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Dungeon Master - (2013/03/07 (木) 16:15:51) のソース

*Dungeon Master
【だんじょんますたー】
|ジャンル|3DダンジョンRPG|
|対応機種|原語版:IBM PC、Amiga、Apple II、ATARI ST&br()日本語版:PC-9801、X68000、FM TOWNS、スーパーファミコン|
|発売・開発元|FTL(日本語版はビクター音楽産業が主に担当)|
|発売日|1987年|
//|価格||
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#contents(fromhere)
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**概要
 1986年、ビジネスソフト製作会社を経営していたウェイン・ホルダーの元に、ダグ・ベルとアンディ・ジャノスという二人の若者があるシステムプログラムを売り込みにやってきた。それを簡潔に表すならば、「時間と物体が現実そのままに存在する箱庭空間を作り上げるプログラム」となる。~
 ウェインは二人を開発スタッフに迎え、ゲーム製作会社「Faster Than Light(FTL)」を設立。二人のプログラムを見て即座に閃いた「3Dダンジョンの中を勇者がリアルタイムに冒険するRPG」であるこのゲームを製作した。

 そうして1987年に発売したこの『Dungeon Master』(以下「ダンマス」と略す)は、その斬新なゲームシステムが受けて世界中で大ヒットした。

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**ストーリー
 大魔道士グレイロードは、アナイアス山麓のダンジョン内で「パワー・ジェム」と呼ばれる至宝の研究を進めていた。「パワージェムと『炎の杖』が融合した時、炎の杖は真の力を解放する」という伝説を信じて。~
 ところが、ある日実験に失敗し、グレイロードは絶対的な正義を掲げる「ロード・リブラスルス(秩序)」と絶対的な悪の権化「ロード・カオス(混沌)」に分裂してしまう。~
 ロード・カオスはダンジョンを要塞に改造し、そこを拠点に世界征服をたくらむ。それを阻止すべく多くの勇者がカオスの作ったダンジョンに乗り込んだが、一人残らず返り討ちにあい、鏡の中に閉じ込められてしまった。~
~
 グレイロードの弟子である見習い魔道士セロン。彼もまたグレイロードの実験失敗に巻き込まれた影響で肉体を失い、霊体となってさまよっていた。そんな彼の前にロード・リブラスルスが出現、炎の杖の奪還とロード・カオスの討伐を要請される。~
 セロンはカオスのダンジョンに乗り込み、鏡に閉じ込められた勇者たちを解放。彼らと共にカオス打倒を目指してダンジョン下層を目指すのであった。

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**基本システム
-まずはB1にある「勇者の館」にて、最大4人までの勇者を選んで蘇生もしくは「転生」させる。
--蘇生の場合は生前の職業レベル(これについては後述)をそのまま引き継げる。一方、転生の場合は職業レベルがリセットされてしまうが、蘇生時に比べてステータスが向上。また、名前も自由につけられるようになる。
--総勢24人の勇者が用意されていて、それぞれに明確な特徴がある。肉弾戦に向いている者、魔法が得意な者、一品物の貴重品を持っている者など個性豊か。
--ちなみに最低でも一人蘇生させればゲームは開始可能。多人数の方が基本的に有利だが(物を多く運べる、手数が増えるなど)、一人旅でも十分クリアは可能。
-パーティを結成したらB2に突入、ここからが本番。さまざまな罠の待つ3Dダンジョンを踏破し、ロード・カオスを倒すのが最終目的となる。

