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此処は、『魔術』と『機械』によって繁栄した星。その星に、一つの大陸があった。
その大陸には5つの国が存在した。
魔術に関する知識が沢山眠る、魔術大国『ルデニア王国』。
5つの国の中で最も古い歴史を持ち、武術が盛んな国『バスコ王国』。
自然豊かな、植物と薬学の国『ポムド王国』。
最も機械技術の発展した機械大国『セイクリア王国』。
殆どの事が謎に包まれている国『シレイズ王国』。
この物語は、その5つの国で起こったとある事件の記録である。


五国物語

プロローグ ルデニア編1 ~赤髪の教会騎士~



ルデニア王国の王都に建てられた教会。その中に、一人の神父―――髪の色は赤く、長い後ろ髪を三つ編みにしている―――が居た。ちょうどこの日はあまり人が訪れず、神父はとても退屈な時間を過ごしていた。
「ふわぁ……ねみぃ」
神父はその赤い髪を掻きながら、大きなあくびをして言った。
「本当は女の子に囲まれつつカジノでギャンブルしたりバーに飲みに行ったりしたいんがなー……親父に何言われるか分からないし、こーやって暇な時間を過ごすしかねーか」
彼はそう呟き、窓の外を見た。空は青く澄み渡り、鳥たちが飛び回っている。それは普段と何ら変わりない、のどかな風景。
「ああ、今日も平和だ。教会騎士たるこの俺、カーマイン様の出番は今日も―――」
無いみたいだ、カーマインはそう言おうとした。しかし、その言葉を発しようとした瞬間のことである。平穏ないつもの風景には似合わない、甲高い悲鳴が外から聞こえた。
「―――今日は、出番があるらしい」
悲鳴を聞くや否やカーマインは壁に立て掛けてあった愛用の槍『クロススピアー』を手に取り、教会騎士の証である純白のマントを翻しながら教会の扉を開けた。


扉を開けるとそこには泣き喚く一人の女性が居た。カーマインは女性に駆け寄り、尋ねた。
「先ほど悲鳴が聞こえたのですが、何かあったのですか!?」
「わ、わた、私の、私の娘が誘拐されたの!!」
子供の誘拐事件。それはルデニア王国の各地で近頃頻発していると噂だった。
王都では未だ誘拐されたなどという話は無かったが、どうやらついに王都でも事件が発生してしまったようだ。
「落ち着いてください。誘拐犯の特徴は覚えていますか? どんな些細な事でも構いません、何か教えてください」
取り乱す女性を宥めつつ、カーマインはそう質問した。
「突然のことでよく覚えていませんが……確か桃色の髪で、紅い服を着た男だったと思います」
その情報は、各地での誘拐犯の目撃情報に酷似していた。
(やはり同一犯か。これは急いで捕まえねーと……王都でそんな奴が野放しになっていたら大変なことになる)
カーマインは女性に礼を告げ、誘拐犯が向かっていったとされる方向に走って行った。


