ミツマヨ2



「御剣・・・どういうことだ」
 私と成歩堂は、倉院の里で顔を合わせた。
 焦りと不安を隠せ無い成歩堂に対し、私はまるで・・・そう、裁判の時のような冷静さを保っていた。
「どういうこととは?」
「僕はお前に真宵ちゃんを頼んだはずだぞ」
「そのことか。彼女が実家に帰ると言ったから連れてきただけだ」
「連れてきただけって・・・お前が真宵ちゃんから目を離したことに責任は無いって言うのか」
 私が真宵くんをここに運んだのは2日前の夜。
 ここで一緒に寝食を共にしていた春美くんの話では、昨日の夜、お互いが床に着くまでは顔を合わせていたと言う。
 そして、今朝、朝食を知らせようと真宵くんの寝所を訪れたところ、彼女は姿を消していた。
「むしろ、責任があると言うなら・・・成歩堂、貴様にあるのではないか?」
「なんだって」
「ウソをついて、彼女を自分から引き離した・・・それを問題にしなくていいのか?」
 成歩堂の顔つきが変わる。
「知ってたのか」
「あぁ」
「真宵ちゃんは」
「・・・知っている。貴様の乗ったタクシーを発見したのは彼女だ・・・全て説明した」
「そうか」
 握り締められた成歩堂の拳が小さく震えている。
「もう一度聞く・・・なぜウソをついた」
 成歩堂は驚いた顔で私を見た。
「なぜだって?そんなの・・・頭のいいお前ならわかってるだろう」
「言い方を変えよう。なぜウソをつく必要があった?彼女には正直に言ってしまってもよかったのではないのか?」
「あぁ・・・そういうことか・・・そうだな。確かにそうかもしれない」
「失恋の痛みはいずれ消えるが、騙された悲しみはなかなか消えないものだぞ」
「失恋?お前・・・何を言って」
 成歩堂が何か言い出そうとした時。突然、近くの山林の中から悲鳴が上がった。
「この声」
「春美くんか」
 私と成歩堂は顔を合わせて頷いた後、声の方向へと駆け出していた。


「真宵さま。真宵さま!」
「春美ちゃん!!」
 春美くんが居たのは、山林に入ってすぐの川の側だった。
 彼女の膝元には真宵くんが横たわっている。
「あぁ、なるほどくん!みつるぎけんじさん!!」
「春美ちゃん、一体何が」
「わたくし・・・真宵さまのためにと思って薬草を取りに山に入ったのです。そうしたら真宵さまが倒れていて」
 見たところ外傷は無く、呼吸の乱れも無い。
「成歩堂とりあえず、場所を移そう。春美くんを頼む」
「あ・・・あぁ」
 私は彼女を抱き上げる。
 冷たい・・・彼女の体は冷え切っていた。まだ残暑の残る季節だと言うのに。
「真宵くん・・・しっかりするんだ」

