玄武寺

山深く、静かに佇む寺院。
春は桜が咲き乱れ、情緒溢れる景色が楽しめる。
瞑想の場を求め、訪れるファイターも。
阿部野みはる
この間、いいようかんがあったから
瞑想中のリュウさんの前にお供えしたの。
気づかないふりしてたけど……
いつの間にかなくなってた。
こっそり食べたんだわ。
ふふふ、かわいい。

リュウさんってすごい武道のひとなの?
よくそういう人が訪ねてくるんだけど。
私、格闘の世界はわからないけど……
瞑想してるリュウさんの気は
とっても穏やかなのよね。

烈さんは、お坊様の格好してるけど……
リュウさんに比べると、気が
粗削りって感じなのよね。
悪い人じゃないみたいだけど。

最近リュウさん、なんかちょっと楽しそうなのよね。
あ、いや
ずーっと石の上で瞑想はしてるんだけど。
でも私には分かるの。
たぶんあなたが来てくれたからよ、きっと。

へぇー
なんか見違えたわね。
最初ここに来た頃って、
なんていうか、たどたどしかった気がするんだけど
もう一人前の武道家!って感じ。
リュウさんが2人いるみたい。
あ、でも、ここでの修業はほどほどにね。
誰がここの掃除してると思ってるの。

CHAPTER 12-1

ヌシはリュウ
面識があったのか。
なら、ちいと聞け
拙僧とヤツとの因縁をな。
若いころのわしは荒くれでな……
何ぃ、今もそう?ま、違ぇねえ。
坊主の身でありながらケンカびたりの
わしの前に、ある日ヤツが現れた。
気に食わねえ目をしてやがったぜ。
どこか悟ったようでいて
誰にも負けねえって芯のある目だ。
当然、すぐに手合わせしたが……
結果は、ま、わかんだろ。
そん時に感じたのさ
コイツはまだまだ強くなる。
で、思ったわけさ。
強くなるリュウにくっついてりゃ……
わしもまだまだ、強くなれるんじゃ
ねぇか、ってな!
それで時々、こうやって
訪ねてきてるって寸法よ。

リュウのやつ
なかなか怒らねえだろ?
ヤツを怒らせたいなら
蜘蛛が手っ取り早いぜ。 かかっ

この前リュウが俺の分の
水ようかんも食べやがったからよ……
次の日に、仕返しにリュウの分の
羊羹を食べてやったぜ。

拙僧に会いに来たか。
どれ、手土産は何かなっと……
……おいおい、まさか手ぶらか?
っかー!
仕方のねえやつだなあ。

ただひたむきに強さを求める
ヌシの姿が、リュウと重なるぜ。
こうしちゃあ、おれん。
拙僧も精進せねばな。

かっかっか!
お前、ずいぶん強くなってるじゃねえか!
ワシとやりあった時よりも
さらに道、進んだってか?
善哉善哉!
んでも、驕るんじゃねえぞ。
この道にゃあ終わりなんてねえからよ!
最終更新:2024年01月14日 00:41