しらつゆの怪
製品概要
タイトル |
しらつゆの怪 |
ジャンル |
あやかし伝記恋愛アドベンチャー |
対応機種 |
PSP |
定価 |
通常版:6,090円(税抜5,800円)、限定版:8,190円(税抜7,800円) |
発売日 |
2013年8月1日 |
選評
選評1
1000年に1度とも称される今年の酷暑。
それを吹き飛ばすに相応しい、怪談百物語をベースとしたホラー乙女ゲー「しらつゆの怪」。
ダミーヘッドボイスを採用し、プレイヤーに背筋が凍りつくような冷感と年下男子達によるときめきを
与えてくれる新感覚の乙女ゲーム――
と思ってたが、そんな事は全くなかった。
快適なシステム、OP・EDをはじめとした雰囲気のある音楽、多少不自然はあるがきれいな立ち絵とスチル、
豪華な声優の面々。
それらの良要素を全て台無しにしてしまうシナリオが今作には存在した。・・・存在してしまったのである。
まず掴みとして肝心な導入部分が絶望的につまらない。
攻略キャラたちとの出会い→自己紹介→OP→百物語と淡々と進みすぎて、繋ぎの部分があまりにも雑すぎる。
進めていけば雑さがなくなるのかと思えばそんな事はなく、謎は謎のまま伏線は投げっぱなし、意味深な
発言に意味はなく、攻略対象の半数が「正体は察してください」状態。
全ての真相を知っているという隠し攻略対象のシナリオですらも真相が明かされることは無く、あまりの
理解不能さに彼の存在意義すら解らなくなってしまうほどだ。
考えれば考えるほど理解できず、考える事を止めても理解に苦しむという絶望に苛まれる。
また、ライターの日本語力を疑うような低レベルな文章もあちこちにとっ散らかっており、これらも相まって
読み進めていく事が苦痛に感じてしまう。
主人公の視点で進む話では全編一貫して「~なの。」「~だと思うの。」という、どこぞの妖精を髣髴と
させるような口調で進むため、非常に読み辛い。
今作の要である百物語についても、キャラが話している最中に他のキャラが「うぇ~い!」といったノリの
茶々を入れてくる為、恐怖感がごっそり削がれてしまっている。
探索パートでは一応のホラー感を味わう事も可能ではあるが、前述のようにキャラが無駄な茶々を入れてくる。
せっかくのホラーチックな雰囲気が台無しだ。
この一連の流れにデジャヴを感じた人は、是非「家紋、カモン!」と叫んでみて欲しい。
シナリオがご覧の有様なのであるから、当然恋愛面も雑さが否めない内容となっている。
共通ルートは恐ろしいほどに短く、少し行動を共にしただけですぐに個別ルートに入れてしまうお手軽仕様。
これだけであればまだ良かったのだが・・・これだけではなかった。どのキャラクターも、恋愛関係に至るまでの
過程がほぼ皆無なのだ。
肝試しという名のナンパで知り合い、距離が近づくような描写もイベントもなく、「好きかどうかわからない」
とすら言っていたのに・・・。
どんな怪異に苛まれたのか、次の瞬間には両思いになっており、気が付いたらキスまでしている始末。
しかもこのキスシーン、無駄にねちっこく描写されているだけではなく、やたら生々しい吐息やリップ音付き。
エロ要素を嫌うユーザーからしてみればかなりの地雷要素である。
2人はいつ、どこで、どんな過程を経て、お互いのどんなところに惹かれたのか。EDを迎えてもわからず
じまいである。
後日談で明らかになるのかと思いきや、中身はただエロいシチュエーションが描かれているだけのこれまた
お粗末な出来。
この一連の流れにデジャブを感じた人は、純粋可憐な地蔵神子様が見えていることだろう。
シナリオが駄目ならせめてキャラクターだけでも・・・と救いを求めるも空しく。登場人物達も総じて酷い。
主人公と両思いになった途端にイチャつき出すのはもはやテンプレート。
唐突にシスコンを発症したり、お互いにヤンデレ化したり、主人公の血を飲みたがったり。中には特に何も
進展が無いまま深いキスをしてくるキャラまでいる。
最後まで正体がわからず、何がしたかったのかすらも不明な攻略対象たちだが、それでもまだキャラが
立っている分マシな方である。
全体を通して雑さが否めないシナリオの中で、最も雑に扱われている存在こそが今作の主人公である。
本来「人と距離を置きたがる性格」のはずなのに、ちょっと行動を共にしただけでキスするほどにまで心を
許してしまう。距離もへったくれも無い。
「自分はこういう性格なんだ!」と押し付けてくる程の自己中さを見せてきたかと思いきや、終始怯えっぱなしで
攻略対象に頼りきりだったり、
ネガティブな発言を繰り返して陰鬱な空気になったかと思いきや、急に上から目線になったりと、とにかく
ブレまくりである。
第1印象での儚げな雰囲気もどこへやら、物語が終盤に近づくに連れて、彼女が一体どんな性格であるのか
理解できなくなっていく。
この一連の流れにデジャブを感じた人は、もしかしたら記憶喪失になっているのかもしれない。
「頭痛が痛い」と称されるほどの無残なシナリオに、起承転結の“起”“結”以外を消し去ったかのような
恋愛面、悪い意味で個性的過ぎて理解が追いつかない主人公達。
かつて乙女達を戦乱の渦に陥れたかの三本柱を彷彿とさせる今作は、見えない地雷が故に多数の阿鼻叫喚を呼び
「いつものオトメイト」の一言では済ますことが出来ないほどに悲惨な現状となった。
あの伝説のクソゲー「四八(仮)」の乙女ゲー版と言わしめたほどの今作「しらつゆの怪」を、この選評を以って
乙女ゲー的KOTYに推薦。
選評1の補足
主人公の台詞だけを抜粋しても↓
・守りたいけど守られたくないの。
・行きたいけど行かせたくないの。でも行ってほしいの。
・頼られたいけど頼りたくない。
・拒絶されるのが怖いから優しくされるのが怖いの。
・言いたい事がたくさんあるのに、何を言いたいのかわからない!
「頭痛が痛い」レベルの文章は、主人公の台詞内が抜きん出て多かった記憶
あまりにも意味不明すぎるんで、攻略対象からも「お前何言ってんの?」と辛辣なツッコミが入るレベル
文章は、単純な文章を難解かつロマンチックにしようとしてニュアンスの綺麗な表現を構いなしにベタベタ
貼り付けた結果何を言いたいのかわからなくなってしまった感じ。
例えば↓(ちょっと間違いあるかもしれないけど)
彼は三日月形に唇をゆがめ、そして、私をじっと見て笑顔で笑った。目は真っ直ぐ私を捉えて離さない。
まるで太陽を見ているように眩しそうに目を細めて、微笑んだ。
全体的にこんなレベルです。
最終更新:2013年11月24日 23:00