――宵闇に月が輝き、街並みを青白く照らす。
 中東の新興国、アザディスタン王国。その中枢である王宮の一室では、一組の男女の営みが行われていた。

「んっ……あっ……!いけません、刹那。まだ、人が来るかも、知れないのに――ふああっ!」
「……っ。問題ない。行為の最中でも周囲に気は払っている。お前は気にしなくても構わない。」

 必死に声を押し殺して快楽に耐えるのは、長い黒髪の美しい女性。
 対するは、女性を壁に押し付け、無情なまでの快楽を与える鋭い眼光の少年。

「そういう、問題では……んんぅ!」
「そんなに心配なら、素直に快楽に身を任せてしまえば良い。そうすれば結果的に早く終わる。」

 女性の名は、マリナ・イスマイール。少年の名は、刹那・F・セイエイ。
 一方はこの国の王女。もう一方は世界を震わせる武装組織、「ソレスタルビーイング」のガンダムマイスター。
 本来なら、あってはならない組み合わせだ。もし、この事実が世界に露見すれば、瞬く間にこの小さな国は無くなるやも知れない。
 ――だが、それでも尚、二人の互いに対する想いを打ち消す事は敵わない。刹那に向けるマリナの真っ直ぐな愛情も、刹那が生まれて初めて抱いた「どうしようもない気持ち」も。

 マリナの私室兼執務室である部屋の中、二人は交わりの真っ最中だ。
 壁際、立ったままの状態で彼女と繋がった刹那は、その細身からは想像も出来ない程の力強さで腰を打ちつけ、マリナの背中に回した腕はしっかりと彼女を固定し、彼女を快楽から逃がさない。
 端から見れば、マリナは刹那によって背中を壁に押し付けられ、無理矢理犯されている様にも映るだろう。

「あ……んんっ!は…あっ、あっ、あんっ!」

 ――だが、それは間違いだ。刹那が腰を打ち付ける度、マリナは声を必死で押し殺そうとする物の、その唇からは隠し切れない恍惚の喘ぎが漏れ出し、その美貌は快楽に歪む牝のそれになりつつある。
 極め付けに、刹那との結合部からは性交による生理的反応とはとても言い訳出来ない程の量の愛液が溢れ、刹那のモノが往復する度にジュブジュブと淫猥な音を立てているのだから。

「あっ!はっ……んあぁっ!駄目、駄目です、刹那!こんなにされたら、私、おかしく……!」
「う…くっ!……なってしまえば良い。俺しか見ていないのだから。それとも、俺に見られる事すら嫌なのか?」

 言葉にほんの僅かな怒気を滲ませ、刹那はこれまで以上に勢い良くマリナの秘部を突き上げる。
 一度、二度、三度。少年のペニスが突き込まれる度、マリナの膣壁はそれに合わせて蠢き、貪欲に快楽を貪ろうとペニスをキツく締め上げる。
 刹那の動きは彼の問いの代弁だ。即ち、何故恋人である自分にさえ乱れる姿を曝そうとしないのか。
 マリナは少年の強い視線に僅かに息を呑み、しかし絶えず送られる快感に喘ぎを漏らしながらも答える。

「だって……私、きっと、淫らに乱れて……っ!んぅ!そんな、はしたない姿を、見られたら……ふぁぁっ!
 刹那に、嫌われて…あうっ…しまいます……っ!んぅぅっ!」

 息を切らせながら紡ぎ出されたマリナの言葉に、刹那は一瞬全ての動きを止め、しかし、次の瞬間にはペニスを子宮の最奥にまで押し入れる。
 これまでマリナの背中に回されていた腕は、しっかりとマリナの腰を固定し、彼女を抱き留める形となっていた。

「……無用な心配だ。どんなにイヤラしく乱れたとしても、俺がアンタを嫌う事などありえない。」
「あっ……。せ、刹那……。」

少年の静かな、しかし真摯な言葉に、マリナの胸に心地良い暖かさが広がる。
 その暖かさに突き動かされ、マリナは刹那と唇を合わせるために身体を動かそうとし――

「……っ!マリナ、静かに。誰かが来る!」
「あっ!?刹那……?」

 ――刹那の鋭い動きに機先を制される形となり、身体を抱き締められたまま、身動きが取れなくなってしまう。

(……近づいて来るのは一人。足音の軽さからして女。……見回りの侍女か?部屋までの距離は――)