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**特徴
***時間の概念
-このゲームでは「リアルタイムで時間が過ぎていく」ことを表現することに成功している。~
それによってもたらされたゲームへの影響は多岐にわたる。いくつか例を挙げると…
--勇者は時間経過で腹が減れば喉も乾く。そのため定期的に食事を取らないと体力が落ち、やがて餓死する。
---食料はダンジョン内に落ちているし、敵の中には倒すと食用になる(肉を落とす)ものもいる。
---水は泉で飲むことができる。革袋かフラスコを持っているならば汲んで持ち運ぶことも出来る。
--魔法や毒の効果も、時間経過で減衰していく。
---ただし、落とし穴への落下や強烈なダメージなどで特定の部位に重傷を負った場合は時間経過では回復しないので、この場合はポーションで回復させる必要がある。
--戦闘も完全にリアルタイムで行われる。コマンドを選択している間にも、敵はどんどん間合いを詰め、攻撃を矢継ぎ早に繰り出してくる。一瞬の判断ミスが致命傷になりかねない。
--ダンジョンに設置されたトラップにもリアルタイム化の影響は及び、既存のCRPGでは表現できなかったユニークな罠を実現。「一定間隔で開閉を繰り返す落とし穴」などはシンプルにしてその最たる例だろう。

***空間、物体の概念
-ダンマスでは、すべてのオブジェクト(ダンジョン、トラップ、アイテム、敵)が視覚化されている。
--扉ひとつ取ってもそうだ。「スイッチを入れると開く扉」があったとする。扉のすぐそばにスイッチがあることもあれば、はるか遠くにある場合もある。スイッチの形にしてみても、一目でそれと分かるものもあれば、壁の突起が実はスイッチだった、などバリエーションは豊富。
--落とし穴に落ちた場合、それなりのダメージを受けるとともに一つ下の階層に落下するのだが、落ちた先の座標はもちろん上の階層と一致している。階段も例外ではなく、その気になればダンジョンの完璧な3Dモデルを作ることさえできるだろう。たいていの落とし穴は落ち損なのだが、中には2階層に渡ったトラップ…つまり「落とし穴にわざと落ちることで道が開ける」といった手の込んだトラップすらある。
--アイテムも視覚化されており、床や棚に安置されていたり、敵が落としたりする。手に取ることで名前が判明し、自分たちのものになる。床に置く、もしくは投げることで捨てることも可能。場合によってはそれらの行動がトラップ解除のトリガーになっていることも。
---さらにステータス画面の「目アイコン」に持っていくことで詳しく調べることができる。装備品なのか、食用なのか、重さは何キロあるのか。巻物ならば書かれている内容を見ることができる。ちなみに、何も持っていない状態で「目アイコン」をクリックするとキャラクターのステータスを見ることができる。
---アイテムには重量の概念が存在し、各勇者には「積載量」、つまり何キロまでのアイテムを運べるか、という制限がある。積載量を越えてアイテムを運ぶことも可能だが、スタミナの消費(とその回復にともなう空腹度の減少)、移動速度の低下などのデメリットを被ってしまう。
--敵も1ブロックを占有し、こちらを発見次第攻撃してくる。近づいてきて肉弾戦を挑むもの、遠距離から魔法を撃ってくるもの、など個性豊かである。
---しかし、ラスボスであるロード・カオスを含めても24種類しか存在しない。これは「色変えなどでの水増しを一切行っていない」「個性豊かであるがゆえ、いたずらに数を増やす意味も必要もない」ため。
---1ブロックを占有し、リアルタイムで戦況が変化する…とくれば、位置取りも考えなければならない。例えば敵が大量に湧く場所においては、交戦中にさらなる増援が加わる可能性もあるからだ。挟み撃ちされ、退路をふさがれたら全滅は免れないだろう。逆にこちらに有利な場所に誘い出すこともできる。また敵は深追いはしてこない(敵ごとに徘徊する範囲が決まっている)ので、退路さえ確保しておけば安全な場所に落ちのびた後、態勢を立て直すことができる。

