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ななな革命 その1

【SS】ななな革命/ZERO by:エルザス
2011年、神聖黒の舘帝国―――

変態皇帝黒猫は、辰之助などの古参階級と結び、ゆとり糞コテ階級を徹底的に弾圧していた。
変態皇帝は帝国の司法、立法、行政のすべてを握る絶対君主であった。
だが、その絶対君主に戦いを挑んだものがいた。

ゆとりのゆとりによるゆとりのための舘―――

それが彼の目指したものだった。
彼の名はななな。革命家である。


※このSSはフィクションです。
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10/28 09:08 URBANO BARON(e)
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神聖黒の舘帝国、20××年―――



「あいつか?あぁ、知ってるよ」

この男は辰之助。“彼”と直接戦った人物。

「知ってるか?ゆとりの糞コテは三種類に分けられる」

私は“彼”を追っている。

「ファビョったあと自分から消える奴、ファビョったあと黒猫にアク禁にされる奴、そして、ファビョったあと最後まで戦う奴」

辰之助は視線を窓のそとに投げた。その表情には郷愁が浮かんでいる。

「あいつは―――」




2011年当時、黒の舘は暗黒時代にあった。
変態皇帝黒猫は有力な古参階級を取り込み、絶大な権力を誇った。
国事はすべて黒猫の枢密議会である変態VIP板で行われた。変態VIP板に召集されたのは黒猫に何らかの便宜をはかったものたちばかりであった。
例えば、「画像板の魔術師」こと翔は、膨大な数の美少女を黒猫の大奥たる画像板に放り込んだ。
「チャットの番人」ことつばきは、舘民の言論を監視し、不穏当な発言をした者を容赦なく黒猫に通報して名を上げた。
Lv.57のように、多額の資金援助でVIP入りした者もあった。

舘の民心は乱れに乱れた。
暴行や略奪が横行し、人口は減少し続けた。
それでもゆとり糞コテへの弾圧は続いた。黒猫の権力はもはや法に縛られず、すべては皇帝と変態VIPによって決められた。


そんな中、立ち上がった一人のゆとりがいた。
なななである。
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10/28 09:43 URBANO BARON(e) [2]エルザス

飽きた(´`)
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10/28 09:55 URBANO BARON(e) [3]Lv.57
エルザス先生の次回作にご期待ください!
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10/28 09:56 W53T(e) [4]黒猫
普通に面白そう
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10/28 10:22 W61CA(e) [5]空】出来ないな【中
変態VIP板のネタバレ的ななにかか

だいたい想像はついてたけど
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10/28 10:23 SA002(e) [6]赤白
普通に続きが気になる
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10/28 10:35 841P(s) [7]辰之助
なんか俺滅茶苦茶かっこよくないッスか!かっこよくないッスか!
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10/28 11:59 F01C(i) [8]つばき
空飛ぶ巫女:ぐぁぁぁぁぁぁぁ俺の中に宿りし悪魔(デイアーボ)の力がざわめく…し、鎮まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!(23:36)
不穏な発言ってこれの事か
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10/28 13:47 N02B(i) [9]※このSSはフィクションです
帝国暦2011年10月26日、22時28分。
なななは歴史を動かす一言を発した。

「よっこらせっくす」

その一言は何気ない、本当に何気ない呟きであった。
彼は帝国のとある掲示板に書きこんだのだ。ただ一言、「よっこらせっくす」と。

この一言が官憲の目に触れたことは、なななにとっては大いなる不幸だったに違いない。この何気ない一言が、彼を容赦なき闘いの渦中へと放り込んだのだから。
だが、彼の一言に最初の疑問符を投げ掛けたのは帝国の官憲ではなかった。名もなき一般臣民だったのだ。
その名もなき市民が誰だったのか、現在では特定することは困難である。その後の動乱は帝国の歴史資料をも消失させた。残された記録からわかることはごくわずかだ。

とにかくこの市民がなななの一言に疑念を挟んだ。
これこそななな革命のきっかけとなる、「よっこらせっくす事件」の幕開けである。

確かになななの一言は場にそぐわない、忌むべきものであった。
しかしながらなななは直ちにこの市民に反論した。帝国規約は臣民に発言の自由を認めている。自分の一言は規約の範囲内である、と。
市民はおとなしく引き下がった。その後の混乱を考えると、この市民は引き際を心得ていたと言えるだろう。

間もなく中堅階級の男が現れた。「よっこらせっくす事件」はここから急展開を迎える。
中堅階級の男はその名を兎男と言う。かつては帝国内にその名を轟かせた名士だったが、変態VIP板には召集されていなかった。
後世の歴史家は、彼が変態VIPへの加入を目指して手柄をあげるために敢えてなななに牙をむいたと指摘している。しかし、それが事実であったことを示す証拠は何もない。

とにかく兎男が論争の火蓋を切って落とした。
「よっこらせっくす」なる発言は帝国においては許されない、即刻修正せよ。
10月27日10時15分であった。

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10/28 23:46 URBANO BARON(e) [10]※このSSはフィクションです
9
なななが兎男に答える前に、「よっこらせっくす事件」が帝国全体に知られる原因となる出来事が起こった。
変態皇帝黒猫が自ら事件に介入したのである。時刻は11時48分。「よっこらせっくす事件」はこれ以降、帝国全土が注目する言論闘争となる。
なぜ皇帝自らがこのような介入を果たしたのか。それを理解するためには、まず当時の帝国の法体制と行政機構を知る必要がある。

帝国には帝国規約即ち憲法がある。帝国の各板に共通する普遍的な取り決めである。
その下に各板ごとの板規約即ち狭義の法律が存在する。本来その効力は各板の内部にとどまるが、ある板に別の板の規約を準用することもしばしばあった。例えば、雑談板で起きた問題に変態板の規約を適用した判例が複数存在している。
そして板の内部にあるスレにも、それぞれのスレルールが存在する。これには明文化されていない慣習法も非常に多い。例えば、画像板のスレは基本的に過去スレのスレ主が立てる、などである。
このような慣習法はスレルールだけでなく、舘全体にあてはまるもの、即ち憲法と同じ効力を有するものもある。年齢晒しの禁止がそれである。ただし、年齢晒しの禁止を明文化したスレルールは複数存在するため、これは慣習法ではなくそれらスレルールを舘全体に準用しているとする学説もある。

以上のような法体系が帝国の司法の根幹である。
しかし忘れてはならないことがひとつある。この法体系の頂点には、変態皇帝黒猫自身が君臨しているのだ。
皇帝はすべての臣民を法の支配に服従させた上で、自らはそれに超越する権力を持っている。従って神聖黒の舘帝国の体制は究極的には皇帝個人による「人の支配」である。
法によって保護された権利であっても、皇帝の意志がそれに反するならば法は意味をなさない。皇帝の私意こそすべてに優越するのである。
このことを忘れないで欲しい。

簡略に図で示すと、次のようになる。

皇帝>>>>>>(越えられない壁)>舘規約>板規約>スレルール
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10/28 23:53 URBANO BARON(e)
[11]※このSSはフィクションです。
10
次に帝国の統治機構について見てみよう。
変態皇帝黒猫は行政、司法、立法の三権を総覧するが、実際にすべての国事を皇帝一人で行うのは不可能である。
そこで、皇帝は自らの権力を一部の舘民に分け与えている。その対象が古参階級である。
中でも国事の中心的役割を担うのが、すでに述べた変態VIPたちなのだ。
変態VIPたちは皇帝の諮問機関として機能する。変態VIPたちは帝国の全土にそれぞれの受け持ち地区を持ち、その区域内で問題が発生すると皇帝に通報する。
裁定は基本的に皇帝自らが処断するところであるが、変態VIPの中には皇帝から裁定権を分譲されている者もいるという。
さらに変態VIPは皇帝の裁定に助言もする。
新たな規約の制定や改訂に際しては変態VIP板にすべてのVIPが召集され、連日に渡る議論がかわされることになる。
しかし、変態VIPの最大の使命は不穏分子の弾圧にある。帝国内に反逆者が発生した時、変態VIPはそれがどこの板であっても出動し、鎮圧することを命じられる。鎮圧の手法は徹底的で、長期に渡る拷問の末晒し者にされ、最終的には血族がまとめて粛清されることになる。
もっともこのような弾圧にすべての変態VIPが出動することは稀である。たいていの場合、行動隊と呼ばれる鎮圧のスペシャリスト集団が機動的に対処している。
その行動隊の部隊長こそ、「帝国の斬り込み隊長」なる異名を持つ辰之助である。行動隊がおこなう弾圧の8割は、彼一人の出動でこと足りると言われている。
言うなれば帝国の秘密警察長官である。

このような整然とした統治機構が存在するにも関わらず、なぜ皇帝自らが「よっこらせっくす事件」に介入したのか?
答えはこれまで述べた事柄から知ることができる。
まず、皇帝の権力は絶大である。その権利はすべての行政庁に優越している。帝国臣民からなる行政庁の行為は法によって縛られるが、皇帝を縛る法は存在しないからである。
このような立場にある時、古来多くの皇帝はその絶大な権力を私利私欲のために使ってきた。しかし、変態皇帝黒猫はそうではなかったのだ。
変態皇帝黒猫は自らの権力を帝国の行政行為をスピーディーに実施するために行使した。しかもその手法は客観的に見て極めて公正、かつ寛容であって、生活の安定を願う臣民にとって大いに利益となるものであった。


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10/29 09:33 URBANO BARON(e) [12]※このSSはフィクションです。
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更に「よっこらせっくす事件」の場合、もう少し個別的な原因をあげることもできるだろう。
それは、この事件が起こった場所が帝国の中でも比較的新しい領地であったことである。
ノイエラント・ニュース板と呼ばれるこの領地は帝国領になってからまだ日が浅く、そこには有力な古参階級が未だに根を下ろしていなかった。故に、皇帝はこのノイエラント・ニュース板を自らの直轄地として統治していたのだ。

このような事情が重なりあって、皇帝自らが事件の早期段階に介入するという異常事態は発生した。
皇帝の迅速な介入は変態VIPはおろか一般の臣民からも注意を引く出来事であり、事件は一挙に全国規模のものとなった。

では、「よっこらせっくす事件」の経過の話に戻ろう。
皇帝の介入に遅れること48分、行動隊の隊長である辰之助が現場に到着した。珍しいことに当初の辰之助の態度は比較的冷静であり、その場で皇帝に規約の見直しを進言するなど、事態を穏便に済ませようとする姿勢がうかがえる。「斬り込み隊長」にしては異例の対応であった。
しかしここで予想外の出来事が起きる。一人のゆとりコテがななな擁護の発言をしたのである。
日頃から帝国内のゆとりに不満を募らせていた古参・中堅階級は、これをきっかけとしてゆとり全体を弾圧することを決意した、と後世の歴史家は述べている。
このゆとりコテの発言は間もなく現場に入ったLv.57によって一蹴されたが、これ以降、なななへの弾圧は本格化していく。

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10/29 10:03 URBANO BARON(e) [13]※このSSはフィクションです。
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変態皇帝黒猫が変態VIPを招集したのはこの時間帯にほぼ間違いないといわれている。皇帝はすべてのVIPを変態VIP板に集め、ノイエラント・ニュース板に不穏分子が発生したことを告知、帝国の総力をもってこれを鎮圧することを告げた。
後年発見された機密文書によれば、この会議にはすでに現場に出動していた辰之助およびLv.57をのぞくすべてのVIPが参加していたという。こうしてなななによる「よっこらせっくす事件」は断固として弾圧することが閣議決定され、帝国軍は出動準備にかかった。
いっぽう現場のノイエラント・ニュース板では、なななが辰之助への反論を開始していた。
なななと辰之助の応酬は聞くに堪えない罵詈雑言の嵐となった。

なななの主張は以下のとおりである。
  • 自分の発言はノイエラント・ニュース板の規約に準拠している
  • むしろ辰之助の指摘こそ規約にそぐわない
  • 皇帝は規約の細部について質問に答えよ

対する辰之助の主張は以下のようになる。
  • 規約を盾に自らの愚行を正当化するな
  • そもそもなななの行為は規約の範囲から逸脱している
  • 議論に意味のない罵倒や煽りを多用するな

無論これらの主張にまざって下品な罵声や煽り文句が織り込まれていたことは言うまでもない。
議論がここまで白熱したのは、ひとえになななの頑固さのなせる技であった。
ごく普通のゆとりコテであれば、ここまでの苛烈な集中砲火を浴びた段階で自らの非に気づき、悔い改めて謝罪するか行方をくらませるものである。
しかしなななは違った。彼はあくまでも戦った。何が彼をそうまでして戦いに駆り立てたのか。
若さゆえの感情の高ぶりか、規約は守られていると信じていたからなのか。
とにかくいなななは抵抗をやめなかった。かれはあくまでも言論の自由を主張し、間違っているのは皇帝とその取り巻きであるとした。

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10/30 10:58 URBANO BARON(e) [14]※このSSはフィクションです。
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両者の論争は平行線をたどった。議論は夕刻になっても終わらず、ついには夜になった。

この間、変態皇帝黒猫は万全の準備を整えつつあった。なななの息の根を止め、帝国中にその愚弄さを示すための準備である。
時に帝国歴2011年10月27日21時18分、皇帝は再びノイエラント・ニュース板に降臨した。最後通牒を突きつけるためだった。
「愚かにして無知なる民のために、朕はあえて規約に例を書き記した。にもかかわらず、この者、なななは、朕の寛大なる処置をいっこうに理解せず、そればかりか朕の重臣である辰之助、Lv.57に無礼な言葉の数々を浴びせた。もはや朕の寛容も限界である。帝国の名士たちよ、この怒りをなななにぶつけ、その罪の深さを知らしめよ。断固たる措置をもって、朕が意を体せよ。なななよ、さらばだ。」