 刹那の研ぎ澄まされた聴覚は、自分達の居る部屋から約30m離れた廊下を歩く足音を捉えていた。
 石の建材特有の反響音を廊下に響かせ、一人の侍女が刹那達の居る執務室の方へ向かって来る。

(見回りなら、この執務室と近接する数部屋を横切り3階へ向かう。だが、マリナに用があるならこの部屋を訪ねてくるか。
 ……どうする?俺が姿を隠し、マリナに着衣を整えさせれば一応体裁を整える事は出来るが……)

 部屋の前を通り過ぎるだけなら構わない。だが、入ってくるなら話は別だ。例え自分がガンダムマイスターでは無かったとしても、
仮にも一国の王女が身分も定かではない男性を自室に連れ込み情事に耽っていたとあっては、体裁が悪いなどという話では収まらない。

「……仕方が無い。一度中断して様子を見るのが「せ、刹那……」……?どうした、マリナ?」

 刹那の言葉を遮り、マリナが呟きを漏らす。何事かと思い視線を向けると、マリナは頬を赤らめ、呼吸を乱していた。額からは汗も滲んでいる。

「――せ、刹那、わた、私、もう、駄目です……っ!」

 何が、と刹那は口にしかけ、気付いた。先ほど、自分はペニスをマリナの子宮の奥深くにまで突き込み、
その体勢のままで彼女を固定してしまっていた。しかも、今までの経験からマリナの絶頂が近い事も感覚で理解できる。

 ――つまり、マリナは今にも達しようとしているのだ。

 刹那の頭の中は一瞬真っ白になり、しかし次の瞬間には猛烈な速度で思考を紡ぎ出す。

(達するという事は嬌声が上がるという事だ。マズい。確実に気付かれる。今すぐ彼女の中からペニスを引き抜くか?
 駄目だ!引き抜く際の刺激が確実にトドメとなってしまう。なら――)

 そう考える間にも、マリナの表情は苦しさと快感の入り混じった物となり、そして、

「あ……ぁっ……私、もう……っ!」

 遂にマリナは限界を超え、刹那のモノを包む膣壁も一気に収縮を始める。

「くっ!仕方ない。マリナっ……!」
「んっ……!?んんぅ!……ふぁっ……ちゅっ……ふむっ……んっ!」

 刹那は一瞬の判断でマリナの唇を自身の唇で塞ぎ、舌を絡め、口内を貪る事で絶頂の悲鳴を自身の口の中で抑えようと動いた。同時に、マリナの後頭部に腕を伸ばし、彼女の頭を固定して離さない。

「は……う……。んっ……ちゅっ……んぅ……」

 舌を絡ませ、唾液を交換し、お互いの吐息を感じ取る。その間にも、侍女の足音はどんどん近くなり、遂に自分達の居る執務室の直前にまで至った。

(……頼む。部屋を確認せずにそのまま通り過ぎてくれ……!)

 かつて、幼い身で戦場を駆けた事で「この世に神など居ない」と確信した刹那ではあったが、今、この瞬間だけは居ないはずの神に祈らずにはいられなかった。
 足音は執務室まで後五歩を残すのみ。後四歩、三歩、そして――

(――――ふぅ。行ったか……。)

 ――足音は部屋の前を通り過ぎ、遠ざかっていく。暫くすると、3階への階段を昇っていく足音へと変わった。
 見回りのルートは記憶している。3階を見回った後は、反対側の階段から別棟へと移動し、こちらへと戻って来る事は無い。

「んっ……ふぅ……。すまない、マリナ。大丈夫か?」
「うっ……ぅ。は、はい。何とか……。でも、疲れました……。」

 そう言った途端、マリナの身体から力が抜ける。刹那は彼女の身体を支え、執務机にまで移動させると、マリナの身体を机に持たれ掛けさせた。

「ふぅ。……よし、引き抜くぞ。少しだけ我慢してくれ。」

 マリナの上半身がしっかりと机の上に載ったのを確認すると、刹那は繋がったままだった自分のモノをゆっくりと彼女の胎内から引き抜いていく。

「あっ……。」

 それを感じ、マリナが切ない吐息を漏らすが、次の瞬間には刹那のペニスは完全に外気の下に晒されていた。
 マリナは机にうつ伏せになって荒い呼吸を続けているが、直ぐに落ち着くだろう。自分はまだ達していないが、今夜はマリナに無理をさせる必要は無い。名残惜しいが、その旨を告げようと刹那は視線を上げようとし――

