静夜思 秋の夜の永〳〵しければねられぬ故に故郷の妻子は恙なきかと。思に付て牀前に月光の只白〳〵と見ば。又疑ひ哉 霜か月かと思ふ付て しとねをはねて首をあけて見ば。明月別て光つよく 夫に付ても。故里の妻子思て首をたれ 扨〳〵去年の丁ど今時分は夫婦うちよりて夜な〳〵に。ながめ暮しけるに。今此月も故郷の月も同じく照に付ても 妻子のこと忘られぬ 加やうに膚さむの比になれば別して忘れぬ
哥に 此里の月は故郷にかはらねど 獨りながむるねやのさみしさ
参考(漢文部分を除く)
「唐詩選国字解」
楽府題○春思秋思と同しことで 夜静にして 故郷を思出して作る
牀は寝処なり○牀前をみれば そらはれ 月あきらかに 地上がまっしろくみゆるゆへ をゝかたこれは霜そうなとおもふて
よく〳〵みれば霜ではないよと 頭べをあげて山上の月をのぞみ 月を見るについて 頭べをたれて 頓に故郷のことを思だすと うはべはなんのこともないやうなれども 句中に甚だ をもしろい情がある これ李白が不用意の詩ぢゃ
「唐詩國字弁」
楽府題
春思秋思と同しことで。夜静にして。故郷を思出して作る
牀は寝所なり○牀前をみれば。そらはれ 月あきらかに。地上がまっ白くみゆるゆへ 疑《おゝかた》是は霜そうなと思て
よく〳〵みれば霜ではないよと 頭をあげて。山上の月を望み 月を見るについて。頭をたれて。頓に故郷のことを思ひ出すと。うはべはなんのこともないやうなれども。句中に甚だ面白い情がある。是李白が。不用意の詩ぢゃ
「唐詩選事証」
楽府の題ぢゃ 春思秋思と同じことで 古きゃうをおもい出して作ったのぢゃ
牀前でみれば そらもさえ 月の明なひかりをみて
霜がふったかとうたがい思てみれば しもではない
頭を上てみれば。山陽の月のあまねくてらし
月を見るに付て 低首て にはかに古郷のことを思い出して ゆかしいと云心なり
●此詩 うわべは何の情もない様なれども 句中 甚 をもしろい言外の意あり。是李白が不用意ぢゃ
(原文はすべて片仮名)