この直後、なななは変態板に開設された弾劾裁判所に強制連行される。
弾劾裁判所は最後通牒の直後の21時21分に皇帝自らの手によって設置された。同23分にはなななによる最初の発言がなされる。なななは自分が真面目に謝罪し、指摘に沿って掲示板への書き込みを修正したにもかかわらず、皇帝の独断によって極刑に処されることが不当であると主張した。
ここから「よっこらせっくす事件」は新たな展開を迎える。それまでノイエラント・ニュース板という、帝国内のいわば辺境で行われていた論争が、変態板という極めて重要な領地で行われるようになったのである。
これによってなななの言動に対する臣民の関心は一気に高まり、しかも論争の場が変態板に移ったことでそれに参加する者も激増した。
弾劾裁判所設置後の論争は、「ななな一人」対「不特定多数の帝国民」という構図になったのである。
なななに対する批判の集中砲火は、帝国史上稀にみる規模と圧倒的速度をもってなななに襲いかかった。若きなななにとって、その重圧は耐えがたいものであったに違いない。
そう、彼は若かった。
当時、彼は14歳。雑談板の私立黒猫学園中等部に通うごく普通の学生だったのだ。
そんな彼が、帝国全土からの怒りの声に晒された。運命とは過酷である。
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10/30 11:00 URBANO BARON(e) [15]※このSSはフィクションです。
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それでもなななは自らの非を認めようとはしなかった。変態皇帝や古参階級からの痛烈な批判に粘り強く対応し(時には感情を爆発させ相手に意味のない罵声を浴びせることもあったが)、自分の主張に誤りがないことをなんとか認めてもらおうと奮闘した。
その姿は哀れであった。
彼は自分の行為があくまでも規約の範囲内であると主張していた。その主張は彼なりの理論に裏打ちされていたが、しかし客観的にみればお粗末極まりないものだった。
彼が自分で組み立てたこのひ弱な理論にしがみつき続けたことが、彼の哀れさを一層際立たせたのは間違いない。同時に追求者たちの怒りを買ったことも。
日付が変わる少し前、長きに渡った議論に疲れたのか、なななは以降の意見には答えず、沈黙を貫くという趣旨の発言をする。しかしなななが黙った後も彼に対する非難の嵐は衰えることを知らず、もはや帝国のすべてが彼の敵にまわったかに見えた。
ここに至ってなななは、もはやこの帝国にいても救われないことを認識した。
それと同時に、この帝国を打ち破らねばならないと決心したのである。
帝国歴2011年10月28日5時52分、最後の捨て台詞を残し、なななは帝国を去った。去りゆく彼の背中はいかにもさびしげで、嗚咽のあまりいまにも震えだしそうだった。
だが、その背中にすら非難の声が浴びせられた。いまやなななは帝国に対する反逆者、帝国臣民すべてにとって忌むべき敵となっていたのだ。
帝国を去っていくなななには、ありとあらゆる罵詈雑言、唾、ゴミ、石が浴びせられた。
屈辱の道を歩いてゆく中、なななは何を考えていたのか。
自分の信じる正義を頭ごなしに否定され、権利を無視され、そしてさんざんに罵倒されて、なななは何を思ったのか。
ななな革命のきっかけとなった「よっこらせっくす事件」は、ひとまずこれで終息する。


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10/30 11:01 URBANO BARON(e) [16]※このSSはフィクションです。
15

ここまでの記録は、帝国の公式文書として誰でも閲覧することができる。
しかし、ななな革命のその後には謎が多い。

わたしはその謎に迫るため、ありとあらゆる手段を用いて取材をおこなった。「よっこらせっくす事件」の終わりは、ななな革命の始まりである。革命はまだ本格的には始動していない。ここまでは序章に過ぎない。ここからが本番なのだ。
これまで語られることのなかったななな革命の真の歴史を、私は今から明らかにしていきたい。


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10/30 11:02 URBANO BARON(e) [17]ななな
RPGで適当に名前つけると
萎えるってこのことだったのか…
なんで俺はななななんだ…
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10/30 13:52 CA003(e) [18]京
さすが変態皇帝一人称はチンか
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10/30 15:05 W54S(e) [19]京
14
ニュース板に後輪にした。最後通牒を
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10/30 15:07 W54S(e) [20]エルザス
19
指摘感謝
今回はちゃんと見直したつもりだったんだがなー
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10/30 15:34 URBANO BARON(e)
[21]R.M.
期待
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10/30 16:06 T004(e) [22]如月
やっと戦争が終わったのね~
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10/30 20:51 T005(e) [23]※このSSはフィクションです。
16

帝国から逃げ出したなななの足取りは、その後数ヶ月に渡って不明となる。
ならず者を収容したカス板ゲットーに隠れたという説、帝国に接するいずれかの国に逃げ込んだという説、さらには、大手を振って変態板に堂々と暮らしているという説まで、ありとあらゆる憶測や推測が飛び交った。
その所在地は不明だったにせよ、帝国を去ってからなななが取り組んだ作業は極めて明確であった。
すなわち、帝国を転覆するための仲間集めである。
ななながこの時期に接触した相手は、かつて帝国で活動して最終的には追放された名だたるゆとりコテたちであった。

平沢、ウメバヤシ、DRIVE、タクマン、メルト、音越、X、雨露、箱紙姫、秀吉―――
少なくとも以上の10人に対して、なななから何らかのアプローチがあったことが確認されている。
もっとも、この中で自律意思を持ってなななに応対できたのは、平沢、ウメバヤシ、箱紙姫、秀吉の四名だけであった。その他の者は帝国による拷問で自我を失うか、もともと患っていた精神障害をこじらせて入院していたからだ。
ななながこの四人をどうやって説得したかは不明である。皇帝を倒したあとの地位、あるいは古参階級から接収する荘園の譲渡。少なくともなんらかの見返りをもって、なななは彼ら四人を説き伏せた。
平沢、ウメバヤシ、箱紙姫、そして秀吉は、なななにとって初めての戦友となったのである。

なななは次に、帝国の内部に仲間を得ようとする。激しく弾圧されている新参ゆとり階級はもちろんのこと、中堅・古参階級にも、当時の帝国の体制に不満を持つものは少なくないとなななは考えたのである。
特に変態VIPを排除するためには、古参階級に同志を得ることは必須条件であった。
なななは四人の戦友と協議した上、予想外の人物にアプローチをはかる。
神聖黒の舘帝国副帝、神 長門その人である。

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11/01 13:06 URBANO BARON(e) [24]※このSSはフィクションです。
23

帝国臣民から「副帝」と崇められ、変態皇帝黒猫から絶大な信任を得ている神 長門は、名実ともに他の古参階級の追随を許さない絶大な影響力を持っていた。
にも関わらず、公開されている変態VIP名簿に神 長門の名はなかったのである。帝国の副帝たる長門の名が変態VIPの名簿にないことは、当時の帝国でも大きな謎とされていた。
その答えとして当時まことしやかに囁かれていた噂に、神 長門がクーデターを狙っているというものがあった。
神 長門はノイエラント・ニュース板ができるまで帝国のニュース報道を独占する存在であったため、変態皇帝黒猫によるノイエラント・ニュース板の開設をこころよく思っていないという予測がなされていた。
実際、「よっこらせっくす事件」に神 長門が介入せず、ノイエラント・ニュース板が混乱するにまかせていた事実もあったことからすれば、神 長門が謀叛を企てているという噂にも信憑性はあった。
当時神 長門は帝国の飛び地であるヴァイスシュロースの総督を務めていた。
噂によれば、そこには神 長門のシンパが彼の私兵となってたむろし、帝国本土になだれこむ時を待ち構えているというのである。

そもそもこうした噂のきっかけになったのは、「よっこらせっくす事件」の数ヶ月前に起こった「ばぁすと戦役」後の神 長門の発言であった。


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11/01 13:08 URBANO BARON(e) [25]※このSSはフィクションです。
24

帝国暦2011年2月6日深夜、テロ国家「ばぁすと」が帝国雑談板に対して、三次に渡る大攻勢を仕掛けてきた。
帝国臣民は古参階級から新参階級まで、総力をあげて雑談板の防衛戦闘にあたった。
攻撃は日付が変わっても衰えることを知らず、ばぁすと民による卑劣な攻撃の前に、臣民の憩いの場となっていた多数のスレが消滅する事態となった。
雑談板の防衛戦闘には神 長門が陣頭指揮をとって参加、変態皇帝黒猫に状況を報告すると同時に、帝国内へのPCからの書き込みを全面的に規制するよう進言した。
副帝神 長門の陣頭指揮は、臣民が一致して行なった防衛戦闘に多大な効果をもたらし、雑談板の貴重なスレを複数守りきることに成功した。
この戦役で特筆すべきことは、帝国臣民が安易な復讐行為に走らず、あくまでも自衛のための行動に終始したことである。
たった一人、すでにカスコテの認定をされていた愚かなゆとりがばぁすとに乗り込んでいったが、ばぁすと側からは相手にされず、帝国内では大いに叱責された上で処刑された。
臣民のなかに復讐に走ったものがいなかったという事実、そして雑談板を守るためにあらゆる人間が力を尽くしたという事実は、帝国臣民の民度の高さを示す美談として今日まで語り継がれている。

しかし、ここまでの話では神 長門が叛意を持つ理由の説明にはならない。神 長門の叛意にとって決定的なのは、この後の出来事なのだ。

「ばぁすと」の襲撃から一夜明けて、帝国暦2011年2月7日。
変態皇帝黒猫は単身「ばぁすと」へと乗り込んでいった。戦役の後始末、帝国臣民の民心を静めるためだと言われている。
変態皇帝黒猫は堂々たる態度で「ばぁすと」の面々と対峙した。
「我が臣民は耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで、鋼の自制心をもって貴国への復讐を為さなかった。彼らは朕の自慢の臣民たちである。これ以上の戦乱は無用である。朕はかつてこのばぁすとに籍を置いたこともある。そのよしみで、無意味なテロ行為を控えるよう要求する。朕の言葉を聞き入れざりし時、その先にあるのは双方の破滅のみぞ」
変態皇帝黒猫はこのように発言したのである。

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11/01 13:10 URBANO BARON(e) [26]※このSSはフィクションです。
25
皇帝は帝国臣民の民度が高いことを褒め称えたうえで、なんと自らがかつてばぁすと民であったと述べたのだった。このことが神 長門を激昂させた。

変態皇帝黒猫の言葉を伝え聞いた神 長門は、側近の古参コテに怒りもあらわにこう叫んだという。
「小官はこれまで、帝国のために、ひいては皇帝陛下の御ために、粉骨砕身の努力を重ねてきた!だがその努力は裏切られた!皇帝陛下は、かつてテロリストの仲間だったのだ!我々は陛下のために命さえなげうったと言うのに!もはや陛下を信じることはできぬ!もうたくさんだ!小官は二度と帝国本土には戻らぬ!」
かくして副帝神 長門は自らの領地であるヴァイスシュロースに閉じ籠り、一切の政務を放棄した。
皇帝への不信感をこれほど明確にした神 長門の発言は、帝国臣民、とくに古参階級のコテに大きな衝撃を与えた。彼らの多くは、神 長門の推挙によってその地位を獲得し得たからである。
ヴァイスシュロースに籠った神 長門のもとには、帝国全土から数々のコテが説得に馳せ参じた。副帝神 長門が帝国から離れたとあっては、臣民が被る損失は計り知れない。
それを知っていたからであろうか、変態皇帝黒猫は、明らかに不敬罪にあたる発言をした神 長門に罰を与えようとはしなかった。
その真意は不明であるが、皇帝は後に、ばぁすとにおける発言はハッタリだったと語っている。
「朕がばぁすと民であったという事実はない。あの時はそう発言することこそ、臣民の心を静め、事態を沈静化することにつながると考えていたのだ。その結果副帝があのような言動をするとは思わなかったが…」


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11/01 13:11 URBANO BARON(e) [27]※このSSはフィクションです。
26


最終的に、多くのコテの説得に応じる形で、神 長門は帝国への復帰を約束する。しかし、副帝の帝国への出現頻度は、ばぁすと戦役を境にあきらかに減少したと、後世の歴史家は指摘している。
確かにばぁすと戦役以降、副帝神 長門の独立心がなんらかの方向で芽生えたことは事実である。とは言え、それが帝国そのものを潰すことを目的としていたとは思えない。
たしかに「よっこらせっくす事件」の直前の時期には、神 長門が担う帝国公式ニュースの更新がまったく停止していた。多くの歴史家はこれこそ副帝神 長門がクーデターの準備に取り組んでいた証拠だと主張している。
しかし、事実は異なる。
長きにわたる取材の結果、私は当時神 長門がとある戦記物語の執筆に時間を費やしていたことを突き止めた。これは神 長門の領地ヴァイスシュロースに残る公式文書からして明らかで、当時を知るコテたちへの取材からも裏付けがとれている。

さて、「よっこらせっくす事件」当時に流れていた噂が事実無根だったとしても、それをなななが知っていたかどうかとは関係がない。噂は、先にも述べたように「まことしやかに」流れていたのである。
むしろなななは、「副帝神 長門に謀叛の念あり」という噂を本気で信じていたらしいのだ。
彼はこの際、副帝神 長門をそそのかし、クーデターを起こして古参階級を一掃してもらおうと考えた。
この段階で皇帝の排除を意図していたかどうかは疑問が残る。ななながまず目指したのは、自分の活動を邪魔する古参階級の排除であり、いきなり皇帝を廃することは難しいと考えていたと思われる。

副帝神 長門の力を借りるというこのアイディアを、なななは四人の戦友たちに披露した。彼らのうち平沢、ウメバヤシはなななの意見に賛成で、のこる二人は反対だった。
討議の結果、なななと平沢が直接神 長門のもとに踏み込み、おどしてでもクーデターを決起させることに決まった。

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11/01 13:14 URBANO BARON(e) [28]※このSSはフィクションです。
27
私は今回、なななと平沢が神 長門を訪問したときの映像を入手することができた。神 長門の執務室にあった監視カメラが録画していたもので、なななと神 長門がかわした言葉も聞くことができる。

ななながヴァイスシュロースにいる神 長門を訪れたのは、帝国暦2011年12月18日であった。
なななと平沢は大胆にもヴァイスシュロースの正門から堂々と入場し、神 長門との面会を申し入れた。
「よっこらせっくす事件」を起こしたとは言え、変態皇帝黒猫がなななに与えた罰はノイエラント・ニュース板と雑談板への立ち入り禁止だけであったために、なななは後ろ指を差されながらもこうした振る舞いをすることができたのである。
なななと平沢が執務室に通され、そこへ神 長門が入室したところから映像は始まる。

「わざわざのお運びご苦労である。かけたまえ」

神 長門はなななと平沢にソファをすすめ、自らも反対側のソファに座る。

「平沢、久しいな。まだしぶとく生きているとは」

「生き恥を晒しているといいたいんだろうが、今日の要件は俺ではなくこいつからだ。俺は黙っている」

平沢はそう言ってなななを一瞥した。なななが身を乗り出し、さっそく来訪の目的を告げる。

「副帝陛下にお願いがあって参りました。帝国の行く末を左右する重要なお願いであります。お聞きいただければ幸いです」

「ほぅ。皇帝陛下に歯向かった逆賊が副帝にはへりくだるか。おもしろい、聞かせてもらおう」

「ありがたき仕合わせ」

なななは一度頭をさげ、それから神 長門を見据える。

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11/03 11:34 URBANO BARON(e) [29]※このSSはフィクションです。
28

