私設武装組織ソレスタルビーイングの戦闘母艦「プトレマイオス」
戦争根絶を目的とし、全世界を敵に回した彼らガンダムマイスターにとって、この母なる船だけが心安らげる場所といえるのかもしれない。
特に、自らの行為を正しいと信じながらも、人を殺すことに抵抗を覚える心優しきガンダムマイスターにとっては――
「――以上だ。アレルヤ、お前がソレスタルビーイングのガンダムマイスターでありたいと思うのなら、大人しく反省していろ」
監獄にしては上等かな――アレルヤ・ハプティズムは与えられた部屋を見回して、のんきにそんなことを思った。
自分のした好意が悪いことだとはアレルヤは考えていなかったが、こうして反省を申し付けられる理由は理解できた。
予定にない行動を取り。
予定されていない場面でガンダムを衆目に晒した。
それに加え、デュナメスの大気圏内から軌道上を狙い打てるロングレンジライフルを使わせてしまった。
全世界を敵に回し、行動一つが命取りになりかねない――それがソレスタルビーイング、アレルヤが属する組織だ。
一人の勝手な行動が全てを無為にしてしまう可能性だってある。
だから自らが罰を受けなければならない理由は理解していたし。人手が最低限しかない組織だからこそ罰が軽く済んだことも理解していた。
だがアレルヤは自らの行為に少しばかりの誇りを感じていた。
たとえ数百でも人を助けることができた。殺人者の自分が、だ。
「……ティエリア」
故に、アレルヤは訊いてみたくなった。アレルヤ同様ガンダムマイスターである白石の美貌をもつティエリア・アーデに
「なんだ」
「もし、貴方が私と同じ状況に置かれていたら。どうしていました」
その言葉に、眼鏡の奥の瞳がすうっと細められた。
「そんなことは関係ない」
ティエリアはそうとだけ答えると、扉を閉め、立ち去った。
アレルヤは少しだけ残念そうに柳眉をひそめ、申し訳程度に設置されたベッドに横たわった。
精神の疲れは、容易くアレルヤを眠りに落とした。
正しいことと、間違っていること、その差はひどく難しい。
自分たちの行いが完全に正しいとはスメラギ・李・ノリエガは思っていなかった。
自分たちがやろうとしていることには、数多の犠牲が生み出される。理はあっても正義はない。
世界を平和にするために人を殺す、その矛盾を解決できるのは神しかいない。
神ならば犠牲を生まず世界平和を作り上げられるだろう。
しかし神ならぬ自分たちは犠牲の上に平和を作る道を選ぶことしか出来ない。
それは仕方ないことだ、飲み込まなければならない事実。
だからこそ、人の命を救おうとしただけの彼を罰することに、スメラギは後悔を感じていた。
組織としては、そうすることが正しいのは分かっている。だがスメラギ個人としては、彼のことを褒めてやりたかった。よくやったわね、と。
けれど、立場が、組織としての理念がそうすることを赦してくれない。
――そんなことを考えて酒を飲んでいたせいか、悪酔いしているみたいだと分かっていたが、どうにもならなかった。
どこへ向かっているのか、酒瓶片手にふらふらとスメラギは歩き回り。ある部屋の前で立ち止まると、キーロックを外し、入った。
扉が開くと自動的に室内の明かりは灯り、彼のことを直ぐに見つけることができた。
彼は猫のように丸くなってベッドの上で寝ていた。
その傍に立ってみて、意外と寝顔がかわいいなどと思ったのがそもそもの間違いかもしれない。
穏かな表情で眠るアレルヤ。
今なら少しくらい触れても分からないだろう。
人を救ったアレルヤにごほうびをあげたかった。
スメラギはアレルヤの前髪をそっと横にどけると、その額にキスをした。
口に出して褒めてやることはできなくとも、自己満足かもしれないが、褒めてやることはできる。
スメラギは満足そうに微笑むと立ち去ろうとしたが、腕を掴まれ、引きとめられた。
「――え?」