「ただ寝ているだけです。あのまま寝かせておけば時期に目を覚ますでしょう。どうやら寝不足とストレスが重なったようですな」
「ありがとうございます」
 医者が屋敷から出て行く。
「ふぅ。よかった」
「そうだな」
 私と成歩堂は、眠っている真宵くんを見ていた。
「やっぱ僕が原因なのかなぁ」
「だろうな」
「うわ・・・そう、真っ向から肯定されると、立つ瀬ないな」
「きちんと彼女と話をするべきだ」
「うん・・・あ、そうだ。さっきお前が言ってた失恋って」
「んっ」
 真宵くんの目蓋が微かに動く。
「真宵くん」
「真宵ちゃん」
 半分ほど開いた小さな瞳。顔がこちらの方を向き、私たちを見る。
「なるほどくん?それに。御剣検事」
「よかった・・・あ、今、春美ちゃんが温かいものを作ってるから、呼んでくるよ」
 成歩堂が寝所から出る。
 私は、何を話していいのかもわからずに、ただ彼女の顔を見ていた。
「・・・ごめんなさい。迷惑・・・かけちゃったみたいですね」
「気にするな」
 もっと優しく接することは出来ないのか?
 何か気の利いた言葉は?
 様々な言葉や行動が頭に浮かんでは・・・それを実行する前に消えてしまう。
「私をここまで運んでくれたの・・・御剣検事ですよね」
「あ。あぁ」
「・・・あのとき、すごく温かくって・・・嬉しかったです」
「気づいていたのか」
「なんとなく・・・ですけど。でも、まるでお父さんに抱かれているような・・・懐かしい温かさでした」
「そうか」
 私は気まずいというよりも、気恥ずかしさを感じた。
「迷惑でした?」
「ん?」
「・・・眉間に・・・さっきより皺がいっぱいよって」
「あ。あぁ・・・いや。そんな事は無い」
 心配そうに私の顔を覗き見る。
 本当に、感情がすぐに表に出る子だ・・・だが、感情の表現が苦手な私にして見れば、少々羨ましいとも思う。
 今の気持ちを、正確に表に出すことが出来れば、真宵くんにこんな表情をさせずにすむのに。
「~~~さま~~~真宵さま~~~」
 廊下を小さな足音がトタトタと駆けてくる。
 春美くんのようだ。
「真宵さま!!・・・あぁ・・・真宵さま真宵さま」
「はみちゃん。ごめんね、心配かけちゃって。朝ご飯までには戻るつもりだったんだけど」
 真宵くんの胸元に抱きついて、大粒の涙を流す春美くん。
 ・・・私はどうもこういう場面は苦手だ。
「席をはずさせてもらう」
 私は立ち上がり襖に手をかける。
「あ、御剣検事」
 外に出ようとした私を真宵くんが呼び止める。
「なんだ?」
「ありがとうございました」
「・・・礼を言われるようなことをした覚えは無い」
 外に出て襖を閉める。
 なんなのだろうか。この、こみ上げてくる高鳴りと温かさは。
「こういうのも、なかなか悪いものではないな」



「ん~。生き返るなぁ」
 食卓に私と成歩堂、それに真宵くんと春美くん。
 4人で少し遅めの昼食を取っていた。
 朝の衰弱がウソのように、真宵くんはいつもの元気を取り戻し、目の前の丼からラーメンをすすり上げている。
「あ、そだ。はい。なるほどくん」
「へ?あ・・・何これ?」
 真宵くんは、着物の袖から小さな巾着を取り出し、成歩堂に向かって差し出す。
「お祝い。こんなものしかあげられないけど」
 成歩堂は首をかしげたまま、巾着を受け取り、その口をあける。
 中には小さな丸い水晶のようなものが入っていた。
「これ」
「昔・・・お姉ちゃんが、お母さんから貰ったものなんだ」
「千尋さんが?」
「お姉ちゃんだけが貰って、私は貰えなくて・・・悔しくて、里の氷室に隠してたの」
「まぁ、あそこにですか?」
 真宵くんの言葉に春美くんが驚く。
 氷室か・・・なるほど、そんな場所に行ってたから、あれほど体が冷えていたのか。
「でも、それじゃあ、千尋さんと真宵ちゃんのお母さんの形見みたいなものなんじゃ」
「いいの。なるほどくんに持ってて欲しいから」
「え?」
「・・・あやめさんと・・・仲よく・・・ね」
 真宵くんが急に立ち上がり、部屋を飛び出して行ってしまった。
 顔を手で隠していたからわからなかったが・・・泣いていたのではないだろうか。
「真宵さま!!」
 春美くんも後に続いて部屋を飛び出す。
「真宵ちゃん。何で?」
 成歩堂は彼女の行動の意味がわからず、頭を掻きながら彼女の出て行った方を見ている。
「成歩堂・・・お前、本気でそれを言っているのか?」
「本気って。仕方ないだろ、わからないんだから」
「そ、そんな洞察力でよく今まで弁護士を続けてきたものだ・・・呆れて物も言えないぞ」
「そんな僕に負けた御剣はなんなんだよ」
「人の揚げ足を取るのだけは本当に上手いな・・・真宵くんはな、キミとあやめくんのことを」
 こんなことを説明している自分が馬鹿らしくなってきた。
 そもそも、どうして私がこんなことを。
「あ~・・・やっと色々理解したよ。はぁ・・・全部誤解なのに」
「なんだと?」
「あのさ、御剣。僕が彼女と一緒に居たのは」



