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MAD HATTER MEETS ALICE

 -1- side: Tsubasa   


   おぼえてる? 君がみせたナミダ

   こんなこと言うと 君は怒るだろうけれど

   その美しさに 本当は すこし見とれた

   僕の流すものとはあまりに違いすぎていて

   切なくて 目をそらした




 疲れた。

 これ以上ないくらいに疲れ果てた。

 …精神的に。

 それもこれも全て、あの流月とかいうへんちくりんな奴のせいだ…!」

「失敬な。オレ別に、あんた自身にはなんもしてねーぞ? しかも全部声に出てんだよ」

「うっさい! おんなじようなもんでしょーが!」


 平然とのたまった隣の長身に、わたしは半ばヤケで怒鳴った。


「おーおーそんな怒りなさんなって、シワ増えんぞ?」

「~~~~…っ!!」


 もはや何を言っても無駄だ。
 さっきからこの御仁は何を言っても罵っても、のらりくらりとかわし、飄々とした態度で、逆にこちらの苛立ちポイントを絶妙なタイミングで押してくる。
 確信犯だ。これ以上ないほどタチが悪い。


「・・・あんた、わたしがいること、実は入学式前から知ってたんでしょ」

「おー、校庭で震えてんのを見かけたぜー? このクソ寒い日にさっさと中に入んないで何やってんのかなーって思ってたよーな」

「あ・ん・た・を、探してたんでしょー!? あんたを!! 見かけたんなら声くらいかけなさいよ薄情者ね!」

「めんどくせえもん」

「・・・・・っ!!」


 声にならない叫びを上げて、わたしは悶絶した。


「どした? 腹でも下したのか? 保健室なら2階だぞ」

「・・・もう、いい・・・」


 もともと、この人間とまともな会話を試みようというのが無謀なのだ。これでは会話どころか、こっちがストレスでぶっ倒れるのがオチである。


「はあ・・・変人のくせに頭がいいってどーゆーこと? あの後、新入生代表の挨拶してたし…あれって入試の結果が1位だった人がやるのよね…」


 前言撤回。変人なのに頭がいい、じゃなくて、頭がいいから変人、なのだろうか。昔から馬鹿と天才は紙一重っていうし。


「あん? あんただってそうそう悪かったもんでもねーだろ。国語が74、数学が57、英語が73、理科が61、社会が85、そんでもって学年298名中97位」

「まてまてまて――――!!」


 必死で口を塞ごうとしたが、あいにくわたしの身長じゃ無駄に空振りするだけだった。奴は器用にするりとかわす。ちくしょう。
 奴は言い終わって、なにくわぬ顔で見下ろした。


「どーかしたか? イカレたおっさんみてーに腕振り回して」

「一言余計!! なんであんたが、わたしの入試結果プライヴァスィーを熟知してんのよ!?」


 つか人前で大声でバラすな。


「まあ落ち着けよイカレたちんくしゃ、プライバシー噛んでるぞ」

「うるさい、今のはわざとなの! しかもなにその呼び名!?」

「特徴を的確に捉えているだろうが。言っとくがオレは悪くない。テメーがこんな大事なプライヴァスィをぼろぼろ落っことしていくからだ」


 ビッと目の前に突きつけられたのは、入学手続き案内のハガキと一緒に届いた入試結果個人票。こ奴と初めて対面したあの日、確かにわたしはこれを胸ポケに入れていたはず。


「なななんであんたが持ってんのっ!?」


 コンマ1秒でひったくって叫ぶと、奴は呆れたようなうんざりしたような顔をした。


「あんた、人の話聞いてたのか? それとも、聞いた片っ端から忘れていくただの馬鹿なのか。あ・ん・たが落っことしたんだって言っただろうが。むしろ拾っていただいたことに対して言うことがあんだろ。なんの関係もないオレとしては、あのままお前の個人情報が道端に晒されたままでもよかったんだぜ、別に。ホレ、こーゆーときにはなんて言う?」

「う・・・」


 反論の余地なし。ついでに八つ当たりの余地もなし。


「あ・・・ありがとーゴザイマス・・・」

「誠意がこもってない、やり直し」

「…っ! 拾っていただき真にどーもありがとうございますぅ!!」

「よし」


 Sだ。

 こいつ、ドSだ・・・!!


最終更新:2012年01月21日 05:07