「丁度いい。退屈だったところだ」
よく知った――けれど聞いたことがないような惨酷さを孕んだ声。
振り返ると、アレルヤが身体を起こしてスメラギを見ていた。
その顔には、いつもならしないような引きつった笑みが貼り付けられていた。
獲物を前にして、舌なめずりをしたいのを笑みというなの仮面で隠しているような表情。
「付き合え」
アレルヤはスメラギの身体を強引に引き寄せると、有無を言わさず抱きしめた。
「――っ。……んぅ……く」
突然のことにスメラギが驚いていると、更に唇を奪われ、冷静な思考が働かなくなった。
肉食獣が捕食する時のような強引さでアレルヤはスメラギの唇を味わう。
優しく快楽へ導いてくれるような甘いものではなく、一方的に、あくまで強引な攻め。
痛みすら感じるほどだったが。
激しく唇を吸われ、逃げることも抵抗することもできないほど強く抱きしめてくる。
アレルヤのその行為は、乱暴というより子供っぽさが強く見えて、なによりそうまで自分の身体を求められて悦びを感じてしまっていた。
「……ぅ……アレル、ヤ。もうすこし……やさしくぅ――っ」
その要望を聞いたわけではないのだろうが、アレルヤはスメラギの身体を突き飛ばすと、唇を舐め、笑った。
「抵抗しないんだな」
見下ろす視線はアレルヤのそれではなかった。
自分に対して敬意を払ってくれているアレルヤが、こんな表情をするなど――そもそもアレルヤという青年がここまで怖い表情のできるものだとは思わなかった。
スメラギは腕で唇を拭い、
「腕力で勝てるとは思わないもの。それにキス一つで騒ぐほど若くはないもの」
寝る前だからって化粧をしていない自分に気付いた。
アレルヤはつまらなそうに鼻を鳴らし、言った。
「ならどうしたらいいか分かってるな? 抵抗したらどうなるかも」
「貴方がそんなことを言い出す人だとは思わなかったわ」
アレルヤは表情を歪めると、スメラギの腹に蹴りをいれると、そのままスメラギを殺しそうな目つきで睨み、しかし口元だけ引きつらせて笑ってみせた。
「いいからさっさとしろっ。人が来て困るのはアレルヤだけじゃないだろ。いいから脱げよ、淫売ッ!」
まるで人が変わったようだ。いや、もしかしたら知らなかっただけで、この狂暴なアレルヤこそが本当のアレルヤなのかもしれない。
スメラギは酔いもどこかへ消え、どうにかこの状況を打破しようと考えたが、ここは大人しく従うほかないように思えた。
銃を持ち出さない限り、この船の乗員でアレルヤに腕力で敵いそうな人間はいない。
第一助けを求めようにも、自分がこの部屋にいる理由の説明が面倒だ。
まさか酔っ払ったきまぐれで――とはいえない。そんなことを言って失われる信用は決して取り戻せない。
「なにぼーっとしてるんだよっ、早くしないとアレルヤが来るんだよ! いいからとっとと脱げよ」
「分かったわ。分かったから大きな声を出さないで、怖いわ」
アレルヤが唐突に凶暴化した理由は分からない。少なくともこの独房に入れられるまでアレルヤは落ち着いていたし、冷静に受け止めていた。
この唐突な狂暴化については後々考えるとして、取り合えずアレルヤが興奮していることに変わりない。
今自分が出来ることは、興奮しきった彼を落ち着かせることだ。
スメラギはアレルヤに背を向けて上着とインナーを脱いだ。
好意は持っているが、恋愛感情をもっているわけでもない男を前に、脱いでいるという背徳感が、スメラギの心臓はまるで少女のように高鳴っていた。
スメラギは裸身をアレルヤに晒すことを躊躇い、首だけで振り返ると。
「下も?」
「当然だろっ」切れたアレルヤの罵声が飛ぶ。
「……確認よ。そんな怒らないで」
今にも襲いかかられそうだ。
まごまごしていると剥ぎ取られそうで、スメラギは手早く下も脱いだ。今日に限ってなんでこんな地味な下着を選んでしまったんだろう。
