「マ…リナ…」
カップの割れる音が部屋に響き渡り、刹那が床に崩れ落ちる。
「安心して。しばらく体の自由がきかなくなるだけだから」
「…どう…して?」
「あなたが悪いの。あなたの方から来ないから」
刹那の瞳が恐怖と戸惑いの色を浮かべる。
でもそんな刹那を見ても、私の欲望はむしろ深まる一方だ。
私は刹那の身体を抱きしめるように抱え、ベッドへと運ぶ。
細い、綺麗な身体。うっすらと嫉妬すら感じてしまう。
私だけの刹那。誰にも触れさせない。
刹那を仰向けに寝かせ、その上に覆い重なる。
「…どういうつもりだ…?」
「ねぇ、ネーナさんてどなた?」
刹那の顔が一瞬だけ引きつったのを私は見逃さない。
「あなた達、とても親しいって聞いたけれど」
「何でも…ない…。」
「本当に?」
「ああ…」
刹那の瞳を見つめる。多分、彼の言葉に嘘は無い。それでも。
「あなたがそうでも、向こうもそう思っているとは限らないでしょう?あなたは可愛いから」
そう言って、私はそっと刹那の頬を撫でながら口づけをした。
私が舌を入れても、刹那は抵抗しようとしない。
可愛い、私の刹那。他の誰にも触れさせない。刹那を汚していいのは私だけだ。
「もう…やめろ」
無言で服を脱がし始めた私に刹那が言う。
でもそれを無視して、私は次々と刹那の服を脱がしていく。
やがて、綺麗な褐色の肌が私の前に現れた。
胸が高鳴り、抑えきれずに私の舌が刹那の肌の上を這う。
その感触を刹那が必死で堪えようとしている。
それを気配で感じて、私の心はむしろ満たされていく。刹那が私で汚れていくのを感じて。
でも、これだけではまだ足りない。私は下着を脱いで、刹那のそれを自分の性器にあてた。
「…マリナ!やめ…」
「ねぇ、刹那。私はあなたのお姉さんになりたいわけじゃないの。私のモノにならないなら、私あなたのこと許さないから」
冷ややかにそう言い放つと、刹那は黙り込んだ。まるで、何か恐ろしいものでも見るかのように。
「いいでしょう?」
頬笑み、できるだけ穏やかな口調で話しながら、私は腰を下ろし、自分の中に刹那を迎え入れた。
「うぅ…」
刹那のうめく声。私がずっと聞きたかったもの。
諦めるように、刹那が顔をそらす。彼は私を拒絶しているのだろうか?
でもそれでもいい。もう刹那は私のモノ。
ゆっくりと、まるで何かを煽るように腰を動かす。
もっと深く刹那を汚せるようにと願いながら。
「ねぇ刹那。気持ちいい?」
問いかけても、顔をそらしたまま刹那は答えようとしない。
「分かる?私たち一つになってる」
そう言いながら、自分の呼吸がもう随分と荒くなっていることに気づいた。
もうすぐ終わりがやって来る。
身体を刹那の上に預け、彼に口づけながら両手の指を絡める。
まるで何かを惜しむかのように、私の腰が激しく動く。
そして、私たちは初めての終わりを迎えた。
行為を終えると、裸のまま私は刹那を胸で抱きしめた。
もう身体の自由はだいぶ戻ってきた筈なのに、刹那は動こうとしない。
瞳を覗いてみても、虚ろなまなざしでどこか宙を見つめている。
そんな刹那の頬を撫でながら、私の心は悦びで満たされていく。
決して消えない傷を私たちは刻みあった。
もっともっと刹那を汚したい。
もっともっと私で染めてしまいたい。
そう願いながら刹那の額にそっと口づけ、私たちは眠りに落ちた。
最終更新:2008年02月03日 21:08