「不二山くん。」 「なんだ?」 「よかったら一緒に帰らない?」
「いいぞ。」 「よかった。じゃ、行こ!」
「今日はちょっと無理。じゃあな。」 (仕方ない。ひとりで帰ろう……)
「不二山くん。ねえ、お茶して帰らない?」
「茶? いいぞ、べつに。」 「よかった。それじゃ、行こっか!」
「茶? 悪ぃ。そういう気分じゃねーや。じゃ。」 (仕方ない、今日はまっすぐ帰ろう……)
「嵐くん。」 「よ。 今、帰りか?」 「うん。 よかったら一緒に帰らない?」
「ああ、かまわねーよ。 行くか。」 「うん!」
「悪ぃ。今日は用事があんだ。じゃな。」 (仕方ない。ひとりで帰ろう……)
「嵐くん。ねえ、お茶して帰らない?」
「茶か。いいぞ、付き合う。」 「うんっ!」
「茶? んー……悪ぃ。用があるからダメだ。 また今度な。」
「○○。」 「あっ、嵐くん。今帰り?」 「そう、ランニング兼ねて。途中まで一緒に帰るか? なら歩いてく。」
「じゃ、ランニング開始。よーい。」 「え!」 「ウソに決まってんだろ。行こ。」
「茶? 寄り道してくのか?」 「うん。」 「いっか。たまには。」
「わかった。じゃ、お先。」
「嵐くん。」 「押忍。おまえも今帰りか?」 「うん。よかったら一緒に帰らない?」
「そうだな、帰るか。」 「うん!」 「そんな顔すんなよ。うつるだろ。」
「…………」 「あ……ダメ?」 「うん、悪ぃ。外せねぇ用があるんだ。また今度な。」 (仕方ない。ひとりで帰ろう……)
「嵐くん。ねぇ、お茶して帰らない?」
「いいな、乗った。」 「ホント? よかった!」 「店まで競争な。」 「ええっ!?」
「茶? 今日はダメだ。悪ぃ。」 「そっか……じゃあ、また今度にするね。」 「うん。……おまえ、寄り道なんかすんなよ? 真っ直ぐ帰れ。絶対に。」 「じゃあな。」 (不二山くん、お父さんみたいだ……仕方ない、まっすぐ帰ろう)
「○○。」 「あ、嵐くん。今帰り?」 「ああ、おまえもか? なら、途中まで送る。」
「よし。」 「なんだか、楽しそうだね?」 「そうか? かもしんねーな。」
「いいな、茶。」 「ありがとう! それじゃ、行こう。」 「うん。」
「そっか。用事じゃ仕方ねぇよな。気をつけて帰れよ? なんかあったらすぐ呼べ。じゃあな。」 (せっかく、声をかけてくれたのに、悪かったかな……)
「やめろ、それ。」 「この呼び方、ダメだった?」 「ダメ。」 (行っちゃった……この呼び方、気に入らなかったみたい……)
「××。今帰り?」 「……俺のことか?」 「うん。」 「そんな呼び方じゃ、返事はできねーよ。じゃあな。」 (行っちゃった……この呼び方、気に入らなかったみたい……)
「…………」 「?」 「だいたいのことは許せるんだけど……」 「その呼び方はカンベン。悪ぃ。」 (行っちゃった…… この呼び方気に入らなかったみたい……)
「なあ。教会の伝説って聞いたことある?」 「うん、少しだけ。」 「どんななんだ?」 「えっ? 嵐くんは知らないの?」 「知らねー。だから聞いたんだけど。」 「そ、そっか。」 「柔道か食い物の話なら興味あるけど、絶対そういう話じゃねーだろうし。」 (嵐くんらしいなぁ)
「教会の、どっかにある隠しボタン押すと大迫先生がデカくなるんだってよ。」 「ふふっ、そんな噂があるんだ?」 「あと氷室先生が壊れるとか理事長のヒゲが伸びるとか、いろいろあるらしい。 で、本当かどうかを大迫先生に聞きにいったらゲンコツ食らった。 デカくなったらゲンコツの威力もデカくなるから、ボタンあっても押して欲しくねーや。」 (大迫先生のゲンコツ、痛そうだもんね……)
「教会の伝説の話、ムリヤリ聞かされた。」 「ふふっ、どんな話だった?」 「地下に悪の秘密結社のアジトがあって、希望者は肉体改造手術をしてもらえるんだってさ。」 「肉体改造……なにかに変身できるような?」 「じゃねーの?希望者にってとこが悪に染まりきれてねーけど。」 「ふふっ、たしかに!!」 「悪ってんなら問答無用でやっちまえばいいのに。俺ならそうする。」 (不二山くん、悪い笑い方して……)
「不二山くん、もうすぐ誕生日だったよね。」 「人の誕生日、覚えてんのか。すげーな。そういうの苦手。親のも覚えてねーもん。」 「そっかぁ……」 「でも、1人分だったら覚えられると思う。あとで教えろよ。おまえの誕生日。」 (ひょっとして、気を遣ってくれたのかな?)