通行人に誘拐犯の目撃情報を訪ねながら街を探し回ること1時間、カーマインは廃墟となったバーに辿り着いた。
(目撃情報によればここに潜伏してるらしいな……それにしても流石王都は人が多いだけあって目撃情報も多くて簡単に見つかった)
カーマインは槍を構え、扉を蹴破って叫ぶ。
「ルデニア聖騎士団教会騎士、カーマインだ! 出てこい、誘拐犯!」
その叫びの後にカーマインの視界に現れたのは、目撃情報通りの姿をした誘拐犯だった。
「ほう、王都は人が多いですからね。やっぱり大勢に姿を見られていたから場所を悟られたのでしょうか?」
「何でもいいからさっさと誘拐した子を返せ。返さないなら―――ねじ伏せる」
カーマインは、誘拐犯にクロススピアーの切っ先を突き付けた。
「返しても返さなくても、騎士団としては僕を捕える気なのでしょう? 当然抵抗させてもらいますよ」
誘拐犯は腰の鞘から刀身が真紅の短剣を右手で抜いた。
「カーマイン、と言いましたか? 名を名乗っていただいたならばこちらも名乗らねばなりませんね。僕の名前はドルヒ。同胞達の間では『複製の奇術師』と呼ばれています」
そう言いながら短剣を上に掲げると、同じような短剣がもう一本空中に出現した。ドルヒと名乗る男はそれを左手で掴む。
「さあ、行きますよ」
ドルヒはさらに数本の短剣を複製し、それを一斉にカーマイン目掛けて投げつけた。
「聖騎士を侮るな、そんな攻撃は通じない!」
教会騎士に伝わる、魔術に似た力『法力』を使い、カーマインは紅の盾を生成して短剣の攻撃を防ぐ。しかし、短剣での攻撃はただの撹乱だった。ドルヒは素早くカーマインの後ろに回り込む。
「残念、目くらましです」
「なっ…!?」
「さぁ、身体に血の十字を刻んで差し上げましょう。『ブルート・クロイツ』!」
ドルヒが二本の短剣を巧みに操り怒涛の速さで斬りかかる。カーマインは背後を取られたが咄嗟に振り向いて反応し、上手く身を引いてかわしたり、槍で斬撃を払ったりしつつドルヒの猛攻を防いだ。渾身の連撃を回避されたドルヒは一旦カーマインとの間合いを取った。
「この怒涛の斬撃を避けきるとは…並みの騎士ではありませんね」
「お前もただの誘拐犯じゃないみたいだな。何者だ? 誘拐の目的は?」
「ふふ、簡単に明かすわけがないじゃないですか」
「だろうな。だからこそ―――さっさと吐かせる」
今度はこちらの番だと言わんばかりに、カーマインが槍を構えてドルヒに向かって突進していく。
(きっとこの攻撃を奴は回避してくる。その回避行動に合わせて次の一撃を繰り出す!)
そんな戦略を練りながらカーマインは槍を突き出し、ドルヒを貫こうとした。しかし、先程まで確かにドルヒが居たはずの場所には何も存在しなかった。
そして次の瞬間、カーマインの腹部に激痛が走る。ドルヒは突きを回避してカーマインの死角に潜り込み、そしてカーマインを一閃したのだ。
「ぐ・・・っ!?」
「おおかた、突きを回避した後に素早く二撃目を繰り出して仕留める気だったのでしょう? 攻め方が甘いですね。達者なのは回避だけでしたか、情けない」
そう言い、再びカーマインと距離を取る。
「貴方みたいな未熟者と戦っていても全く気持ちが昂らない。構うだけ無駄でした、貴方には殺す価値すらない。戯れるのはここまでにして、僕は本来の任務に戻るとします」
先ほど左手に持つ短剣を複製した時のように、短剣を掲げる。
「それではさようなら―――『フンダート・ドルヒ』!」
その叫びと同時にカーマインの四方八方を取り囲むように100本もの紅い短剣が出現した。短剣は一気にカーマイン目掛けて飛んでいく。
「全方位攻撃なら避けきれないと思っているのか!」
言いながらクロススピアーを地面に突き刺すと、半球型の赤いバリアが発生し、カーマインを百の短剣から守った。攻撃を防ぎ切り、カーマインは反撃に出ようとした。しかしそこには既にドルヒの姿は無く、ただ薄暗く静かな空間が広がっているだけだった。
「ちっ……逃げられた!? とにかく誘拐された子供を探さないと!」
その後カーマインは、バーの奥にドルヒの仲間が潜伏している可能性を示唆して騎士団に応援を要請して捜査を開始したが、誘拐された子供たちもドルヒの仲間も見つからず、何の手がかりも得られなかった。




この誘拐事件の数ヶ月後。若き赤髪の教会騎士と紅き短剣の奇術師は、再び相見えることとなる―――。



To be continued…

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最終更新:2010年02月14日 00:18