「はっ……はぁ……。んぅっ……せつ、な?」
「……っ!」

 ――淫靡に濡れる、彼女の秘唇を目にしてしまった。

「マリ……ナ……。」

 窓から月光の差す部屋の中、執務机に身を横たえさせたマリナの身体は美しいラインを描き、長い黒髪は絹の様な光沢を放ちながら彼女の背に広がっている。
 今、彼女は上半身を机の上にうつ伏せに置き、腰を上げてバランスを保っている。刹那の視界には、女性らしい丸みを帯びた尻のラインと、その中央に位置する菊門、さらにその下にある淫裂が飛び込んでいる。
 じっくりと目を凝らせば、彼女のヴァギナはひくひくと蠢き、先程まで刹那のモノが納められていた事を伺わせ、鮮やかなピンク色をした内部を曝け出している。そして、ヴァギナが蠢く度、入り口からは愛液が止め処なく零れ落ち、
その一部は内股を伝って彼女の美しい白い脚を滑り落ちていく。
 その行き先。速やかに性交に移るために引き下ろし、しかし、完全に脱ぎ捨てた訳ではない彼女のズボンや下着が彼女の足首の辺りで止まっており、滴り落ちる愛液でまるで失禁でもしたかの様に濡れていた。

 ――それらの光景は、刹那の理性を狂わせるのに十分過ぎた。

「マリナ、俺は……」
「刹那……。分かります。続きが、したいのでしょう?」

 思わず漏らした呟きに、マリナが頷いて見せる。マリナは、まるで見せ付けるかの様にゆっくりと腰を上げ、刹那の目に白い肌とピンク色の秘部を惜し気もなく晒していく。

「刹那……。見て下さい。私も、まだ、足りないんです……。」

 言葉と共に、秘部へ向かってゆっくりと腕が伸ばされ、入り口に指がかかる。

「見て……。私のここ、こんなにいやらしく蠢いています……。」

 熱に浮かされた様に言葉を紡ぐマリナは、頬を赤らめながらもゆっくりと己の指でヴァギナを開き、刹那に己の内側を見せ付けた。刹那の目には、入り口が広げられた事で先程よりも更にはっきりと彼女の内部が見えている。
 曝された彼女の秘裂からは大量の愛液が零れ出し、最早洪水となっていた。
 立ち上る淫臭に、頭がクラクラする。彼女の哀願の瞳も、切ない吐息も、自分の理性を削り取る凶器となっていた。

 ――ガンダムマイスターは、誰よりも感情を律せねばならない――

 ふいに、頭の中にマイスターとしての不文律がよぎる。それは、戦う者としての刹那の絶対のルールだ。しかし――

(それでも俺は、この感情を止められない)

 羞恥に頬を染めながら、それでも淫靡に自分を誘うマリナが居る。今も、潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。

「刹那……お願い……。私に、貴方を下さい……。」

 最後の一押し。最早、自分の欲求を止める事は適わない。
 刹那は、ゆっくりとマリナに歩み寄ると、その秘部に己のモノを宛がった。彼のペニスは、彼女の中から抜き出した時よりもさらに硬く、大きく膨れ上がっていた。擦れ合った秘部にもその熱は伝わり、マリナは歓喜にその身を震わせた。

「あぁ……。刹那、お願い…します。私を、貴方で満たして……。」
「分かってる。行くぞ、マリナ……!」

 ずぶりと、刹那のペニスがマリナの胎内へと侵入して行く。

「あ、はぁぁぁぁっ!刹那が、入って、来ます……っ!凄い……。いつもより、大きくて、硬い……!」
「くっ……!」

 入り口でこそ僅かな抵抗があった物の、マリナの秘裂は刹那のモノをスムーズに飲み込み、すぐに子宮の奥深くにまで到達した。それだけでマリナの息は上がり、唇からは与えられる快楽に悦びの悲鳴が上がった。

「動くぞ、マリナ。」
「は……い。お願いします。私に、もっと貴方を感じさせて下さい……。」

 マリナの了承の言葉と共に、刹那の腰が動き始める。刹那のペニスがマリナの奥深くに突き込まれる度、お互いの粘膜が擦れ合い、言い様のない快感をもたらす。刹那の動きに合わせてマリナの膣壁は蠕動し、そこから得られる悦楽の波にマリナの唇は淫らな音律を奏で始める。