#region(主なモンスター達)
//基本的にSFC版の説明書に名前が載っていたモンスター中心です。改変・削除・追加あればご自由にどうぞ
-マミー
--一番最初に出会うモンスター。ダンジョンの中では最底辺の強さだが、復活(転生)したての勇者達にとっては侮れない。
-スクリーマー
--ブロッコリーのような形をした木(?)のモンスター。マミー同様にとても弱く、ドロップするスクリーマーの肉は序盤の貴重な食料である。
--他のモンスターと比べて穏やかそうな外見に加え、攻撃時の可愛い鳴き声から一部のファンの間ではマスコットキャラのように愛されている。
--とある階層には無限発生するポイントが存在し、さながら''食糧庫''のように利用できる。
-ロック・パイル
--瓦礫に覆われたモンスター。見た目どおり動きが鈍い代わりに防御力が高く、序盤の武器ではろくに傷つかない。
--あまりに硬すぎるので、待機時間の短い素手で殴りまくったほうが早いと言われることも・・・
-ブルー・トロール
--棍棒を持った青色の醜い怪人。マミーよりも攻撃性が強く、集団で襲い掛かってくる。
-ワーム
--巨大ミミズ。ロック・パイル程ではないがタフな体に攻撃力も高く、毒まで喰らわせる中盤最大の強敵。
--おまけに手に入るワームの肉が不味い(=食事効果が低い)くせにやたらと重く、スクリーマーとは正反対にかなり嫌われている。しかしワームの登場階層は食料にあまり恵まれておらず、状況次第ではこの限りでない。
--こいつらを楽々いなせるようになれば立派な勇者の仲間入りである。
-ゴースト
--幽霊。実体が無いのでこちらの攻撃は効かず、扉もすり抜けてくる。足音も無く忍び寄ってくる様は実に怖い。
--倒すには対霊呪文か、その効果を持った特殊な武器が必要となる。
-ギグラー
--顔が胴体についている盗っ人。非常に足が速く、こちらを見つけると猛烈な勢いで近づいてはアイテムを盗んで走り去る、ダンジョンマスターで一番憎い奴。
--攻撃呪文のストックがいかに重要であるか、身をもって勇者達に教えてくれる存在でもある。
--SFC版は大量のギグラーが待機する小部屋が追加され、何も知らずに開けたプレイヤー達を恐怖に陥れた。
-ジャイアント・ラット
--凶暴な巨大ネズミ。SFC版のグラフィックはゾンビのように見えるほど体の傷が生々しい。
--攻撃力は高めだが、必ず落とすもも肉はスクリーマーの肉よりもお腹が満たされる。
--とある階層に無限湧きするポイントがあり、こちらもスクリーマーに続き第2の食糧庫として利用できる。
-ストーン・ゴーレム
--件の「炎の杖」を守る石像の番人。ロック・パイル以上の鈍重さと防御力が特徴で、超強烈な石棍棒の一撃をお見舞いしてくる。
--最強のファイアーボールでも決定打にならないほど屈強。まともにダメージを与えたいなら、終盤のとある武器にのみ備わった攻撃コマンドが必須となる。
-スペル・バイン
--名前どおり蔓に覆われた、水晶玉のような実体無しモンスター。ありとあらゆる呪文を唱える。
--姿を消して回避率を上げたり、広い場所では回りこむように動くなど利口な一面を見せる。
-レッド・ドラゴン
--紅き巨大な竜。ゴーレムと同等の攻撃力を誇り、最強のファイアーボールを吐き出し、そして無尽蔵とも思わせられる体力の持ち主。
--こいつと真正面から殴りあうことは限りなく無謀に等しい。如何にしてこの強敵へ立ち向かうかは勇者達(と彼らを導くセロン)の考え方次第である。
--レッド・ドラゴンを制した証のドラゴンステーキは最高の食事効果を誇る。だが、この時点で最終局面が間近に迫っている為、食糧としての恩恵は薄い。
--ロード・カオスとの戦いは特殊な方法を強いられるため、純粋な力のぶつかり合いという点では''事実上の最終ボス''である。
-ファイアー・デーモン
--黒幕ロード・カオスを護衛する悪魔。機種によってヒレのような手をしていたり炎に包まれた骸骨だったりとデザインが大幅に異なる。
--ファイアーボールの呪文を連発し、どこからともなくカオスを守るために湧いてくる。もちろんカオス自身も一緒に攻撃してくるので乱戦は免れない。
-ロード・カオス
--グレイロードの半身にして最終ボス。あらゆる呪文を使いこなすほか、魔法の小箱による時間停止を無効化する。
--こちらの攻撃は一切効かない。炎の杖をうまく利用することが勝利に繋がる。
この他にも様々なモンスター達が勇者を待ち受けている。~
#endregion()