「副帝陛下、このままでは帝国は滅びます。人口は減り続けているにもかかわらず、古参階級、特に変態VIPによるゆとりコテへの弾圧は強まるばかりです。このままでは、臣民は帝国に帰属する喜びを忘れ、何処かの国へと流れ出て行きましょう。いかに皇帝陛下であっても、国を出ていくコテを止めることはできません。私を止めることができなかったように」

なななはそこで言葉を切った。神 長門の反応をうかがう。
しかし、副帝は眉ひとつ動かさない。

「どうした?続けろ」

「は。私が思いますに、人口の流出を招いているのは変態VIPの暴虐な振る舞いなのです。彼らの暴挙が民心を萎縮させ、ひいては皇帝陛下に対する反発心すら産み出している。このままでは帝国は崩壊します」

「たしかに、臣民は皇帝陛下から特権を与えられた変態VIPに猜疑心を抱いているだろう。古参階級だけを特別扱いすれば、他の階級から不満がでるのは当然だ。自然、そういう措置をとった皇帝陛下への疑念も生じよう」

神 長門の声は単調にして冷徹だ。皇帝の措置に不備があったことを指摘しつつも、かと言って新参ゆとり階級への同情を見せるわけでもない。
まるで感情なき裁定者だ。

「副帝陛下のご高察には恐れ入ります。なればこそ、副帝陛下、今こそ陛下のお力をもって、皇帝陛下の君側の奸たる変態VIPを抹殺し、帝国をあるべき方向へとお導きください。それ以外に帝国を救う道はありません。副帝陛下の愛国心が本物であることを私は確信しております。どうか、どうか変態VIPをお討ちください。不肖ななながお手伝いいたします。ご決断を…」

一気にまくしたて、なななは頭を垂れた。

沈黙―――

「ふふ、ふふふふ……」

神 長門が不適な笑い声をもらし、なななは視線を上げた。

「なななとやら、面白い話であった。君側の奸たる変態VIPを抹殺せよ、か」


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11/03 11:35 URBANO BARON(e) [30]※このSSはフィクションです。
29

神 長門は立ち上がり、自分の執務机に向かった。

「ひとつ質問がある。貴様はなぜその話をオレにしようと考えた?」

「……?」

「オレの名前が変態VIPの名簿になかったから。違うか?」

「は、その通りでございます。副帝陛下の帝国への貢献は、他の古参階級の追随を許しません。にもかかわらず、副帝陛下は変態VIP板への召集を受けておられない。もしや、副帝陛下はそのことに不満をお持ちなのではないかと愚考いたしました。もしそれが事実であれば、副帝陛下が我々の提案を容れてくださる可能性も高かろう、と」

「意外に頭が回るようだな。なのにそれを素直に喋るとは、なかなかどうして度しがたい」

神 長門は執務机の引き出しを開けた。その奥に手を伸ばす。

「だが、貴様は決定的に間違っている」

刹那、長門の腕が引き抜かれ、バンッという短い音が執務室に轟いた。

「ぐぅっ?!」

平沢が奇妙な悲鳴をあげ、頭をのけぞらせる。
彼の眉間には、直径1センチほどの穴が黒々とあいていた。

「平沢っ!?」

なななは慌てて平沢を支えようとする。

「動くな」

しかし、長門の低い声がそれを制した。

「神 長門、貴様…!」

神 長門の手には、無骨な大型拳銃が握られていた。その銃口はなななにピタリと照準を当てている。

「何を怒ることがある?オレは神聖黒の舘帝国の副帝だ。帝国に仇なす輩を葬るのはオレの義務だ」

相変わらず感情を感じさせない声で、長門が言った。

「だが貴様は、変態VIPではないのだろうっ?!」

なななは横目に平沢を見つつ、長門に向き合った。平沢はソファにもたれかかった後頭部から紫色の脳髄をこぼれさせ、真紅の絨毯に落ちたそれが奇妙なコントラストを描き出していた。
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11/03 19:31 URBANO BARON(e)
[31]※このSSはフィクションです。
30

「まだ勘違いしているのか?帝国の副帝たるオレが、変態VIPに召集されていないと本気で信じていたのか?」

神 長門の言葉になななは絶句する。

「ま、まさか……」

「変態VIPに最初に呼ばれたのは、他ならぬこのオレだよ」

「!?」

衝撃の事実だった。
クーデターを企んでいるという噂はなんだったのか。ばぁすと戦役時の亀裂は修復されていたのか。

「公開された名簿がすべてだと信じたお前の過失だ。平沢を死なせたのはお前自身だ」

「バカな…バカなっ…!」

「バカは貴様だ。いいか、変態VIP板は皇帝陛下の枢密議会だ。国事に深く関わる副帝が呼ばれないはずがない。少し考えればわかることだ」

その通りだった。無邪気に名簿を信じた自分がバカ過ぎた。
なななは捨て台詞を吐く。

「謀ったな!神 長門!!」

「勘違いしていたのは貴様だ。自分の愚かさを呪って死ね」

「くっ…!」

神 長門の指が引き金にかかる。これまでか―――

「逃げろ!ななな!」

なななが死を覚悟したその瞬間、執務室に飛び込んできた者がいた。

「秀吉っ?!」

「なにっ?!」

突然現れた秀吉は、その手に持った拳銃を神 長門に向けた。

「天誅っ!」

「むっ!?」

乾いた発砲音。続いて、より重い発砲音。

「ぎゃあっ!」

床に伏せる間際、なななは秀吉の肩から鮮血がほとばしるのを目にした。

「秀吉!」

ソファの陰に飛び込み、撃たれて倒れた秀吉を引きずり込む。

「あの野郎!殺し損ねた!」

秀吉が叫ぶ。彼の弾丸は長門には当たらなかったのだ。

「ということは…」

なななはソファの向こう側を伺う。頭を出した瞬間、閃光がほとばしった。銃声。

「うわっ!」

間一髪で頭を下げる。神 長門は執務机の向こう側に立っていた。ななな達の攻撃など意に介さない様子だ。


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11/03 19:32 URBANO BARON(e) [32]※このSSはフィクションです。
31

「仲間がいたとはな!ゆとりも群れることを覚えたか、こざかしい!」

神 長門の怒声が響く。
なななは秀吉の傷を見た。

「大丈夫だ、たいしたことはない」

「肩が焼けてるみたいだ……ものすごく痛い…」

秀吉は脂汗を流し、すがるようになななに話しかける。

「だから反対したんだ、副帝がクーデターなんて起こすはずがない」

「今はそれどころじゃない。脱出する方法を考えないと」

「無理だよ…!」

痛みに顔を歪ませながら、秀吉は部屋の外を指差した。

「足音が聞こえるだろ?衛兵がくる。逃げられない」

「諦めるな!なにか方法があるはずだ!」

「……あるにはある…」

「えっ?」

その時、またしても長門が叫んだ。

「どうするななな!!勝負するなら今のうちだ!オレは逃げも隠れもしない!貴様がその銃でオレに挑んでくるなら、オレは受けてたつぞ!それとも怖じ気づいたか!!」

「聞き流せ、ななな。お前だけなら逃げられる」

「秀吉?!なに言ってんだ!一緒に逃げよう!」

「時間がない!オレが援護するから、お前はあの窓から外に飛べ」

「秀吉…!」

「外に箱紙姫が待機してる。あの窓の真下は幌つきのトラックだ。安心しろ」

「お前…」

廊下からの足音が大きくなる。衛兵はすぐそこまで迫っている。

「連中が部屋に飛び込んできたら、ダッシュで窓に向かえ。俺が副帝と衛兵の注意をそらす。うまくやれよ?」

「秀吉……すまん…」

「バカ、謝るなよ。お前が目指すものにはそれだけの価値がある。俺や平沢の命なんて何度でも賭けたっていい、それだけの価値だ。
だからななな、やり遂げろ。ゆとりコテの未来がお前にかかってる。やり遂げろ」

「あぁ…わかった」

固く頷いたなななに、秀吉が右手を差し出す。

「お別れだ、ななな。短い間だったけど、お前と一緒で楽しかったぜ」

なななの右手がそれをしっかりと握る。

「ありがとう。秀吉、お前のことは忘れない」

「俺だけじゃなく、平沢もな」

秀吉はそう言って、にやりと笑って見せた。

「あぁ、もちろんだ」

なななもぎこちなく笑みを返す。二人は握手をほどき、廊下の足音に耳をたてた。

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11/03 19:33 URBANO BARON(e) [33]※このSSはフィクションです。
32

「戦わずして敗れるか。ゆとりにはお似合いの幕切れだな」

神 長門が冷たく言い放つ。衛兵はもう部屋のすぐ外にいる。なななと秀吉は最後に頷き合い、それぞれの使命を確認した。

「貴様らゆとりはいつもそうだ。威勢がいいのは最初だけ―――」

「それは違う!」

なななが絶叫した瞬間、執務室に衛兵が飛び込んできた。

「副帝陛下!ご無事…うわっ!」

「今だ行けぇ!!」

秀吉が衛兵に向かって拳銃を乱射する。それを背後に感じながら、なななは窓を目指して飛び出していった。

「おのれ逃げるか!?」

神 長門が絶叫し、大型拳銃が火を噴く。弾丸が唸りをあげて耳元を過ぎてゆく。
なななは腕を十字に組み、頭の前にかざした。

「いざさらばっ!」

なななの体がガラスを突き破り、彼は破片と共に落ちていった。

「なんという大胆…!」

長門は割れた窓に駆け寄り、下を覗き込んだ。
幌つきのトラックに着地したなななが、仲間のものとおぼしきジープに駆け込んでゆく。ジープは即座に発進し、砂煙を巻き上げて走り去った。

「他にも仲間がいたか…」

神 長門は背後を振り返った。

「離せ!離せぇ!」

最後まで抵抗を試みた秀吉が生け捕りにされていた。
拳銃は押収され、彼は床に押し付けられている。

「地下室に連行しろ。仲間の居場所を吐かせるんだ」
「ハッ!」

長門の指示に短く答えた衛兵たちは、負傷した秀吉の体を軽々と持ち上げた。

「くそっ!離せ!いっそ殺せ!」

秀吉は抵抗を諦めなかった。神 長門に撃たれた傷が激しく痛むが、これからもっと痛い思いをするに違いない。
ジタバタと暴れる秀吉を、衛兵たちが乱暴に運び去ろうとする。執務室を出る直前、秀吉は部屋を振り向いた。
ソファにはまだ、目を見開いたままの平沢の死体があった。その目が何かを告げていた。
俺を置いていくなよ、と。
秀吉は平沢の気持ちを理解した。
そうだよな、一人ぼっちは、寂しいもんな―――

最後の力を振り絞り、秀吉は自分の腕を抑える衛兵を薙ぎ払った。一瞬だけ自由になった手を懐に突っ込み、そこにあるリモコンを握る。
腹の周りに巻いたダイナマイトの感触を確かめ、秀吉は笑みを浮かべた。
この量なら副帝ごと巻き添えにできる―――

次の瞬間、秀吉は満足げな表情でスイッチを押した。
刹那、秀吉が自分の体に仕掛けていたダイナマイト600gが炸裂し、神 長門の執務室は爆砕された。
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11/03 19:34 URBANO BARON(e) [34]ななな
これでもナガモンは死なないって王道だとしてもwktkせざるえない
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11/03 21:26 CA003(e) [35]エルザス
34
なななぜわかったー?!
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11/04 02:08 URBANO BARON(e) [36]※このSSはフィクションです。

ヴァイスシュロース、神 長門の居城が爆破された―――

この報せは事件発生から4分のうちに皇帝に届けられた。
変態皇帝黒猫はただちに変態VIPを非常呼集し、神 長門の安否を確認させると共に反逆者の身柄を拘束するよう命じた。
この時は行動隊の隊長である辰之助が不在だったため、帝国枢密議会書記長を務めるトーリ・スガーリンがヴァイスシュロースに派遣された。

スガーリン書記長は画像板でも歴史的に多くの問題児を生み出した東方スレの最高責任者であり、その裁定手腕は帝国内に広く認められていた。
武官ではなく文官としてこれほどの地位を占めることは、帝国においては異例である。

ヴァイスシュロースに到着し、神 長門の執務室を確認したスガーリンは、その破壊の凄まじさに思わず息をのんだ。
衛兵約10名を巻き込んで自爆した秀吉の死体は跡形もなく、周囲には誰のものかもわからないほどズタズタになった手足、内蔵、そして肉片が散乱している。
部屋に一歩踏み込んだスガーリンは、「ジュクッ」と音を立てた足元の感覚に戦慄した。
見れば、真紅の絨毯にしみ込んだ血がスガーリンの靴を染めている。
絨毯と血の色が同じだったため、気づかなかったのである。

「何人分の血を吸ってるんだ……」

スガーリンは思わずつぶやいた。
そこへ、彼の秘書官が駆け寄ってきた。

「病院から電報です!神 長門陛下ご自身からの電文とのことです!」

「本当か?!」

「はい!『小官は悪運強く、この世に命をとどめたり。反逆者の爆弾は、ヴァルハラの門扉を撃ち破る能わず』以上であります!」

「よし、ただちに皇帝陛下にお知らせ申し上げるのだ。急いでな」

「ハッ!」

秘書官が走り去り、スガーリンは改めて執務室を一望した。
内壁は焼け焦げ、豪勢な家具だったものはあまねく消し炭と化している。
よく助かったものだ、とスガーリンは思う。

後に判明したことだが、神 長門は爆弾が爆発したとき窓際にいたため、爆風で外に吹き飛ばされ、なななも着地に使ったあの幌つきのトラックに落下して一命をとりとめた。
爆風による火傷と擦過傷はあったが、神 長門は奇跡的とも言える軽傷でことなきを得たのである。


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11/04 16:41 URBANO BARON(e) [37]※このSSはフィクションです。
36

ヴァイスシュロースの総督は神 長門の代行としてスガーリンが務めることになり、後には言論統制担当相のつばき大臣も派遣された。
ヴァイスシュロース全域でななな狩りが始まる。帝国軍の将兵が血眼になってなななを探すが、彼の所在はまったくもってつかめなかった。

