御剣は何故かきょろきょろとしている。
「どうしたのよ、レイジ」
「いや、何と言うか……今から考えてみると、とんでもない事を頼んでしまったような気がしてならないのだが」
「実際そうでしょう」
「ムぅ……」
「まさかソファで寝るつもりじゃないでしょうね」
「そうでなければ、キミも嫌だろう?」
「誰が嫌って言ったのよ」
「ム……良いのか、メイ?」
「良くなかったら引っぱたいてるわ」
布団の中で冥が答えた。それを聞いて、御剣もためらいがちに入って来る。
端で向こう側を向いて眠ろうとする御剣に、「こっちくらい向きなさいよ」と冥は言った。
言ってから、しまった、とも思ったが、別に気にする事も無いか、と冥は思った。
一方の御剣は、そう言う風に言われて断ることも出来ず、言う通りに冥の方を向いた。
二人は見詰め合う形になる。
「……」
「……」
言葉を発する事すら忘れ、ただお互いの息遣いだけが聞こえる中、二人は身を寄せ合っていた。
それもその筈で、今は肌に触れる大気は二月の物なのだから。

不意に、御剣が冥の髪に指を絡める。
「……メイは…随分と綺麗になった」
言われた冥は驚き、途端に赤くなった。何しろ言った本人でさえ真っ赤になって
目を逸らしてしまっているのだから。
「な、そんないきなり、何を言い出すのよ!」
「いや……去年からずっと思っていた。言うタイミングを逸していてな」
「だからって、何も今言わなくたって良いじゃない」
「今でなければ、恐らく言えないだろうと思った」
照れながら、それでもきっぱりと言う御剣の姿に、言葉に、冥は思わずくらくらするような
めまいを感じた。
「去年は…私達を隔てていた五年と言う歳月が大きかった事を実感した。キミはアメリカで、
私は日本でそれぞれ検事として立って以来の五年、だ」
「……」
「正直、逢った時は……メイは随分と女性らしくなっていた。見違えたぞ」
「微妙にシツレイな感じがするわね」
「誉めているんだ」
フッ……と笑って、御剣はより冥に身を寄せる。
いや、冥の身体を引き寄せたのだ。
冥はその行動に驚いたけれども、別段焦る様子も、拒絶する様子も無い。
「あれから……キミと私は進む道は同じであれ、住まう場所を違えた」
優しく、御剣は冥の髪を撫でる。
その大きく温かな手の感触に、冥も思わず目を細める。
「…辛かった」
「レイジ?」
「時を同じく生きていても、隔てられた『場』は時として私を苦しめた。メイに逢えない。その事実が」
撫でていた手が、そのまま冥の首の後ろに回され、そのまま引き寄せられる。
「あ……」
抱き締められる形になり、冥は思わず切ない声を上げる。
「寂しくとも、辛くとも…触れられずとも生きなければならない。生き続け、進まなければならない」
強く、強く御剣は冥を抱き締めた。
一方の冥は、抱き締められながら御剣の事を抱き締め返した。
「キミの事だ。きっと前に進めるだろう。だが……私にはいささか苦痛でならなかった」
「レイジ……」
「きっと私は……メイに依存をしてしまったのだ。情けない物だな。依存云々で偉そうな事を言っていた、この私が」
自身の事を軽く鼻で笑うと、冥は微かに首を横に振った。
「……それは、きっと」
冥はそのたくましい胸元に頬をすりつけ、愛しそうに呟く。
「その依存は、きっと間違った物ではないわ」
「だが……」
「私だって……いまだに依存しているもの」
やっと分かった。
今までだるかった、その訳が。
それは、逢えなかった事に対する空虚感。
御剣に、逢えなかった事に。
「どうやら、私はあなたが望むようにはなれなかったようね」
冥が御剣の事を見詰めながら言った。
「私はまだ…依存している……………あなたに」
