r :このビデオレターは護民官または、護民官補の調査と面談を通過した、養子受け入れ希望のご家族しか見ることができない
#1リンゴを剝く少年
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カチリ
乾いた音と共に、レンズが光を捕らえる。
画面いっぱいの、みずみずしい赤。
樽いっぱいのリンゴを剥く少年が映し出された。
「へ?もうカメラまわってんの?」
<自己紹介を>
「あー、えっと。カラス。あだ名だけど、結構気にいってる。歳は12だから、この中じゃ最年長かな」
<リンゴ。好きなの?>
「好きって言うか、まぁ嫌いじゃないけど。ほら、こうやって兎とか作るとさ、ガキ共が喜ぶし」
(そう言って、カラスは立ち上がると、壁の隅にいた小さな女の子にリンゴの兎を手渡した。種で目まで作ってある。会心の出来だ!女の子は、それを受け取ると、少し笑った気がした。)
<施設の暮らしはどう?>
「屋根があるってのは幸せだねぇ。としみじみ思った。ん。まぁ、真面目な話、良くして貰ってるよ。食料もぼちぼちあるし。夜寝るとき、明日太陽を拝めるか心配しなくていいし」
<今の状況をどう思う?>
「あー、正直よくわかんねぇ。自分がオリヴァーみてぇに天涯孤独になるとは思ってなかったし、現実感が無ぇってのが本音かな。まぁ、ガキ共の世話に追われて、悲観する暇が無いのは、かえって良い事だと思う」
<最後に何か一言ある?>
(リンゴを剥きながら
「んー、えっとさ。俺みてぇなのは、多分この先、何とか生きていけると思うよ。でも、ガキ共はさ。飢えてんだよ。リンゴの兎みてぇなのに。」
「さっきのあの子はよ、言葉を忘れちまってるんだ。だからよ、実際難しいとは思うけどさ、同情とか、そんなんじゃなくて、お互いを必要とする、きちんとした親が必要なんだと思う」
(リンゴを剥く手が止まる
「まぁ、俺はさ。ここでリンゴ剥く位しかまだ出来ねぇけど、もっともっと修行して、凄ぇ美味いメシ作れるようになって、みんなに笑って貰いたいって最近思ってる」
<いい目標だね>
カラスは手を止めると、初めて歯を見せて笑った。
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撮影
国民番号:13-00274-01
PC名@所属国:槙昌福@よんた藩国さま
最終更新:2009年02月09日 14:04