r :このビデオレターは護民官または、護民官補の調査と面談を通過した、養子受け入れ希望のご家族しか見ることができない
#2ロケットを持つ少女
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「私はね。最後でいいの」
早くお父さんとお母さんがほしい?と聞いた私に、11歳の少女はそう答えた。
「私はね、本当のお父さんとお母さんの最期の時に一緒にいられたし、ほら」
彼女はポケットから、小さな古ぼけたロケットを取り出し見せてくれた。
「これが、私の本当のお父さんとお母さん。内緒だよ?写真とかない子のほうが多いから」
写真に写っているのは、厳しい顔をした男性と、優しそうな女性だった。
「こうやって思い出が形に残ってて、お父さんとお母さんに最後に会えた私は幸せなの」
ロケットを大事そうにしまいながら、そう言った。
「お父さんはね、誰かほかの人のためを思って生きなさいって言ってた。お母さんは幸せになってねって言ってた。それで、最後にね、二人で、愛してるって言ってくれたの」
何かに耐えるように、彼女の声は震えていた。
「みんなね、ほとんどの子がいつの間にかお父さんがいなくて、お母さんがいなくて、いつの間にか一人ぼっちだったの。みんなね、なんにも持ってこれなかったの」
私はなにも言うことができなくて、ただ頷いた。
「大きい子はまだいいの。思い出があるもの。記憶の中で、心の中で大切にしてくれたことを覚えてる。でも、小さい子はきっと忘れちゃう」
彼女がちらりと、おもちゃで遊んでいる小さい子供を見た。
「そうしたら、きっと独りぼっちだって思っちゃうと思うの。こんなに広い世界で、自分は独りぼっちだって思っちゃうと思うの。だから」
カメラに向き直って彼女はすっと息を吸った。
「お願いします。みんなのお父さんとお母さんになってあげてください。迎えに来てあげてください。独りぼっちじゃないんだって教えてあげてください」
そう言って何度も何度もカメラの前で頭を下げた。
私はスイッチを切って、彼女を抱きしめた。
私の胸の中で、彼女は声を殺して泣いていた。
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撮影
国民番号:34-00840-01
PC名@所属国:ダムレイ@リワマヒ国さま
最終更新:2009年02月09日 14:05