「!」
冥のその言葉に、御剣は思わず息を呑んだ。
目の前に居る女性が、自分に依存していると言う。自分が依存してしまった女性が。
「メイ……」
御剣は冥の柔らかな頬にそっと指を添えた。
「……好きだ」
「っ…」
その一言に、お互いは頬を染め合う。
こうした恋愛を覚える前に、二人は検事になってしまったから。
御剣がまだ『罪』に依存していて、冥がまだ『父』に依存していた頃。
二人は、全てを切り捨て、己が有罪の為にその法廷に立っていた。
「……私も、好きよ…レイジ」
ぽつり、と微かに冥が御剣の言葉に答えた。
二人が、こうして向き合えた時。
御剣は、冥は自分の想いを抑える事は出来なかった。

身を覆っている衣服をそっと御剣が脱がして行く。
豆電球で照らされているために、それで目が慣れてしまった二人には互いの表情が手に取るように分かる。
相変わらずの仏頂面で、でも必死(?)になって冥の事を愛そうとする御剣。
そんな御剣の表情をまともに見れず、その厳しさを感じさせる目を細め、視線を逸らしている冥。
「メイ……」
御剣は冥のまぶたにそっとキスをしながら、冥の名を呼ぶ。
その声に、冥はぞくりとしながら愛しさに御剣の腕にすがる。
衣服を脱がしていた御剣の腕が、冥のその行動に阻まれ、しばし止まる。
「やっぱり…その、レイジ……」
「何だ?」
御剣は耳元で囁きながら、すがりつかれた腕に視線を落とす。
「これは……私には、ちょっと…」
「恥ずかしいのか?」
「当たり前でしょう!! レイジは恥ずかしくないの!?」
「死ぬほど恥ずかしい」
「顔がそう見えないわよ!」
「それは悪かったな。顔までは変えられない」
御剣の言葉に、冥が「バカ!」と言う。
その言葉に、御剣は少し肩をすくめ、そしてそれでも冥に笑いかける。
まるで冥の羞恥心を少しでも和らげるために。
「……」
冥は再び視線を逸らし、腕の動きを阻んでいた自身の腕を解いた。
「……キスが、先でしょう?」
ためらいがちにそう言うと、御剣は目を丸くして黙っていた。
が、やがて「フッ……」とおかしそうに笑うと、冥の衣服に掛けていた手を離し、冥の頬に添えた。
「それは気が付かなかった。そうだな、順序が在るな」
「~~~っ!」
茶化されていると感じ、冥は声にならない抗議の声を上げる。
だが、冥が何かする前に、御剣は既に真剣な眼差しで冥の事を見詰めていた。
こんな風に見詰められてしまっては、言いたい文句も言えなくなってしまう。
観念して、冥は言いたかった文句を溜息に変えて吐いた。
「……」
御剣が冥の顔へとあの仏頂面で顔を近付けた。が、そこでしばし止まる。
「……?」
「ム…その」
ごにょごにょと御剣が言葉を発する。
「目を、閉じてくれないか? 流石に、見られたままはキスを仕掛けるのに恥ずかしい」
「……っ、バカ」
そう言って、冥はそっと目を閉じた。
視覚が塞がれ、冥の感覚は全て聴覚と触覚に委ねられた。
薄ぼんやりとした黒の中で、自分の吐息、御剣の吐息、そして徐々に近付いて来る
御剣の温もりが感じられる。そして、それに対して冥はある種の不安と期待に駆られていた。
「…………」
静かに、そっと。
二人は口付けをし合った。
軽く、優しく、柔らかく・……
長く、二人は口付けをしあっていた。そして……
「ぶはっ!」
「ふ、ふぁっ!」
窒息寸前の所でやっと二人の顔が離れた。
「何考えてるのよ、バカッ!」
「ム…だが、どうしたタイミングで離れれば良いのか分からなかった……」
「…もう……本当に、バカよ」
赤面しながら、冥は文句をぶちぶち言った。言われている御剣は、
まるで主人に怒られた犬のようにしょんぼりとした表情で、冥の文句を甘んじていた。