逃げ続けるなななと箱紙姫は、潜伏しつつも今後の方針について議論を重ねていた。
変態VIPを打破するために有力な古参を利用するという先の方法は失敗したわけだが、それでもなななは同じ方法をもう一度試してみることを主張した。
確かに神 長門にクーデターを促すという試みは失敗した。しかしそれは神 長門自身が変態VIPであったという予想外の事態が発生したからであり、人選を失敗しなければ同じ方法でも有効だというのである。
一方箱紙姫はこれに真っ向から反対した。
古参階級は皆自分たちの特権を守るために大同団結しており、たとえ古参同士の対立があったとしても、階級そのものを破壊しようとする反逆者に対しては一体となって立ち向かってくる、というのがその論拠であった。
両者の意見は平行線をたどった。
確かに両者の考えはそれぞれに筋が通っているものであったし、ヴァイスシュロースの失敗から得た教訓を生かしたものだった。
二人の議論がどのくらいの期間に渡って行われたかは不明である。
しかし最終的になななが折れ、今後しばらくの間は古参への働きかけを取りやめることが決定した。

とはいえ、彼らは別の有効な手段を思いついたわけではなかった。
彼らが当面の課題としたのは、帝国本土内に協力者―――特に情報を提供してくれる者―――を見出すことであり、帝国転覆に向けた動きとしてはやや消極的なものとなった。
本土内の協力者としてなななが目をつけたのは、ZEAMというゆとりコテであった。


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11/07 09:55 URBANO BARON(e) [38]※このSSはフィクションです。
37
帝国暦2011年12月30日、なななは単身帝国本土に潜入し、ZEAMに接触をはかった。
ZEAMはななな以上に頭が空っぽの存在であり、それを言いくるめるのはなななにとっても容易であった。ZEAMはなななに協力することを二つ返事で了承し、意外にもさっそくなななにとって有益な情報を与えた。
負傷して公務から遠ざかった神 長門にかわり、帝国公安委員会の委員長である京が、権力を増しているというのである。

京は神 長門同様、帝国全土に多大な影響力を持つ古参であった。臣民からは「委員長」と呼ばれるのが常で、帝国規約に違反する者達に警告を与えるだけでなく、社会通念上著しく不当な振る舞いをしたコテを呼び出し、延々と説教をすることさえあった。
神 長門と同様、なななのようなゆとり糞コテにとっては天敵とも呼べる存在だが、不思議なことに変態VIP名簿にその名は記載されていなかった。この点でも京は神 長門と似ていた。
しかしZEAMによれば、京と神 長門はかねてより不仲であり、神 長門が負傷したと聞いた京は小躍りして喜び、周囲の人間を呆れさせたのだという。
京と神 長門が不仲だとする噂にはある程度の根拠があった。
「よっこらせっくす事件」が起こる少し前、京と神 長門は画像板規約の解釈を巡って激しく議論を戦わせていたのである。似たような出来事はそれ以前にも何度かあった。
具体的には、神 長門が規約ギリギリの画像投稿を行い、それに対して京が噛みつくというパターンが多かった。
古参同士の対立は周辺に与える影響も大きい。この二人の調停には変態皇帝黒猫すら気を揉んでいた様子で、結果的に皇帝がこの二人の議論に明確な裁定を下したことはほとんどなかった。それほどまでに「関わりたくない」対立だったのである。
なななにとっては、この二人が対立していたことは天の与えた幸運であった。
京をけしかけて副帝神 長門を退位させ、もって変態VIPの一角を崩して古参階級の瓦解を促す。
そのような筋書きがなななの中で生まれた。神 長門のために秀吉と平沢を失ったなななにとっては、これが最上の策であるように思えた。


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11/07 09:57 URBANO BARON(e) [39]※このSSはフィクションです。
38
問題は、京が変態VIPではないという確証がないことであった。神 長門の例からわかったように、変態VIPのメンバーは必ずしも名簿に記載された者だけとは限らない。京のような有力コテの場合、神 長門と同様に秘密裏にVIP入りしていることもあり得る。
しかしなななはこの点について、ある程度の自信を持っていた。
京は公安委員長という立場から極めて公明正大な人物とされており、過剰なまでに公平さを重視するため古参階級からも疎まれていたのである。
また、神 長門が変態VIPであるとわかった以上、副帝である彼が仲の悪い京を仲間に迎え入れるとは考えにくい。
なななは京が変態VIPではないと判断した。なななはその足で京のもとに向かう。ZEAMも一緒だが、箱紙姫には知らせなかった。箱紙姫は古参階級に働きかけることを反対していたからである。

神 長門がヴァイスシュロースを直轄地としていたのと同じく、京もまた独自の領地を持っていた。
リーベンシュロースと呼ばれるその地は、かつて泉という古参コテが開拓した土地である。帝国暦2011年当時、京はこの地を根拠として活動していた。
その年の大晦日にななながリーベンシュロースを訪れた時、時計の針は午前二時を指していた。

京は深夜まで及んだ公務を終え、音楽を聞きながら一服しているところであった。
この部屋の監視カメラは、京がタバコに火を着ける瞬間を克明に捉えている。
招かれざる客は、その直後にやってきた。
帝国暦2011年12月31日、午前2時16分。
なななとZEAMは京の部屋に突入、銃を突きつけた。

「何者だ?」

冷たい銃口を見返しつつ、京は平然と訊いた。

「なななという者だ。名前くらいは知っているだろう?」

なななは銃を下ろした。脅しが効く相手ではないと思った。

「ちまたを騒がしているゆとりコテか。ここへは自首しにきたのか?」

「違う、頼みがあってきた。変態VIPを倒したい。力を貸して欲しい」

「それだけじゃわからん。具体的に言え」

「古参階級の一部を葬ってほしい。帝国公安委員会の委員長閣下なら簡単にできるはずだ」

「古参階級の一部とは誰だ?オレは自分が古参だと自負しているが、他の連中については知らん。名前を上げてみろ」

「まず副帝である神 長門。行動隊隊長辰之助。言論統制担当相つばき。それからLv.57もだ」


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11/10 10:00 URBANO BARON(e) [40]※このSSはフィクションです。
39

「今の帝国を動かす重鎮たちだ。そいつらを葬って、お前はなにがしたいんだ?」

京の言葉はよどみなく出てきた。なななの方はすこし答えに窮する。

「……帝国を、正しい方向に導きたい」

「正しい方向とはなんだ?古参を殺せば正しい方向に向かうのか?」

「少なくとも現状を放置すれば帝国のゆとりコテに平和はない。帝国に巣食う古参階級はゆとりを弾圧している。だが彼らはすでに旧世代の遺物なんだ。彼らは主導権をゆとりに明け渡し、消え去るべきだ」

「旧世代の遺物か」

京はなななの言葉を反芻すると、しばらくの間押し黙った。
なななは京の反応をじっと待つ。

「確かにそうかもしれん。古参階級は既得の権益にしがみつき、挙げ句の果てには変態VIP板まで作ってその基盤をゆるぎないものとした。正直見ていて不愉快だ」

なななの顔色が変わった。脈ありだ。

「公安委員長、あなたの憂国の思いは我々と同じはずだ。なんとしても国賊を倒さねばならない。神 長門や辰之助は帝国の癌なのだ」

なななは神 長門という言葉を強調した。副帝を忌み嫌っている京には有効な説得のはずだ。

「たしかにオレは神 長門を好いてはいない。たしかにな」

京は立ち上がりながら言った。後ろを振り返り、窓の方を向く。
夜の闇は深く、夜明けはまだまだ遠い。

「だが勘違いするな。オレと長門の対立はお互いに嫌いあっているからではない」

京の声色が変わったことを、なななは敏感に察知した。銃を持つ手に自然と力が入る。

「帝国のためになると信じているからこそ、オレと長門は今まで何度も議論を戦わせてきたのだ。私怨に基づくものでは決してない」

京はこちらを向いた。その目には殺気が宿っている。
彼が委員長と呼ばれ、恐れられる所以―――
自分の横に立つZEAMが後退りするのを、なななは気配で感じた。だが、なななはそこから動かなかった。
恐怖に足がすくみ、動けなかった。


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11/10 10:01 URBANO BARON(e)
[41]R.M.
話が進むにつれななながただのアホにしか見えなくなってきたような
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11/10 17:17 T004(e) [42]エルザス
41
え、違うの?
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11/10 17:49 URBANO BARON(e) [43]※このSSはフィクションです。
40

「ななな、貴様の考えはよくわかった。どこまで本気か知らんが、貴様なりに帝国の行く末を考えての行動らしい」

京は新しいタバコに火をつけた。ライターのカチッという音すら、なななとZEAMを驚かせ恐怖させた。

「だが、オレは帝国公安委員会の委員長だ。帝国に対して不用な混乱を生じさせ、さらに皇帝陛下の忠臣たちを殺めるがことき蛮行に荷担することはできない」

今度はなななも後退りした。京はなななの誘いをきっぱりと断った。そしてここは京の牙城なのだ。
今度こそ万事休すか――?
なななは最悪の事態を覚悟した。しかし次の京の言葉は、あまりにも予想外であった。

「これ以上話しても接点は見出だせない。お引き取り願おう」

「……え?」

なななは思わず間の抜けた声を漏らしていた。
自分達を逮捕しないのか?

「わ、我々を見逃す気か?」

なななの疑問をZEAMが代弁した。うわずった声が明らかな戸惑いをあらわしていた。

「……?」

京はその時初めてZEAMの存在に気づいたかのように、奇妙な沈黙をもって返した。一瞬眉をひそめたようにも見えた。

「反逆者である我々を、あなたは見逃すというのか?」

今度はななな自身が尋ねた。
京はくわえていたタバコを灰皿に押し付け、言った。

「貴様ごときがのこのこと自分からやって来たのを捕らえては、かえって帝国公安委員会の品位を下げることになる。阿呆を捕まえたところで、どうして自らの功績を誇れようか?」

なななはごくりと生唾を飲んだ。手のひらにはじわりと汗が浮かんでいた。
一刻もはやくこの場を出たい、出るべきだと思った。

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11/10 17:49 URBANO BARON(e) [44]※このSSはフィクションです。
43

「何をしている?さっさと失せろ!」

京の声に凄味が増して、なななとZEAMは一目散に駆け出した。
追っ手がかかっているか気にする余裕もなかった。とにかく足を動かし、車へと急いだ。

一人部屋に残った京は、また新しいタバコを手にとった。しかし、火をつけることはしなかった。

「あれで革命家気取りか……なんと幼稚な……」

ぽつりとつぶやくと、彼は未だに暗い窓の外を見やった。
なななとZEAMが乗った乗用車が急発進して出てゆく。そしてその後ろを、京の優秀な部下の車がライトもつけずについていった。
二台の車はあっと言う間に離れていく。
なななの車のテールランプだけが光り、それもまもなく闇の向こう側へと消えていった。

京は今度こそタバコに火をつけた。彼の部下はなななを尾行し、いずれはその潜伏先を突き止めるだろう。

「蛆虫は一網打尽にせねば、な…」

京は不敵に微笑み、タバコの煙を吐き出した。


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11/10 17:51 URBANO BARON(e) [45]※このSSはフィクションです。
44


年は明け、帝国暦2012年1月1日。
変態皇帝黒猫は新年の一般参賀式典に姿を現した。
反乱分子による昨今の不穏な動きを考慮して、式典の警備態勢は例年よりはるかに厳重だった。

「帝国臣民諸君、こうして新年を諸君と迎えられたことは、朕の喜びとするところである」

式典の冒頭、まずは皇帝がスピーチを行う。

「とりわけ今日は喜びも深い。昨年反逆者による襲撃で負傷した神 長門が、こうして朕のもとに戻ってきてくれた」

副帝神 長門は、ダイナマイトの爆発に巻き込まれたとは思えぬ驚異的な回復をみせ、はやくも公務に復帰していた。

「また、つい昨日起こった事件において、委員長が類いまれなる勇気を発揮してくれたことにも、朕はおおいに感動した」

リーベンシュロースをなななが訪れたことは、すでにニュースなどで臣民の知るところとなっていた。

「帝国に寄生する一部の反逆者に対し、朕の信頼する忠臣が共に素晴らしい働きをしてくれたことは、賞賛と褒章に値するものだと朕は考えた。そこで神 長門と京の両名に対し、朕は黄金柏葉付剣付ダイヤモンド騎士鉄十字章を授けるものである」

黄金柏葉付剣付ダイヤモンド騎士鉄十字章―――
それは神聖黒の舘帝国における最高位の勲章であった。
過去にこの勲章を与えられたのは、帝国の創成期に勇名を馳せたルーデルというパイロットだけである。
一般参賀に参列していた大観衆は、熱狂的な叫びをもってこれに答えた。

「オールハイル黒猫!ジーク長門!ジーク委員長!」
その大歓声はしばらくの間やまず、変態皇帝黒猫は満面の笑みを浮かべた。

「両名には今後とも、朕と帝国のために一層の奉公を期待している。臣民の幸せのためにも、努力せよ」

黒猫はスピーチを締めくくり、観衆はさらに熱狂した。
皇帝の不動の地位を象徴する式典であった。


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11/10 17:53 URBANO BARON(e) [46]辰之助
もう大分内容が明後日の方向or改竄されちゃってるよな
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11/10 21:03 F01C(i) [47]ななな
それもまた一興也
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11/10 22:56 CA003(e) [48]※このSSはフィクションです。
45
式典のあと、皇帝と副帝、さらにすべての閣僚が出席する新年会が開かれた。
華やかな宴の席で、副帝神 長門は皇帝と酒を酌み交わしていた。

「それにしても、近頃の反逆者は骨のない奴ばかりだ」

変態皇帝黒猫は既に上気して顔を赤らめている。

「まったくもってその通り。小官を殺すことすらままならない有り様ですからな」

神 長門の方は今のところ酔っている様子はない。

「その点は敵に感謝してもいいくらいだが、しかしどうせならもっとやりがいのある敵と戦いたいものだ」

「皇帝陛下は名君であらせられるが、しかして同時に随一の武将でもありますからな」

「だから反逆者が絶えぬのかもしれんな」

皇帝はそう言って快活に笑った。
反逆者が後を絶たないこと、それ自体を気に病んでいるのではない。反逆者たちの素質のなさに失望しているらしい。
皇帝のそういう無邪気な憂いを、神 長門は鋭敏に感じとることができた。
ばぁすと戦役以来、帝国は大きな戦乱に関わっていない。皇帝は敵を求めているのだろうか?

