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探偵神宮寺三郎 灯火が消えぬ間に - (2012/07/18 (水) 11:25:30) のソース

*探偵神宮寺三郎 灯火が消えぬ間に
【たんていじんぐうじさぶろう ともしびがきえぬまに】

|ジャンル|アドベンチャー|&amazon(B000069SYB)|
|対応機種|プレイステーション|~|
|発売・開発元|データイースト|~|
|発売日|1999年11月25日|~|
|定価|6,090円|~|
|配信|ゲームアーカイブス:2009年1月28日/600円|~|
|>|>|CENTER:''[[探偵神宮寺三郎シリーズリンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/889.html]]''|

**概要
-探偵神宮寺三郎シリーズ第7作目。データイーストから発売された同シリーズ作品としては、最終作に当たる。
-前作『[[夢の終わりに>探偵神宮寺三郎 夢の終わりに]]』とシステムの基礎はほぼ同じ。イラストは寺田克也が担当している。

**ストーリー
新宿歌舞伎町に構えられた神宮寺の探偵事務所に、ヤクザに追われているという一人の若者が駆け込んできた。~
助けを求められた神宮寺は、若者を事務所に匿う事にする。

そんな折、神宮寺の元に、若い女性の失踪事件の調査依頼が舞い込む。また友人である熊野警部からは、新宿に潜む拳銃密輸ルートの捜査協力を求められた。~
いつになく多忙な事務所に居候する件の若者──八木正隆は、世話になるせめてもの恩返しにと、雑用兼助手のような気持ちで自分なりに行動を始める。神宮寺はそんな素人の奔走に頭を痛めつつも、にわかに活気付いた事務所の空気に顔をほころばせる。~
しかしこの時既に、新宿には不穏な影が渦巻いていたのだった。

**特徴
前々作、前作と同じ骨格のコマンド総当たりADVに、日付による時間制限やマルチエンディングなどの要素を追加したものが本作のシステムの大枠である。~
ここでは、前作からの変更点を中心に記述する。

-マルチエンディング制
--本作には昼夜の概念や日付設定があり、特定の日時でしか発生させられないイベントや、調査の期日に応じた派生エンディングが用意されている。
---場所を移動すると時間が進む。しっかり考えて手際良く調査を進めないと、無駄足を踏んでしまい期日までに必要な情報を揃えられない場合も出て来る。
---期日までに一定の成果を挙げ続けてゲームクリアを迎えれば正規終了(グッドエンド)、達成できなければその場でバッドエンドに分岐する。最短日数でクリアすると、内容が一部変化したベストエンディングとなる。
--その代わり、ザッピングシステムは無くなっている。

-移動マップ
--場所の移動で行き先を選択する際に、移動マップが表示されるようになった。

-指示
--実際の調査はもちろん神宮寺自ら行うが、場合によっては、別行動するパートナーに指示を出す局面もある。
--シーンに応じて最大4人まで、有能な助手・お調子者の居候・警察関係者など色々なキャラクターがいる。適材適所がうまくはまれば、神宮寺が調査しきれなかった方向から有益な情報を持ち帰る。
--調査という仕事に不慣れなキャラクターはそうそう役には立たないものの、それでもちゃんと指示通りに行動してくれる。時には別行動中のパートナーと神宮時が遭遇し、ちょっとしたミニイベントが発生する事も。

-「聞き込む」
//このモードに専用の名前がついていたかどうか失念。
--重要な情報を持つ人物と相対する際は、専用の聞き込みモードに突入する。ここでは、「話す」の単一コマンドですべてをまかなう普段とは違い、尋ね方、情報を引き出す手順などに工夫が必要。時には「ほめる」「世間話をする」「脅す」などといった特殊な会話コマンドも駆使していく。
---接し方を間違えると情報を得られない。やり直しは一応できるが、当初よりも相手の心証が悪化してしまう場合もある。
--ストーリー上の情報提供者が、みな神宮寺に協力的とは限らない。相手の警戒心を解いたり、こちらも何かしら情報を提供したりといった、会話の駆け引きが求められる。探偵である神宮寺の本領発揮でもあり、雰囲気的にも味わいのあるモード。

-「フローチャート」「D-MODE(調査内容をまとめるモード)」「S-MODE(3DCGに起こされたマップを捜索するモード)」「PASS WORD(おまけ要素開放用のパスワード)」は前作とほぼ同じ形で続投。

**評価点
-シナリオ
--シリーズの過去作品同様、敵・味方といった単純な図式ではない複雑な相関関係にある多くの登場人物に対し、それぞれ背景や内面を描きこんで深みを与えていく探偵物語である。今回は聞き込みモードで脇役との会話も作りこまれ、より親しみやすい。
--序盤から丁寧に伏線が張られ、連続した複数の事件が絡みあって畳み掛けられるように話が進み、終盤でそれが1つの結末に収束していく。こうした、複雑な構成ながら理解しやすく、プレイヤーの興味関心を安定して保ち続けるシナリオ運びも好評。
-本作独自の各種システムとシナリオの相性も良く、全体的に探偵ものADVとして「らしい」仕上がりと言える。

-キャラクターや背景グラフィックの質は、前作から引き続き高い。
-舞台ごとの表現力も豊か。
--今回は移動マップが追加されて舞台を俯瞰視できるので、繁華街、歓楽街、神社、うらぶれた街外れ…と様々な側面を持つ新宿を歩きまわっているという臨場感がよく出ている。
--神宮寺シリーズは新宿以外の地域へ移動する事も多いのだが、その際の「空気の変化」のようなものも、本作ではより分かりやすくなった。

-要所要所で捜査の進捗や情報を整理するモードが挟まれ、ストーリーの混乱が起こりにくい。
--ゲーム中の情報を参照できる「手帳」周りの仕様も、過去作品より着実に向上している。今回は登場人物の数が多いので、人物相関図などは頼れる助けとなるだろう。

**欠点
-細かく工夫されているとはいえ基本がコマンド総当りADVである事に変わりはなく、やり込みとしての「最短日数クリア」にはあまり求心力がない。ゲーム中にセーブデータをロードする機能も無く、効率プレイを補助するシステムも未整備で、ベストエンドへのハードルが高い。

**総評
前作で好評だった部分を維持しつつ新しいシステムにも挑戦し、『探偵神宮時三郎シリーズ』としての雰囲気と、主人公の探偵を動かして調査している雰囲気の両方が丁寧に拾い上げられ、一つのゲームにまとまっている。~
プレイヤーの推理や閃きを強く要求するシーンは無く難易度面の歯応えは期待できないが、よく練られ、かつスムーズに運ぶシナリオを楽しむ分には、大きな問題にはならないだろう。~
新宿の街を飛び越えて広がる今回の物語は、調査に手間取っていると悲しい結末を迎える事になるかもしれない。そこに持ち前のタフネスと豊富な経験で切り込んでいく神宮寺の姿には、時代が下ってもそう簡単には衰えないいぶし銀の輝きがある。

**余談
-エンディングには本編中でタバコを吸った本数に応じた、クリアランクならぬスモーカーランク(?)が表示される。タバコ5000本クラスという肺の芯まで真っ黒になりそうな高ランクもあるらしいが、このランキングにどのような意味を感じ取るかはプレイヤー次第。
-本作でシステムとして確立されているアイデアは、意外にもシリーズ初代作『[[新宿中央公園殺人事件>http://www23.atwiki.jp/ksgmatome/pages/524.html]]』にその原点(?)が見られる。1987年から長い歳月を経て今ここに1つの回答を見たのだと思うと、感慨深いものがあるような。