「可愛い?」

「……」
わざわざ深夜遅くに自室に押しかけてきたクリスティナを何事かと招き入れるといきなり服を脱ぎ出した彼女に動揺して眉がぴくっと動く。
眉より先に口やら手やらが動くべきなのだろうが冷静沈着正論キャラなので眉しか動かない。
「水着、上も見て欲しかったから」
「そのためだけにこんな時間に?」
脱いだ服の下に赤地にオレンジのラインの入ったビキニタイプの水着を着ていたクリスティナは、モデルのようなポーズを取って眉をぴくぴくさせてる俺にそのスタイルを見せ付けた。
ほっそりとした長い足になめらかなラインを描く腰、ふくよかな胸は動くたびにぷるんと揺れて、彼女の幼い少女のような顔がじっとなんらかの期待を込めてこちらを見ている。
多分おそらく彼女の期待する言葉は……。
「……トレミーの緊急状況に備えて服を着ろ」
可愛い。だと思うが。
「変?自信あったんだけど」
「服を着ろ」
言えるか。
「ティエリア、ちゃんと見てる?」
期待する言葉を得られなかったであろうクリスティナは水着のまま近づいてくると、下から顔をじいっと覗き込んできた。可愛い。可愛いと思う。
―――だけど言えるか。
カーディガンを脱ぐと彼女の肩に掛ける、これ以上は俺の目と眉に悪い。
「へ?――あ、あったかーい」
そのカーディガンに手を通すと丈が長くぶかぶかの袖をひらひらさせて、ヴァーチェのGNドライブから発射されるレーザー砲並の破壊力のある言葉を彼女は言った。
「これ、ティエリアの匂いがする」

可愛い、とは言わない。言えるか。冷静沈着正論キャラだから。
眼鏡を外しすとテーブルに置いてはしゃぐ彼女に向き直る。
その華奢な肩に手を置くと柔らかな唇を奪って。
……俺は言葉ではなく態度で水着の感想を表わすことにした。
最終更新:2008年01月10日 22:07