r :このビデオレターは護民官または、護民官補の調査と面談を通過した、養子受け入れ希望のご家族しか見ることができない


#13:ちょっとおめかし



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「ほら、綺麗になったでしょ?」

「……うん」


 その子は言葉数が少なく、私達にあまり感情を見せない子だった。そりゃあ、今までの事、これからの事を考えると不安になるだろう、心配になるだろう、とは思う。


「やっぱり、男の子でもお肌の手入れは大事だものね」

「……」

 なんとなく気恥ずかしいのだろうか? 男の子は黙ったままである。

「あら、髪の毛が濡れてるわよ。お風呂上がりはちゃんと拭かないとダメよ?」

 先輩は、そう言うとバスタオルで男の子の髪を拭き始めた。その手はやさしく、男の子も黙ったままではあるがされるがままにじっとしていた。


 そもそも、男の子達のお肌の手入れはちゃんとできているのかしら そう言ったのは先輩であった。私達メイドーズは子供達の食事や洗濯などの世話を行っていた。子供達にだって好きな食べ物、嫌いな食べ物があるハズである。そういって先輩が食堂に子供達の様子を見に行って数日後の言った発言であった。


「女の子はやっぱりおしゃれに気をつかうわけだけど、男の子ももうちょっと気をつけた方がいいわよねぇ」

 先輩はそう言うと、髪切り用のハサミや洗顔クリームなどを用意してもらい、男の子の髪の毛を切ったり、顔を洗う……つまり顔のお手入れのお手伝いを始めた。最初は他のメイドさん達もその様子を見ているだけであった。

「あんまり親身に世話しすぎると親の事を思い出させてしまうんじゃないの?」

 そんな事を言う人もいた。でも、先輩はちょっとだけ微笑むとやさしく答えた。

「あら、でも優しさに触れるのは子供達にとっては必要な事よ? 親がいないからといって私達が手を出してはいけないわけじゃないわ。それにあまり腫れたものを触るように接すると悲しみが長引くだけ、少しでも気分を変える事ができるなら、それを手伝うのが私達のお仕事でもあり、望むべき事よ」



 その時の先輩は微笑んでいたが、目はとても真剣だった。今男の子の頭を優しく拭いている先輩の目はとても優しい目をしている、先輩の目はいつも先輩の本音を教えてくれている。


「あの……」

「どうかした?」

 男の子の言葉に優しく問う先輩。

「……あ、ありがと……」

「こちらこそ嬉しいわ。お礼の言葉ってね。言ってもらえるととても嬉しくなるのよ」

「……」

 先輩の目がうつったのか、男の子の目も優しい目になっていた。


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撮影
国民番号:05-00141-01
PC名@所属国:銀内 ユウ@鍋の国さま

撮影
国民番号:11-00248-01
PC名@所属国:イク@玄霧藩国さま

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最終更新:2009年02月12日 23:08
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