-3- side: Sawaya
おもしろそうな奴をみつけた。
実際ほんとにおもしろいのかどうかは、まだ分からないんだが。
はじめて見かけたとき、オレはランニングをしていて、奴は真冬の公園のベンチに座ってひとりで黙々と音楽を聴いていた。華奢で、あまりに小さなその後ろ姿から、オレは中1くらいかな、とちらりと思っただけだった。
そしてベンチの後ろの道を走り去ろうとしたとき、奴は何を思ったか、いきなりがばっと立ち上がった。何事かと少し驚いたが、まっすぐに公園の外にある自動販売機に向かうのを見て納得した。オレもなんだか飲みたくなって、あとに続いた。
奴は、缶のココアを買ったらしい。しかしなにやらぼうっとして自販機の前から去る気配もない。
はやくどいてくれないだろうか、苛々とそう思い始めて奴に近づいたとき、かすかな呟きを聞いた。
「・・・今のわたしって、まさしくメリーパーソンだよねえ・・・」
メリー、パーソン・・・?
merry person(陽気な人)、だろうか。
だが、「陽気な人」は単数名詞なので、正確には、「merry」の前に冠詞として「a」もしくは「the」をつけなければならないのだが・・・まあ、そんなことはどうでもいい。いちいち、こんな細かい指摘をしたくなるのは、オレの一種の悪い癖だ。
しかし、なんでこの子は、いきなりそんなことを言い出すんだ。
・・・まあ、そんなこともオレには全く関係ないことなのだが、なぜか、不思議と気になった。
なんでかなんて・・・そんなことは知らない。ただなんとなく、だ。
だから、オレは話しかけた。
真後ろから話しかけたのは、もちろんわざとだ。
「・・・へえ、何かいいことでもあったの」
案の定、びくっとして振り向いた。そしてオレは、そのときになって初めて、奴の顔を見た。くねくねとうねる髪は茶色くて、とにかく小さくて(オレが人並み以上にデカいからかもしれないが)、大きな瞳が小動物のような印象を与えた。
(こいつも帝王に入るのか・・・)
白いダウンの胸ポケットからはみ出ているハガキにはたしかに、帝王国立大学附属高等学校と印字されていた。
それが、はじまりだった。
なんのひねりも変哲もない、オレたちの、はじまりだったのだ。
最終更新:2012年01月21日 05:14