「ふぁっ……あぁぁっ!気持ち良い……!気持ち良いの、刹那、刹那ぁ!もっと、もっと私を……!」
「はぁっ、はぁっ。くっ……!」

 刹那はきつく唇を噛み、押し寄せる快感に必死で抵抗した。気を抜けば、一瞬で射精してしまいそうだ。
 マリナの膣内は、最早別の生き物の様に刹那のモノに絡みつき、彼から精液を搾り取ろうと収縮を繰り返している。
 それだけでも耐え難い快感だと言うのに、肉壷からは際限無く愛液が溢れ出し、ペニスと膣壁の間に潤滑油として満たされている。そのため、マリナの膣は刹那のモノに吸い付き、キツいくらいに締め上げているというのに、蜜で潤った膣道は前後するペニスの動きが全く遮られない程に柔らかいという矛盾。
 それらは着実に刹那の理性を削り取り、彼を高みへと導いて行く。

「あっ……くっ……!マリナ、そんなに締め付けられたら、俺は……!」
「うっ……あぁっ……。ごめん、なさい……でも、私、もう、自分の意思では、止められません……!」

 加減を求める刹那の声も、最早高まりきった彼女の身体を押し留める事は適わず、マリナの膣はいよいよ刹那のペニスを喰い千切らんばかりに収縮し始めた。
 それを悟り、刹那も耐える事を諦め、逆に更なる快楽を得るために動こうと決意する。
 自分の下、後背位で貫かれるマリナの身体に目を向ける。ヴァギナには刹那のペニスが突き刺さり、腰を前後する度にジュプジュプと淫らな音を奏で、溢れ出した愛液が彼女の太股を伝って零れ落ちている。
 視線を上げれば、一突きする度に長い髪を振り乱し、快感に咽び泣くマリナの顔が目に入った。
 最早声を抑える事も忘れ、愛欲に溺れるマリナの顔は美しく、それが逆に刹那の欲望を加速させる。

「マリナ……っ!」
「ふぁっ……!?せ、刹那、駄目です、そんないきなり……!あぁぁぁぁっ!」

 刹那は一気にマリナの背に覆い被さると腰の動きを早め、マリナの腰を掴んでいた腕は彼女の身体を掻き抱こうと上半身へと移される。そして、彼に突かれる度に大きく揺れていたマリナの豊かな胸に行き着くと、服の上から強く揉みしだき、弄び始めた。

「う……痛っ!あ、駄目です、刹那!そんなに強くされたら……」

 余りにも強く乳房を掴まれたため、マリナが悲鳴を上げる。しかし、刹那は最早止まらず、そのたっぷりとした乳房の感触を愉しみ、服の上から強く乳首を摘み上げる。

「あうっ……!や、止めて下さい、痛い…です、刹那……!あぁ……」
「う……くっ。違うだろう、マリナ?痛いだけじゃ無い筈だ。胸を掴まれた途端、ここがこんなに潤い始めたのだから。」

 マリナの抗議の声に、刹那は薄く笑みを浮かべ、マリナの秘所へと片腕を滑らせていく。

「えっ……!?あ……んんぅぅぅ!!」

 刹那の行為にマリナは驚くが、そんな事はお構いなしに彼女のクリトリスを乱暴に摘む。
 摘まれた瞬間、マリナは悲鳴を上げるが、その秘所からは今まで以上に大量の愛液が溢れ出し始める。

「……胸を掴んだ時も、ここの湿りが強くなっていた。嫌いじゃないんだろう?痛くされる事は。」
「ち、違います……。私、そんな事……。」

 意地悪な刹那の質問に、マリナは羞恥に頬を染めながらも必死に否定する。しかし……

「認めないなら、今度はこうする。」
「あっ!?だ、駄目……!あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 刹那はそれまで片方ずつ攻めていた動きを一度止め、今度は左腕でクリトリスを、右腕で胸を掴んで同時に攻める。
 これにはマリナも堪らず悲鳴を上げ、押し寄せる圧倒的な快楽の波に翻弄され始めた。
 髪を振り乱し、与えられる痛みと快楽に絶えず喘ぎ声を上げるその様は、最早王女では無く一匹の牝のそれだ。
 その姿は攻める刹那をも快楽の奈落に引き込み、最早お互いに絶頂に向かうのみとなる。

