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ファイアーエムブレム 封印の剣 - (2012/02/22 (水) 22:42:27) のソース

*ファイアーエムブレム 封印の剣
【ふぁいあーえむぶれむ ふういんのつるぎ】
|ジャンル|シミュレーションRPG|CENTER:&amazon(B000060O7D)※)ぼったくり業者に注意!|
|対応機種|ゲームボーイアドバンス|~|
|発売元|任天堂|~|
|開発元|インテリジェントシステムズ|~|
|発売日|2002年3月29日|~|
|定価|4,800円(税別)|~|
|>|>|CENTER:''[[ファイアーエムブレムシリーズ関連作品リンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/333.html]]''|

*概要
 SRPGというジャンルの火付け役となった『ファイアーエムブレム』のシリーズ6作目。FEの産みの親である加賀昭三氏が任天堂から離れた後の作品であるということもあり、シリーズの転換点とも言える作品となった。今作は初代作のシステムをベースとしながらも、聖戦の「武器の三すくみ」や「支援システム」、トラキアの「担ぐ」をアレンジした「救出システム」、外伝ステージへの分岐など、過去作の集大成を目指した作りとなった。

*評価点
-簡単すぎず難しすぎない難易度
--前作トラキアに比べればずっと優しくなったため、古参からはあまり良い印象は持たれなかった。しかしそれでも決してヌルゲーと言うわけではない、むしろ程よい高さである。
---ただし、発売当時はスマブラ人気のおかげで小中学生のユーザーが本作を購入しており、クリアできない人がいた事実も無視してはいけないであろう。そのためか続編である[[『烈火の剣』>ファイアーエムブレム 烈火の剣]]ではチュートリアルを強化している。

-クリア後も遊べる要素の充実
--クリア後に挑戦できる「トライアルマップ」の追加。これまで育てたキャラの活躍場所がクリア後にもできている。
---周回プレイを重ねると、トライアルマップ限定ではあるが、かつてのボスキャラ達やストーリー上での重要なキャラが味方ユニットとして使えるようになる。これにより初代からあった「あの敵将が使えたら…」という願いがかなった。
--GBAの仕様を最大限に活用した「通信闘技場」の追加。育てたキャラ同士を様々なルール上で対戦させるというものであり、シンプルなルールでありながら本編とは違った意味で中々戦略性がある。
--2周目からは難易度が上がった「ハードモード」が選べるようになっている。当然ながら敵の能力が凶悪になっており、ガチパワー勝負になっているのだが、一般プレイヤーからは好評であった。そのため本作以降も「2周目以降解禁されるハードモード」はずっと受け継がれている。

-「支援システム」の追加
--「特定のキャラ同士が近くにいると能力アップ」という仕様はシリーズ2作目の「FE外伝」にてすでに実装されており、その後シリーズを重ねていくにつれ発展していったのだが、本作にてその集大成と言えるシステムが確立された。
---ストーリー上仲の良い者同士を隣接させてターンを終えるとポイントが貯まり、それが一定値に達すると会話イベントと共に支援効果が発生するようになる。「トラキア」まではキャラの組合せが固定であったが、本作では1人のキャラに対し複数の支援発生枠が存在し、その中からプレイヤー側で支援効果を発生させる組合せを選べるようになった。一線級のユニットに集中してつけて大幅に強化するもよし、効率度外視でキャラ設定に準じて付けるもよしと、選択の幅がこれまでの作品よりも大幅に広がった。
---支援発生時の会話イベントはバリエーション豊かで見ていて楽しい。空気になりがちだった脇役キャラ達の個性が増し、見せ場ができたという点でも非常に好評であった。また、主人公含む一部のキャラは、支援キャラの組み合わせに応じてエンディング後の後日談も変化する。