 私の目の前に真宵くんが座っている。
 膝を抱えて。見た目に悲しみに耐えているのがわかる。
 ここまで来たものの・・・なんて声をかければいいのだ?
 そもそも、これは私ではなく成歩堂のするべきことではないのか?
「大丈夫ですよ・・・私は」
「気づいてたのか」
 真宵くんの隣りに立つ。気づかれていたのなら、話の切り出し方を悩むことはない。
「真宵くん・・・成歩堂と美柳あやめのことなのだが」
 真宵くんはなにも返事をしない。
「どうやら私たちの勘違いだったようだ」
「・・・勘違い?」
「あぁ。成歩堂は私情で彼女に会いに行ったのではなく、仕事で会いに行ったらしい」
「どういうこと・・・ですか?」
 真宵くんが顔を私の方に向ける。
「あの日、仮出所を迎えた美柳あやめだが、身寄りも親族もいない。そのため、成歩堂が身元を引き受けたというのだ」
「でも、ならどうしてあんなウソを」
「・・・キミのためだそうだ。母親との思い出・・・それを思いださせないように」
 真宵くんはまた顔を自分の膝にうずくめる。
「ありがとうぎざいます・・・御剣検事」
「あ・・・あぁ」
 私もその場に腰を下ろす。
 空が青く、木々はまだ茂っている・・・本当にここはいい場所だ。
 どれだけの時間、そうしていただろうか。
 急に真宵くんがその場に仰向けに倒れこんだ。
「真宵くん?」
「・・・うん。すっきりしました。もう、なるほどくんのこと吹っ切りましたから大丈夫ですよ」
 顔を私の方にむけて笑顔を見せてくれる。
 笑顔。しかし、心なしか普段の彼女とは違っていた。
「いや、成歩堂とあやめくんのことは」
「だって。身寄り無いって言ったって、葉桜院だってありますし」
「まぁ・・・確かにそうだが」
「なるほどくん、自覚してるのかどうかわかんないけど・・・きっと、あやめさんを好きなんです」
 本来ならば正規の保護観察官がつくし、身寄りがなければそれ相応の施設がちゃんと備わっている。
 にもかかわらず、成歩堂が身元引き受け人になるなんて、特別な感情でもなければおかしい。
 確かに成歩堂と美柳あやめの間には何かがあるのかもしれない。

「さて。遅くなる前に帰らないとまたはみちゃんに心配かけちゃうな」
 真宵くんは立ちあがろうと、地面に手をつく。
「あ・・・あれ?」
 が、体に力が入らないのか、バランスを崩し私の方に倒れこむ。
「ごめんなさい。よっ・・・あっ」
 再度立ち上がろうとする彼女の腕を掴み、私は彼女を抱き寄せる。
「御剣検事?」
 真宵くんは大きな瞳に涙を溜めながら私の方を見上げる。
 小さい体で一生懸命に我慢し無理をしたのだろう。
 表面では理解し吹っ切ったつもりだろうが、内心では泣きたい気持ちを我慢しているのだろう。
「泣いていい・・・今は私しかいない」
「え?」
「泣き顔を見られたくないのなら私の胸を使うといい・・・声が聞かれたくないなら耳を塞いでおこう」
「・・・みつるぎ・・・けんじ」
 大粒の涙が零れ落ちる。
「う・・・うぅ・・・うわぁぁぁーーーーーーー」
 彼女の温もりと重さを感じながら、その頭をゆっくりと撫で続けた。

