*フォトカノ 【ふぉとかの】 |ジャンル|恋愛シミュレーション|&amazon(B004GCI93S)| |対応機種|プレイステーション・ポータブル|~| |メディア|UMD 1枚|~| |発売元|角川ゲームス|~| |開発元|ディンゴ|~| |発売日|パッケージ版:2012年2月2日&br;DL版:2012年2月29日|~| |定価|パッケージ版:7,140円&br;DL版:5,800円|~| |レーティング|CERO:C(15歳以上対象)|~| *概要 『[[トゥルー・ラブストーリー]]』シリーズの系譜を受け継ぐエンターブレイン恋愛シミュレーションシリーズの一作。~ とはいってもシステムの一部を継承している程度で製作陣はほぼ異なっており、『キミキス』以前の製作総指揮だった杉山イチロウ氏がプロデューサーであることと音楽が岩垂徳行氏であること以外は全く異なるチーム。~ キャラクターデザインもTLSシリーズのグラフィックを担当し『キミキス』以降の作品のデザインを担当してきた高山箕犀氏ではない。~ また前作『[[アマガミ]]』と前々作『キミキス』は世界観が同一だったが、本作では繋がりはない。 発表自体は2010年末で当初は2011年夏発売予定だったが、延期を繰り返し2012年2月発売という結果になった((お詫びとして初回特典にはヒロインの一人・大谷桃子が描かれたお風呂ポスターが付属された。))。 *内容 -夏休み最後の日、父が新しいカメラを買うために旧式のデジタル一眼レフカメラを押し付けられた主人公は色々な写真を撮りたいと思い、翌日学校にカメラを持ち込んだ。学校中で女子の写真を撮影し、多くの女性と知り合った主人公はその様子を見ていたフォト部の部長と写真部の部長からどちらかの部に入るよう呼びかけられる。来月末に控えた学園祭までにヒロインと親密になり、思い入れのある写真を展示してヒロインに見せ、自分の思いを伝えるのが目的。 -ゲームが始まると主人公の名前(デフォルト名は「前田一也」)と性格を設定することになる。 --性格はイベントには関与しないが、会話のシステムで選べる話題に関わってくる。 -プロローグで所属する部活によってメインストーリーが変化する。フォト部に所属するとストーリーLove(以下ストーリーL)、写真部はストーリーHappy(以下ストーリーH)になる。 --ストーリーLはヒロインの内面に踏み込んだ純愛もののストーリーとなる(エロ展開が全く無いわけではないが)。シリアスな雰囲気が強い。 --ストーリーHはヒロインの内面描写も少しは見せつつも、どこかエッチな展開も見せギャグ要素が強いコメディ的なストーリーとなる。 --ヒロインはメイン6人+隠し3人。隠し3人は部活でストーリーの変化は無く、実質的に6×2+3=15のストーリーがあることになる。 ---また、部室で発生するイベントを1週間に3回見ると、日曜にイベントが発生。全て見ればバッドエンドとはまた別のEDとなる。 --さらに好感度の状況によりヒロインの心情が「スキ」「ヒタムキ」「ナカヨシ」の3種類に分かれ、それにともない発生するフリーイベント(サブイベント)の内容も変化する。そのためイベントの数は非常に多い。 -1日の流れは起床→登校(ヒロインとのエンカウント)→学校生活(行動選択)→下校(下校会話)→夜(日数進行・好感度チェック) --学校での行動時間は休み時間1・昼休み・休み時間2・放課後となっている。 ---登校時、ランダムでヒロインとエンカウントすることがあり、好感度が上がる。恋愛レベルによっては確実にエンカウントし、好感度とは関係ないイベントが起きる。 ---ヒロインとはランダムエンカウントで遭遇し会話する。部室のみイベントが発生する可能性があるもののヒロインとのエンカウント・会話になることはない。 ---後述の「うさパワー」を使用して強制的に選んだヒロインとエンカウント可能。 ---行動時に「?」の吹き出しを浮かべたキャラがいる場所を選ぶとそのキャラのフリーイベントが発生。好感度が上がる。 ---好感度のポイントが最大の状態だとハートの吹き出しを浮かべたキャラが行動時に登場、その場所を選ぶとストーリーイベントが発生(キャラによっては登校時に発生)してストーリーが進む。この時好感度の最大値が上昇、再び最大まで上げてストーリーイベントを見れば夜に恋愛レベルが上昇する。 ---共通して恋愛レベル5の2度目のストーリーイベント後に日曜デートに誘うことになるので、最低一週は日曜をあける必要あり。 ---恋愛レベルの最大は7(6の状態で2度目のストーリーイベントを見ると学園祭に誘える)。 --行動可能日数は表示上は56日だが、土曜は行動なし、日曜はイベントだけなので実質的に行動可能なのは40日。 --セーブ・ロードは行動選択時ならばいつでも可能。ランダムエンカウントで目的のヒロインと遭遇しなかったらロードして移動場所選択からもう一度、ということも可能である。 --帰宅後、妹の「果音」の部屋に訪れることで、好感度をチェックすることができる。好感度は長方形が横に6つ並んだ図で、好感度と恋愛レベルが上昇するとキャラの位置が右に動く。上下には3つ(レベル1は1つ、2は2つのみ)分かれており、上から順に「スキ」「ヒタムキ」「ナカヨシ」となる。 ---果音との会話イベントでは「うさパワー」がもらえ、行動時にこれを使うことで確実にヒロインとエンカウントできる。消費量によって内容は変わり、1つや2つだとヒロインはシャッフルで選ぶことになるが、3つ使うと自分の意思で選べる。 *特徴 -従来作から引き継いだ「マッチング会話」が洗練され、「&b(){バイオリズムマッチング会話}」という独自のシステムになっている。 --会話時は画面右上に「バイオリズムライン」が表示される。バイオリズムラインは波型で、直線を中心にうねうねと変化する。話題は6種類に色分けされており、色分けされた?マークがバイオリズムラインの上を右から左へ流れていく。中央の直線より上に?マークが来たときにそのマークに対応した色の会話を選ぶことで会話が成立し、好感度とテンションゲージが増加。下にある時や対応する色が無い時に選ぶと会話が不成立、好感度とテンションゲージが減少する。同じ色が二つ以上ある場合左側が優先なので、上の位置にある?があってもその左側に下の位置にある同じ色の?があればそちらが優先されテンションと好感度が下がってしまう。 --話題の選択には制限時間があり、それを過ぎるとテンションが下がって仕切り直し。 --2回連続で話題選択に成功すると一度だけ直前に上がった好感度ポイントと同じポイントが一つ追加され、テンションが増加する。 --テンションゲージが最大に近い時に「アタック」を選べば写真撮影を頼むことができ、フォトセッションに移行。断られると会話終了。 --話題は5回まで選べるが、アタックも一度の話題として扱われる(選ぶと会話は強制終了)ので、実質的に4回まで選ぶことになる。 ---写真撮影の目的が無いのであれば5回とも話題を選択して終了させることや「やめる」の選択肢で強制終了も可能。 --右上にはドキドキハートゲージも用意されており、恥ずかしい話題を選ぶと上昇、最大になると相手が緊張し過ぎて終了する。テンションが一定値以下になっても場が白けて終了。ハートゲージの最大は隠し要素やカラオケイベント、好感度の状況や写真を見せることで上昇する。 --テンプレ会話だけでなく、イベントに応じた会話をするので会話の内容は多彩。 --?が上半分に来た時を見極める必要があり、さらに現れる?の色はランダムなので狙った話題を選ぶのは難しい。ひたすら好感度を上げるだけなら(ドキドキハートにさえ気をつければ)楽だが、狙ったルートや見たい会話を目指すにはなかなか骨が折れる。意外と戦略性の高いシステムとなっている。 ---しかもテンションが上昇すると?が流れる速度が上がる(=早く消える、下に向かうようになる)。 --逆に言うと、バイオリズムラインとハートゲージに気を配れば会話に失敗することは絶対に無いと言ってよい。 ---ただし、「行動(灰色)」の選択肢のみターン数や成功した会話数が少ないと成功してもテンションと好感度を落としてしまう。 --最初に選んだ性格で色ごとの話題の数(選択肢の数)は変わるが、会話を繰り返せばレベルアップして増やすことも可能。 --下校会話時も同じシステムで会話することになるが、最後の「アタック」がデートに誘うものとなり、フォトセッションには移行しない。 ---デートに誘う場所も恋愛レベルによって変化する。 -本作の肝と言うべきシステム「フォトセッション」。 --まずヒロインにポーズをとらせ、それに対して主人公が移動。場所とアングルを決めた後ファインダーモードに移行して角度やズームの調整をし、Rボタンを押すことで撮影する。 --撮影した写真にはポイントが付く(最大1000P)。ヒロインの写り方によって「Beautiful」「Erotic」の2種類に評価が分かれ、それぞれにポイントが別個で加算される。 ---ポイントの類型が一定以上になるとフォト部と写真部の部長からご褒美がもらえ、隠し要素が解放される。 --できるだけヒロインを大きく映すことでポイントは高くなるのだが、恋愛レベルが低いと近づいたときに困った表情になりポイントが下がってしまう。どうすればポイントの高い写真が撮れるのかを考えるのも一つの楽しみ。ポーズの種類も恋愛レベルによって増えていく。 --こちらもドキドキハートゲージがあり、状況次第ではポーズを断られる。表示はされないがテンションもあり、写りが悪い写真を撮り続けると強制終了。 --ヒロイン以外にも劇中のキャラクター「アホ毛あっぴ~」が学園内に隠されており、これを撮影すると「Duck」ポイントが追加され、一定値以上で隠し要素が解放される。 --写真はカメラにデータを残しておき、後でヒロインに見せることが可能(撮影可能な最大数ポーズを依頼するか、エンカウント時会話の代わりに見せることが可能)。「Beautiful」だと好感度とハートゲージの最大値が上昇するが「Erotic」だと好感度が落ちる。写真のポイントで反応と上昇数が変わる。 --以上のフリーフォトセッションの他、イベントでは強制的に撮影することになったり「シャッターチャンス」として特別な状況の写真も撮影可能。これらの場合にはカメラの機能を制限されることがある。 -リズムフォトセッション --下校デートでカラオケに誘うと発生する。 --いわゆる「音ゲー」になる。中央に示される方向に方向キーを押しながら、中央の輪に光の輪が重なる瞬間をねらってRボタンを押す。 --ポイント数によって最大3つまで好感度を上昇させることが可能(割り振りは自分で決められる)、ハートゲージの最大値も増加する。 --フォトセッションと名がついているものの、カメラに写真データは保存されない。 -その他特徴 --本作のグラフィックは全面3DCGとなっている。PSPというハードの制約ゆえローポリだがキャラの特徴はしっかりとらえており、表情や動きも豊か。 --イベントシーンのCGのようなものは本作には1枚もない。主人公が撮影する写真がその代わりになると言うべきか。 ---このため、全て主人公の視点で話が動き主人公の姿は一切登場しない。顔がはっきり描かれないのはともかく、髪型や他の人物との身長の比率すらもよくわからない。 --いわゆる「涙イベント」のデメリットが緩くなった。 ---下校イベントでのデメリットは目撃された際に好感度が2つ下がるだけ。 ---日曜デートでは発生前の週に好感度ポイントが落ちると断られる。ダブルブッキングだと断られた方は好感度ポイントは完全に消滅するが恋愛レベルは落ちない。2回断られると関係は修復不可能になるものの前作のような「テキタイ」状態にはならない。 ---厳しかった前作『アマガミ』のものが前々作『キミキス』のものに近づいた(戻った)と言うべきか。 *評価点 -個性的なキャラクター --前作『アマガミ』のキャラの個性に比べると癖は強くないように見えるが、やっぱりどこか変わっているキャラが多い。 --特にパッケージヒロイン「新見遙佳」の行動がその設定に対してあまりにも意外過ぎて、初見プレイヤーなら確実に驚かされるはず。 --前作主人公が「変態紳士」と称される強烈なキャラクターだったのに対し、本作の主人公はところどころエロい考えに至る場面やとんでもない選択肢を見せつつも割とまとも。&s(){代わりに変態成分は写真部の部員二名に移行した。} --「女の子が普通すぎる」と賛否の分かれたTLSシリーズと、逆に強烈過ぎて賛否が分かれた『アマガミ』の中間の程よいところを取れたと言えなくもない。 --登場人物はフルボイスで、声優陣も豪華である。 ---パッケージヒロインの新見遙佳役は伊藤かな恵氏。他にも室戸亜岐役に中原麻衣氏、実原氷里役に水橋かおり氏と『キミキス』のメインヒロインの声優が参加((中原麻衣氏は栗生恵役、水橋かおり氏は里仲なるみ役だった。なお、実原氷里には一部イベントで里仲なるみの設定を思わせるネタが入っている。))していたり、金元寿子氏や大亀あすか氏など若手の声優も起用。 ---写真部の部長・九堂博道を演じるのは緑川光氏。イケメンボイスとそこそこかっこいい見た目でエロスと芸術を語る姿は爆笑ものである。 -ヒロインに合わせて、ストーリー自体の評価も高い。 --ベタな展開が割と詰まっているものの、ストーリーイベントだけでなくフリーイベントなどにも数々の伏線が用意され出来は良い。 --ストーリーLとHで全く違う展開が見られるのも良い。ヒロインの意外な一面が見られてびっくりすることも。 -フォトセッションが楽しい。 --自分の好きなアングルを探すことやポイントの高い写真を撮るための方法の模索など、撮影の自由度が高い。 --ポイント獲得による隠し要素解放やDuckの探索など、やりこみ要素も十分にある。 --撮影した写真はスクリーンショットとしてPSPにデータを残すこともでき、お気に入りの写真を壁紙にしたりできる。 -ボリュームがかなりある。 --一周だけEDを見るなら普通に攻略すると7~8時間、一人だけに集中していれば5時間、複数に手を出すと12時間位とそこまで時間はかからないが、何しろメインヒロインの数の倍以上のストーリーがある上に、好感度によってフリーイベントも変化するため全て見るには何周も必要となる。 --隠し要素も多いため、全て回収するには100時間以上かかる。 -BGMも従来通り岩垂氏が担当しており良質。 --泣かせるメロディのメインテーマからエロティックな雰囲気のプライベートフォトセッションのBGMに思わず笑ってしまいそうな失敗時のテーマなど曲の種類も多彩。 --劇中劇「プリティラビィ」のテーマソング「ムーンライト スターライト」がカラオケでヒロインごとに用意されているなど、手が込んでいる。 *短所 -グラフィックが荒い。 --ポリゴンモデルの質はともかく、グラフィックのジャギーがとてもひどい。写真撮影が題材なのでどうしても見栄えは気になってしまう。 --PVの開発環境は非常に滑らかに表示されているのでタチが悪い。 ---これに関しては開発中PVのPC画面と違い、PSPにアンチエイリアス((大雑把に言うと画像の境界のギザギザを目立たなくするために輪郭を背景と融合するように、色を滑らかに変化させる処理を行う機能。2Dにおいては邪魔になる事もあるが、3DゲームのCGモデルの描画においてはほぼ必須といえる))処理の能力が無い事が原因である。 ---ぶっちゃけてしまうとこの機能が無いPSPは解像度の関係もあって細かい3Dの描画機能が壊滅的。つまりちょっと考えればPVのような綺麗で細かい描画なんぞ出来るわけがないのは分かりきっているのだが…まさに"画面は開発中のものです"表記を逆手に取ったユーザーに期待を持たせる巧妙な罠である。 -場面転換ごとのロードが長い。 --データインストールで少しは解消されるものの、それでも数秒のロードが入って長い。 -撮影のたびにセーブが入ってテンポが悪い。セーブの時間も結構かかる。 --上記のロード時間と相まって、テンポは非常に悪い。 -バッドエンド(ヒロインと親密にならない)を見るのが一番面倒。 --ランダムエンカウントの本作だが、裏を返せば絶対にエンカウントしない方法はない。ヒロインを見るとそのたびに選択肢が入るので邪魔。なるべく会話を避けても登下校時のエンカウントを回避する方法はない。部室に行けば別のイベントが発生し、全て見れば別のEDルートに向かってしまう。 --期間も40日と長く、時間をつぶすのはかなり面倒である。 --バイオリズムマッチングはうまく使えば好感度を下げることはほぼないので、長い期間も合わせてうまく攻略できずにバッドエンドへということはまずないと言っていい。 --ちなみに『アマガミ』における「スキBAD」のようなEDはなく、涙イベントもイベントとしてアルバム(ギャラリー)には登録されないので二股をする意味はほぼない(それどころか学園祭をダブルブッキングするとED後の後日談が無くなるだけなのでデメリットしかない)。 --バッドエンドを見るのはイベント制覇には必須である。尤も、ストーリーLとHの二度見てしまえばそれっきりだが。 -撮影時シャッターを切ると同時にフリーズして電源が落ちるバグがある。 --原因は不明で、発生頻度は稀だがセーブをせずに長い時間続けて遭遇すると悲惨。こまめにセーブするしか対処法はない。 ---- *総評 グラフィックやテンポの悪さなど不満は残るものの、恋愛シミュレーションとしては文句なしに良作。~ また、カメラ撮影やバイオリズムマッチング、リズムフォトセッション等ゲームとしての楽しさも取り入れている。~ 単純に従来の型にはまった恋愛シミュレーションとせず、新たな要素を取り入れようとしている姿勢も評価すべきだろう。 *余談 -『キミキス』『アマガミ』と同様に複数の出版社からコミカライズ作品が発表されている。 --2012年5月現在、同時に連載中の作品は4つと多い。 -2011年7月6日からラジオ番組が配信されている。パーソナリティは伊瀬茉莉也氏(果音役)と金元寿子氏(早倉舞衣役)。