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世界樹の迷宮 - (2011/03/25 (金) 10:59:23) の編集履歴(バックアップ)


世界樹の迷宮

【せかいじゅのめいきゅう】

ジャンル RPG
対応機種 ニンテンドーDS
発売元 アトラス
開発元 ランカース、アトラス
発売日 2007年1月18日
定価 5229円

概要

  • 「現代の感覚で『ウィザードリィ』を作ったらどうなるか?」というコンセプトの元、「3DダンジョンRPG再生計画」と題して制作されたRPG。ネット上での交流を見越して調整されたシビアだが理不尽ではないバトルバランス、PC-8801のFM音源をサンプリングした音色を組み込んだBGM、といったように、現代ならではの発想とレトロゲームの良さを巧みに織り交ぜた。
  • このレトロと現代の融合は、公式特典CDでもネタにしている通り“懐古”がテーマであると同時に、キャラクターデザインにライトノベルの挿絵で人気を得た日向悠二を起用したり、販売促進としてポッドキャストに拠るスタッフ座談会を開くと言った点にも見られる。
  • プレイヤーはエトリアと言う小さな街にてギルドを組織して冒険者を集め、『世界樹の迷宮』と呼ばれるダンジョンを探索する。迷宮の最下層には何があるのか?それは同時にエトリアの隠された歴史にも関わって行く。
  • 当項目では続編『世界樹の迷宮II』、『同III』についても少し紹介する。