「あなたって本当に、そうした事に関しては興味が無かったのね。
根っからの裁判っ子って事かしら」
そう言ってから、冥が突然御剣の唇に自分の唇を重ねた。
そして、ゆっくり離す。
「深刻に考えないで、普通に離れれば良いのよ」
冥の言葉を聞いてから、御剣はやっと自分の身に起こった事を認識し、唇に指先を持って行く。
そして、冥の事をじっと見詰めた。
「……キスをしたのか?」
「何で確認するのよ! それ以外に何だって言うのよ」
「いや…別に。ただ、何となく信じられなくてな」
「何がよ」
「メイからこんな事をしてくれるとは、と思って」
御剣の言葉は、冥の顔を赤く染めるのに時間を要させなかった。
「な、バ……」
「バカな事、だろうか?」
御剣の率直な意見に、思わず冥は黙りこくってしまう。
彼のまっすぐな言葉は、冥の文句をことごとく打ち砕いてしまう。
「……知らないわ」
ヤケになって冥がそう言う。その姿を見て、御剣は「やれやれ……」と溜息を吐いた。
「そんなにすねるな、メイ」
「知らないって言ってるでしょう、もう、レイジなんか……」
そこまで言った時、御剣の唇が冥の言葉を阻止していた。
「んっ、ふ……」
冥も突然の行為に思わず目を丸くし、あえいだ。だが、目を閉じると、御剣の行為を受け容れる。

御剣は、冥の口内に舌を割り入れて来た。
その舌の、帯びている熱。
御剣の舌が、冥の舌を求めて口内を少々遠慮がちにあさる。
その行為は、愛したいという事よりも、冥に対してなるべく負担が掛からないように
との気の回しのようであった。
メイは思わず御剣の事を引き離す。
「ム……?」
御剣は少々驚いたような表情をして冥の事を見た。
「…どうして気を使うのよ!」
「?」
「こんな……傷付けるのを恐れるような、そんな接し方、嫌よ!」
「メイ……」
「好きなら……もっと踏み込めば良いじゃない」
冥の言葉に、御剣は何も答えられなかった。
正直、冥の事を傷付けまいと、行動して来て、接して来た。
好きだからこそ、その好きな相手を自分が傷付けてしまったら……
そんな不安が、御剣の中に在ったのだ。
「…好きなら……傷付けられたって…あなたが……レイジが居れば平気なんだから」
「………」
決して、冥はこうした事をぱっと言えるような性格ではない。恐らく言うには
大変な勇気が必要であっただろう。
同時に、その勇気が自分に向けられている事を実感し、御剣は今までの自分を
情けなく思った。
「そう、だな……」
うなずき、御剣は冥に頬ずりをする。
「すまなかった」
「……良いのよ、もう」
冥はそう言って、愛しそうに御剣の頬に指を触れさせる。
「あなたがここに居る。それが分かるから」
目を細め、冥が言う。その言葉を、御剣も目を細めて聞いた。
二人は、再会してから今にかけての一年間。
ひたすら孤独と思慕に潰されそうになりながら、生き続けていた。
冥は仕事に打ち込んだ。
御剣は諸国を渡る忙しさを選んだ。
お互いが逃げていたからこそ、今この瞬間がいとおしい。
御剣は再度冥の唇を塞いだ。そして、冥の舌を絡め取る。
先程よりかなり強引なのは、恐らく自分の気持ちに正直になり、踏み込んだから。
それを感じたのか、冥も目を閉じて己の舌を御剣の舌に合わせて躍った。
「う…んぅ、ふっ……」
冥のくぐもったあえぎ声が、二人の耳に付く。
そんな冥の事を気遣いながらも、自分の想いに正直になって冥の事を貪る御剣。
やがて、ゆっくりと御剣は唇を離した。そして、冥の事を見詰める。
「メイ……その。脱がせても良いだろうか」
「嫌よ」
「ム……」
冥の拒否に、御剣は一瞬たじろいだ。
それ以上コトを行おうとすると、叩かれてしまうだろうか?