***その他
-勇者の成長は「職業(特殊技能)のレベルアップ」という形で表現される。肉体面の強さを表す「ファイター」、器用さを表す「ニンジャ」、回復・防御魔法の技量を表す「プリースト」、攻撃魔法の技量を表す「ウィザード」の4つが存在する。例えばファイターのレベルが上がればライフ、スタミナ、ストレングスが多めに上昇し、より強力な武器を使いこなせるようになる、といった具合。なお、特殊技能のレベルを上げるには、それに関連した行動を取り続けることが必要になる。
--各勇者は4つの職業を兼任することができる。ファイターとプリーストのレベルを上げれば、「タフで死ににくく、緊急時には回復魔法も使える」勇者となるだろう。
--なお、呪文詠唱に必要なマナの初期値が0である、脳筋馬鹿な勇者もいる。そのままでは一切呪文が使えないが、そういった勇者でもマナの上限を上げるアイテムを見つけて装備すれば、呪文を行使して魔法系職業のレベルアップを行うことができる((他の手段としては敵の目の前で「ときの声」を使い続け、僧侶経験値を稼ぐという手もあったりする。))。
--レベルごとにそれぞれ称号があり、職業に関係なく一律の同名で職業名の先頭に付与される。最大で16段階存在するが、基本的に中間の「エキスパート」辺りになれば、その職業に関して不自由するようなことはなく、ゲームクリアも見えてくる。
--ちなみに最高位は「アークマスター」。ここまで来ると「神の領域」「ロードカオスでさえ逃げ出す」ほどの強さとなる。ただし鍛え上げるまで凄まじい作業量(それこそ廃人クラスのやりこみプレイ)が求められる。
-呪文の詠唱は「『シンボル』を組み合わせる」という独特のシステムになっている。例えば「火の要素」を表す「フル」のシンボルと「浮遊」の特性を付与する「イル」を合わせることで、「火球(ファイアーボール)」の魔法となる。実際にはこれに呪文の強弱を決定付ける『パワーシンボル』が加わり、最終的な威力、効果が決定される。
--一部の僧侶呪文(HP回復、解毒、能力増強など)は「呪文を詠唱すると水薬(ポーション)が生成される」ようになっており、そのポーションを飲むことで初めて効果が現れる。それらの呪文は手にフラスコを持っておかないと詠唱できない。
-前述のように、本作はキーアイテムの「炎の杖」を手に入れることがゲームの当面の目的である。しかし・・・

#region(入口まで持ち帰った場合(ネタバレ注意))
なんと''ロード・リブラスルスにその場で拘束されたあげく焼き殺されてしまう。''~
言われたとおりに持ってきただけのプレイヤーは、一体何が起きたのか分からずに呆然とする事だろう。~

