【れいむと蟷螂】
「ゆゆっ! かまきりさんがいるよ!」
茂る草の上に、一匹の蟷螂がいた。
れいむは今日、親元を離れて独り立ちしたばかりのゆっくりだ。
これは記念すべき初めて一人で行う
「狩り」で、れいむは祝福の晩餐に蟷螂を供することに決めた。
なんの用心もなく、不用意に蟷螂に近づいていく。
薄く白い双刃は、獲物を捉え切り裂くそのときを待っていた。
標的が自分の攻撃範囲内に入ってくるのをひたすらに待ち、微動だにしない。
「ゆん! かまきりさんはかわいいれいむにたべられてね!」
れいむは跳躍して大きく口を開け、一息に蟷螂を飲み込もうとする。
瞬間、口の端に鋭い痛みが走った。
凹凸のある二本の鎌が食らいついて、引っ掻いたのだ。
「いぢゃいぃぃい! がまぎりざんやめぢぇぇぇえ! 」
れいむは体をのけ反らせたり転がったりして必死に蟷螂を振り払おうとするが、尖った刃は余計に食い込むばかりだ。
過ぎ去る時間と共に、れいむの体力は奪われていく。
「ゆぅぅ……ごめんね、かまきりさん。れいむがわるかったからはなしてね……」
懇願が届いたのか、蟷螂はれいむの肌から双刃を引き抜いた。
「ゆんっ! かまきりさんありがとう!」
感謝の言葉を告げた刹那、れいむの後背にいくつかの衝撃が刺さる。
「ゆ……?」
そこにいたのは、十を超える小さな蟷螂たち。
それぞれが持つ鎌が、無慈悲に振り下ろされる。
断続的に与えられる痛みにれいむは泣き叫ぶが、もはや逃げる体力など残されていなかった。
――――――
きょうのばんごはんはおまんじゅう!
ママがおばかなおまんじゅうをつかまえたんだ!
うごけなくなったおまんじゅうに、がんばってとどめをさしたよ!
ぐさぐさぐさぐさ、たのしかった!
おにいちゃんもいもうとも、うれしそうだったよ!
あしたはなにがたべられるかなぁ?
「カマ美、なにしてるの? 子供はもう寝る時間よ」
はーい!
ねえママ、きょうはママのとなりでねてもいい?
「くす……カマ美は甘えん坊さんね。ほら、こっちにおいで」
わあ、ママのとなりあったかい。
うふふ。
あしたもまた、たのしくなるといいなぁ!
完
最終更新:2010年10月28日 14:18