御剣はそんな事を思いながら、冥の目をじっと見続けた。
「………」
「………」
「………冗談に決まってるじゃないの」
少しむくれたような声で冥が言うと、御剣もすぐに笑う。
「こう言うのを、本当に『嫌よ嫌よも好きの内』と言うのだな」
「……電話の時から思ったんだけど、何なの、それ?」
「日本古来継承されて来た、日本人にとって有り難い言葉だ」
御剣がそう言ってやると、冥は「ふうん……」と言ってその言葉を反芻した。
実際この言葉が日本古来から在ったかどうかは謎であるし、有り難いかどうかは
個々の問題であると思われるのだが、あえてそれを御剣は言わなかった。
一方の冥は、新たに植え付けられた知識に、「使える場面は在るかしら……」と、
既に使おうとしている意を表していた。その姿は少々微笑ましい。
そんな姿を見ながら、御剣は脱げ掛かっていた冥の衣服を再び脱がせ始める。
当然、冥は焦ったが、それを御剣の頬ずりでなだめる。焦っていた冥は、頬から伝わる温もりに、
思わず目を細めて御剣の行為を受け容れた。
静かに、冥の衣服が脱がされ、ベッドの上に落ちた。
冥の事を覆うのは、下着のみとなる。
冥は御剣と目を合わせないように、そっぽを向いた。それを、御剣が冥の頬に手を当てて、
ぐいと自分の方へと向かせる。
「見ていてくれないか?」
「!」
「キミの視界から、私が居なくなるからな」
「何よ、辛いの?」
「辛い」
御剣の素直な言葉に、思わず冥は目を見開いた。
「やはり…キミの目から私が居なくなるのは、苦しい」
「……」
その真剣さに、冥は思わず返す言葉を無くしてしまう。
「…バカな事だろうか?」
「…………だとしたら…私もバカね」
自嘲気味にそう言ってやると、御剣は愛しそうに冥の頬を撫で、髪を撫で、
そして額にキスをする。
その片方で、御剣は冥の下着を外してやる。
冥の下着ははらり、とベッドの上に落ちた。
頬を赤く染めた冥の姿が見える。今や冥は下半身を護る布地以外は生まれたままの姿となっていた。
「レイジ……」
「心配無い」
冥にそう言って、御剣はその豊かな乳房に手を置いた。
びっくりするほど、その白さに相対して肌は熱かった。
御剣は冥の熱を感じながら、その置いていた場所に、優しく刺激を与える。
「ン……」
眉をしかめ、訪れた快楽に冥は思わずうめいた。それを見て、御剣がたじろぐ。
「い、痛かったか?」
「そうじゃないわ…ただ、少し驚いただけよ」
冥はそう言って目を閉じ、力を抜く。
御剣はそれを見て、指先で冥の事を弄び始めた。
すぐに冥の身体はそれに反応し、胸の先端がぷくり、と形を現した。
「ム……」
しばしきょとんとしたような表情になったが、やがて御剣はおかしそうに笑った。
「先程と、どちらの方が立つのが早かったのだろうな、メイ」
「え……?」
「その…アレだ。浴室での…うムッ!」
御剣の頬に冥の平手が来ていたので、慌てて御剣は冥から一旦離れる。
冥の口から「チッ…」とか言う舌打ちが聞こえたような気がしなくも無い。
「き、聞いてたの!?」
「ム…まあ、そうだな。と言うか今舌打ちをしなかったか?」
「そんな事はどうでもよろしい」と言って、冥は御剣の方を見る。
「ど、どの辺りから……」
「実はその、メイが私の名前を出した時から、だ」
冥が御剣の名前を出した時……
-バカみたい…何でそこでレイジが何かするかを考えなくちゃならないのよ-
(あの時かっ!)
馬鹿馬鹿しい、と思いながら、冥が湯に顔を付けて、湯から顔を出すとふるふると振った、あの時だ。
よりによって自慰を行う直前ではないか。
「最悪ッ!」
そう言って、冥は掛け布団に包まってしまった。
「メ、メイ?」
「うるさいッ! バカッ!!」
御剣の事を振り払おうと、冥はじたばたと暴れた。
そんな冥の行動に手を焼きながら、
(何処が悪かったのだろうか?)