特徴

  • タッチペンでダンジョンマップを自分で作る
    • 世界樹の迷宮最大の特徴。最初の状態ではマップ画面には方眼紙よろしくマス目があるのみ。そこからタッチペンで壁を書き込んだり、扉や階段などを示すアイコンやメモ書きを設置することが可能。DSの機能を上手く3DダンジョンRPGに取り入れることに成功している。『ウィザードリィ外伝I』?とは異なるアプローチである(ウィズ外伝シリーズでは携帯機で発売する際、オートマッピング機能を搭載した)。
  • 日向(ひむかい)悠二氏がデザインしたキャラクター達
    • 日向氏はライトノベル出身のイラストレーターと言う事もあり、絵柄は萌えを意識した可愛らしいものであった。ゲームの硬派さと対照的である。日向氏のイラストが世界樹の迷宮の購買意欲増加やファン獲得に貢献したことは言うまでもないが、萌えを全面に押し出したスタイルには否定意見もある。
      • また公式でもモンティ・パイソンのパロディとといったマニアックなネタから、職業のひとつ「カースメーカー」のローブの下は全裸であるなどの際どいネタが仕込まれている。
      • ただし、スタッフはあくまで「脳内補完(自分で自由にパーティの人物設定を想像、創造すること)」を強く推奨している。キャライラストはあくまで「イメージを呼び起こすための呼び水」としている。公式サイトリニューアル後はあえてキャラグラフィックに性別を設定していないことなどからもそれがうかがえる。
  • 世界観設定(IIではディレクター)担当の小森成雄氏が手がけるテキスト
    • 小森氏の趣味であろうか、テキストの言い回しには1980年代に大ヒットした輸入ゲームブックをオマージュした物が多い。
      • 例:「君たちはこの兵士に他の質問をしてもいいし 話を終えて立ち去ってもいい。」「どうやら、少女の声はこの扉の向こうから響いているらしい。扉を抜け、少女を探すもここから立ち去るのも君たちの自由だ。」
    • 「鼻につく物言い」と言う評価も無いわけではないが、「ソーサリー」や「ファイティング・ファンタジー」シリーズなど当時のゲームブックに心躍らせた世代には嬉しい演出である。
      • ちなみにモンスター、アイテムなど各種辞典コンプリート時のBGM名は「400 君の冒険は終わった」。これは往年のゲームブックに於けるパラグラフ400(ゲームオーバー時のパラグラフ)からのパロディである。
      • 世界樹IIではゲームオーバーのBGM名が「14 もう一度挑む日まで」。こちらもとあるゲームブックのパロディ。
    • クエストの表題にはSF小説をオマージュしたものが多い。
      • 「華は無慈悲な森の女王」→元ネタは「月は無慈悲な夜の女王」
      • 「老いたる大富豪の花への願い」→元ネタは「老いたる霊長類の星への賛歌」
      • ちなみにSF小説のタイトルへのオマージュは後に出たドラマCDや小説の章タイトルなどでも使われている。
    • ストイックなRPGである事を前面に売り出したので、ストーリーが無いと思っている非プレイヤーが多いが、実際にはファンタジーにしては斬新な結末を迎える。特に第5階層突入時に明らかになる真実は多くのプレイヤーが驚くこと請け合いなので、これから遊ぶ人はネタバレには十分警戒してほしい。
    • 小ネタとして、NPCの一人に『超執刀カドゥケウス』の北崎先生が友情出演している。メンバーの治療を行う施薬院院長として登場、超執刀でケガを治すのだろうか?
      • ちなみにIIには月森孝介・利根川アンジュが友情出演。更に小森氏が過去に関わった『プリンセスクラウン』からグラドリエル王女も参加している。
  • シビアなゲームバランス
    • ゲームバランスはややシビアであり、戦法を誤ったり奇襲を受けたりすると簡単に死者が出る。といっても味方と敵の特徴を知り(死んで覚える、とも言う)、的確な戦法を取れば理不尽なほど難易度が高い、というわけではない。
    • 基本的な操作には解説が挿入され、ボス戦の前には警告テキストが表示されるなど、ライトユーザーへの間口もある程度開かれている。
    • 但し、インパクトや演出の必要上厳しく設定されている戦闘要素は存在する。特に毒は大ダメージを受ける恐れのある凶悪な状態異常であり、他RPGとは一線を画すその強さから格好のネタとなっている。
    • バトルバランス担当の加藤沢男は、毒に関して「だって毒飲んだら普通死ぬだろう」と座談会でコメントしている。また全体睡眠攻撃で語り草となったモンスター「危険な花びら」についても「危険な花びらが危険で何が悪い!」と、「殺るか殺られるか」を強調したバトルバランスである事を明言している。
  • 古代祐三氏作曲によるの名曲の数々
    • 先述の通り、世界樹の迷宮ではPC-8801からサンプリングしたFM音源を現在の音源と融合させ、懐かしくも斬新な楽曲になっている。IIではROM容量が増えた事で1曲あたりのボリュームも増加し、より聞き応えのあるものとなった。同人サークルが競ってアレンジCDを出したのもその名曲あってこそ。

問題点

  • システム面での不備が目立つ。シリーズ一作目でまだまだ荒削りであったため仕方のないところか。
    • 3DダンジョンRPGでは搭載が当たり前となっている「カニ歩き」ができない。
    • 武器屋で仲間のステータスを確認できない。また、まとめ売りの操作がゲーム中で一切解説されない。
    • バグ、不具合が多々ある(例:プログラムミスにより効果の無いスキルがある)。
    • オートバトルが無く戦闘のテンポが悪い。
    • 中断セーブが出来ない。
    • 誤字脱字が多い。
    • エクストラダンジョンはワープ地獄・落とし穴地獄・ダメージゾーン地獄・避けられないFOE。これは開発者の想定したゲームバランスと思われるのだが、マップのアイコン設置上限数を超えるほどのトラップ数はいかがなものか。この階層に来るときに通常戦闘BGMが変わり、その出来もよいのだがFOEの巣窟と言わんばかりの数によりFOE戦ばかりで通常戦闘BGMがあまり聞けない。
      • この内、カニ歩きとオートバトル、買い物時のステータス表示、中断セーブについてはIIで導入された。
    • しかし逆にこの「絶妙な不親切さ」こそが、逆に斬新に見えたのか、もしくは一部のマゾプレイヤーの心をつかんだのだろうか、一定数の固定ファン獲得に貢献したとも思われる。