脱ぐと次の指示を聞くため、アレルヤに自らの熟れた肉体をみせるため、振り返ろうとしたが。
それよりも早く、背中に衝撃を感じた。
「きゃっ――!?」
アレルヤがスメラギを突き飛ばしたのだ。
アレルヤは床に倒れたスメラギの上に覆いかぶさると、鍛え上げられた腕力で強引にスメラギの腰を突き出せるような体勢を取らせた。
「ちょっと、なにするのよ」
体勢のせいでスメラギの女の部分は丸見えになってしまった。
起き上がろうにも隠そうにも、アレルヤは片手でスメラギの抵抗を全て制し、口端を釣り上げて笑った。
「ク、ハハ。綺麗なもんだな、まさか処女だとでも言う気か? あんたの年だったらイタいだけだぜ、スメラギさん」
アレルヤの哄笑にスメラギは身体が熱くなるのを感じた。
年下の、いつもは優しい子に辱められる――状況が状況だけに、幾つもの感情が混ざり、もっともシンプルな感情が優先され出た――恥ずかしい、と。
スメラギはアレルヤにイニシアチブを持っていかれている状況をなんとかしようと
「そんなわけない」
悲鳴のような口調でアレルヤの言葉を否定した。
するとアレルヤは「ふうん」と詰まらなさそうに口をすぼめ。それも一瞬、下卑た笑いを浮かべた。
アレルヤは自らの太く逞しい中指を咥えると、涎で濡らして遊んだ。
「ならさ」
その指をアレルヤは、スメラギの茂みに覆われた色の濃い淫唇に爪の先半分ほどまで埋め込んだ。
「――ひっ」
「教えてくれよ。今まで何人、咥え込んだんだ? この汚いものでさ。言えよ」
アレルヤは差し込んだだけで動かしもしなかったが、普段そこに何かが入っているということのない場所に、差し込まれた異物。
スメラギの身体はソレを抜こうと身体をしならせたが、上半身は床に押し付けられ、自由になるのは所詮腰だけ。
動かせば動かした分だけ違和感は増し、スメラギの女の部分を疼かせる。
それはこの状況を愉しんでいるからではなく、身体の正常な反応だと分かっていたが。
それでも、実際女の部分が反応してしまっていることに、羞恥心が騒いだ。
スメラギはそれを振り切るように、まだ自分は冷静だと言うように言葉を放つ。冷静で温和な声で――ではなく、上擦った悲鳴。
「そんなこと言う理由がないわ」
「ただの興味さ。あんたがどんな女か興味を持った、少し年はいってるが、あんたは充分魅力的だよスメラギさん。俺はもう少し若い方がいいが、アレルヤが興味あるっていうんでね」
「な……それは、どういう意味よ」
アレルヤは僅かに肩を竦めた。
「さあね」一度そうはぐらかしながらも「まあ、好意をもっているには違いないさ」
引いたはずのアルコールに火が付いて体が燃えるようだった。
こんな状況で、レイプ紛いのことをしようとしているくせに、唐突に告白して。いったいなにがしたいんだろう。
「――で、何人だよ? 五人? 六人? それとも二桁か?」
アレルヤがあげる数に、スメラギは顔を赤くした。
彼の中で私はどれだけ淫乱だと思われているんだろう――と。
だから、真実の人数がいいづらかった。
「…………」
「え? なんだって?」
スメラギはすうっと息を吸うと、吸った息に対して少ない息で答えた。
「……二人よ」
「ふたり?」アレルヤは思わず聞き返した。
「そう、二人。悪い? 回数なんか聞かれても数えてないから覚えていないからね」
スメラギの言葉はしかしアレルヤに届いていなかった。
アレルヤは楽しげに何度も頷くと、
「そうか、同じだ」
「……同じ?」
アレルヤは子供のような表情で答えた。
「ああ、キュリオスのナンバーと同じだ。ナンバー3」
自分がスメラギの三番目だということと、キュリオスの形式番号が一緒だということを喜んでいるんだと気付くのに、僅かに時間がかかり。
そして分かると、更に分からなくなった。
アレルヤ・ハプティズムという男のことが。
スメラギがその冴えた脳髄でアレルヤのことを分析しようとした矢先、食い込んだままのアレルヤの指が、スメラギの膣深く潜行し動き始めた。
