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第3話【イレギュラー】第2章 真理

趣里(…八つ当たりじゃん………僕のせいなのに…双海さんに八つ当たり…してしまった…)

初めての自己嫌悪…これほどまでに気持ち悪いものだとは思わなかった。
教室に入るとすでに授業は始まっていた。

西垣先生「どうした古仲?顔色が悪いぞ?」

僕の顔を見て数学担当の西垣先生が心配していた。

趣里「……いえ、大丈夫です…」

僕はそう言って真ん中の列の1番後ろの席へ座る。

弓帳「大丈夫か?」
周「…」
趣里「弓帳、周…大丈夫だよ…」

弓帳はわかったと言って授業に集中する。周は無言だったが、数十秒僕を見るといつものように授業を受ける。

西沢「………」

窓側にいる西沢はチラッと見て、ため息をついていた。

趣里(………寝るか)

気分も機嫌も悪かったので寝ることにした。ぐっすり眠れるわけもなく、またあの夢を見た。
硬式テニス部の時の夢…いい加減にして欲しかった。

趣里(この夢は見たくない…やめてくれよ…)

今度は大会4日前、僕は里兎と喋っている。

趣里「最近、左肘が痛いんだよなぁ…腱鞘炎かな?」
里兎「兄ちゃん…大会4日前なんだよね?大丈夫なの?」

…今は前よりは痛くない左肘だが、あの頃の痛みを思い出し、つい押さえてしまう。

趣里「多分大丈夫かな…」
里兎「…一応処置はするからちょっと待ってて」
趣里(もう手遅れだよ…手遅れ…なんだよ……)

あの頃は、大丈夫だと思っていた。その日の晩に、左肘の限界がきたんだ。
僕は部屋で筋トレをしていた。腹筋、背筋、そして腕立て…その最中に…

趣里「25、26…」

急に左肘の力が抜け、そのまま肘を床にぶつける。ガッという音ともに激痛が腕全体に走った。

趣里「う、うわぁあぁあああぁぁぁ!!!ひ、ひ、肘が………」

肘から白い骨らしきものが肉を破り突き出て、黒い血がぼとぼとと流れる。

里兎「な、なに?どうしたの兄ちゃん!」

隣の部屋に居た里兎が僕の悲鳴を聞いて、駆けつけて来た。

里兎「!!!?」
趣里(う…)

思い出すだけでも最悪だ…

趣里「り、里兎…母さん…呼んで…」

慌てて母を呼びに行く里兎、僕はあまりの痛さに気絶してしまった。数分後、母の通報により救急車が来た。
次に目が覚めた時は、病室だった。医者に全治4ヶ月と言われ、僕はほぼ無気力だ。
今後、左肘に負担の掛かる運動、行動の制限、部活の禁止。

医者「古仲くん、君は左肘を過激に使う動きを一切禁止します…聞いていますか?」
趣里「………」

僕はずっと天井を見つめていた。医者も諦めたか、部屋から出ていってくれた。テニスが出来なくなった。
中学を卒業してやっと運動を許された体が、一年経たずの約2ヶ月で無期限の禁止を喰らった。
腕を使わないサッカーも、もしもの事があるといけないからダメ、マラソンも何もかもダメ。
髪が抜け落ちる。ストレスで精神が崩壊しそうになる。周と里兎と母さんは僕の毎日見舞いに来る。僕が暴れて拒んでも見舞いに来る。
辛かった。いっそのこと殺してくれたら楽なのに…この言葉に母は激怒した。初めて母が怒るところを見た。
何度も殴られた…数日経って、右手を使う練習をさせられるようになる。

趣里「……う、上手く動かないな…」
周「ほらほら趣里、俺はめちゃくちゃ上手いぜ!」
趣里「うるせーな…周は右利きだろぉ」
里兎「兄ちゃん、ちょっと下手くそだな」

いつしか、笑うようになっていた僕。

趣里「あ~あ…運動禁止とか、あのクソ医者ムカつくわぁ…」
周「お前はしゃぎまくってたもんな…人生、スポーツだけじゃねぇよ…お前に合う物事なんて世の中たくさんあるかわからないからな…」
趣里・里兎「また始まったな」

周の得意の説教を聞きながら、僕は里兎の右手を支えながら練習する。
入院して1週間と3日が経った。左手も少し回復し、リンゴを掴める程度までになる。
右手はペンや箸は上手く使いこなせないが、左手よりは動く。

趣里「……入院暇」
里兎「…だから毎日来てるじゃん…こんな暑い中をね」
周「趣里、そういや松並がテニスの大会で優勝したぞ」
趣里(あの話を聞いた時、無性にイラついたな…)

ハンドグリップを片手に僕は黙ってその話を聞く。
僕はなんの為に練習してきたのだろう。左腕を壊すために練習してたのかな?左肘の傷は今見ても残酷で吐き気に襲われる。

周「…里…起……きろ…」

ふと、声が聞こえた。

周「起………きろ!!」

バン、と机の叩かれる音に体がビックリし、飛び起きる。

趣里「ふぇあぁ!!?」
弓張「見ろよ古仲、雪降ってるぞ!」

雪?寝ぼけていてもおかしい事に気づく。空気が重い。周達の様子は普通だ。でもおかしい。ハッとして西沢の席を見る。
やっぱり居なかった。
僕は急いで聞く。

趣里「弓張、今何時だ!!?」
弓張「何時ってもう四時間目終わって昼休みだ」

あれから約四時間も寝ていたのか…ていうか誰も起こさなかったのかよ…それは良いとして、僕は弁当と飲み物を持って屋上へ向かう。
きっと西沢が待ってるはずだ。

趣里「…ふぅ…ふぅ…ついた…」

別に急がなくても良いのに走ってきてしまった。屋上には五人くらい人がいる。

西沢「川橋、この二人もイレギュラーか?」
川橋「うん…間違いないわね…」
川之内「双海さんはわかったけど、まさか桑坂さんもイレギュラーだったとは…」
萌緩「あたしずっと思ってたけどイレギュラーってなんなの?川之内くんに電話した時も聞いたんだけど…」
佐奈「それに…この傷が出来たらなんでイレギュラーになるの?」

えっ?僕の他に新しいイレギュラーが現れたのか…一人は双海さんでもう一人は桑坂さんか…川之内や川橋さんもいる…あの二人は古参って感じだな…

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最終更新:2010年08月18日 02:17
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