 太陽は完全に地に落ち、空にはうっすらと星が瞬き始めた。
 真宵くんは泣き疲れたのか、私の胸の上で穏やかな寝息を立てていた。
「んっ」
 微かに目蓋が動く。
 そう思ったら、勢いよく顔を上げて私の顔を見る。
「はっ・・・あ、御剣検事・・・あれ?私」
 彼女の顔が見る間に赤くなっていくのが薄暗い中でもわかる。
 だが、その顔は先ほどまでの表面だけの笑顔ではなくなっていた。
「ご、ごめんなさい。私・・・なんで」
「気にするな。少しは楽になったか?」
「え?あ、はい」
「ならばいい。キミは、その心からの笑顔がとても似合う」
 真宵くんがさらに顔を赤くして何かを呟いたが、誰かがあげている大きな声にかき消されてしまった。
「あ、はみちゃんの声。いこ、御剣検事。今日は私がごちそうしてあげきゃっ」
 まだ完全に体に力が入らないのか、立ち上がった時にまたバランスを崩した。
 私はそれを抱きとめようと腕を伸ばす。
「真宵く」
 目の前に真宵くんの顔がある。
 そして唇には温かい・・・彼女の唇が。



 あの日。私は用事があると言って倉院の里を後にした。
 真宵くんは『あれは事故だよ事故。だから気にしないで』と言っていたのだが・・・気にするなと言うほうが無理に近い。
 やはり悪いことをしてしまった。
 何かお詫びの品を持って行かなくては。しかし、何を持って行けば彼女は喜んでくれるのだろう。
 いやいや、喜んでもらうために行くのではない。許してもらうためだろう。
「う~む」
 私はネットや贈り物のパンフレットなどを眺めながら、ここ数日、唸り続けていた。
 どうもこういうことは苦手だ。
「この服は・・・いや。こっちのカバンなんて似合いそうではないか?」
「え~。出来ればもう少し明るいのがいいなぁ」
「そうか。では、こっちなんてどうだ?」
「いいね。うん。その色好きかな」
「ふむ。これに・・・ん?」
 私は見ていたパソコンから視線をはずし、後ろを振り向く。
「こんにちは。御剣検事」
 そこには、いつもの笑顔と変わらない表情を浮かべた真宵くんが立っていた。
「あ・・・あぁ。真宵くん?」
「はい。そうですよ?」
 夢でも幻でもないな。確かにあの日から寝不足の日は続いていたのだが。
「何故ここに?」
「あ~。なんか、なるほどくんの所居づらくなっちゃって」
「実家は」
「みんな私のこと家元家元って言って窮屈で窮屈で」
 不思議な沈黙が訪れる。
 彼女は不法侵入してきたのだ、私にはそれを問い詰める権利が・・・いや、違うな。
「・・・ぎ検事?」
 検事として彼女を真っ当な道に・・・それも違う。
「るぎ検事・・・御剣検事ってばぁ」
「あ・・・あぁ。何の話だったかな・・・あぁ、そうだ、来週の裁判の資料を」
「み・つ・る・ぎ検事!!」
 真宵くんが頬を膨らませて私を睨んでいる。
「どうして私を無視するんですか」
「あ~・・・いや、私自身、こういう場になれていないというか・・・どうしていいかわからなくてな」
「もう。じゃあ、羊羹持って来たんで、一緒に食べながらお話しませんか?」



