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リンダキューブアゲイン - (2013/08/07 (水) 13:20:07) のソース

*Linda3 again
【りんだきゅーぶあげいん】
|ジャンル|サイコスリラー&ハンティングRPG|&amazon(B000069SPZ)|
|対応機種|プレイステーション|~|
|発売元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~|
|開発元|アルファ・システム&br()MARS|~|
|発売日|1997年9月25日|~|
|価格|5,800円(税別)|~|
|備考|PCEオリジナル版『リンダキューブ』/1995年10月13日/&br()SS版『リンダキューブ完全版』/1998年6月18日/|~|
|配信|ゲームアーカイブス/2007年9月27日/600円((本来は約1年前に配信されていたが、権利関係により配信はごくわずかで一旦終了し、権利が整理された後に再配信されたという経緯がある。))|~|
|分類|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
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#contents(fromhere)
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**概要
PCエンジンの名作『[[天外魔境 ZIRIA]]』『[[天外魔境II 卍MARU]]』で不気味かつ骨太なシナリオを描いた桝田省治と、後に『ガンパレード・マーチ』で一躍有名になるアルファ・システムが手掛けたRPG。~
桝田氏曰く''「天外IIでは3年間も「こてこての王道」なシナリオを作り続けてストレスが溜まり、クリエイターとしての血が疼いて作った(意訳)」''作品であり、その言葉に違わずみょうちくりん、しかしそれでいて独特の中毒性がある作品として、『Linda3((この「3」は正確には乗数))』は当時既に冷え切っていたPCエンジン市場にその名を刻むこととなった。~
桝田氏曰く本作のテーマは「種の保存」。

本記事ではプレイステーション版リメイクの『リンダキューブアゲイン』を解説していく。全体的にプレイする上での(ゲームとしておよびシナリオ面でも)バランスが修正されており、販売状況や入手環境といった要因からリメイク元よりも有名になってしまった感がある作品である。~
なお、オリジナル版は''18歳以上推奨指定作品''となっている。本作にも暴力表現警告の三角シールが設けられているが、実はこれ、本作のためにソニーが用意したもの。どんな内容なのかはお察しください。

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**ストーリー
アフター・マザーズ・デス(AMD)1991年。地球によく似た環境を持つ惑星「ネオケニア」への移住計画が開始されてから、一世紀が経とうとしていたころ。~
ネオケニアには8年後に「死神」と呼称される隕石が激突することが確実視され、ネオケニアのレンジャー隊は日々住民の脱出作業に追われていた。~
そんな中、謎の巨大な「箱舟」がお触れと共に現れたのだ。~
「未来を救うために、この船に乗り込む男女一組の乗組員を募集! そして出来るだけ多くの雄雌1つがいの動物たちを集めよ!」

乗組員になってどうなるか分からない。命の保証などもない。~
駆け出しのレンジャー隊員である主人公「ケン・チャレンジャー」は、父親のように勇敢な男になるためと、見かけはかわいいが乱暴で毒舌な幼馴染の「リンダ」や周囲の後押しによって乗組員に立候補したのであった。~
かくして、ケンとリンダによるネオケニアの動物捕獲のための奮闘が始まる。惑星ひいては動物・人間に関係のない全ての生物の未来を救うために……。

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**特徴
-世界の終わりが明確に決められている。
--極端に言えば、何もしなくても8年が経過し、隕石が落ちてきてネオケニアは滅亡する。
--日数が進むと他の人間は移住してしまい、宿屋や町間移動施設が利用できなくなってくる。なんともリアル。

-タイムリミットまでに動物を集めることがゲームの目的
--ケンは妙に不気味な世界中の動物を出来るだけ集めるのだが、動物はゲームクリアの条件というストーリー上の役割だけではなく、システム的にも様々な点で動物が密接に絡んでおり、動物集めがゲームの核になっている。
--大筋は動物を捕獲し、箱舟に登録する。確かに捕獲をしないとクリアできないし、それ自体も面白い。しかし動物を捕獲することで、収集のみでなく冒険や育成の楽しさを同時に味わえる作りになっている。
---多くの動物は、戦うことになるモンスターでもある。また動物は箱舟に登録するだけでなく、動物を換金したり、加工して肉や装備品にしたり、乗り物にしたり、パーティメンバーの一員にしたり、動物の能力を取り込んでステータスを強化したり獣人などの特殊能力を覚えたりと、色々なことに利用できる。
---RPGとしては最初から行動可能範囲が広大で、色々な場所に行ける。ストーリー上の束縛も緩く、自由度は高い。
--動物の入手法
---基本的には戦闘で捕獲することになるが、マップ上に罠を仕掛けて捕まえたり、ハンターに依頼して捕まえてもらったり、卵から孵化させたり等と様々な方法がある。
---戦闘中の捕獲方法は、動物にダメージを与えてHPを減らすだけ。HPが少なくなって弱った動物は降参して、自動的に捕獲できる。ただしその動物のHPの最大値を大きく上回るダメージを与えてしまうと、身体がバラバラになってしまい捕獲できず、経験値なども得られない。
---そのためこちらが強くなりすぎると動物を捕まえにくくなるのだが、かといってこちらが弱いと強力な動物を捕まえるのが困難。タイムリミットもあるので、ただ戦闘を繰り返してレベルを上げて敵をガンガン倒すだけでいいというものではなく、今の戦力に見合った動物はどこにいるのか、今の戦力でどうすれば捕まえられるかなど、戦力のバランスも考える必要がある。
--大抵の動物はフィールドやダンジョンにいるが、入手が難しい動物もいる。ボスのように奥に陣取るのはまだ良い方で、年数が経つと絶滅したり特定の状況や状態じゃないと出遭えない動物もいる。コンプリートは一筋縄ではいかない。
--ちなみに同じく『敵(味方)キャラを収集する事』がゲームデザインとなっているポケモンよりも先に発売している。また、集めた動物を素材にしてアイテムを作るというシステムはモンハンを先取りしている。