『I』発売後の展開

  • 『I』発売後、本作品でディレクターを務めた新納一哉氏がイメージエポックへ移籍。そのため続編発売が危ぶまれていたが、残ったスタッフの手により続編『世界樹の迷宮II』が発売されたことはファンを大いに喜ばせた。
    • 『世界樹II』ではROM容量の恩恵を受け、多くのミニイベントを収録した。パーティキャラクターにセリフを与える事無く、地の文のみで活き活きとした情景と人物描写を提示した点は、多くのプレイヤーから好意的に受け容れられた。
      • ただし、バグは『I』よりも増えてしまっている。 進行不可能(ハマリ)になる致命的なバグは無いものの、習得、使用すると逆にプレイヤー側が不利になってしまうスキルがいくつか存在する。それらの不具合は2010年7月15日に発売されたベスト版では修正されている。
    • 世界観設定とテキストを担当した小森氏がディレクターに就いたため、ゲームの毛色はそれほど変わらなかったが、ストーリー、特にラスボスの悪行の動機が説得力に乏しく、ストーリー面での評価はIより落ち着いたものになっている。
    • ちなみに、『I』をクリアすることで入手できるパスワードを『II』で入力することで、アイテムの獲得(『I』での進行度に拠って変化)やイベントテキストの変化など、幾つかの特典がある。
  • 2007年の『世界樹II』発売以降も定期的にオンリーイベントが開催されるなど、世界樹の迷宮の人気は衰えなかった。続編を期待する声も多かったが何もアナウンスが流れなかったためファンはやきもきしていたが、2009年にアトラスは自社の主力タイトルの一つとして世界樹の迷宮の名を挙げるとともに続編製作中、との報を流し、ファンを大いに沸かせた。そして2010年、待望の『世界樹の迷宮III』が発売された。
    • 『III』はサブクラスシステムによる一部スキルのコンボが強すぎることや、難易度の大幅な低下(全体的な敵の弱体化や「!!ああっと!!」のマイルド調整(「!!ああっと!!」とは迷宮内でアイテム採集を行っていると、一定確率で敵に襲撃されるイベント。『III』では予告制に変更され、かつ出てくる敵の強さもその階の最強雑魚程度になった)、大航海に容量を取られたせいか1階層が4フロア構成となりダンジョン内イベントも減っている、ストーリーの感情移入し辛さなどの賛否両論点もあるが、それでも概ね旧来のプレイヤーにも新規プレイヤーにも好評を以て受け入れられている。
      • 難易度の低下に関しては「難易度自体は下がっておらず、あまりに理不尽すぎる展開がなくなっただけ」という意見もあり、大航海もそれ自体は決して手抜きではなく、豊富なイベントが盛り込まれているためかなり楽しめる。
  • そして2010年のE3にて、3DSで世界樹の迷宮シリーズの発売が予定されていることが発表された。
  • 世界樹の迷宮のヒット以降、他社からも3DダンジョンRPGがぽつぽつ発売されるようになった。2008年3月には「スターフィッシュの奇跡」と称された『エルミナージュ』が(続編の『同II』?『エルミナージュ』のDS移植版?は当Wikiにも項目あり)、5月にはサクセスより『幻霧ノ塔ト剣ノ掟』が発売。IPMが『Wizardry』の版権を獲得したことでDS、PS3などのハードで和製ウィズが再びリリースされるようになった。またエクスペリエンス(チームムラマサが独立して起こした会社)は『Generation XTH』シリーズや『円卓の生徒』といった3DダンジョンRPGを精力的にリリース。これらの出来事を踏まえて考えると、世界樹の迷宮スタッフらが掲げた「3DダンジョンRPG再生計画」はある程度の成果を上げた、といえるのではないだろうか。
  • 一方新納氏はイメージエポックに移籍後、2DRPG『セブンスドラゴン』のディレクターを担当。こちらはボリュームや脳内補完の容易さこそ優れているものの、中途半端に不親切な仕様とあまりに世界樹の迷宮を意識しすぎたインターフェイスから、賛否分かれる評価になっている。