【善と悪と……】
○月×日
今日はゆっくりで遊んだ。ナイフで刺したり、地面に叩きつけたり、自転車でひき殺したりした。ゆっくりはみんな、面白い鳴き声をあげて死んだ。とても楽しくて、ちょっとだけ泣いた。
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「鬼尉くん、この日記はどういうことだい? ちょっと、おかしいと思うよ」
なにがですか?
「生き物をいじめたり殺して楽しむなんて、悪い人間のすることだ。動物に暴力を振るうなんて、根性がねじまがっている証拠だよ」
そうですか。では、僕は他になにをいじめればいいですか? 猫や犬なら、許してくれますか?
「あ、あのなあ。そういう問題じゃないんだよ。弱い者いじめをしたり、ストレス解消として暴力を振るうのが悪いことで……なにに対しても、暴力は駄目なんだ。生き物を趣味で殺してはいけない」
先生。では、どうして世界から殺し合いは無くならないのですか? どうして、弱い者いじめは無くならないのですか? どうして、弱者は強者に虐げられなければならないのですか?
ぼくのなかの殺意は、どうして生まれてきたのですか? 殺すことは本当に悪いことですか? 命の価値は同じですか?
「…………」
ぼくには、なにもわかりません。世の中は弱肉強食。それがこの世の永遠不変の真理であって、そこには善も悪も存在しないのではないでしょうか。
ぼくという人間が狂っていて、根性はねじまがり、生きているだけで害毒を撒き散らす汚物のような人間だと先生が本気で思うのであれば
「な、なんだよ……」
今ここで、ぼくを殺しておいたほうが良いかもしれません。
ぼくにはなにもわかりません。ぼくにはなにもわかりません。根性がねじまがっていない人間も、悪の性質を持たない人間も存在するはずがありません。
ぼくは信じません。ぼくは、あるがままの快楽を求めます。ぼくは、弱い者いじめをするために生きています。
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「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
家に帰り扉を開けると、そこには数十匹のゆっくりが待っている。みんな、ぼくが慈しんで育てているゆっくりだ。
嗚呼、愛おしい。抱きしめた腕に思いきり力を込めて潰して殺してしまいたくなるほどに、愛おしい。
好きだから、殺すのか。憎いから、殺すのか。面白いから、殺すのか。
全部が全部、正解で不正解なんだろうなぁ、なんて餌をやりながら思った。
完
最終更新:2010年10月28日 14:22