「はぁっ!はぁっ!くぅっ!!マリナ、もう、駄目だ……!」
「あっ、あっ、あっ!私、私もです!このまま、一緒に、ひゃぅぅ……!」

 至上の悦楽を貪る刹那の下腹部に、痺れの様な鈍い感覚が拡がり始める。それは、射精の前兆だ。
 刹那はそれを感じ取り、マリナの背中にのしかかる様な形で動きを速め、ラストスパートをかける。
 二人の腰がぶつかる度、部屋の中には肉を打つ高い音と結合部から零れる水音が響く。
 そのリズムが刻まれる度、二人の快楽のボルテージは際限無く高まり、思考を白く染め上げて行く。

「マリナ……っ!俺は、もう……!」
「んっ、ふぅ、あぅぅ……!良い、です。出して、出して下さい!刹那、私の膣内に、いっぱい……あ…アアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 悲鳴の様な嬌声と共に、マリナの膣壁が一気に狭まる。絶頂に達したのだ。それと同時に、彼女の胎内を掻き回すペニスも限界まで締め付けられ、刹那も遂に終わりを迎える。

「くっ……!出る…………!」

 刹那の脊髄を電撃の様な刺激が駆け抜け、睾丸がきゅっと収縮する。精管を精液が駆け上り、尿道を通り抜け、鈴口の先からマグマの様に白濁した液体が大量に吐き出された。

「あ……あぁ……!出て、ます。刹那の熱いのが、私のお腹の中、いっぱいに……嬉しい、です……。」

 マリナの膣内に吐き出された白濁液は、膣壁を白く染めながら胎内を駆け抜け、子宮に叩き付けられる。
 それでも刹那のモノは精液を吐き出すのを止めず、二度、三度と震える度に新たな液体をマリナの子宮へと送る。
 その感覚にマリナは悦楽に打ち震え、絶頂の余韻と共にその感覚を心行くまで味わった。

「あ……はぁ。凄かったです、刹那……。私、頭の中が真っ白になって……」
「……ふぅ。俺も、同じ様な物だ、マリナ。……んっ。」
「あっ……刹那……。んっ……ちゅっ、はむっ、んぅっ……」

 未だに身体に残る快楽の残滓を感じながら、二人は静かに唇を重ね、舌を絡め合った。
 恋人同士の情熱的な口付け。若さと青さと愛情が交じり合ったそれを合図に、今宵の宴は終わりを告げた――――。


 ――1時間後。二人は性交の後始末を終え、交代でシャワーを浴び、身支度を整えていた。

「あぁ……。やっぱり、大きな染みになってしまってます。何とか、見られない内に洗って置かないといけませんね……。」

 彼女の私室の中、寝巻きに着替えたマリナは、ベッドの前に立って先程まで着ていた服を改めていた。
 性交の際、愛液が大量に付着したズボンと下着はグショグショになっており、大きな染みを作ってしまっていた。

「む……。済まない、少し調子に乗り過ぎた。」

 来客用のソファに座った刹那が、罰が悪そうに視線を背ける。そもそも、人目を避けてマリナの部屋を訪れた途端、時間を惜しんで碌に服も脱がせずに性交に及んだのは刹那の仕業である。

「もう……。そう思うならちゃんと服くらい脱がせて下さい。侍女の目を盗んで洗濯するのも、結構大変なんですよ?」

 マリナはそう言って咎める様に注意するが、目は笑っていた。彼女とて、刹那のそう言った青さが嫌いな訳では無い。
 むしろ、普段は戦士として振る舞い、年相応の楽しみすらほとんど知らない彼が、
そうやって自分にだけは少年としての顔を見せてくれるのが嬉しいのだ。

「悪かった……。でも、マリナだって随分愉しんでいたじゃないか。あんな風に乱れるとは、正直予想外だった。」
「う……。あ、あれは……。」

 刹那のちょっとした反撃に、今度はマリナが押し黙る。
 彼の言う通り、途中からマリナも完全に快楽に飲み込まれ、後先の事など考えなくなってしまっていた。
 そもそも、途中で乱暴にされてしまった時でさえ、逆に歓喜に震えてしまっていたのは誰だったか。