実は、これこそがダンジョンマスター最大のトラップである。~
「炎の杖」が安置されている階には勇者が本当に成すべき使命が隠されており、それを知らず素通りすると上記の痛い目に遭わされるようになっている。また、プロローグの内容から単純に考えると「リブラスルスの言っている事は正しい」と思いがちだが、あくまでセロンの師はリブラスルス、カオスの半身に分かれてしまったグレイ・ロード。つまり、''グレイ・ロードの片割れでしかない不完全な存在のリブラスルスを信用すべきではない''ことを暗に示しているのだ。プロローグの時点で既に巧妙な伏線が張られていたというわけである。この事はゲーム中の巻物に書かれたメッセージや、SFC版(後述)の取扱説明書でも遠まわしに触れられている。
#endregion
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**長所
***絶妙なゲームバランス
ダンマスの長所にして今でも名作であり続ける最大の理由。~
製作スタッフは上記のシステムをフル活用して、トラップ満載の一大ダンジョンを構築。プレイヤーに挑戦状を叩きつけたのである。
-浅い階層では簡単なトラップが用意されており、敵も弱い。だが、深く潜るにつれて難解なトラップと強い敵が待ち受けているのである。
--ただし謎解きには必ず何らかのヒントが用意されており、壁や巻物のメッセージ、画面から得られる情報、そして今まで積んできた経験を照らし合わせれば、必ず解けるようになっている。理不尽な謎解きは一つたりとてなく、攻略情報なしの自力クリアも十分可能。むしろ初回プレイ時は攻略情報をシャットアウトすることを勧める。
-空腹、重量制限といった足枷となる要素も、ゲームに上手く落とし込んである。少し慣れた人なら、事前に準備しておく「転ばぬ先の杖的発想」を自然と思いつくだろう。
-戦闘のシステムはシンプルだが、仕様の穴を突いたテクニックも見られる。
--敵のAIは単純で、交戦中にこちらが横に移動すれば敵はそのまま前進して、こちらに側面をさらしてからこちらを向く。つまり「横に移動」「敵のほうを向いて攻撃」という操作を繰り返して4ブロック上をグルグル回る戦い方(通称「回り込み」)を行うと、大半の敵はノーダメージで倒せてしまう。
---ただし、この「回り込み」は十分なスペースが無いと実行できないという問題点がある。また、ビホルダー等は一瞬で振り向くため側面を取ることが事実上不可能。
-基本的には4人PT推奨なのだが、ある程度ゲームに慣れた人なら少人数クリアも可能。
--少人数だと「持ち運べるアイテム数に大きな制限を負う」「全滅する可能性が高まる」といったリスクを負うが、その代わりに「強力な装備品を集中して装備できる」「レベルアップに必要な練習量が少なくて済む」といったメリットもある。
--また、ソロor2人パーティの場合、「隊列を右寄せや左寄せにすることで、横に移動できない細い1本道でも敵の攻撃魔法を回避できる」というテクニックも存在する。
---敵の攻撃魔法は誰が食らおうがパーティ全体がダメージを受ける仕様になっている。4人パーティなら1ブロック4マス構成が全て埋まるため回避不能なのだが、小人数なら隊列を右もしくは左側に固めることで回避できる(向かって右側の敵が攻撃魔法を唱えたら、すぐに左側に隊列を寄せると回避可能)。

***ボリュームと比較して非常に少ないディスク枚数(PC版)
-これだけの世界を詰め込んだにも関わらず、ディスク枚数はたったの1枚だけ。階をまたぐごとにディスクアクセスが起こり、セーブデータを残すために別ディスクが1枚必要になるものの、煩わしい点はそれのみ。当時はディスク1枚の形式が普通だったとはいえ、快適さとゲームの奥深さを見事に両立させている。目一杯詰め込まれたデータをメモリ上に展開するのに分単位の時間がかかるが、起動時のみなのでさほど気にはならない。