-本作はA・B・C・Dと四つのシナリオがある。
--A:「メリークリスマス」・B:「ハッピーチャイルド」・C:「アストロアーク」の三つに加え、更に条件を満たすとシナリオD:「ラストイヤー」(PS版から追加)が出現する。
--それぞれストーリー内容、箱舟への動物登録数のノルマ、行ける場所などが違う。
---シナリオAとBは練習用シナリオとしての側面もあり、動物登録のノルマが少なく捕獲できる動物の種類が少ない、A・B双方の舞台となるエリアが互いに出入りできないようになるなどの制限がある。また、定期的にストーリー進行のイベントが発生し動物集めが補助的な役割になっているなど、一般的なRPG同様、シナリオ中心の展開となっている。
---シナリオCは全エリアに侵入可能、全種類の動物が捕獲可能、と、最も自由度が高く、ゲームの醍醐味である動物集めを存分に味わえる。シナリオ面では本作の世界観や、動物集めをさせられる理由などのゲーム設定の根幹部分にまつわる真相に迫っていくが、ゲーム進行におけるストーリー的な縛りはA・Bよりも薄い。シナリオの内容面では、猟奇的な表現やエピソードが多く含まれているA・Bとかなり毛色の違う内容になっている。
---シナリオDは残り猶予1年で100種類以上の動物を集めるという、タイムトライアル的な特殊なシナリオ。最初から全ての特殊能力が使えるなどの利点もあり、早いペースで動物を沢山集めやすい。
--どのシナリオをプレイするかは好きに選べるが、シナリオC開始前には''『AB両方クリアしてからCをプレイしましょう』''というお告げが来る。ここは素直に従ったほうが無難。
--ちなみに一つのセーブデータにつき一つのシナリオしか選べないため、能力や捕獲動物などといったステータスを他のシナリオにまたぐことはできない。


**鬱ゲーとしての側面
-''本作におけるモンスター(=捕獲対象となる動物)は「イヌ・ブタ・ウサギ」などと同じ名前を冠しても、どこかグロテスクだったり奇抜だったりと地球上の生物とは似ても似つかない不気味な集団である。''我々の美的感覚など本作では無力と感じるだろう。
--本作ではこれら奇抜な外見の動物(と呼ばれているもの)が戦闘の相手であり、異形な人間外の敵はほとんどいない。
---目が無く顔が大きいシマウマや水陸両用のイルカ、腕が生えていてクロールで泳ぐサメなど奇抜な外見に事欠かない。巨大なゴキブリやミミズなど精神的にくるものもいる。
---まともな外見をしている動物は''犬のみ''。PS・SS版のみ猫も含む。
---オリジナルとなるPCEでは、開発中にPCエンジン雑誌にて特設コーナーを連載、「動物」デザインを読者から公募した事も。
--「~アゲイン」はリメイク前よりもデザインがまだマイルドになっており、一般的に「キモカワイイ」のも出るだけまだマシ。SS版やPCE版はそういった要素もない。
--何故こういう設定なのかは、話を進めればわかる。

-本作でプレイヤーはネオケニアを救えないし、魔王や侵略者と言った人外の存在などない。しかし本来、恨まれる筋合いなどないはずのケンやリンダの前に様々な陰謀や試練、人の狂気が立ちはだかり、容赦なく襲いかかってくる。しかしケンが救えるのはリンダと奇抜な動物たちのみ。本作では原作でのビジュアルシーンがアニメーションによってリメイクされており、生理的・心理的にドギツイ展開が生々しく繰り広げられていくことになる。
--しかしプレイすると「生物、ひいては人間の内面と外見のギャップを受け入れ愛することの大切さ」「不器用な生き様にならざるを得ない人間の悲哀や哀愁」そういったものを感じさせる内容となっており、どこか惹きつけられる魅力を持つ作品である。