「……っ!そ、そもそも、刹那は強引過ぎなんです。私の方が年上なのですし、もう少しリードさせてくれても……」

 ゴニョゴニョと、最後の方には声が消え入りそうになりつつも、マリナはお姉さんぶって抗議の声を上げる。
 それを見て、刹那は微かに口元を歪めて笑う。

「年上……か。時々、本当にそうなのか分からなくなる時があるな。アンタは、思った以上に危なっかしい。」

 そう言って意地悪く笑う刹那の姿に、マリナは不満げに眉を潜め、取って置きの「切り札」で反撃に移る。

「……そんな事を言われるのは心外です。少なくとも、背格好では私の方がどう見ても年上ですし。」
「なっ……!し、身長は関係ないだろう!?」

 露骨に胸を張って言うマリナに、刹那は顔色を変えて抗議する。マリナは内心「かかった」と忍び笑いを漏らした。
 ――確かに、167cmと女性にしては長身のマリナと比べても、彼女に対して10cm以上背丈で劣る刹那は年以上に幼く見える。
 しかし、本人の言う通り年齢の話で背丈を持ち出しても特に関係はなく、つまりは一々反応している辺り、刹那も年相応の少年だと言う事だ。――最も、そんな事を気にするのも相手がマリナだからというのが主な理由であるのだが。

「……ふふっ。そう思うなら、もっと頑張って背を伸ばして下さいね?私、気長に待っていますから。」
「……くそっ。見てろ、すぐに追い越してやる。」

 そう言って、刹那はぷいと顔を背ける。その仕草がたまらなく可愛いと感じ、
マリナは知らず知らずの内に彼に近づき、その身体を抱き締めていた。

「……ん。マリナ……。」
「……さっきも言いましたけど、たまには私にもさせて下さいね?私、刹那のためならどんな恥ずかしい事だって出来るんですから……。」

 マリナは頬を赤らめてそう言い、連られて刹那も気恥ずかしそうに視線を逸らした。
 二人の間に流れる静かな、しかし、心地良い沈黙。それを破ったのは、立ち上がる刹那の動きだった。

「……そろそろ行く。近い内に次のミッションが始まる。……また、しばらくお別れだ。」
「刹那……。」

 そう言う刹那は、それまでの少年としての顔から、一騎当千の戦士としての貌へと己の感情を切り替える。
 ――こうやって、二人が愛し合っている間にも、世界の何処かで争いは起こっている。それに武力介入し、圧倒的な力で持って相争う者達をねじ伏せ、戦争を根絶するのがソレスタルビーイングのやり方だ。
 ――そんな矛盾した、余りにも危うい彼らの行為に、マリナは常々不安を覚える。
 こうやって、その一員である刹那を愛してしまった今でもそうだ。心の底では、もう彼に戦いから手を引いて欲しいと思う。
 ごく普通の少年として、自分の傍に居て欲しいと。だが、それは叶わぬ願いだ。
 彼は、ソレスタルビーイングの力の象徴、ガンダムマイスターなのだから。
 彼はその手に剣を執り、戦いの真っ只中に飛び込んで行く事を己の使命と課している。
 その信念は、例えマリナの言葉でも曲げる事は出来ないのだから。
 ――だから、せめて自分の前でだけは普通の少年で居られる様に、祈りを込めて彼を送り出す。

「どうか、ご無事で……。きっと、私の前に帰ってきて下さいね?貴方が居なくなったら、私……。」

 揺れる感情に耐え切れずに俯くマリナ。刹那も押し黙る。

「……マリナ。」
「あ……。」

 ――だが、次の瞬間、刹那は彼女を抱き寄せその腕に力を込めた。

「……大丈夫だ。俺は死なない。きっと、お前の前に戻ってくるから。だから、待っていろ。」
「刹、那……。はい……待っています。私自身が、貴方の帰る場所で居られる様に……。」

 背に回された刹那の腕。その暖かさを感じながら、マリナは瞳を閉じる。
 それに応じ、刹那も己の唇を近づけ、彼女の唇を奪う。
 それは、触れるだけのキスではあったが、確かに二人の絆を結ぶ物であった。


 ――そして、少年は新たな戦いへと身を投じる。己の帰るべき場所を、その胸に秘めて――――。
                                             Fin
最終更新:2008年01月10日 19:19