唐突な行為に悲鳴すらあげられないでいると、それをいいことにアレルヤの指はスメラギの肉壷をマッサージし始めた。
先ほどのキスとは違い、まだ相手のことを考えた動き。
それでも最近していなかったスメラギには辛い激しさで、アレルヤはスメラギを攻めた。
「……んっ……ちょ、もう少し、やさしく……おねが…あっ………」
だがアレルヤは全く聞いていなかった。それどころか指の動きを早め強くし、攻めを激しくした。
濡れておらず、自らの唾液以外の潤滑液もなく、きつい肉壷をものともせずアレルヤの指は動き回る。
その動きを最初は優しいと考えたが、違った。
動かし始めた当初は動かし難いからじっくりやっていたというだけで、少しほぐれて動かしやすくなってくるとアレルヤの指は、キスの時同様身勝手で強引な動きをし始めた。
指が動くたび、爪が肉襞を削るようで。それも強い力でもってしてやられるものだから、気持ちよさなど全くなく、ただ痛みだけがスメラギを震わせた。
抵抗しようとして身体を動かそうとするたび、乳房が床に擦れて痛かった。押さえつけてくる力が強くて息が苦しい。
「っ……はっぅ……いた……やめなさい……アレルヤァッ……やめてっ――」
痛いだけなのに。
強引にされているだけなのに。
身体が熱を帯びていく、残っていたアルコールが脳を痺れさせ、言う気のない言葉をスメラギの口から吐かせた。
「……ゥあ、あ……気持ちいい」
ぽろっと漏れた言葉。漏れてしまった言葉。
言ってスメラギは自分の中で痛みが、痛くされていることが、段々と快楽になってきていることに気がついた。
被虐され、そうされていることに悦びを感じてしまっていた。
アレルヤは両腕を使うために、スメラギのことを足で踏みつけていたが、そうされることに文句をいうつもりもなかった。
アレルヤの足の感触が、踏みつけてくるその痛みが気持ちよくて。
踏みつけられているという事実がさらに興奮させてくれた。
アレルヤは細い笑い声をあげた。
スメラギは自身の中の被虐嗜好に気付かれてしまったのではないかと不安になったのだが、そうではなかった。
強烈な痛みがスメラギの下腹部を貫いた。
「ヒッ――――!!?」
なにをされたのか直ぐに理解できなかった。
アレルヤは引きつった笑いで、もがくスメラギを見下ろしながら言った。
「勃起してるぜ、あんたのクリトリス」
それはこんなに痛くされたら当然の反応だろうとスメラギは言いたかったが、アレルヤは赦してくれなかった。
アレルヤの指先は片方でスメラギの淫核を抓み潰し擦り上げ。
「しかも、こんなによだれ垂らしてさ。よっぽど好きなんだな、こうされるのがさ」
もう片方の手は先ほどまで以上に勢いを増し、水音をたてて動いていた。
その水音がまるでスメラギの淫乱の証明のようで、スメラギの身体は更に燃え上がった。
自分はソレスタルビーイングの一員で、皆から――アレルヤから尊敬されるような立場にいたはずなのだ。
ほんの数時間前までは。
なのに今は、あの純粋で優しい目を向けてくれていたガンダムマイスターに辱められている。
それもその手際に、行為に悦びを感じてしまっていた――そのことがスメラギの羞恥心に、嗜好に火を点ける。
だから下腹部からアレルヤの手が離れると、思わず「あっ」と言っていた。
恥ずかしさでスメラギが床に顔を押し付け、隠れた。
わずか、ほんの数秒攻め手が収まり――直ぐに再開。
アレルヤはもうスメラギの身体を押さえつけることなく、スメラギの背後に回ると、たっぷりとした尻肉を掴むと、親指で両側から唇を開くと。雄雄しくそそりかえった陰茎をあてがい、そのまま挿入した。
「そんな、いきなっ――!」
アレルヤの肉棒はスメラギが体験した男の誰よりも太く、膣がはちきれるのではないかと思うほど雄雄しかった。
だがその分、アレルヤも入れにくいようで手こずっていた。