「今のところ誰も朕を倒せていないが、朕よりもすぐれた武将がいれば、その者こそ皇帝にふさわしかろう。朕は帝位を血によって得た。それを奪われるとしたらそれもまた、血によってということになろう。もっとも、反逆者たちが朕を倒す能わざることは明白だが」

「陛下より優れていることを反逆者に期待するのは酷でありましょう。彼らは無能だからこそ弾圧され、故に反逆に走るのですから」

「確かにな。連中に名将たれと望むのは叶わぬことだな」

変態皇帝黒猫は苦笑して盃をあおいだ。

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11/11 08:46 URBANO BARON(e) [49]※このSSはフィクションです。
48
酒を飲みほして一呼吸おくと、皇帝は思いついたように言った。

「副帝も朕に勝つ自信さえあれば、いつでも朕にかかってくるがよい。共に稀代の用兵家と言われる朕と副帝の戦いならば、帝国史上まれに見る接戦となろうぞ」

「ご冗談を……」

即座に答えた長門であったが、なおも快活に笑う皇帝を見る目は明らかに動揺していた。
この動揺は長門自身にも予想外のものであった。自分が精神的なショックを受けたことを自覚しつつ、長門はなぜ自分の心が揺らぐのかわからなかった。
今まで自分は皇帝のためにあらゆる忠節を尽くしてきた。それは帝国の未来のためではなく、もちろん臣民のためでもなく、あくまで皇帝個人のためであった。
故に長門は、自分が皇帝と戦うことなど考えてみたこともなかったのである。
そんなことは考えられない。自分の忠義にはなんらの瑕疵もない。
長門は冷静に自分の動揺を静めていった。
皇帝陛下は冗談をおっしゃったに過ぎない。それを間に受けて動揺するとは、自分はとんだ馬鹿だ。

「陛下、小官はすこし酒が過ぎたようです。粗相のないうちに一度失礼いたします」

「そうか。ではまた後でな」

副帝は皇帝の側を辞すると、足早に宴会上を後にした。
自分の居城に戻ろうかと考えていた時、長門は京に呼び止められた。

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11/11 08:48 URBANO BARON(e) [50]※このSSはフィクションです。
49

「オレの部下がなななの仲間を一人捕らえた。昨日オレのところへ来たZEAMとかいう奴だ。だが自白剤を使っても何も供述しない。恐らくなななからは何も聞かされていないんだろう」

「一味のアジトを突き止めたのか?」

「あぁ。しかしそこにいたのは途方に暮れているZEAMだけだったそうだ。なななに置いていかれたらしいな」

「他の仲間はいなかったのか?」

「いた形跡はあったが、姿はなかった。泳がせて一網打尽にするつもりが、裏目に出てしまった。奴等を見逃したオレの判断が間違っていた」

「いや、連中がそこにいた形跡を残していたのなら、まだ足取りを追うことはできるはずだ。まだチャンスはあるだろう」

「そう言ってもらえると助かる。ところで捕まえたZEAMだが、役に立たないしさっさと処刑するつもりでいるが異論はないか?」

「構わない」

「では直ちに処刑を執行する。今から政治犯収容所に向かうが、副帝陛下もご同行なさるか?」

「そうさせてもらおう。オレの命を狙っていたという反逆者の顔を見てみたい」

「では行こうか」

長門と京は連れ立って歩き出した。一時は不仲を取りざたされ、ななながそこにつけ入ろうと考えた二人であったが、今の長門と京からは、共に団結して皇帝と帝国を守ろうとする決意が見てとれた。
宴会が開かれていた帝国ホテルを出ると、二人はホテルの前に集結した熱狂的な臣民の群れに目を見開いた。

「見ろ!帝国の双璧だ!」

「ジーク長門!ジーク委員長!」

「黄金柏葉付剣付ダイヤモンド騎士鉄十字章ばんざぁぁい!」

大歓声の中からそんな叫びが聞こえてきた。

「帝国の双璧?」

「オレ達のことらしいな」

二人は顔を見合わせて苦笑した。警備員が観衆をかきわけて必死に開いた道を通り、車に乗り込む。

「ジーク長門!ジーク委員長!」

走り去る車にむかって、大観衆はいつまでも叫び続けた。
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11/11 08:49 URBANO BARON(e)

[51]京
50
自白罪

ジーク俺!ファック長門!
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11/11 09:51 W54S(e)
[52]エルザス
51
指摘Thanks

犯すぜ長門!
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11/11 10:44 URBANO BARON(e)
[53]※このSSはフィクションです。
50

ZEAMの処刑準備は迅速に行われた。神 長門と京が政治犯収容所に到着したとき、ZEAMの首にはすでにロープがかけられていた。

「死ぬ前に言い残すことはないか?」

絞首室で京がZEAMに言った。
頭巾を被せられたZEAMの表情を伺うことはできない。しかし、止めどなく震える手が彼の恐怖を物語っていた。

「俺はなななの思想に共鳴した…今日ここで死ぬとしても、古参階級を倒そうとした自分の行いに間違いはなかったと思っている」

ややぎこちない口調ながら、ZEAMは語り始めた。
これは長くなるぞ、と長門は思った。

「元はといえば、既得権益にしがみついて、平気な顔をしてゆとりをいじめる古参階級が悪いんだ!ゆとりに罪はない!」

ZEAMの声が大きくなる。このゆとりコテはまたしても勘違いをしている。ゆとりである自分に非はないと思っている。ゆとりがなぜ嫌われるかをわかっていない。

「自分に都合が悪いものを排除することは、皇帝が何度も使ってきた手じゃないか!なぜそれが俺たちには許されない?!理不尽だ!不公平だ!俺たちは間違っていない!俺たちは悪くないぞ!」

「黙れ下衆!」

長門は絶叫した。不愉快な怒りを抑えられなかった。

「皇帝陛下がバカどもを排除なさるのは、陛下にそれだけの力があるからだ!力があるものには権利がある!副帝ひとり殺せず、委員長ひとり説得できぬ貴様らになんの力があろうか!惰弱な貴様らは常に排除される側なのだ!力無きものは去れ!それがこの世界の摂理だ!」

一気にまくしたて、神 長門は京を振り返った。

「もうよい委員長、とっととこの下衆に鉄槌をくだしてやってくれ」

「了解した」

京は一歩踏み出し、処刑執行人に合図した。とたんにZEAMがわめき散らした。

「ま、待て!まだ言いたいことがある!まだ終わっていない!まだ死にたくな…」

しかし、彼はその言葉を言い終えることができなかった。
ZEAMの足元にぽっかりと穴があき、ZEAMは一瞬の浮遊感を感じたあと、一本のロープによって吊るされた。
即死であった。


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11/13 13:23 URBANO BARON(e)
[54]※このSSはフィクションです。
53

「ゆとりって奴は、死に様までみっともないものなんだな」

京が冷たく言いはなった。
神 長門は、だらしなくぶら下がっているZEAMの死体を見おろした。
もはやZEAMが不快な主張を叫ぶことはない。
彼には力が無かった。自分の主張を正当化できるだけの力が。
絶対的な権力に歯向かう論理は、その権力を倒して初めて正当化される。
ZEAMは順番を間違えたのだ。自分の主張を正当化したいのなら、まずは国を倒してみせろ。
そうだ。お前も、国を倒してみろ―――!

神 長門は一言もないまま、絞首室を出ていった。


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11/13 13:24 URBANO BARON(e)
[55]ミサ㌍タ
~第1章完~
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11/13 14:51 F04B(i)
[57]D(Y)o\o(Y)フォッ
そして第二章、とうとうヤツが動き出す!
invasionが始まる…
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11/13 19:12 SH010(e)
[58]排紅
くくく…やつはゆとり四天王でも最弱よ…
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11/13 19:40 CA004(e)
[59]R.M.
おもしろかったねー
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11/13 20:33 T004(e)
[60]ななな
ZEAM…お前の事は忘れないぜ☆ニカッ
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11/13 20:42 CA003(e)
[61]※このSSはフィクションです。
54


帝国暦2012年1月30日。
この日、変態皇帝黒猫はヴァイスシュロースへの御幸を決定した。神 長門総督を現地に訪ね、前年のなななによる襲撃を撃退した功績をあらためて称えようというのである。
皇帝によるヴァイスシュロース公式訪問はこれが初めてということもあり、ヴァイスシュロースの臣民は連日宴会を開いてこれを祝った。総督居城の城下町は、やってくる皇帝を一目見ようとする人々でごった返し、賑わっていた。

翌日、皇帝は帝国本土からヴァイスシュロースへ向けて出発した。
随行員として、帝国内務尚書のダンボールが同行している。
ダンボールは皇帝の信頼あつい変態VIPである。皇帝の古くからの友人である彼は、閣議では静かに話し合いを眺めていることが多かった。しかし重要な場面では極めて公正な意見を積極的に訴え、話し合いの結論に決定的な役割を果たすこともしばしばあった。
閣僚の中でも長老に値する人物である。
皇帝とダンボールは一個小隊の近衛兵に護衛され、まずは帝国本土とヴァイスシュロースの中間に位置するアルター・ニュース板にやって来た。
アルター・ニュース板は、よっこらせっくす事件の舞台となったノイエラント・ニュース板よりも以前から帝国領土だった場所である。名目上の宗主は変態皇帝黒猫であったが、実際にこの地の管理を任されていたのは神 長門であった。
つまり、帝国本土とヴァイスシュロースの国境とでも言うべき場所だったのである。
皇帝はこのアルター・ニュース板で一夜を過ごすことになっていた。
そしてその一夜が、帝国の歴史に激変をもたらすとは誰も予想していなかったに違いない。


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11/14 15:29 URBANO BARON(e)


[62]※このSSはフィクションです。
61

日付がかわり、帝国暦2012年2月1日。
闇の中を音もなく動き回る二つの人影があった。

「皇帝が宿泊しているホテルまであと2ブロックだ。いよいよだな」

それは近衛兵の軍服に身を包んだなななと、アルター・ニュース板地方軍の制服を着た箱紙姫であった。

「作戦はわかってるな?」

なれない軍服の着付けを直しつつ、なななが訊いた。

「もうばっちり頭に入ってる。あとは実践あるのみだ」

箱紙姫のほうは軍服にそれほど戸惑っていないようだ。

「よし。じゃあ後で会おう。次に会う時には、俺たちは英雄だ」

なななはそう言って右手を差し出した。

「果たして上手くいくかな?」

それに自分の手を重ねつつ、箱紙姫は微笑した。

「いくさ。皇帝を倒すんだ。ゆとりが生き残るにはそれしかない」

「そうだな。それじゃあ仕事にかかろう。また後で」

「あぁ」

箱紙姫は走り去る。その背中を見送りつつ、なななは何か人知れぬ高揚感を覚えていた。

歴史が変わる。新しい歴史は俺たちが作る―――

なななはきびすを返し、皇帝が泊まっているホテルへと急いだ。


変態皇帝黒猫と内務尚書ダンボールは、深夜にまで及んだ公務をようやく切り上げ、二人して酒を酌み交わしていた。

「ヴァイスシュロースか。長門もつくづく自立心が強い」

皇帝は感慨深い様子で語った。

「この頃はさらにその傾向が強いようですな。このアルター・ニュース板にも、副帝はずいぶん久しく現れていないようです」

「帝国本土からどんどん離れていく気がするなぁ」

ウィスキーをあおる皇帝はどこか寂しげである。

「古参階級と呼ばれる連中も、最近はめったに姿を見せない。代わりに、ろくでもないゆとりどもが大手をふって歩いている。嘆かわしいことだ」

皇帝はウィスキーを飲み干した。空いたグラスに酒を注ぎつつ、ダンボールは言った。

「国外からの難民流入も問題です。カス板ゲットーはすでにパンク寸前、しかもカス板民は畏れ多くも皇帝陛下に対して利権の拡大とゲットーの機能向上を迫る有り様。陛下が下された裁定に、根拠を示せとまで言って来た。粛清をお考えになってはいかがですか?」

「朕とて粛清を考えていないわけではない。しかし朕としては、カス板民も帝国に生きる以上同胞だと思っている。連中はすぐに思い上がる癖を直せば立派な帝国臣民となれるだろう」

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11/14 15:31 URBANO BARON(e)
[63]※このSSはフィクションです。
62

「陛下のご寛容は広うございますな」

ダンボールがはにかんだその時、窓のそとから大きな音が聞こえてきた。

「爆発音?」

二人は不審に思い、カーテンを少しだけ開けた。
夜の闇に赤々と、派手な火柱が立ち上っていた。

「街が燃えている!」

皇帝が息をのんだ。

「陛下、どうか窓からお下がりください。これは陛下の御身を狙ったテロかもしれません。狙撃の危険があります。窓に近づいてはなりません」

「うむ、わかった」

変態皇帝黒猫は窓のそばを離れ、内線電話を手に取った。

「朕が連れてきた近衛兵は皆優秀だ。しかし現地の兵はわからぬ。警備を厳重にせねば」

皇帝は直接近衛兵の隊長と連絡をとり、総員起床と警戒態勢を下令した。
2月1日の午前1時頃であった。

「これでよし。反逆者が来たとしても、朕とダンボールには指一本触れられはしまい。返り討ちにしてくれるわ」

「その点自分も異論はございませんが…」

「なにか?」

「いえ、まだこれが陛下の御身を狙った事件とは確定しておりません。単なる事故の可能性もあります。ただ…」

「なんだ?はっきり申してみよ」

「は。自分は、反逆者による暗殺よりさらに悪い可能性を考えたのであります。それはつまり、アルター・ニュース板地方軍によるクーデターです」

変態皇帝黒猫は明らかに目を見開いた。そして怒った。

「地方軍を統轄しているのは長門だ!副帝に限ってクーデターなど起こすはずがない!」

「もちろんその通りです。しかし、もしそれが事実だった場合、一個小隊の近衛兵では陛下をお守りすることはできません。自分はただちに帝国中央に通報し、万が一に備えて援軍を要請したいと思います」


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11/14 15:33 URBANO BARON(e)
[64]※このSSはフィクションです。
63

皇帝は愕然とした。長門によるクーデターなど考えたこともなかった。そして長門に対する不信を明らかにしたダンボールに、強い怒りを覚えた。
だがその一方で、皇帝の冷静な頭脳はダンボールの言葉にも一理あると考え始めていた。
ダンボールとて長門とは旧知の仲であり、自分の長門に対する信頼を知らないはずもない。それでも敢えて皇帝の心証を損ねるような発言をしたダンボールの立場は、内務尚書としての責務を果たしただけではない、真に皇帝の身を案じてのことなのだと理解できた。

「長門が関わっているかどうかはともかく、近衛兵一個小隊では対処できない事態になることは確かに危険だ」

「中央に増援を要請いたしますか?」

「……いや、少なくともこれが事件なのか事故なのかは確認するべきだろう。見切り発車して不用意に増援を呼べば、それこそ朕が長門に不信感を抱いているがごとく思われよう。最低限の事実関係は調べたい」

