【嫌悪と拒絶と……】
れいむは、それを信じなかった。正確に言えば、「信じたくなかった」。
自分から産まれたそれは、ぬめりを帯びた肌を力強く動かして、この世に生を受けた喜びを表していた。
「ゆっぎぎ! ゆっぎぎ!」
ゆっくり、と言っていることはわかる。しかしその言語自体はゆっくりできたものなどではなく、聞く者を不快にさせる雑音に近かった。
れいむは嘆いた。どうして、こんな子供が産まれてきてしまったのだろう。何が悪かったのか。栄養が足りなかったのか、自分の体は子供を産むことに適していなかったのか、交配の仕方が悪かったのか……。
いくら考えても自力で答えは出せず、最終的に安易で楽な答えへとたどり着く。
「この子が悪い」。自分は悪くない。きっと、この子はこういう子なんだ。ならば、この子が悪いのだ。
「ゆっぎぎ! ゆっぎぎ!」
悪魔の叫びにも似たその言葉と共に、我が子を押し潰す。悪い子は要らない。出来損ないは、育てない。こんなふうに産まれてきて、この先のゆん生をゆっくりできるわけがない。それなら、親が殺してあげるべきだ。
なるべく、他のゆっくりに見られないように、悟られないように。
「ゆぎぎぎぎぎ」
悲しみはおろか、罪悪感さえも感じない。なぜなら、それが当然だから。みんな、やっていることだから。
やがて、なにも聞こえなくなる。その子供は、産まれてすぐに親に殺されるという悲惨な結末を迎えた。
れいむは、我が子の死体を土に埋めて、宝物の綺麗な石をその上に乗せる。きらめきを放つ石を見ながら、次に産まれてくるのは「ちゃんとした」赤ちゃんでありますように、と願った。
完
最終更新:2010年11月25日 13:45