などと思ってしまう御剣。
だが、その疑問を今解くよりも大切なのは、この目の前に居る、すねてしまった愛しい人の視界に、
もう一度自分が入る事である。
軽く溜息を吐いてから、御剣は掛け布団ごと冥の事を抱き締めた。
「!!」
抱き締められた冥は暴れるのを止める。
「済まなかった。その、キミにとって私のした行為は傷付く事だったのだろう」
申し訳無さそうに言いながら、御剣は掛け布団を優しく剥がした。
そこには寝床にへたりと座って御剣の事を見詰める冥が居た。
「その……だが、キミの口から私の名前が出た時……正直、嬉しかった」
「な、何でよ」
「何となくだ」
そう言って、彼は冥の髪を撫で、微笑み掛けた。
「許してくれないだろうか? 聞き耳を立ててしまった事を」
「~~~っ」
正直、許し難かったが、御剣のこんな優しい笑みを見てしまうと、無下に断れない。
「……」
「そのだんまりは、肯定と取って良いのだな?」
御剣の言葉に、冥は答えなかったが、その代わりに御剣の事を抱き締める事で答えた。
御剣は目を細め、先程中断した行為を再開した。
先程の行為のために、先端はすっかり姿を現している。だが、それ以上にこの季節の寒い空気も在るだろう。
その先端を御剣は少し爪を使い、ぐりぐりと押してやる。
「ン、はぁッ…!」
ひく、と冥の身体が震え、軽くのけぞる。
冥の目許には羞恥から来る涙が浮かび、熱い吐息が御剣に掛かる。
そんな姿を見て、御剣は思わず生唾を呑み込む。
そして、目の前であえぎ、御剣へ熱いと息と視線を送る女性の、いじっているそこに御剣は口を付けた。
「やっ……」
冥の身体が震え、御剣の唇に触れた先端が軽くこすれる。その反動で、冥は「ひゃ、ぅ…」と見悶えた。
目だけ冥の事をちらりと見てから、御剣はその先端に吸い付くようにする。
かり、と御剣が歯を立ててそれを味わう。
「レ、レイッ……ん、はぁあっ!」
びくびくっと冥は御剣からの快楽に甘い声で鳴く。
普段気丈で意地を張っている冥が、こんなにも大人の顔をして甘い歌を歌う姿を見て、
ずっと無意識下で抑え込んでいた御剣の『過度の本能』に火が付いた。
乳首を甘噛みしながら、御剣は冥の無防備になっていた下半身に指を差し向けた。
「っ!!」
冥がそれに気付き、足を閉じようとしたが、既に御剣の指は冥の両足の間に居た。
そのままショーツ越しにぐりっ、と指をねじ込める。
「あ、ああぁっ、んっ!」
身体中がまるでしびれたみたいに、冥の身体が震え、張りつめる。
緊張し切った身体は、御剣の指を拒めない。

御剣の指の腹が擦り付けられ、摩擦と元から帯びている熱とで、そこは徐々に熱くなって行く。
それと同時に、御剣の舌が冥の乳首を舐め上げる。
「やっ、あ……レイジ…ッ!」
首を振り、赤面しながら冥が懇願する。
その表情は切なげで、御剣の本能が、彼自身により深くを求めるように促す。
御剣は冥の乳首から唇を離すと、冥の首筋をちろり、と舐める。
そして、指はだんだんと湿り気を帯びて行くショーツを、窪みにそって運動させる。
「ひゃ、うぅっ…あ、ア…」
冥がいやいやと首を横に振るが、御剣はその拒否に答えず、指先をしばらく窪みに這わせ、こすった。
目をきつく閉じて、冥は御剣の指の運動に耐える。だが、羞恥心まではそれに耐え切れず、
冥の顔が真っ赤に染まって行った。
「可愛いな、メイ」
「やっ、バカッ! そんな……」
耳元で囁かれた御剣の言葉に、思わず冥は首を横に振って御剣に毒吐こうとする。だが、
御剣が耳たぶに舌を這わせると、そうした意地を張ろうとしていた冥はぞくりとし、それ以上何も言えなくなる。
(そろそろ、頃合か?)