「かしこまりました。直ちに伝令を出し、爆発の現場で情報収集を始めさせます」

ダンボールは一礼すると、部屋を出ていった。
残された皇帝は、またしてもウィスキーをあおった。

「長門のクーデター…朕を倒す自信があるのか?」

誰に言うのでもなく、皇帝はぽつりと呟いた。

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11/14 15:33 URBANO BARON(e)
[65]京
62
その背中をみおくつつ
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11/14 15:48 W54S(e)
[66]ななな
なにこの胸熱
前章の長門の「そうだ。お前も、国を倒してみろ―――!」のお前"も"の伏線だったら格好よすぎ
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11/14 20:00 CA003(e)
[67]※このSSはフィクションです。
64

爆発現場は軍の施設であった。
アルター・ニュース板地方軍の弾薬庫は、なななが仕掛けた爆弾によって派手な爆発を繰り返していた。この地に駐屯していた軍の部隊が消火にあたっていたが、火の勢いが強すぎて手がつけられない状況だ。
爆弾を起爆させたあと一度隠れていたなななは、たった今現場についた近衛士官のフリをして再び弾薬庫付近に戻ってきた。

「そこの近衛兵、なにをしている?!」

さっそく地方軍の将校に呼び止められたなななは、計画の第二段階を開始した。

「皇帝陛下のご命令により、爆発現場の調査に来た。陛下はこの爆発が反逆者によるテロではないかと憂慮しておられる。爆発の原因はわからないのか?」

「もともと火の気のないところだ。誰かが人為的に火をつけたとしか思えない。反逆者の仕業だとすると厄介だな…」

地方軍の将校が言った。彼はその名をわっふるといい、この駐屯地の司令官であった。

「わかった。自分は一度陛下の元に戻る。消火活動に全力をあげてくれ」

「了解だ」

なななはその場を離れ、皇帝がいるホテルに向かった。
それと入れ替わるようにして、地方軍の軍服を着た箱紙姫がやってきた。

「副帝陛下から緊急命令が出た!指揮官はどこか?」

「ここだ」

わっふる司令は箱紙姫を呼んだ。

「司令閣下ですね?ヴァイスシュロースの神 長門陛下より、緊急命令であります」

箱紙姫はそう言って、わっふるに命令書を手渡した。
その命令書はなななと箱紙姫が偽造したニセモノだったが、大火災の混乱時にそれを見分けることは不可能だった。

「副帝陛下の直々ご命令とは、何事だ?」

わっふるは命令書を受け取った。受け取りつつ、クーデターという単語が頭をよぎった。
副帝はついに謀叛を実行したのか――?
だが、命令の内容はわっふるの予想とは異なっていた。むしろ逆であった。


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11/15 08:56 URBANO BARON(e)
[68]※このSSはフィクションです。
67
なななと箱紙姫が作ったニセの命令書は、以下のようなものであった。

[ヴァイスシュロース総督緊急命令第14069号]

  • 総督府に入った情報によれば、帝国に反旗を翻す一部の謀反人どもが昨夜遅くから本日未明にかけて、アルター・ニュース板にあらせられる皇帝陛下に対し、畏れ多くも暗殺を実行する可能性が極めて高い

  • 謀反人どもの一部は皇帝陛下を護衛する近衛兵になりすまし、すでに陛下のおられるホテルに潜入し、機会を伺っている模様

  • わっふる司令指揮下の部隊は直ちにホテルに出動し、現地の近衛兵を全員武装解除せよ

  • 近衛兵の大部分は陛下に忠誠を誓った真の騎士たちであるが、謀反人との区別がつかぬ以上、武装解除の例外は認めない。抵抗する場合、実力をもってこれを制圧せよ

  • 陛下の御身に万が一のことがあってはならない。近衛兵を武装解除せし後、わっふる司令の責任において陛下を護衛せよ

2月1日1時15分 ヴァイスシュロース総督 神 長門


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11/15 08:58 URBANO BARON(e)
[69]※このSSはフィクションです。
68

「近衛兵に反逆者が紛れ込んだというのか?!」

わっふるは動転した。まさか自分が指導する地域で、皇帝の暗殺事件が起こるとは。

「クマ吉!直ちにホテルに連絡を入れろ!陛下のご無事を確認するのだ!」

わっふるは副官のクマ吉中佐に命じた。クマ吉は電話に走り、わっふるは箱紙姫に向き直った。

「副帝陛下のご命令、確かに受け取った。恐らくこの火災は反逆者による陽動だったのだ。すぐに対処せねば」

わっふるは更に何人かの兵士を走らせ、駐屯地の全部隊に非常事態発生を告げた。

「偵察中隊一個をもってホテルに向かう!護衛の近衛兵を武装解除するのだ!近衛兵といえども抵抗すれば射殺して構わん!これは副帝陛下のご命令である!」

駐屯地のあちこちが騒がしくなり、偵察中隊が慌ただしく出動準備にかかる。

「中隊の指揮は俺が直接とる!急げ!陛下をお救いするのだ!」

わっふる司令直接指揮の偵察中隊がホテルに向かって発進したのは、午前1時20分頃であった。
なななと箱紙姫の計画は、今や軌道に乗りつつあった。


「現場に派遣した兵士はまだ戻らないか?」

ホテルの正面玄関、内務尚書ダンボールは、護衛隊長を務める中尉に尋ねた。

「まだ戻りません。どうも妙です。先ほどから地方軍との連絡が取れません。電話がつながったとしても、地方軍の奴等は『陛下はご無事か?確認したい!』の一点張りで、何が起きたかを教えてくれません。やはりこれは……」

中尉はそこで言葉を切った。
言わなくてもわかる。これは副帝のクーデターなのではないか。彼はそう言いたいのだ。

「状況がわからぬ以上、安易な想像は厳禁だ。これは皇帝陛下ご自身がおっしゃったことだ」

「ハッ。失礼しました」

「うむ。しかし、地方軍が何の状況も寄越さないとなると……」

内務尚書は腕を組んだ。いよいよクーデターの可能性は濃厚である。だとすれば、地方軍が全力でこのホテルに襲いかかってくることもあり得る。
やはり中央に増援を求めるべきだったか。


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11/15 09:00 URBANO BARON(e)
[70]※このSSはフィクションです。
69

その時、歩哨の一人が叫んだ。

「通りの向こうから誰か来ます!近衛士官のようです!」

「戻ってきたか!」

ダンボールは目をこらした。暗い通りの向こうから、確かに一人の士官が走ってくる。

「見たことのない顔ですが…」

中尉が怪訝な声をだしたその時、走ってくる士官が大声で叫んだ。

「完全武装の地方軍がこっちに向かってくるぞ!近衛兵を武装解除しようと息巻いてる!」

「なんだと?!」

ダンボールと中尉は浮き足立った。最悪の事態だ。

「お前、それは本当なのか?」

玄関に駆け込んできた近衛士官にダンボールは訊いた。近衛士官は息も絶え絶えに説明した。

「駐屯地司令が直接指揮する偵察中隊がここに向かっています。副帝陛下の緊急命令により、護衛の近衛兵を武装解除せよと」

「なぜ我々が武装解除を!内務尚書閣下、もはやこれは間違いなくクーデターです!今すぐ陛下の御身をお移しせねば!」

中尉が言った。ダンボールもそれに同意する。

「どうやらそのようだ。ヴァイスシュロース訪問どころではない。今すぐ帝国本土に戻ろう。陛下を説得せねば…」

その時、またしても歩哨が叫んだ。

「来ましたっ!地方軍の装甲車です!砲口はこちらを向いています!」

「くそっ、はやすぎる!」

中尉が毒づき、近衛兵に緊張が走った。

「奴等の魔の手から陛下をお守りするのだ!すぐにホテルのシャッターを閉じろ!全部の入口をふさげ!急げっ!」

中尉の指示により、近衛兵たちは即座に戦闘態勢を取った。

「君は私と来てくれ。陛下に直接報告してもらいたい」

ダンボールは近衛士官に言った。

「ハッ!」

短く応じたこの士官こそ、変装したなななであった。

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11/15 09:01 URBANO BARON(e)
[71]※このSSはフィクションです。
70

ホテルの周囲を取り巻いたわっふる司令の偵察中隊は、あちこちのシャッターを閉め始めた近衛兵を見て緊張していた。
近衛兵は抵抗するつもりだ。

「皇帝陛下護衛の近衛兵諸君に告げる!こちらは地方軍駐屯地司令のわっふるである!」

装甲車のラウドスピーカーががなりたて、わっふるの騒々しい声があたりに轟いた。

「副帝陛下の命により、これより諸君の武装解除を行う!帝国軍同士が相撃つ事態は避けたい!ただちに武装解除に応じてもらいたい!」

しかしわっふるは、いや偵察中隊の全員もだが、近衛兵が素直に武装解除を受けるとは思っていなかった。
彼らは誇り高き皇帝の騎士であり、地方軍のような下級組織ではない。
当然の帰結として近衛兵は軒並みプライドが高い。武人にとって武装解除は最大の汚辱である。なんの悪行も働いていない近衛兵が、安々と武器を置くはずもないのだ。
わっふる司令が装甲車の陰から様子を伺っていると、ホテルから怒鳴り声が聞こえてきた。

「我らは皇帝陛下よりこの武器を賜った!皇帝陛下のご命令なくしてこの武器を手放すことは、近衛兵にとって最大の不名誉である!いかに副帝陛下のご命令と言えど、皇帝陛下の大命の前にはなんの効力もない!」

予想通りの返事であった。
わっふる司令は意を決した。ただ単に武装解除を要求しても拒絶される。かくなる上はきちんと理由を話すしかない。

「よく聞け近衛兵諸君!諸君の中に反逆者が紛れ込んでいる!皇帝陛下の御身が危ういのだ!我々は一刻もはやく陛下をお守りしなければならん!武装解除に応じないのであれば、陛下をこちらへ引き渡せ!」

「国賊め!本性を現したな!貴様らの目的は最初から皇帝陛下だったのだろう!帝国軍人たる者、陛下のおられる建物に砲口を向けるとは何事か!貴様らは国賊だ!」

「違う!我々は副帝陛下のご命令で…!」

「黙れ!その副帝こそが、クーデターの首謀者ではないのか!」

「なにを…!」

わっふる司令が怒り心頭に発したそのとき、ホテルの内部から銃声が聞こえてきた。

「司令、今のは陛下のおられる部屋でした!発砲の光が見えました!」

副官のクマ吉が叫び、わっふるは顔面蒼白となった。
反逆者が暗殺を実行したのか…?

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11/15 09:04 URBANO BARON(e)


[72]※このSSはフィクションです。
71

「もはや一刻の猶予もない!偵察中隊、総員ホテルに突入する!陛下をお守りするのだ!続けぇ!」

叫ぶや否や、わっふるは先陣をきってホテルに突っ込んでいった。偵察中隊の兵士がそれに続く。

「奴ら突っ込んでくるぞ!」

ホテルの中では、近衛兵が混乱に陥っていた。先ほどの銃声は、確かに皇帝の居室から聞こえた。

「国賊どもを迎え撃つ!皇帝陛下をお守りするのは、我ら近衛兵だ!」

隊長の中尉は部下に命じた。地方軍の兵士はクーデターの尖兵だ。皇帝の身柄を抑えに来たに違いない。ホテルに入れてはならない。

「今が命を捨てる時だ!一命をもって陛下の御身を守れ!死んでも奴らを通すな!撃てぇ!」

号令一下、近衛兵のライフルが一斉に火を噴いた。
真っ先に倒れたのはわっふるだった。

「わっふる司令!」

クマ吉が駆け寄り、容体を確かめる。

「傷は浅いです。しっかりしてください!」

「クマ吉…反逆者の陰謀を阻止するんだ…俺のことはいい、お前が指揮をとれ……」

「しかし!」

「行け…!陛下をお守りしろ!」

「…ハッ!」

クマ吉はわっふるの体をそっと横たえ、辺りを見渡した。
近衛兵の射撃は正確を極め、玄関に向かう偵察中隊の兵士を次から次へと撃ち倒す。

「副官殿!これでは全滅です!」

一人の兵士が叫んだ。クマ吉は意を決した。皇帝の居る建物だろうがもはや関係ない。装甲車で直接突入するしかない。

「一度戻れ!装甲車で玄関をぶち破る!それから、駐屯地から増援を呼ぶんだ!歩兵大隊をここに!」

「ハッ!」

激戦のさなかにあっても、偵察中隊の兵士たちは果敢に行動していた。
ホテルの前にはいくつもの死体が転がっている。
クマ吉はわっふるの体を担ぎ上げ、装甲車の陰へと運んでいった。
戦いは始まった。
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11/15 09:06 URBANO BARON(e)
[73]空】出来ないな【中
俺マダァー?
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11/15 10:19 SA002(e)
[74]sa10
わっふるわっふる
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11/15 13:26 P01A(i)
[75]※このSSはフィクションです。
72
近衛兵と地方軍。その両方が、自分達こそ皇帝の身を守る正義なのだと信じていた。
それはある意味で正しく、ある意味で間違っていた。
近衛兵にして見れば、自分達の内部に反逆者がいるなどと言いがかりをつけられ、それを理由として武装解除の憂き目にあうことはまったく考えられないことであった。
しかも武装解除を要求してきた地方軍の部隊は、皇帝が滞在するホテルに装甲車の砲口を向けていた。近衛兵にとっては、敵意むき出しの地方軍こそ反逆者に見えて当然だったのである。
神 長門への疑念が強まっていたことも、近衛兵が自分達の正義を信じる助けとなった。
ましてホテルに突っ込んでくる地方軍が「副帝命令」を堂々と宣言していたとあっては、もはや神 長門によるクーデター以外には考えられなかった。

一方の地方軍からすると、誰よりも皇帝への忠誠があつい副帝の命令を無視する近衛兵など、反逆者の手先に見えても仕方がなかった。
近衛兵は正当な指揮権に基づく命令に従わなかったどころか、ホテルのシャッターを閉じて抵抗の意志を示した。
皇帝に暗殺者が近づいていることを知っていた地方軍の立場からすれば、実力行使に踏み切るのもやむを得ない状況だったのである。
しかも、先に発砲したのは近衛兵であった。最初に撃たれたのは指揮官のわっふるであり、地方軍の兵士たちは、近衛兵があくまで抵抗するつもりであることを身をもって知った。
このような理由もあって、ホテル前の戦闘は熾烈を極めた。


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11/15 16:42 URBANO BARON(e)
[76]※このSSはフィクションです。
75

場面は少しだけ時間をさかのぼる。
近衛士官に変装したなななは、まんまと皇帝に拝謁しようとしていた。
彼はダンボールに連れられ、ホテル内の皇帝の部屋に通された。

「皇帝陛下、爆発の現場を見てきた者が戻って参りました。さっそくご報告をと思い、ここに連れて参りました」

ダンボールとなななは深く頭を垂れたまま部屋に入った。なななはまだ皇帝の姿を見ることができない。

「ご苦労。しかし外が騒がしいな。あれは地方軍の部隊か?」

皇帝は窓際に立っているらしい。
皇帝が「面をあげよ」と言うまでは、なななが頭を上げることは許されない。ダンボールに強く言われたのだ。いま怪しまれてはいけない。
なななははやる気持ちをおさえ、その時を待った。懐には拳銃がある。なななが頭を上げたその時、この拳銃が皇帝の命を奪うだろう。

「左様でございます。地方軍の部隊が、近衛兵に武装解除を迫っております。恐れながら陛下、これはクーデターです」

気配から、ダンボールが頭を上げたことがわかった。自分も上げるべきか?