そのぎこちなさでスメラギはもしかしたらと思った。
アレルヤは今日初めて女を抱いたのではないか? ――と。
それなら強引さもなにも納得できるような気がした。
そうしてようやくアレルヤの猛った肉棒の先端が、スメラギの蜜壷いっぱいに納まり、さあ動くかというところで――
「うっ」
アレルヤが短い呻きをあげた。
「やめろ、まだだ……ちぃっ。うぁっ! あっ――」
アレルヤはそう叫んだかと思うと、ぐったりと倒れてしまった。
ずるりと肉棒も抜けてしまい。
スメラギは身体を起こすと仰向けになったアレルヤを見て、困惑した。
「な、なに……?」
アレルヤは小刻みに震えていた。
スメラギは不安になって、アレルヤに呼びかけようと覆いかぶさるような体勢をしたその瞬間。
「……定時点検です。なにかもんだ――っ!?」
扉が開き、フェルトが現れた。
フェルトは室内の様子を見て、言葉を失った。
スメラギはなんとかうまい言い訳をしようとして――
(全裸の自分+大事な部分丸出しのアレルヤ)×重なる身体=誤解を生む要素満点。
――というか、誤解を生む要素しかない。
ぽんと瞬間湯沸しのようにフェルトの顔が真っ赤になった。
「す、すすすすすすつれいしましたぁっ!」
フェルトは叫び声をあげて、扉を閉めると走り去ってしまった。
「ちょっ――」
スメラギは呼び止めようとしたが、この姿で飛び出ることを考え躊躇った。
それに口の堅いフェルトのことだ、他言はしないだろう。あとで言い聞かせればいいはずだ。
だからスメラギが今すべきことは――――後始末。
「……ってもなあ」
――夢を、夢をみていました。
激しく、雄雄しく、荒々しい夢を――
目を覚ますと、たまに違う場所にいることがある。
夢遊病を患っているのだろうかと不安になったこともあったが、今日のそれはそんな言葉では説明できそうになかった。
「え?」
「ちゅぷ、くちゅ、はむ……ぅんっ……ふぐ……あら? 起きたの?」
目を覚ますと髪の分け方が違っていることもよくあるが、このパターンは初めてだった。
スメラギさんが、アレルヤの陰茎を胸で挟み、その先端を舌で舐めていたのだ。
それもスメラギさんの髪や顔には白濁した液体が飛び散り。
アレルヤ自身、着ていたはずの衣服を一枚も着ていなかった。
「ねえ、アレルヤ。舐めてるだけも飽きたから――」
「なんでスメラギさん裸なんですか。なんで僕裸なんですか。なんでそんなことしているんですか!」
「――え?」
アレルヤは鍛え上げられた肉体の能力を完全に発揮し、俊敏な動きでベッドに登ると、シーツを掴み身体に巻きつけた。
スメラギを見る目は完全に痴女へのそれだった。
「なに? どういうこと?」
スメラギはここまでの経緯をアレルヤに懇切丁寧に聞かせると、アレルヤは首を横に振った。
「知りません、そんなこと」
「実際。された本人が言ってるのよ、された私が。それでも信じられない?」
アレルヤは頷き。
「ですが。こういってはなんですが、一線を越えずに済んでよかったのではないでしょうか。その……男女の関係になっていたら、ミッションに影響が出ていたかもしれません」
そう安心したような顔でいうアレルヤを見て、スメラギはひくっと顔を強張らせた。
レイプ紛いのことをされて、ようやくこっちの気分が乗って来たところだというのに、アレルヤは何故か人が変わったようになってしまった。
だが、だからといって
「……納得できないわ」
「スメラギさん?」
スメラギはつかつかとアレルヤに歩み寄る。
無防備に晒された裸身は神々しいまでに美しいとアレルヤは一瞬思ってしまった。
それも束の間、スメラギは無重力、重さがないことを利用してアレルヤが引き篭もるシーツの裾を掴むと、強引に引っ張り、アレルヤごと投げた。
「うわっ」
突然のことに姿勢制御もままならないアレルヤを、スメラギは更に追撃。
アレルヤの首を掴むと、天井に叩きつけた。