-シナリオA・Bのラスボスは心理的に来るどこか気の触れた人間が相手となり彼らが主人公やヒロインを戦闘以外の面でも追い詰めようとする。
--ただその末路や経緯が「不器用な人間の悲哀」を感じさせる存在ともとれ、本作のテーマ「人間や生物といった外見と内面のギャップや矛盾」をも感じられる。

#region(詳細(ネタバレ注意))
-シナリオA「メリークリスマス」
--主人公にそっくりな生き別れの弟が現れ、主人公へ復讐していくストーリー。
--この弟については生い立ちが非常にえげつない設定で、孤児となって製薬会社の女社長に拾われた後はろくに愛情も注がれず、学校にも通わせてもらえないばかりか、''薬漬けにされたあげく、ある薬の原料となる原住民の死体を調達させられていた''というもの。主人公と同じ顔をした男が不気味なマスクをつけ、サンタクロースの格好で猟奇殺人を行っていく姿は強烈。中でも「死体は捜すより作る方が簡単なのサ」という台詞は多くのプレイヤーに強い印象を残した。
---物語の後半では事件の発端となった製薬会社に乗り込むのだが、地下室に多くの人間が拉致され、研究室には大量の死体が浮かんだカプセルが陳列されるという異常な光景を目撃することになる。
---ちなみに主人公の実の父親はある村の村長だったが、一夜にして村民全員を惨殺したという疑いで精神病院の隔離地下施設に隔離されている。((惨殺事件の真実に関してはシナリオ内では杳として知れない))
--ラスボスはヒロイン・リンダの父親「ヒューム」。精神が崩壊しているのか言動が狂気じみている。
---特筆すべきはその身体の設定。何と''リンダの母親「アン」が上半身に埋め込まれている。''しかもそれが明らかとなった直後に自ら殺してしまう(それも自覚ゼロ)。「愛し合う二人はいつも一緒」という台詞と野営時の特殊台詞もあってゾッとさせる事実である。
---シナリオAでは過去に筋肉増強剤が流行し、肉体と精神をも蝕むようになっても服用を続ける人間が絶えなかったという設定がある。ヒュームもそれが原因と思わせるような描写がされているが、ゲーム中でのあるキャラの台詞によれば薬物反応は見られなかったという事実が知らされる。結局、真相は解らずじまい。
---ちなみにヒュームは娘のリンダがあまりに自分と似ていない((リンダの母親のアンはネオケニアの移住民に対して常に優勢な遺伝子を持つ先住民ビースチャンの血を引いているため、リンダは容姿的・遺伝的特徴を100%母親から受け継いでいるという設定がある。))ため本当に自分の子供なのか疑心暗鬼になり、妻へのDVの末に離婚、リンダの養育費を稼ぐために件の筋肉増強剤を使用し無理な仕事をしていたという設定がある。
---なお、シナリオBではヒュームは妻と和解し、再びよりを戻し幸せな生活を送ることになると思った矢先、シナリオ開始直後に何者かに(街の大多数と共に)惨殺された挙句妻と共にゾンビとなって襲い掛かってくる。彼らが(シナリオBで)何をした。

-シナリオB「ハッピーチャイルド」
--ラスボスはサブヒロイン、サチコの父親「エモリ教授」。
---娘のサチコが自殺した原因を作った人間に復讐するため、殺人を犯していた。自らのエゴに走るあまり、多くの無関係の人物を巻き込むほど狂気に走っており、殺しの対象がいるというだけで、街の住人を皆殺しにした(前述の通りリンダの両親も犠牲になった)あげくにゾンビ化させたりシャトルを爆発させるなどやりたい放題の暴走ぶりを見せ、正体を突き止められるまでは大げさかつ空々しい口ぶりで善人として振舞い続けている。
---娘を深く愛している父親であったものの、自らの娘のクローンをサイボーグ兵器に改造して復讐の道具として利用したり、娘を箱舟のパートナーにするためにケンの心を奪おうとした際に''「理論上はね、子供だって作れるはずなんだよ…試してみようよォ!」「ンン~ン生娘の匂いだァ!!」''などとのたまいながら娘のクローンの股ぐらに頭を突っ込むなど、完全に常軌を逸した言動を繰り返す。このシーンにおける''「サチコはどーぉだぁあ!?」''は彼の%%変態ぶり%%狂気性を象徴するセリフとして特に有名。
---挙句の果てには「逆恨みの何が悪い!」と開き直る始末。なまじ一途で努力家であるが、その分、却ってタチが悪い。そしてその後、肉体増強剤を呑み干し、化け物と化して襲いかかってくる。