御剣は冥の表情を見ながらそう思い、指の運動を一旦止める。
冥が「?」と御剣に視線を投げ掛ける。急に終わった快楽を生じる運動の余韻に浸っているようだ。
そんな冥の姿を見て、御剣は愛しさに彼女の身体を抱き締めた。
「ン………」
抱き締められながら、微かに冥が声を上げる。そして、冥の方から頬ずりをした。
その反応は、拒絶でない事が分かった。御剣は止まっていた指を、今度は冥のショーツに引っ掛ける。
腰に指が当たったためか、冥はくすぐったそうに身体をよじらせる。
「メイ…腰を、上げてくれ」
御剣の要求に、冥はおずおずと腰を浮かす。
(ム……う……)
その意地らしい反応にいちいちソコも反応してしまう自分が少し哀しい。
少し苦しくなって、御剣は思わず屈んだ。
「…どうしたの、レイジ?」
「い、いやその……シツレイ。少し、その…男と言うのはなかなか難しい」
「……何それ。性転換でもするつもり?」
冥の発言に、御剣は「バ、バカな事を言わないでくれないか!」と焦る。
大体、どうしてこうした行為に直面していると言うのに、ムードのカケラも無いのであろうか、
と御剣は少々泣きそうになった。
(まあ、メイにムードを求めても、無理か)
さりげなく酷い事を思いながら、御剣は指に引っ掛けていたショーツをするりと引く。
冥が腰を浮かせていた事も在り、すんなりとその布地は冥の太股の間から足首まで降りた。
酷く赤面して冥が黙っているのが、明かりに照らされて分かる。
御剣は冥の両足に手を掛け、その足を左右に開かせた。
薄くではあるが明かりが点いているので、『そこ』は陰りまで御剣の目の前に見せた。
「ちょっ、レイジ! そ、そんなに見ないで……」
焦りながら、冥が訴えた。
「ふム……なかなか綺麗な…うおっ!」
御剣が何か感想を言う前に、冥の足がじたばたと震え、慌てて御剣は口をつぐんだ。
どうも彼女にはジョークが通じない。
(こんな状況で、ジョークをかます私も私か…)
反省して、御剣は冥の両足をそのまま左右に固定させ、自分のモノをさらけ出した。
その姿に、思わず冥はぎょっとする。
「レ、レイジ」
「何だろうか?」
「それ……入るの?」
「ム……」
冥に言われ、少し御剣は困惑した表情をする。
「まあ、そうだ。その……そうだ」
うにゃうにゃと返事をする御剣。やはり、こうした事に及んだに際して、御剣自身
経験不足と言うのが仇となったと自分自身で思った。
「信じてくれないか? メイ」
「…………」
冥はふい、と横を向いた。
「信じなければ、私はここで待ってないわ」
唇をすぼませながら、小声で言う冥の告白に、御剣は愛しさから思わず自身が堅くなるのを感じた。
御剣は焦燥感に駆られながら、自身をそこにあてがった。
びくり、と冥が震えたのが分かる。
「こ、怖い……」
身体を微かに動かしながら、冥が言う。
だが、その言葉に反して、冥の『女』は既に快楽に『涙』を流し、その場所を濡らしていた。
「平気だ。信じてくれれば……私はキミを、精一杯愛する」
「! …分かった、わ」
目を伏せ、冥はそっとうなずいた。そして、精一杯腕を延ばし、御剣の首に巻き付ける。
「好きよ、レイジ」
「メイ……」
御剣は目を細め、冥の唇に優しくキスをした。

唇に互いの熱を感じた後、御剣はその身を進めた。
「あ、つぅ…っ!」
挿入から来る痛みに、冥は眉をしかめた。だが、「平気か?」と御剣が尋ねると、
冥は目を潤ませているものの、「平気よ、大丈夫」と答え、御剣の頬に自分の頬をこすり付けた。
冥の事を考えると、すぐに止めるべきだと思ったが、その無理を押して自分と繋がる事を望んでいる。
その事実が、御剣を更に先へと進めさせた。
「ぐ……ぅ…」