アレルヤが目を白黒させ、隙が生まれた瞬間、スメラギはアレルヤの唇に自らの唇を重ねた。
驚き戸惑うアレルヤにスメラギは、教えるように丁寧なキス。
唇を重ね、舐め、甘噛みする。強引さも力強さもないが、優しさの篭められた温かな愛撫に、アレルヤも次第に心を許してしまっていた。
アレルヤの身体から余計な力が抜けるまで、スメラギは優しくアレルヤの唇に触れ、その頭をゆっくりと撫でた。
裸と裸、体温が伝播するように、アレルヤはなんとか落ち着きを取り戻したが。
「スメラギさん、やはり分かりません。貴方とこうしている理由が」
その表情からしてアレルヤは本当に分からないようだった。
だがそんなこと、もうどうでも良かった。
「これは罰よ」
スメラギは優しく語りかけた。
「ばつ?」
「そう」
アレルヤの耳を噛むと、アレルヤはくすぐったそうに身をよじった。
「これは罰よ。独断行動をした、重たい罰。私を満足させること、それが貴方に課せられた罰よ。アレルヤ」
理由なんてなんでもよかった。
今はただ二つで一つになりたい、その気持ちだけがスメラギの至高の脳髄を働かせていた。
――スメラギ・李・ノリエガの予報は当たる。
アレルヤは小さく、少年のように頷くと。
「分かりました。それでなにをしたらいいのでしょう」
アレルヤは照れたような表情で頬を掻き
「こうしたことをするのは初めてなんですよ」
そう言った。
スメラギはやはりアレルヤは変わったと思った。
先ほどまでの激しいアレルヤと、この優しいアレルヤは別人。だから先ほどのような激しい攻めは期待できない。
ならば、と。スメラギは決めた。
アレルヤに手ほどきしてやる必要がある。
このアレルヤと先ほどまでのアレルヤが別人だとして、肉体に教えてやればいいのだ。
女性をどう扱えばいいのか。
「いいわよ。教えてあげる。でも」とクスリ、スメラギは笑った。「もう私も疲れてるから、今日は挿入の仕方だけよ」
「は、あ、はい」
スメラギはにっこり微笑むと、アレルヤの陰茎に手を伸ばし、その変化に気がついた。
放置していたせいで、アレルヤの陰茎は少し硬さを失っていた。
これでも入れることはできそうだったが、もし手間取ったらこのアレルヤは落ち込みそうだ。とかそんなことを考えていると、スメラギの手の中でアレルヤの陰茎は再び硬さを取り戻しはじめた。
「な、なに?」
驚いて掴んだアレルヤの陰茎を見ると、アレルヤが言った。
「……すみません。掴まれていると、どうしても……」
申し訳無さそうにアレルヤが言って、スメラギは理解した。
こっちのアレルヤはうぶなのだ。
あっちのアレルヤは衝動剥き出しだが、こっちのアレルヤは男の子そのもの。
その差が可笑しくて、スメラギは笑いそうになってしまったが、なんとか堪えた。
「いえ、いいのよ。健康な証拠だもの。――じゃあ、しましょっか」
スメラギはそう言うと、アレルヤの肉棒を自身の膣に誘い、ゆっくりと腰を下ろして密着した。
「……あんっ」
短い悲鳴を洩らすスメラギ。
だが悲鳴をあげたいのはアレルヤも同様だった。
すんなりとスメラギは受け入れてくれたが、その膣の締め付けはアレルヤにきつすぎた。
それをアレルヤは自分のものが大きいのだとは考えず、スメラギが気持ちいいようにそうしてくれているのだと思い、悲鳴を上げることはしなかった。
スメラギの女性器は温かく、充分に湿っていて入れた瞬間心地いいと感じてしまうほどだった。
「動かすわよ」
「……はい」
スメラギはゆっくりと腰を上下してくれたが、その快楽は激しかった。
毛先の細かいブラシで撫でられているような、それも吸い付いてくるブラシだ。敏感になった逸物には辛い試練だ。
アレルヤはこれでは直ぐにだしてしまうのではと不安になった。
そんなことをしたら男として情けないということは分かったし、それに
「スメラギさん、あの……」