「そろそろ期末試験だね。準備してる?」 「準備してる、振りしてる。」 「振り?」 「そう。親がうるせーから。」 「ということは、実際は……」 「校内の成績悪くってもはば学に通ってるってだけで安心してるから問題ねーよ。進路の話になったらわかんねーけど。」 (何か事情があるのかな……)
「そういえば、もうすぐ体育祭だね。」 「いいアピールの場にしてぇな。」 「アピールって、クラブの?」 「そう。プログラムにこっそり柔道部のアピールタイムを組み込んで。」 「そ、それは……」 「生徒会執行部をどう出し抜くかが鍵だ。どーすっかな。いい手、考えねぇと。」 (嵐くん、いろいろ考えてるんだ……なんか悪者っぽいけど)
「もうすぐ夏休みだけど、なにか予定ってある?」 「柔道とバイトと、あと……そうだ、ドリル。」 「ドリル?」 「うん。大迫先生から渡された。俺用特別ドリル。」 「えっ、もう?」 「夏休み入ったら柔道とバイト三昧だろうから今やっとけって。」 「ふふっ、先生、お見通しだね?」 「だな、世話になりっぱだ。ちゃんとやんねーと。…………」 「どうしたの?」 「手伝い募集中。おまえ、いつヒマ?」 (ちゃんとって言ったそばから……)
「もう少しで文化祭だね。嵐くん、準備はどう? 「部のほうは準備万端。あとはやるだけ。 「そっか。じゃあクラス出展のお手伝い、できるね? 「うん。手伝いながら、柔道部のイベントのサクラになってもらう手回ししねーと。 「サクラ? 「人の集まるところに人は寄ってくる。まずはウチのヤツらだ。どーすっかな…… (悪い笑み浮かべて……嵐くん……)
「文化祭まであと少しだね!」 「だな。」 「ちょっと緊張してる?」 「まーな。適度な緊張はいい。ヨユウ見せてたら絶対けつまずく。」 「うん!気を引き締めないとね!」 「引き締めすぎてガチガチになるなよ? 今みたく引きつった顔してたら客寄せどころか客払いだ。」 「う……」 「ハハハ。おまえは肩の力抜いてるほうがよさげだ。」 「ま、がんばろうぜ。」 「押忍!」
「もうすぐで文化祭だね。」 「すげーな、あれ。」 「すごい?」 「脚本書いたヤツも、演出考えたヤツも。舞台の設計したヤツも。」 「いろんなヤツのがんばり見てると、俺もって気になる。…………間違えた。」 「うん?」 「俺らも、だ。だろ?」 「ふふ、うん。」 「押忍。しっかりやり通そうな。」 「うん!」
「もうすぐ冬休みだね。嵐くん、何か予定はある?」 「久しぶりに乾布摩擦でもすっかな。」 「乾布摩擦……効果あるの?」 「ある。風邪、引きにくくなったし。」 「ふぅん……わたしもやってみようかな?」 「いきなり素っ裸でやるなよ?体調崩すから。」 「や……やらないよ!」 「? そんなに慌てることか?誰も見てやしねーよ。」 (そういう問題じゃないような……)
「嵐くんは、春休みの予定、決まってるの?」 「ちょっと遠出する。電車で2時間ちょい。中学んときに住んでたトコに。」 「そうなんだ。誰かに会ったりするの?」 「柔道の師範。」 「へーっ。どんな人?」 「でっけー人。体がとかじゃなくて、スケールが。」 そうだ、土産も持ってかねぇと。師匠が喜びそうなもんも考えないとな。」 (嵐くんの憧れの人か。ちょっと気になるかも)
「もうすぐ修学旅行だよね。準備してる?」 「とっくに調べつくした。」 「調べつくしたって、なにを?」 「柔道場。」 「柔道場?」 「うん。強いヤツに会いに行く。」 「ええっ!? そんなことしたら先生に叱られない?」 「? なんで? 自由時間使うつもりだし、大丈夫だろ。」 (どうなんだろう……)
「もうすぐ卒業だな。 「うん。 「……俺。はば学来て良かった。今ならわかる。よその学校じゃダメだった。 はば学に来て、会うべきヤツに会った。間違ってなかったんだ。誰も。 「嵐くん。 「あと少しだけど……よろしくな。 (嵐くん……)
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