この二つのラスボスの共通点は「娘の事を思うあまり狂気に走ってしまった」事と言える。

シナリオABについてはゲームシステムのチュートリアル的側面もある関係で、シナリオAではシナリオBの、シナリオBではシナリオAでメインとなるエリアに侵入できないのだが、それぞれそのゲーム内での理由がAシナリオでは''ある指名手配犯一人(おそらくエモリ教授)の抹殺の為に核ミサイルが投下されたため立ち入り禁止''、Bシナリオでは''グリーン製薬のタンクからあらゆる生命を生きながらにして腐食させる未知の細菌が漏れ出し全域が汚染されたため立ち入り禁止''という理由付けになっている。
#endregion


**バカゲーとしての側面
-シナリオC「アストロアーク」が他のシナリオのセルフパロディに走っている。

#region(詳細(ネタバレ))
-''シナリオスタート直後に主人公がバナナの皮を踏んで1年間昏睡する羽目になる。''
--しかも脊髄損傷、頭蓋骨陥没とかなりの重症で大量の輸血まで必要としていた。どう転んだらそこまでの重症に…。
--ちなみにゲーム中でもしっかり1年経過している。
-シナリオAで主人公たちを苦しめたキャラが初っ端から登場。しかも打って変わってコミカルで好意的な人物に。
--他にもあるキャラが他のシナリオと全く違う運命を辿っていたり、他のシナリオで使われていた台詞が意外な場面で使われていたりと思わずニヤリと来る場面を多く見かける。
---シナリオABのラスボス同士が「娘が父親の手を離れ嫁に行ってしまうという悲しみ」に共感しあって悲しく飲み合うシーンは特に印象的だろう。2人とも「娘の事を思うあまり狂気に走ってしまった」だけあって。
--解釈によっては登場人物の多くが幸せに暮らせた世界。と、言えなくもない。
#endregion

-他にも街の人々の台詞や壁のラクガキ、「YES」のみしかない(比喩表現ではなく本当に「YES」のみ)選択肢など笑い所がチラホラある。
--猟犬を治療する際の獣医の台詞や解体屋の台詞など施設の店主の台詞が妙に生々しいが、慣れてくるとおかしさも感じてくる。

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**問題点
-PCE版に比べて、フィールド上のBGMの迫力がなくなっている。
--PCE版はジャングルの奥地のような迫力あるものになっているが、こちらはサバンナや動物園のような緊張感のないものになった、という指摘が多い。
--一方戦闘直後のSEで迫力が増しているのもあるが。
-希少種であるクジラの捕獲が運頼みすぎる。
--特に時間的猶予が少ないシナリオDでは全種捕獲の壁となりやすい(全種捕獲はクリアに必須では無いが)。
-戦闘中の各行動の演出において、SEが完全に終わるまで待たされることがあり、テンポをやや損ねている。

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**総評

グラフィック面では前時代的でチープと捉えられてしまうところは否めないが、RPGとしての特徴である戦闘・育成・収集が「動物集め」の一点に凝縮されており、「種の保存」という作品テーマと相まって、既存のRPGの枠にはまらない、独特な魅力を持っている。~
アクの強いシナリオが目立つが、鬱だけに留まらない様々な要素もあり、合う人ならばこの作品の持つ不思議な魅力を感じ取れることだろう。独特な個性で人を選んでしまう側面はあるものの、人によってはとことんハマるタイプのゲームと言えよう。

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**その後の展開
-1998年6月18日にアスキーより『リンダキューブ完全版』(SS版)が発売された。
--PCE版における狂気性や表現を復活させつつ「昔ブタ」などといった追加要素やギャラリーなどのおまけ要素も満載。
---それに伴い、レーティングは18歳以上推奨となっている。
-現在ではPSP・PS3のゲームアーカイブスで『リンダキューブアゲイン』を購入可能。ちなみにCERO:C。グロ系に免疫のない方は覚悟してプレイして欲しい。

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**余談
-ヒロイン・リンダの名字は各シナリオごとに変わっている。
--シナリオAは「リンダ・アウレア」、シナリオBは「リンダ・バーニング」、シナリオCは「リンダ・チャレンジャー」となっている。
-PS版の取扱説明書はコミカルなイラストと赤ペンによる注釈が加えられているというモノであり、本編とのギャップが激しい。
--しかし本編の内容に反している訳でもなかったりする。
-本作の教会のBGMは『[[俺の屍を越えてゆけ]]』に使い回されている。
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//PCE版、SS版について更に追記お願いします。
//発売日などを足してみましたが、一応CO。
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//家庭用ゲーム初の18歳以上推奨指定というのは誤りなので変更