-戦闘アニメーションのクオリティの高さ
--中割カット数こそ少ないがメリハリが効いており、スピーディかつダイナミックに動くため今なおファンが多い。

*問題点
今作はGBA作品の1作目であり、そのためであろうか、いろいろと荒削りな部分も存在する。

**ゲームバランスの練り込みが甘い
-「聖戦の系譜」以降続く回避ゲー
--実は本作では乱数の変化と命中の値が全然かみ合っていない。というのも、本作には「実効命中率」という隠し仕様が存在し、ゲーム中表示されている命中率が50%以上なら表示されている命中率よりも当たりやすくなり、逆に50%以下は当たりにくくなる様になっている。これはどちらかといえばプレイヤー側に有利な補正である。
---問題なのは武器全体の命中率の低さがトラキア776時代からまるで変わっていないこと。そのため三すくみ、支援効果、地形効果をフル活用すると、攻撃をヒョイヒョイ避けて敵を倒す「地雷キャラ」が誕生し、それを適当に敵陣に放り込むだけでほとんど解決してしまう。SRPGのような面白さなんてあったもんじゃないと批判された。
--支援会話システムは大好評なのだが、支援効果による能力補正が強すぎた。発生タイミングなどは調節できるためこちら側で縛りを入れる手もあるのだが。
---ただしそれらがあってもハードモードはかなり難しいので、一種の救済措置であるとの見方もある。
//こちらはずっと後の[[蒼炎の軌跡>ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡]]になるまで何の対策もとられていない。
//また、次作以降では対策もとられている。
//支援効果が強すぎる件について「蒼炎まで何の対策も取られていない」のか「次作(烈火または聖魔)以降で対策が取られている」のかどっちだ?
//蒼炎は未プレイなんで記述には手を入れなかったんだけど、軽く調べた限りでは以降の作品でも積み重ねれば「強過ぎ」と言える効果量になるっぽい。COしておくので、正確な知識のある方は追記及び修正をお願いします。

-昔からの「初見殺し」の要素がある
--初代から本作まで敵軍の増援ユニットが出現と同時に行動する。そのため「増援で寝返りキャラが出現し、そのユニットをうっかり反撃で殺してしまう」「友軍NPCが同時に出現した敵増援に1ターンで殺される(=そのNPCを守る時間すら与えられない)」という事態が発生する。
---自軍の近くに出現した場合初見では対策がほとんど取れないと言う問題もあってか、「烈火の剣」以降では増援が出現と同時に行動することは基本的に無くなった。
//烈火、聖魔では誰も動かなかったはず。蒼炎、暁は持ってないので、その辺りの加筆、修正を頼みます。
--本作で真のエンディングを見るためには、「神将器((読みは「しんしょうき」。外伝ステージをクリアした時に手に入る特殊武器で、強力かつストーリー上でも重要なポジション。))」を全て集める必要がある。神将器を全て集められなかった場合、また持っていたキャラが途中で死亡or使いすぎてロストしていた場合(壊れた武器を直せるアイテムはあるが)は話が途中で終わってしまう。
---外伝マップへ行くためには条件を満たす必要があるのだが、それ自体が難しい章もあるし、外伝マップ自体の難易度も高いことが多い。
---途中エンドの場合もエンディングは用意されているのだが、「条件を満たさないと真のエンディングは見られない」という仕様は新規ユーザーには辛いものがあった。さすがにこれはマズイと思ったのだろうか、烈火以降の作品では一応普通にプレイして終章までいけるようになっている。
--一部の寝返りキャラに「誰で説得していいかわかりにくい」というキャラが存在する。ただし、各章の会話イベントやそのキャラの出自(ステータス画面で確認できる)などのヒントも用意されており、大半のキャラはほとんどわかるようになってはいる。これは今までのFEでも同じことが言えるのだが。
//クレインとティト(とエキドナ)の説得マップは?あそこのマップの説得条件はかなりきつかった。特にティトとオリオンの矢、天空の鞭入手込みだと。
//↑クラリーネのユニットヘルプを『リグレ侯爵家の姫』にしておけば一発で解決したのにな。エキドナはララムってすぐに分かるけどね。元々レジスタンスを助けてって言われてあのマップに来たわけだし。

-ハードブースト
--難易度ハードでは「増援で登場する寝返りキャラ」に対し能力上昇補正がかかり、普通に仲間になるキャラよりも頭一つ抜けた強さになる。これがいわゆる「ハードブースト」と呼ばれる現象である。これにより難易度ハードではキャラの格差が更に広がってしまい、「お気に入りのキャラを育てて攻略する」という本作の王道的な楽しみ方を否定してしまっている。
--なお開発スタッフはこのことを「設定ミス」と言っているため''仕様ではない''。「最初から出現している寝返りキャラ」にハードブーストが適用されないのもこれを裏付けている。
--しかし、救済処置としては優秀だったのか、『烈火の剣』でも引き続き採用されている。あくまで設定ミスであった今作のように「最初から出現している寝返りキャラ」に補正がかからないということも無い(そのかわり補正値は控えめ)。

-クラスのバランス
--ソードマスターと遊牧騎兵が異様に強い。
---ソードマスターは「必殺発生率に常に+30%のボーナスがかかる」という鬼仕様。しかも仲間になる3名のうち2名は難易度ハードではハードブーストがかかり((残り1名は終盤の救済キャラであり、補正が必要ないくらい強い。))、普通にやっても強いのにさらに強くなるバランスブレイカー。なお最終盤で救済役として加わる最後の1人にハードブーストはないが、元々最後の切り札として一軍に起用できる強力な初期値と異常な成長率を持っている。バーサーカーにも前述の必殺率補正とハードブースト(2名)がかかるのだが、使用武器の命中率の関係で、強さがソードマスター程ではないので適度な強さに落ち着いた。
---遊牧騎兵も弓と剣が使える・一部ステータスの限界値はソードマスター並・進入可能地形と移動コストは優秀と、従来のクラスであるスナイパー・パラディンなどが霞む性能となっている。
--下級職の光魔法使いがいないので光魔法が使いにくい