思いの外冥の中が狭く、堅くなってしまった彼にとっても苦痛が伴ったが、ここで引き下がっては、
今までの想いが全て無駄になってしまう。
せめて、その想いを何らかの目に見える形にして伝えたい。
「あ、くふっ……ああっ!」
一方の冥も、そう思っているのだろうか。御剣のモノを入れられて、恐らくは叫びたいほどの苦痛を
伴っているだろう。だが、その苦しい表情を消せないまでも、決して彼女は拒絶の悲鳴を上げなかった。
狭さに悲鳴を上げない彼女の代わりに、繋がりを保っているそこが、その許容を越えるモノを受け容れ、
音にならない悲鳴を立てている。
「ひっ、んんっ…うぁあっ!」
御剣が徐々に身を進めれば進めるほど、伴う痛みに冥は悲鳴を上げる。
やがて、御剣の進行が妨げられる。
まさか、と御剣は思った。思ったが、 意を決して身を更に進めた。
「あっ、い、痛いっ、い……く、ふぁぁっ!」
冥が涙をこぼし、叫んだ。鈍い感覚と、繋がっている部分にメリッ、と音が響いた。
それが何を指し示すのか、初めの内は御剣も分からなかったが、やがてはっとして冥の事を見詰める。
「も……もしかして、初めて、だったのか?」
「当たり、前…でしょっ! そ、んな……」
痛みに声を震わせながら、冥が御剣に言い放つ。それを聞いて、御剣はぎょっとしてしまった。
「ム、す、すまない! その…初めてを、私が……」
何か言おうとする御剣の口を冥は手で塞いだ。
「何で謝るのよ」
涙を浮かべながらでは在るが、冥はムッとしながら、御剣に尋ねる。
「私は……レイジが初めて、って…決めてたんだから」
「ム………」
目の前で赤面する女性に、御剣は思わず目を丸くする。
「で、ではもしかしてキスも……」
「身内以外では初めてだわ」
何と言う意地らしい決意であろうか。
何時伝わり合うとも知れない気持ちを胸に、ずっとそうした交わりをして来なかった冥。
初めては自分が、と言われて、御剣は思わず顔を赤らめる。
「その…キミは、同僚とこうした交わりをしていたのかと思った」
「な、何でよ!」
「実は何度もそちらの検事局に電話を掛けたのだがな、その度に出たのがキミの同僚だった。
『There isn't Mei because she tries a case.(冥は審理中で居ない)』と、何時も言われたぞ」
英語混じりに御剣がそう言ってやると、「仕事に、集中してたから」と冥が理由を話す。
「キミに連絡は取れない。キミに連絡をすると何時も男が取る。正直、メイはもう、
他の男の物になってしまったのかと思った」
「な……バカッ」
彼とは何も無いわよ、と言って、御剣の事を抱き締める冥。
「信じて良いのか?」
「嘘だったら成歩堂 龍一の目の前で泣いてやっても良いわ」
そこでどうして成歩堂が出て来るのだ……と呟いてから、御剣はゆっくりと再び身を進め始めた。

動かせば、繋がっている所の隙間から、赤い物がじわり、と流れ出て来るのが分かった。
かなり痛々しかったが、だからこそこの行為を早く彼女に伝えたい。
「ンッ……く……」
先程の激しい痛みとまでは行かなくとも、やはり冥に痛みが訪れるのであろう。冥は痛みに眉をしかめっぱなしだ。
一方の御剣も、一山狭さを越えた(?)事に関する安堵感から、モノが先程よりも誇張するのが分かった。
「ひぐっ……は、ぁっ!」
胎内でまたそうした反応をされ、冥は未知の感覚に襲われる。
「レッ、レイジ…! 何か、変よっ……! お、おかし、い……私、おかしいのっ!」
それが絶頂を迎える寸前と言う事は分からず、冥は半ばパニックに陥りながら御剣の身体にすがる。
その動きが、彼にもしびれるような快楽を与えていた。
思わず御剣は最奥まで突き上げた。
「あっ…ィ……やぅっ……んっ!」