「…にわかには信じられぬ。間違いないのか?」

「間違いございません。地方軍の指揮官は『副帝の緊急命令だ』と言っているそうです」

ホテルの外では、わっふる司令による近衛兵への呼びかけが始まったところであった。

「完全武装の一個中隊がこのホテルを取り巻いております。おそれながら陛下、ここは危険です。ただちに脱出のご用意を」

「待て。その前にその者の報告を聞きたい」

自分のことを言っているのだとなななにはわかった。そして皇帝の口から、待ちに待った言葉が放たれた。

「面をあげよ」

刹那、なななは懐に手を突っ込んで絶叫した。

「天誅!!」


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11/15 16:43 URBANO BARON(e)
[77]※このSSはフィクションです。
76
拳銃を構えたのと、ダンボールが飛び出したのとがほぼ同時だった。

「貴様はななな!?」

皇帝が叫んだ瞬間、なななの拳銃が火を噴いた。

「ぐぅっ?!」

弾丸は皇帝をかばうように動いたダンボールに当たった。ダンボールはそのままなななに飛びかかり、なななは床に押し倒された。

「お逃げください陛下!ここは危険です!」

「はなせっ!」

なななはダンボールに組み敷かれ、ジタバタと暴れた。だがダンボールはなななを放さない。

「すまんダンボール!死ぬなよ!」

その隙に皇帝は部屋を出た。直後、階下からライフルの一斉射撃の音が聞こえた。近衛兵が地方軍に向けて発砲したのだ。
なななは激しく抵抗したが、ダンボールはそれに屈しなかった。

「反逆者め!獅子身中の虫め!」

ダンボールの力はすさまじく、なななは銃を持つ手を容易に動かすことができない。

「貴様ごときに陛下をやらせはせん!やらせはせんぞ!」

今やダンボールはなななの首に手をかけ、ぎゅうぎゅうと絞め始めた。

「帝国の栄光!この俺のプライド!やらせはせん!やらせはせんぞぉ!」

なななは今や恐ろしいものを感じていた。
あと一歩のところで皇帝を殺し損ねた。だがまだチャンスはある。それなのにこの男の怪力はなんなのだ?!
銃創を負っているとは思えない、圧倒的な馬鹿力であった。
主君を思う家臣の力とは、危機的状況においてこれほど強固になるのか?
武器をもっているのはななななのだ。にもかかわらず、なななはこの男を殺すことができない。それどころか殺されかかっている。
なななは意識が薄れるのを感じた。視界がかすみ、目の前の男の顔がぼやけ始める。
その時だった。

「内務尚書、覚悟!」

絶叫とともに、地方軍の兵士が乱入してきた。それが箱紙姫であることを、なななは不明瞭な思考で認識した。
次の瞬間、箱紙姫はライフルでダンボールを撃った。ダンボールは一発で脳天を撃ち抜かれ、脳髄をばら蒔きながら崩れ落ちた。
なななの首を絞めていた手から力が抜け、なななはようやく息をすることができた。

「すまない箱紙姫、助かった」

なななは立ち上がりながら言った。足元がふらついた。

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11/15 16:44 URBANO BARON(e)
[78]※このSSはフィクションです。
77

「皇帝はどうした?仕止めたのか?」

なななを支えつつ、箱紙姫が訊いた。

「いや、間一髪で逃げられた」

「くそっ!失敗か!」

「それよりどうしてここへ?」

「地方軍の偵察中隊に紛れ込んできた。奴らはこの下の階まで占拠してる。早く服を脱げ。奴ら近衛兵を片っ端から撃ち殺してるぞ」

「わかった」

なななは急いで近衛兵の制服を脱いだ。周到なことに、なななは近衛兵の制服の下に地方軍の制服を着込んであったのだ。

「近衛兵は全滅したのか?」

「いや。大部分は玄関で死んだが、残りは最上階に立て籠ってるようだ」

「なら皇帝もそこにいるに違いない。俺たちもそこへ行こう!」

なななはさっそく部屋を出ようとしたが、箱紙姫に止められた。

「ダメだ!これ以上ここにいては危ない。正体がばれるかもしれないし、何よりもうすぐ地方軍の戦車隊がやってくるんだ。この建物ごと破壊されちまう」

「だけど皇帝をこの手で殺すまでは…!」

「お前が手を下さなくとも、地方軍が片付けてくれるさ!せっかく拾った命を無駄にするな!行くぞ!」

箱紙姫に諭され、なななはやむなく階段を下っていった。
途中、部下を率いて駆け上がってきたクマ吉とすれ違った。

「そこの兵隊!皇帝陛下のお姿を見たか?」

「この上の階にはいらっしゃいませんでした!最上階にて近衛兵どもに拘束されているものと思われます!自分達は連絡のために地上に戻ります!」

クマ吉の問いに箱紙姫が素早く答えた。

「わかった。近衛兵め、なんと畏れ多いことを…!」

クマ吉は吐き捨てるように言って、さらに階段を登っていった。

「行こう。もうヴァイスシュロースに用はない」

なななと箱紙姫は地上階から外に出た。地方軍によるホテルの包囲は一層厳重になっていた。
だが、銃声と怒声が飛び交う状況で、二人を気にとめるものなどいなかった。



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11/15 16:46 URBANO BARON(e)
[79]ななな
なにこれ俺格好良すぎw
わっふるとクマちゃんも熱いw

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11/15 16:55 CA003(e)
[80]通りすがり
ジオンの漢のかほりがするな
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11/15 17:26 W61CA(e)
[81]※このSSはフィクションです。
78

アルター・ニュース板で神 長門によるクーデター発生。

この速報は、午前2時までに帝国全土を駆け巡った。
その知らせを聞いて誰よりも驚いたのは、他ならぬ神 長門その人であった。

「副帝陛下!大変です!」
午前1時53分、長門はヴァイスシュロースの居城にある寝室にいた。そこへ飛び込んで来たのは、長門の主席副官であるデキナイナである。

「何事だ?」

パソコンに向かい何やら書き物をしていた神 長門は、いつも冷静なこの副官がすっかり慌てていることを不思議に思った。

「帝国大本営より、全土にむけてこのような電文が発信されております!」

デキナイナはそう言うと、一枚の通信文を手渡した。

「大本営総帥部発表。本日未明、アルター・ニュース板において帝国副帝・神 長門が皇帝陛下に対し不敬にもクーデターを発動…!?」

副帝はデキナイナの顔を見つめた。

「この電文は間違いなく大本営からの本物の通信なのか?何者かが皇帝陛下を襲撃したことは事実か?」

「ハッ。電文は間違いなく本物であります。そして皇帝陛下を襲撃したのは、『何者か』ではなくアルター・ニュース板地方軍の部隊であります」

「なに?地方軍が独断専行して陛下を襲撃したということか?」

「副帝陛下、そうではありません」

デキナイナは一度黙り、ごくりと唾をのんだ。

「アルター・ニュース板地方軍は、副帝陛下のご命令により、皇帝陛下のおわすホテルを襲撃、護衛の近衛兵を殲滅したとのことであります」

「なんだと?!」

長門は思わず立ち上がっていた。そして瞬時のうちに、事件の全貌をほぼ過不足なく把握していた。

「何者かがオレの名を使ってニセの命令書を作ったのだ。アルター・ニュース板地方軍はその命令に従って行動した。ニセの命令書を作った犯人の動機は明らかだ。つまり、皇帝陛下の暗殺だ!」

神 長門は荒々しく机を叩いた。副帝は怒り狂っていた。だが、何に対して怒っているのか?

「それで、皇帝陛下はご無事なのか?」

喚き散らしたい怒りを懸命におさえつつ、長門はデキナイナに訊いた。

「目下のところ行方不明であります。すでに本土からは辰之助閣下が行動隊を率いて発進し、陛下の救援に向かったとのこと」


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11/15 23:16 URBANO BARON(e)


[82]※このSSはフィクションです。
81

「決起部隊が陛下を取り押さえたという可能性は?」

「今はわかりません。アルター・ニュース板地方軍は現在もヴァイスシュロース総督府の指揮下にありますが、そのような報告はありませんでした」

「ふむ…」

長門は考え込む仕草をした。
デキナイナは気が気ではない。はやく手を打たねば、辰之助の行動隊はすぐにもここまでやってきて、「反逆者」神 長門を討伐するだろう。

「副帝陛下、まずは帝国本土に対し、副帝陛下がこの一件とは無関係であることをお示しください。副帝陛下の緊急命令はニセモノ、ホテル襲撃は地方軍の独断専行であると、明確に知らせるのです。さもなければ副帝陛下、陛下が反逆者の汚名を着せられますぞ」

デキナイナは真剣な表情で神 長門を見つめた。副帝の口が開き、ただ一言こう言った。

「ダメだ、オレはもう引き下がれない」

「なっ!?」

デキナイナは絶句した。引き下がれないとはどういう意味なのだ?自分とは無関係な襲撃の責任を被るということか?

「陛下、お待ちください!どういうことなのです!?このままでは本土との内戦になります!一刻もはやく和解を!」

デキナイナは必死に食い下がった。
副帝の返事は冷たかった。

「ダメだ。すでに賽は投げられた。いま本土に釈明したところで、連中はオレの主張を信じないだろう」

「何故ですか!?副帝陛下の帝国への献身はだれもが知るところです。事情を説明すれば誤解はとけます!」

「果たして、誤解と言いきれるだろうか?」

「は?」

デキナイナは長門の言葉に不吉なものを感じた。

「オレが襲撃と無関係だったとしても、ヴァイスシュロース総督府の指揮下にある部隊が空前絶後の不祥事を起こしたことは事実だ。そのような事態を招いたオレの責任は、逃れようがない」

「しかし…」

「ならばいっそのこと、動き出してしまったこの博打にのってしまえばいい。皇帝陛下が行方不明となれば、帝国の全権はオレが握ることになる。帝国本土にそれを告げ、こちらに正統性があることを主張すれば、オレのクーデターは既成事実となる」

「お待ちください!副帝陛下!」

デキナイナは必死であった。いま副帝の中には、なにか良からぬ衝動が芽生え始めている。それを摘み取らねば、副帝は破滅してしまう。


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11/15 23:17 URBANO BARON(e)
[83]※このSSはフィクションです。
82

「副帝陛下の名を使い、ニセモノの命令書を書いた何者かがいたことは疑いようがありません。その何者かの策に、何も陛下が付き合ってやる必要は少しもないはずです。どうか冷静になって、事態への対処をご再考ください」

デキナイナはまくし立て、勢いよく頭を下げた。

「その通りだ。何者かがオレを勝手に担ぎ上げ、クーデターを実行させた。オレはそれが我慢ならんのだ!」

神 長門が絶叫し、デキナイナは恐る恐る副帝を見た。

「オレの意思に関係なく、オレを利用しようと考えたものがいる!それが誰であれ、オレの行いを他人に決定されるなど断じて許せん!オレは確かに遅れをとった。状況はその何者かの思い通りに進んでいる。それが許せんのだ!かくなる上はオレが自らの意思によって動き、オレの行動を決めるのはオレ自身であることを示すのだ!それは、陰謀を仕組んだ者の思い通りということではない。あくまでオレの主体的な意志によるものだ。『神 長門は陰謀にはまり、皇帝に背いたという汚名を着せられざるを得なかった』、後世そんな風に言われることがあっては神 長門の名折れだ。ならば、この襲撃事件は最初からオレの意思で行われたことにすればいい。副帝神 長門のクーデター、それを事実にしてしまえばいい。賽は投げられたのだ!」

神 長門の目は真剣であった。デキナイナはその目をまっすぐ見返すことができなかった。
副帝の目は、深い哀しみの光をたたえていた。

「……わかりました。副帝陛下のご覚悟がそこまでかたいものならば、もはや自分に言葉はありません。最後までお供いたします」

「すまんな、デキナイナ」

デキナイナは黙したままもう一度頭を下げた。彼の忠誠心は帝国ではなく、副帝個人に向けられていた。

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11/15 23:18 URBANO BARON(e)
[84]真鍋もっつぁれら
相当不穏だな
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11/16 00:19 SH009(e)
[85]※このSSはフィクションです。
83
神 長門はデキナイナに命じ、ヴァイスシュロース総督府の幕臣たちを集めさせた。
すでに事件発生の報を耳にしていた幕臣たちは、ほどなく全員が副帝の執務室に集まった。
前年のなななによる襲撃で爆破された執務室は、いまやすっかり元通りになっている。

「このような時間に集まってもらったのは他でもない。諸君にオレの意志を示すためである」

自らが育て上げた幕臣たち一人一人を見つめつつ、神 長門は切り出した。

「思うに平時の武官とは、鎖に繋がれた番犬と同じである。長い平安の中で怠惰が蔓延し、いかなる精兵たちも内部から腐っていく。オレはそのような運命を受け入れることができない」

幕臣たちの目は見開かれていた。まばたき一つせず、熱心に副帝の話を聞いている。

「何故ならオレは自分の行動を自分の判断で決めたいからだ。何人たりとも、たとえそれが運命とやらでも、オレの意志に反する行動をオレに強いることはできない。もしオレの意志をねじ曲げられるものがあるとすれば、それは唯一、皇帝陛下のみである」