-その他
--主人公のロイは能力値、成長率自体は高いのだが、クラスチェンジが遅すぎるため長いこと足を引っ張る。しかしクラスチェンジと同時に手に入る専用武器「封印の剣」が強すぎ、22章以降はラスボス含め敵をガンガン倒せてしまう。
--終盤で能力強化アイテムが秘密の店で購入できるため、それ以降はバランスが崩壊してしまう。これ自体は最初期からあったのだが、問題は通信闘技場。カンストキャラのぶつかり合いになって面白みの欠ける試合になってしまう。ただ、裏を返せば廃人の様に能力値の伸びに拘る必要が無いというメリットはある。
--闇魔法のエフェクトが無駄に長い

**ストーリー面での批判
-ストーリーの大筋が「『暗黒竜と光の剣』と『聖戦の系譜』をミックスしたもの」となっており、新鮮味に欠ける。また暗黒竜と光の剣にソックリなキャラクターも多い。
--そっくりさんが多いのは作り手としてはファンサービスのつもりだと思われるが、顔と名前を中途半端に入れ替えただけなど従来のオマージュキャラに比べても没個性で手抜き感が漂う。特に暗黒竜はリメイク回数自体が多いためその既視感も大きい。
//--例1:アベル(緑鎧のソシアル)、カイン(赤鎧のソシアル)→ランス(緑鎧のソシアル)、アレン(赤鎧のソシアル)
//--例2:オグマ(顔に傷のある傭兵)→ディーク(全身傷だらけの傭兵)/ナバール(正体不明のキザな傭兵)→ルトガー(復讐に身を振るわせるキザな剣士)
//これらの例では封印の剣に限ったことではない。
-前作までの「美形や王族ばかり活躍する」という評判を気にしたのか、今作ではゲームではほとんど取り上げられない中央アジア系の民族や顔の良くないキャラクターも登場、しかしかえって差別的とも取れるような描写も多く見られ、批判を意識するあまりの迷走といっていいキャラクター設定となってしまっているキャラも。
--ただし育てれば十分一線で活躍できるし、支援会話などキャラ的には十分立っているためそういったキャラのファンも多い。続編の烈火の剣ではそういったキャラの設定(顔グラのタッチの変更や生い立ちなどの設定)が改められていることも。

*総評
 メインスタッフの加賀昭三が途中で抜けた事もあり、ゲームデザイン自体は過去作の範疇を抜け出さない保守的な作風となったが、トラキアで尖りすぎてしまったゲームバランスを方向修正し、大好評を博した支援会話システムや難易度設定搭載など、それまでのFEから脱却しようとしている意欲的な面も見られる。三作に渡るGBAシリーズの土壌を作った点で一つの岐路といえる作品となった。
-SRPGというジャンルの火付け役でありながらハード末期にひっそりと商品展開されるなど、比較的機会に恵まれないFEシリーズであったが、GBAというハードの時流に乗って発売された事や主人公のロイがスマブラに出演した事、事前に漫画版とのコラボレーション展開が用意されるなど、シリーズの中でもとりわけ売り込みに力の入った作品であると言える。

*余談
-旧タイトルは『ファイアーエムブレム 暗闇の巫女』であった。
--これが没作画像である。ちなみにこの少女の台詞は次回作で使われている。
#image(fireemblem1.jpg)
-発売と同時期に漫画『ファイアーエムブレム 覇者の剣』が連載を開始した。ゲーム版をベースとしながらもオリキャラ登場や独自の展開((烈火の剣の設定や武器が取り入れられる、ゼフィールが封印の剣&エッケザックスの二刀流でロイに挑む、等。))を進めた。
--漫画とのコラボの一環として、「アルの剣」「ガントの槍」「ティーナの杖」がゲーム中に登場する。これらの人名は覇者の剣の主役の3人組である。性能的には大したことは無く、序盤戦のお助けアイテムといったところ。
--覇者の剣はなかなか好評であったのだが、予想外にこれ以降FEシリーズの漫画化は無くなった。
--ちなみに作者の山田孝太郎氏は連載を経て凄まじく画力が向上しており、初期と終盤で「これ書いたの本当に同一人物か!?」と思えるほど絵のタッチが変わっている。
-タイトルにもなっているロイの専用武器の読みは「ふういんの''つるぎ''」である。よく間違えられるので注意。というかここでも間違ってたし。
--しかし、続編では「れっかの''けん''」である。紛らわしい。