冥が目をきつく閉じ、切なく、苦しく悲鳴を上げた。
秘部が、快楽に思わず彼の事を締め付ける。
「メイ……ッ! 愛している…」
「レイッ……ジ…わ、たし……もっ」
二人は想いを確かめ合った。と、同時に、御剣はもう自分の欲を堰止められなかった。
御剣の動きが最も大きくなり、それと同時に奥に固定させたまま、彼は自分の想いと欲を彼女の中へと放出した。
「ああ、あああぁーっ…!」
冥が体を仰け反らせ、快楽に染まった悲鳴を上げる。
二人は同時に絶頂を迎え、形在る想いを伝え合った。


朝日が差し込んで来る。
冥は布団の中でもそもそと動いた。そんな彼女の身体を優しく御剣は抱き締めてから、起き上がる。
「私達……あの後眠っちゃったのかしら…?」
「うム…そうだろう。私も、あの後は覚えていない」
そう、彼らは想いを伝え合い、共に朝への眠りに就いたのだ。
御剣は寝床から出て衣服を整え、冥の方を向いた。
しばらく冥は呆然としていたが、やがて自分の衣服を直し、御剣の傍らへと立った。
「レイジ・…」
「何だろうか?」
「成歩堂 龍一は…逢えるのかしら?」
冥の疑問に「どうしてだ?」と御剣が尋ねた。冥は自分の荷物から、一枚のカードを出そうと思ったが、それを思いとどまった。
何も、彼に見せる事は無いではないか、と思ったのだ。
それに、これをダシに日本に来る事も出来る。
「何でも無いわ」
肩をすくめ、冥がそう言うと、「そうか?」と御剣も言った。
「…それにしても、妙ね」
「何がだ?」
「あなたが居るのに、どうして検事局は私を要請したのかしら?」
天才検事、御剣 伶侍が居れば、百人力じゃないの、と冥が言うと、御剣はおかしそうにクック、と笑った。
「ソコには色々と事情が在るのだよ」
「何よ、事情って」
「私は私で既に、仕事が在る、と言う訳だ」
御剣の言い方に、冥は思わず眉をしかめる。
「訳が分からないわ」
「今日キミが仕事をすれば、自ずと分かるさ。頭の良いキミになら、な」
そう言って、御剣は冥の頬にそっとキスをした。


終わり。





~愛あるおまけ~

「それにしても、どうしてくれるのよ」
「ム? 何がだろうか」
「その…そうした行為に際して、普通…その、避妊具くらい、付けるでしょう?」
冥の言葉に、思わず御剣は言葉に詰まった。
そう。
昨日うっかりして彼は避妊具を付け忘れ、冥とそうした行為に及んだ後も、
そのまま適切な処理を行わずに眠りに就いてしまったため、かなり無責任な結果となってしまったのだ。
「も、もしも妊娠していたら…どうするのよっ」
咎めるように冥が言う。
御剣はしばらく唸っていたが、やがて頬を染めた。
「何よ」
まだ怒った感じで冥が尋ねると、御剣は冥の事を抱き寄せた。
「出来ていても、そうでなくても……今回の仕事が終わったら……」
そこで一旦、御剣は言葉を切る。
正直、こうした事を言う性分でない事は、自分でも重々承知だ。
少しためらってから、それでも御剣は冥の耳元に口を近付ける。
「一緒に暮らせないだろうか?」
「……!」
彼の申し出に、彼女は面食らった表情をしていたが、やがて頬を染め、困惑した表情になった。


愛ある終わり





ごめんなさいごめんなさいっ!
こんなドリー夢入っててごめんなさい!
何より御剣ヘタレ過ぎだよとか、冥がこんな性格じゃないとか、そもそも起承転結しっかりしてないとか
そうした矛盾が生じるようなエロ小説で、本当にごめんなさい!
御剣は動かしづらい。エロにするにはちょっと動かしづらくてコトに及ぶペースが遅い……
お目汚しを…呼んで下さってありがとうございました。
ミツマヨ神様の後ろを取るのはかなり度胸が要りました。正直スマンかった……
最終更新:2006年12月12日 19:49