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**短所
***とにかく地味
-演出関連は非常にショぼい。当時のPCスペックを考えれば仕方のないところだが。
--ダンジョン内ではBGMは流れない(SFC版は要所要所でBGMあり)。あるのは足音や効果音、敵の鳴き声といった環境音のみである。
---もっとも、そのほうが敵の気配を察知しやすくなったり、「音」が関係するトラップの難易度が低下するなどメリットの方が大きいので、一概に欠点であるとは言い切れない。
--ラスボスであるはずのロードカオス自身も地味。一応それっぽい雰囲気の強敵ではあるのだが登場時の演出などは一切なく、しばらく戦ってから「あれ?こいつがボス?」などと気付いたという人も多いとか。良くも悪くも状況の判断は全てプレイヤー自身に委ねられる。
-ストーリー性は希薄。最初からゲームの最終目的ははっきりしている(終盤でその当初の目標だけでは完全ではないことが分かる)が、例えば「重要キャラの死」などといったストーリーを盛り上げてくれるイベントはダンマスには全くない。
--ストーリー性の高いイベントを強いて挙げるなら、「炎の杖入手」「炎の杖を持ち帰る」「最下層に落下」「炎の杖の真の力を解放」「カオス撃破」あたりだろうか。しかし、これらには一枚絵挿入といった特殊な演出は一切入らず、淡々とゲームが進む。やっぱり地味。
-良く言えば、不必要な演出を削ったストイックなゲームとでも言うべきだろうか。とにかくこの辺りに慣れることが出来るかどうかで好き嫌いがハッキリと別れやすい。

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**総評
 時間と空間の概念のリアリティをゲームの面白さを損なわない程度に追求しつつ、「3Dダンジョンに仕掛けられたトラップを解く」ことに重点を置いたRPG。斬新なゲームシステムと、それに頼りっ切りになることなく入念なバランス調整を施した本作は、シリーズ第一作目から非常に高い完成度を誇り、後発のRPGにも多大な影響を与えた。

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**その後の展開
-FTL社はダンマスの大ヒットを受け、続編である『ダンジョンマスター カオスの逆襲』と3部作構成の『ダンジョンマスター2 スカルキープ』を製作。しかし、スカルキープを発売後にFTL社が倒産、続編製作の道は閉ざされてしまった。
--『ダンジョンマスター2 スカルキープ』には、二刀流、使い魔召喚魔法、売買、天候変化など、様々な要素が追加された。また敵のAIも進化した。
-日本でもダンマスは発売された。中でもビクター音楽産業((現:ビクターエンタテインメント。現在はゲーム事業より撤退。))がダンマスに特に力を入れており、SFCへの移植、オリジナル作品の『ダンジョンマスター セロンズ・クエスト』『ダンジョンマスター ネクサス』等を製作している。ちなみにPC版でも、海外版と日本語版では細部に微妙な違いがあったりする。
--SFC版では原作の雰囲気を崩さない程度のアレンジが加わっている(ダンジョンマップの一部変更、敵の攻撃力の低下、特定の場所に踏み込むとBGMが流れる、続編で登場したアイテム「力のグリーブ」の追加等)。オブジェクトを多く出し過ぎると処理落ちする、そもそもゲームスピードが遅め、マウス非対応といった欠点もあるが、どちらかと言えば良移植に分類されるだろう。
--ちなみにSFC版ではモンスターのグラフィックもリライトされており、原典のグラフィックを尊重しつつも、全般的にリアル志向が強く現れている。特にゴーストは原作と比較して「ぶっちぎりで怖い」と評されるほど。
-現在ではオリジナル版は入手困難(更に著作権の帰属がわからず、VCやリメイク等にも期待できない)だが、原典をほぼ忠実に再現した「ダンマスクローン」と言えるゲーム群が多数存在している。いずれもフリーゲームなので無料でDL可能、気軽にダンマスの雰囲気を楽しめるようになった。
--中でも『ダンジョンマスター Return To Chaos(ダンマスRTC)』は、デフォルトで『ダンジョンマスター』『ダンジョンマスター カオスの逆襲』『ダンジョンマスター2 スカルキープ』の再現データが入っているほか、専用エディタも付属しており、自分で同システムを用いたゲームを作成することも可能。
---ただし、RTCではシステム上出力できるメッセージは英語のみ。また、ベースとなるシステムは初代ダンマスのため、『ダンジョンマスター2 スカルキープ』については微妙な差異が存在する(例えば、オリジナル版では両手ともにアクションハンドとして利用できるのだが、RTC版では不可)。
---それ故に敷居は高いが自由度も高く、海外のファンサイトにアップロードされている2次作品には斬新なアイディアを盛り込んだものが見受けられる。
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