開されている。
製品には存在しない構成の脱出ゲームをプレイすることが出来る。難易度もそこそこあるので、興味のある人はまずこれをやってみるといいかもしれない。

PSNでは、主人公の内1人をフィーチャーしたスピンオフのDLCが配信されている。
発売されているのは下記の2本。

タイトル 発売日
密室のサクリファイス~イトカ:ある閉鎖施設からの脱出~ 2010年10月21日
密室のサクリファイス~ミキ:ハイテンションナイト~ 2011年4月21日

共にジャンルは脱出ゲームで、定価は600円。レーティングも本編同様CERO:C。
これらスピンオフはガチガチな本編と比べ、コスチュームチェンジや乳揺れなど、ギャルゲー色を多く盛り込み前面に押し出した内容になっている。
そのため露骨なエロ要素が多く、本編とはまた違う方向で人を選ぶ事は否定できない。
然しながら謎解きは本編と違わぬ難易度であり、やりごたえは十分である。
ちなみに、本編ではなかったイラストギャラリーだが、スピンオフでは搭載されている。