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【内と外】

【内と外】

 ケージには、給水器、餌箱、回し車が取り付けられている。
 このなかで、ゆっくりを一匹飼うことにした。

―――――

 ゆっくりペットショップで生まれたての赤れいむを購入した。ゲスでも優秀でもないやつだ。

「れいみゅはれいみゅだよ! おにいしゃんとずっとゆっくりしゅるよ!」

 はきはきと喋る赤れいむ。自分の未来は希望に満ちていて、飼い主は優しいと思い込んでいる。

「ここがれいむのおうちだよ」

「ゆわーい! れいみゅのおうち!」

 自分一匹だけの居場所を与えられて喜んでいる。動物にとって、快適な環境はそれだけで幸福を感じさせる。ここは雨風がしのげるばかりではなく、外敵すらも存在しないのだ。

「ぐーるぐーるしゃんがありゅよ! ゆっゆっゆっ!」

 回し車を気に入ったようだ。掛け声を発して、懸命に跳ねている。
 餌箱に成長抑制剤入りの餌を入れ、ケージの扉を閉めた。 
―――――

「ゆっくりのひー♪ まったりのひー♪」

 成長しない身体を疑問に思うことはない。なにしろ、周りに同種の他の個体がいないのだ。成長に伴う性徴、生殖器の発達も阻まれるために、子孫を作る本能も発生しない。
 赤れいむは、いつまでも赤れいむだった。

 好きなときに食事をして、お腹がいっぱいになったら眠り、飽きたら歌を唄ったり回し車で運動する。運動して喉が渇いたら、給水器から水を飲む。またご飯を食べて、寝て……。同じように、何度も。
 なにも疑問に思うことはない。
 外の世界のことなど、赤れいむは何も知らなかった。知らないものは、いつまでも知らないままでいた。

―――――

 ある日、お兄さんが言った。

「お外に行きたいかい?」

 赤れいむは迷うことなく返答した。 
「いきたくにゃいよ! おしょとにはわるいゆっきゅりたちがたくしゃんいるんだよ!」

 知らないはずなのに、外は危険だと言う。
 その答えは当たり前のものかもしれない。生きるのに最高の環境が揃っている今の状態よりも、もっと楽しく平穏な世界があるだろうか? 
 いや、存在しない。篭った状態を最良だと思うからこそ、外は危険だと思わねばならなかった。

「じゃあ、さようなら」

 赤れいむをケージから取り出し、窓から外へ。

 悲鳴が聞こえる。

 家のなかには、お兄さんの笑い声だけが響いていた。


      完

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最終更新:2010年10月27日 23:23
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