「んっ……はっ、う……どうしたの?」
アレルヤはそれを口にするのも恥ずかしいといった様子で言った。
「コンドームはしなくてもいいんでしょうか」
アレルヤの素朴な疑問――避妊。
だがスメラギは微笑んで言った。
「はじめてなんでしょう? なら、いいわよ。中で射精しても」
「ですが――」
更に何か言おうとしたアレルヤの口をスメラギは自らの唇で塞いだ。
アレルヤが言葉を飲み込むと、唇を離し、ゼロ距離で言葉を続ける。
「男ならぐずぐず言わないの。それにそれがソレスタルビーイングであり、ガンダムマイスターよ」
「……え?」
「一度決めたら迷わない。こうと決めたら貫き通す。そうでしょ? アレルヤ・ハプティズム」
アレルヤはそれでも逡巡し、けれど最終的には自らの下腹部で滾るそれの意志に従った。
スメラギの腰を掴むと、その女性の肌の柔らかさに驚き。これを蹂躙したいと思った。
「アレルヤ・ハプティズム、介入行動に移ります」
その言葉の後にはアレルヤには迷いはなかった。
ただ自らの力に任せスメラギの腰に自らの腰を打ちつけるようにして腰を振った。
動かすたび淫らな音がして。動かすたび快楽がアレルヤの身体を爆撃した。
動かすのも辛いくらい陰茎は鋭敏化していたが、不思議と射精感は来なかった。アレルヤには言っていなかったが、スメラギはアレルヤが気絶している間に、手淫と胸淫で二度ほど射精させていたのだ。
それでも衰えないアレルヤのをフェラチオしている時に、ようやくアレルヤは目覚めたのだ。
射精感が来ないのも当然だった。
だが、待ち望んだアレルヤの挿入に歓喜したようにスメラギの肉壷はアレルヤを締め付け、抱きつき、吸い付き、愛撫した。
まるでそこが独立意思を持っているかのような動きに、アレルヤの陰茎は再び高められていく。
疲れても若さがアレルヤの身体にはある。
天井から離れゆっくりと宙を舞いながら、二人は互いの身体を求め合った。
技巧もなくただひたすら思いを伝えるように、互いの名を呼び合いながら。。
「アレルヤ辛い?」
「いえ、全然です」
アレルヤはきっぱりといって、スメラギの乳房を掴んだ。
弾力もある、はりもある、しかしなによりやわらかい。
手に馴染むような感触、動かすたび変形する乳房、母性の象徴。強く揉むとスメラギの顔が一層美しくなることをアレルヤは知った。
「んっ、そんな、おっぱいいじめたらだめよ……」
だがアレルヤはかまわず乳房をもみしだき、その感触を味わった。
ずっと触れていたい、これは自分のものだと独占したくなる。アレルヤがそんなことを洩らすと、スメラギは笑った。
「いいわ……っ……これからは、罰じゃなくても、ぅん、いっぱいしましょう」
それは戦いの果てに自分たちがいなくなることを理解したうえでの言葉だった。
ソレスタルビーイング、全世界に喧嘩を売ったものたち。
彼らが彼らの悲願を達するときに彼らは終わる。
それが全世界の敵にならんとするものたちの覚悟だ。
だから、
「……ええ」
今日この日を、互いという存在を焼き付けあうように、二人は身体を重ねた。
果てがくることを願い。
果てがくることを恐れ。
「……ですが、今日は、もう」
果ては必ず訪れる。
スメラギはアレルヤの身体を強く強く抱きしめると、互いの心音が重なっていることを確認しながら、キスをした。
声はなく。
アレルヤの陰茎から熱い液体が迸り、スメラギの膣を冒した。
どくん、どくん静止した宇宙で鼓動だけが聞こえた。
謹慎が解けて直ぐ、アレルヤにもミッションが与えられた。
コクピットの中で出撃を待ちながら、アレルヤはなんとなし呟いた。
「ハレルヤ。君には護りたいものはあるかい」
アレルヤは少し沈黙し、ゆっくりと微笑んだ。
「そうだね。僕にもあるよ、護りたいものがさ――っと時間だ」
そうして心優しきガンダムマイスターは再び戦場に戻った。
了
最終更新:2008年01月10日 20:28