開け放たれた窓から月の光がぼんやりと照らし、カーテンがふんわりとそよいでいる。
マリナはベッドの上に座りこみぼんやりとあの少年が立っていた場所を見つめていた。
(夢・・・?)
少年はいつの間にか消えている。
まるで夢を見ていたかのようだ。
しかし、閉めてあるはずの窓が開いてることからすると現実だったことは確かだった。
(一体、何故・・・?)
王宮に忍びこんでまで質問しにきたのだろうか?
考えてもわからなかった。
「・・・あ」
寒かったので窓を閉めた時、ふとマリナは声を上げた。
現実だったとしたら、自分は自らの寝室に少年とはいえ、男を入れたことになる。
初めての経験だった。
そろそろとさっきと同じ姿勢でベッドの上に座りこんだ。
「夜這い・・・?」
思い浮かんだ言葉を口に出してみると、トクン、と心臓が跳ねた。
顔が赤くなるのが自分でもわかった。
ドサリ、と横向きにベッドに倒れこむマリナ。
胸がドキドキする。
(そんなわけない。あの子がそんなこと・・・)
弟と言っても差し支えないぐらい年が離れているのだ。
しかし、そう考えても胸の高鳴りは止まらなかった。
(私は、あの子のことをどう思ってるんだろう)
刹那は国の危機を救ってくれた恩人である。
しかし、それだけならこの胸の高鳴りは何なのか。
もし、さっきあの少年が襲ってきたら、自分はどうしただろうか。
普通なら声を上げて助けを呼ぶだろう。
しかし、
(受け入れていたかもしれない・・・)
何故かそう思えるのだった。
「私、あの子のことを・・・」
そっと呟く。
悶々として、火照った体をもぞもぞさせる。
少年が立っていた場所に、残り香のようなものがまだ残っているような気がした。
(苦しい・・・)
両手を胸にあてると、心臓が痛いほどにドキドキと高鳴っているのを感じる。
少年の姿が脳裏に思い浮かんだ。
緋色の眼をした幼さの残る顔。
MS乗りらしく鍛えられた首周りの筋肉。
(私、何を考えているの)
しかし想像は止まらず、厚い胸板、引き締まった腹へと続く。
そして淫らな想像は下半身にまで及び、下腹部には――――――
(ダメよ。そこは・・・)
それでも想像は止まるものではなかった。
下腹部についている、教科書でしか見たことのないモノ・・・
マリナの下腹部がキュンとして熱を持つのを感じた。
そして、あの逞しい少年に組み敷かれ、抱かれる自分を想像してしまった。
心臓はさっきよりも烈しく早鐘を打ち、体の火照りが堪えられない程になった。
(なんていやらしいの。あの子にそんな・・・)
そう思いながらも、下半身へそろそろと手を伸ばすのだった・・・
ネグリジェの裾をそろそろとたくし上げたマリナ。
陶器のように白く滑らかな肌をした太股が露になり、
そして、白い下着の中に手を入れた。
割れ目から申し訳程度にはみ出た、ほのかに濡れた花弁を擦る。
もう片方の手ではネグリジェの上から胸を揉みしだいた。
「は・・・、ん・・・」
体を丸めて声を押し殺そうとするが、どうしても抑えきれなかった。
肩紐をずらして胸元をはだけ、片方の胸を露にした。
小振りな乳房を揉みしき、桃色の突起をこすり刺激した。
膣内に指を挿し入れ、肉壁をつつく。
「うっ、・・・は、あん・・・んんっ!」
果てた。
体を更に丸めて、全身を何度もビクビクと震えさせるのだった。
(なんて浅ましい女なの・・・)
指に付着した温かい粘液を見つめて、マリナは自戒するのだった。
(あんなに年の離れてる子に淫猥な妄想をして、そのうえ自慰までしてしまった・・・)
考えれば考えるほど自分の浅ましさが悔やまれ、心が締めつけられる思いだった。
(恥知らずよね。こんなの・・・)
涙がポロポロと溢れた。
指についている粘液を拭き取り、衣服のはだけを整えた。
穿いたまましたのでびっしょりと濡れた下着は脱ぐことにした。
その間も涙は溢れて、時々鳴咽を漏らした。
(私は、あの子を汚してしまった)
あの少年が出ていった窓に額を当てた。
外気で冷えたガラスが火照った体に心地よく、しばらくそのまま泣き続けた。
ようやく落ち着いたマリナは、窓を開けて外気に当たった。
そよ風が吹き込み、下着を穿いていないため下半身がスースーしたが、構わず外の景色を眺めた。
『戦え』
そう言ってくれた。こんなにも弱い私に・・・
「何故この世界は歪んでいるのか」
問いかけるときのあの少年の眼は切実なものだった。
(あの子は、助けを求めていたのかもしれない)
しかし、マリナの答えは届かなかった。
(伝えたい。今度出会う時には、自分なりの答えを・・・)
「だから、待っていてください。刹那」
闇夜に淡く輝く月を見上げて、そっと呟くのだった。
最終更新:2008年01月15日 23:28