「でだ。なぜキミがここに?」
「一つは居場所が・・・で、もう一つは御剣検事にお礼を言いに」
「お礼?」
「はい。慰めてくれて・・・すごく・・・嬉しかった」
「あ・・・あぁ。いや。あれは、別に」
 邪気の無い笑顔とは彼女のような笑顔を言うのだろうな。私には絶対に無理な話だ。
「御剣検事って、冷酷で冷静で冷淡な氷みたいな人だなって思ってた時期もあったけど」
 今まで有罪にしてきた者たちにも同じように思われているのだろうか。
 狩魔の業・・・いや、報いだな。
「でも、抱き締められた時、すごく温かくって・・・あの、キス・・・した時」
「あ、あれは事故だ。キミもそう言って」
「事故です・・・事故なんです・・・でも・・・あのキスで・・・私の心がずっと温かくなったのは事実で」
 気づいた時には真宵くんの顔が紅くなり、私から視線をそらすようになっていた。
 彼女は私を責めに来たわけではないのか?
「もう一度・・・今度はちゃんと・・・して欲しい」
 彼女は立ち上がって私の隣に座る。
「・・・御剣検事」
 私の顔を見上げる彼女の顔は、少女から大人の顔へと変化していた。
 艶かしくも美しい表情。
「後悔は無いな」
「・・・はい」
 私は彼女の頬に手を当て、顔を近づける。
 小さく震えた唇に、自分の唇を重ねた。
「んっ」
 温かい。まるで彼女の温もりが全身に伝わってくる。そんな感じが体を駆け抜けた。
「御剣検事」
「・・・真宵くん」
 私は彼女を抱き締めた。
 小さな体は私の腕の中に完全に収まり、お互いにお互いを感じることが出来た。
「私は今まで本当の恋愛というものをしたことが無い。誰に対しても必ず一歩以上の距離をあけるようにしてきたからだ」
 真宵くんを愛しいと思うようになったのはいつからだろうか。
「だが、キミは違う。その一歩を踏み出し。心から抱き締めたいと思う」
 最初はただ変わった子としか思っていなかった。いや、つい先ほどまでそうだったはずだ。
「・・・愛している」
 こんなにも私の心を掻き乱す。だが、今はとても気持ちがいい。
「卑怯だよ」
 真宵くんの声が耳に入る。
「冷たい御剣検事しか知らなかったのに・・・こんなに温かくて優しいなんて」
 私は目を瞑って彼女の一言一句、聞き漏らさないように集中した。
「失恋したばかりの女の子に、こんな一面見せるなんて卑怯だよ」
 彼女の顔を見る。
 涙に潤んだ大きな瞳が私の方を見ている。
「私も・・・御剣検事のこと・・・好き」
 彼女はそう言うと、その口で私の口を塞いだ。

「で、この後はどうするのだ?」
「ん~・・・里に帰ると皆うるさいし・・・なるほどくんはあやめさんの受け入れ準備に忙しそうだし」
 そういえば、美柳あやめが正式に出所することになったのだったな。
 まだ半年は先の話だが。
「行くところが無いなら、ここに住むといい」
「え!?あ・・・でも・・・」
「どうした?」
「ほ、ほら。若い男女が2人っきりって・・・私は別にいいんだけど」
「あぁ。その心配はない」
 私はコーヒーをすすりながら、カバンから書類を出す。
「明日、アメリカに立つ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。どういうこと?」
「向こうの裁判で少し気になる判例があってな。見てきたいと思っていたのだ」
 本当は真宵くんのことが気になりどうしようかと考えていたのだが。
 その心配もなくなり、心置きなく旅立てると言うものだ。
「・・・御剣検事の・・・ばかぁぁぁぁ!!」
 突然、真宵くんは大きな声で怒鳴りだした。
「ばかばかばかばかばかばかばかばか。もう決めた、絶対に浮気するんだから。私だって、結構美人だし」
「ふぅ。まだ抱いてすらいないのに、いきなりの浮気宣告とは。先が思いやられる」
 私は真宵くんを抱き寄せる。
「抱い・・・うぅ。だって、御剣検事が」
「一ヶ月だ。一ヶ月で帰る。そして、それからはずっとキミの側にいよう」
「・・・ホント?」
「あぁ。アメリカの検事局を止め、日本の検事局に復帰する。日本を拠点とすればいいのだからな」
「・・・わかった。一ヶ月だからね。それ以上は絶対に待たないから・・・もう、ウソはやだからね」
 私は肯定の変わりに、彼女にキスをする。
 一ヶ月後まで彼女を忘れないように。長く・・・長く・・・
最終更新:2006年12月12日 23:47