長門が皇帝陛下という言葉を使った瞬間、幕臣たちの何人かが唾を飲み下した。いよいよ副帝の決意が明らかになる。

「オレは今まで、帝国の誰よりも陛下に尽くしてきた。オレは陛下に絶対的な忠誠を誓った。たとえオレの意に反するとも、オレは陛下への忠誠心ゆえに、陛下の命令を甘んじて受けてきた。それはそれで、オレの意志の現れだったからだ」

執務室にはこの上ない緊張が張りつめている。副帝が言葉を切るたびに、真空中にいるような静寂が訪れる。

「だがオレは、あくまでも自分の意志を貫くために、敢えて陛下に反旗を翻す!」

幕臣たちは息をのんだ。
副帝謀叛の報告は真実となった。

「反逆者となることはいっこうに構わん。しかし反逆者に仕立てあげられることは我慢がならないのだ!オレはすでに、アルター・ニュース板で取り返しのつかない失態を犯してしまった。皇帝陛下をお守りする義務を果たすことができなかった!オレは、いまこそ甘んじて反逆者の汚名を被り、あくまで陛下に立ち向かう覚悟だ!」

再びの静寂。誰も異論をとなえようとしない。

「諸君の中に、断固として皇帝陛下への忠誠を尽くそうというものがいれば、今すぐオレを撃て。さもなければ、オレは皇帝陛下にただならぬ悪事をもたらすことになるぞ」

長門は立ち上がり、両手を広げて目を閉じた。
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11/16 19:28 URBANO BARON(e)
[86]※このSSはフィクションです。
85
執務室はまた真空状態となる。
誰一人、副帝を撃とうとはしなかった。

「副帝陛下、我々の気持ちを申しあげます」

デキナイナが幕臣の列から一歩前に進み出た。

「我らは皆、副帝陛下のお陰をもちまして、今日の立場を築き得たのであります。そのご恩は忘れようにも忘れられません。副帝陛下のご意志とあらば、我々幕臣は喜んで忠誠を尽くします」

デキナイナはそう言うと、背後の幕臣たちを振り返った。

「最後まで副帝陛下に忠誠を誓うものは、一歩前へ!」

ザッ、という足音が揃い、幕臣の全員が一歩を踏み出した。

「これが、我々の気持ちであります」

デキナイナは副帝を見つめた。

「諸君の忠誠心、かたじけない」

副帝は涙を禁じ得なかった。自ら手塩にかけて育て上げた部下たちの忠誠。それは、副帝にとって勲章より価値のあるものだったのかもしれない。



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11/16 19:29 URBANO BARON(e)
[87]わっふる
俺とクマは長門側なのか
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11/16 19:51 W62P(e)
[88]ななな
あまりに勢い良すぎて文体が変わるねwww
だけどそれもカッコ良いwww
ナガモンが男前すぎる…
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11/16 20:15 CA003(e)
[89]カタナン
俺の出番まだかよ
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11/16 21:14 S005(e)
[90]排紅
そろそろ俺の出番が来るはず…来て下さい
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11/16 21:36 CA004(e)
[91]真鍋もっつぁれら
85
悪事をもたらく になってるよん
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11/16 21:57 SH009(e)

[92]※このSSはフィクションです。
86


帝国暦2012年2月1日、午前2時13分。
帝国本土の変態板では、公安委員会委員長の京が最初の報告を受け取っていた。

「バカな!何かの間違いだ!」

副官のミャンマー博士から報告書を受け取った京は、激昂してそれを破きさった。

「今まで長門に不信の目が向けられたことは何度もあったが、その度にそれは誤りだと示されてきたではないか!そのような無益な噂は、元日の勲章授与で消えてなくなったかと思っていたが、そうではなかったらしいな!」

「落ち着かれよ、公安委員長」

「これが落ち着いていられるか!ミャンマー!貴様も、そんなくだらん話を真に受けるとは!」

「今回の事件は噂でもなんでもない。紛れもない事実だ。辰之助と行動隊は早くもアルター・ニュース板に向けて発進した。公安委員会としても何か手を打たねばなるまい」

「皇帝陛下が国賊に襲われたことに疑いはない。しかしそれに長門が関わっている確証もない!国賊どもが勝手に長門の名を使っていたとしたらどうする?皇帝陛下の行方がわからない今、帝国の全権は副帝たる長門が握っていることになる。その長門に対して兵を差し向けるなど、それこそ国家への反逆ではないか!」

「もし副帝陛下が本当に事件と無関係だとすれば、たしかに辰之助と行動隊は公然と反逆行為に及んだことになるだろう。しかし副帝陛下が事件の首謀者だったとしたら?それがわかってから派兵しても遅いぞ。皇帝陛下はまだご無事かも知れないが、副帝陛下が正体を現した時までそうとは限らん。公安委員長、今は見切り発車でもいいから、ヴァイスシュロースに部隊を派遣したほうがいい。偵察隊でも情報員でもなんでもいい、皇帝陛下の行方がわかったとき、何かの役に立つはずだ」

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11/18 08:36 URBANO BARON(e)
[93]※このSSはフィクションです。
92
ミャンマー博士は粘り強く京を諭した。
京と長門は「帝国の双璧」と並び称される国民的英雄だ。その二人が敵対しあう姿など、できればミャンマーとて見たくはない。
しかし、現状は切迫しているのだ。ほんの少しの対応の遅れが、帝国にとって取り返しのつかない損害を生み出しかねない。

「……公安委員会は、アルター・ニュース板に武装偵察大隊を派遣する」

京はミャンマーの意見に同意した。たしかに事態は一刻を争う。
公安委員会としては本来このような事件は未然に防がねばならなかったが、しかし今それを悔やんでも仕方がない。当面は行方不明の皇帝を保護することを最優先とし、副帝が事件に関わっていたかどうかは後々調べることにした。

「派遣する武装偵察大隊には、反乱軍との戦闘は極力避けるように厳命しておけ。ただし、皇帝陛下の御身を守るためにやむを得ない場合、正当防衛、緊急避難の場合はのぞく」

「了解した。できることなら帝国の臣民同士が撃ち合う事態は避けたいからな」

ミャンマーは京が示した命令に納得をしつつも、ある種の冷ややかな感情を抱かずにはいられなかった。
すでに地方軍と近衛兵との間に、臣民同士が撃ち合う状況は発生しているのだ。今さら同士討ちを気にしてなんになる、と。
京の命令によって公安委員会所属の武装偵察大隊が変態板を発進したのは、午前2時40分であった。



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11/18 08:37 URBANO BARON(e)
[94]※このSSはフィクションです。
93

その頃、変態皇帝黒猫は、闇と悪臭と湿気が支配する世界を歩いていた。

「陛下、申し訳ございません。まさかこのような場所へ陛下をお連れしなければならないとは…」

近衛兵の中尉が気の毒なほど恐縮して言った。

「構わぬ。少なくとも貴官のせいではないし、これも社会経験と思っていたところだ。今日はいろいろな経験ができた」

特に冗談といった口調でもなく、皇帝は答えた。
皇帝と中尉は、いま二人だけで下水道を歩いていた。

「ホテルのダストシュートに飛び込んだときはさすがに肝を冷やしたがな」

皇帝はようやく微笑を浮かべた。汚物の匂いが鼻にまとわりついた。

「本当に申し訳ありません」

「そう何度も恐縮するな。最上階に追い詰められた時点で、逃げ道はほかにはなかったではないか。そのまま下水道に潜らざるを得なかったのもまぁ仕方がない。地方軍の全体が反乱軍となった以上、もはやアルター・ニュース板に安全地帯はなくなってしまったからな」

皇帝の言葉は事実である。
ダンボールの命を賭けた献身によってからくもなななから逃れたあと、皇帝は近衛兵たちとともにホテルの最上階に籠城した。
だが地方軍の攻撃は猛烈で、近衛兵が全滅するのも時間の問題に思われた。
そこで中尉が一計を案じた。敵の目はホテルの最上階に集中している。もし最下層まで一気に移動できれば、反乱軍から逃げきれるかもしれない。
中尉は自らダストシュートに飛び込み、地下にあるゴミ集積場におりた。案の定、地方軍の兵士は一人もいなかった。
中尉に続いて皇帝もダストシュートに飛び込んだ。他の近衛兵たちは、最後まで時間をかせぐため最上階に残った。この時すでに、近衛小隊の人数は7人にまで減っていた。

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11/18 23:30 URBANO BARON(e)
[95]※このSSはフィクションです。
94

「むしろ謝るべきは朕のほうであろう。朕を逃がすために、貴官の大切な部下たちを失うことになった。痛恨の極みだ」

皇帝は7人の近衛兵たちも連れて行こうとした。だが、彼らは断固としてそれを辞退した。近衛兵の一人はこう言った。

「陛下をお守りするのが我らの使命。結局は誰かが残らねばなりません。しかし、我らは今まで寝食を共にし、あくまで陛下への忠誠を尽くして参りました。最期は仲間と一緒に迎えたいのです。我らはここで果てるのが運命でありましょう」

皇帝は言葉が出なかった。
兵士たちの間の友情を、誰が引き裂くことができようか?それは、皇帝にすら許されない行為なのだ。
皇帝は万感の思いを込めてうなずき、近衛兵たちと別れた。

「部下たちに迷いはなかったと、自分は確信しております。全員が陛下のために喜んで命を差し出したことを、自分は知っております。彼らの犠牲は、むしろ小官の誇りであります」

先に立って歩く中尉の言葉には芯があった。それだけ部下たちを信頼していたのだろう。
そしておそらくは部下たちのほうも、中尉を信頼してやまなかったに違いない。だからこそ彼らは最後まで戦うことを決め、皇帝を中尉に託したのだ。自分達の隊長である中尉なら、一人でも皇帝を守りきれると信じて。

「この先100mほど進んだ所から地上にでましょう。ホテルからは充分離れたはずです」

「うむ。本国からの増援が早くきてくれるといいのだが」

「近衛隊司令部と辰之助閣下の行動隊本部には連絡出来ました。少なくともアルター・ニュース板に向けてすでに出発はしているはずです」

「そうか…ところで、まだ貴官の名前を聞いていなかったな。」

「篠原といいます。近衛第一連隊第二大隊E中隊所属であります」

「篠原中尉か。いいか中尉、朕と貴官は必ず生きて本国に戻る。その時は共にお互いの幸運を喜び、そして我らの為に散っていった近衛兵たちの魂を慰めよう。彼らこそ英雄だ」

「はい」

篠原中尉はしっかりとうなずいた。
もし生き延びることができたら、この好青年に勲章を与えよう。変態皇帝黒猫はそう思った。ただの勲章ではない。黄金柏葉付剣付ダイヤモンド騎士鉄十字章だ。
一度は神 長門に与えたそれを、皇帝は没収するつもりでいた。

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11/18 23:32 URBANO BARON(e)
[96]ななな
最上階からダストシュートって怖いなおい


黒猫の配置まだ決まってなかったりする?
なんだか黒猫の立ち回りがブレている気がする
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11/18 23:47 CA003(e)
[97]エルザス
96
あえて口調や振る舞いを変えてる
むしろ責任ある立場にいる人間が誰に対しても同じ口調・態度で接するほうが気持ち悪い。まさやくんも同級生と後輩では接し方が変わるでしょ?
皇帝の場合、普通の臣民や皇帝の神性を信奉する兵士たちの前では高飛車に振る舞わざるをえない。
しかし変態VIP、とりわけ神 長門やダンボールのような古くからの付き合いがある友人の前では、口調もラフになり普段は口にしないような本音を漏らしたりもする。つまり人間性を露呈させる
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11/19 00:48 URBANO BARON(e)
[98]エース篠原
自分の名前出るとは思わんかったわ。
なんかありがとう
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11/19 01:44 K009(e)
[99]※このSSはフィクションです。
95

行動隊隊長の辰之助は、精鋭をもって知られる300名の部下を率いてはやくもアルター・ニュース板に到着していた。
彼の前衛部隊は地方軍を蹴散らし、まもなくホテルへの突入路が確保された。

「今すぐ突撃だ!図に乗った反逆者どもを叩きのめせ!総員、ホテル目指して突撃ぃ!」

300人が一斉に駆け出し、ホテルを取り巻いていた地方軍の兵士たちは取り乱して逃げていった。
変態VIPの中でも、辰之助はとりわけ戦闘意欲が強いことで知られている。その煮えたぎるような闘争心は普段ゆとりに対して猛威をふるうが、この時は尋常とは違っていた。
辰之助は何かにとりつかれたかのように急いでいた。出発を急ぎ、進軍を急ぎ、突撃を急いだ。
この時辰之助は、一刻もはやく反乱軍に打撃を与え、彼らの棟梁である副帝を戦場に引きずり出そうとしていた、と後世の歴史家は書き記している。
確かに辰之助は、それまで戦ったゆとりとは違う、対戦相手として手応えのある神 長門の存在に心惹かれていたようである。
辰之助が戦う理由はあくまでも好戦的な彼の性格に起因するものであり、必ずしも皇帝への忠誠心からではなかった。
かつてない強敵を相手にする戦いを前にして、辰之助は言い知れぬ高揚感を感じていた。

しかし彼の攻勢に直面した地方軍の兵士たちは、そのような感慨を覚えている暇はなかった。
ホテル周辺の地方軍は相変わらずクマ吉によって指揮されていたが、クマ吉がホテル内で皇帝探しに夢中になっていたため、事実上指揮官不在のまま応戦せざるを得なかった。
ホテルの包囲網はあっさりと破られ、その穴を埋める部隊はひとつもなかった。各部隊は情報を共有することができず、ある部隊が熾烈な銃撃戦を展開していたころ、隣の部隊はそうとは知らずに呑気にタバコを吸っていた。
行動隊の動きには無駄がなく、部隊間の連携も完璧であった。対する地方軍は実戦経験に乏しく、形勢は一方的と言えた。
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11/21 09:58 URBANO BARON(e)
[100]※このSSはフィクションです。
99
そもそも指揮官たるクマ吉は、辰之助の行動隊がすでにアルター・ニュース板に到着していることを知らなかった。というより彼の立場からすると、行動隊と地方軍が戦火を交わす理由が存在しなかった。
だから行動隊と交戦中との知らせを受け取ったとき、クマ吉はそれが何を意味するのかわからなかったに違いない。

「なぜ行動隊が我々を攻撃するんだ…?辰之助め、クーデターでも起こすつもりか?」

反逆者はあくまで近衛兵の中にいると思っていたクマ吉にとっては、いきなりやって来て攻撃を仕掛けてきた行動隊は、それこそ反逆者に共鳴する反乱軍に思えたのだった。
クマ吉が対応を考えている間にも、行動隊はホテルに近づいてきていた。
クマ吉は焦った。保護すべき皇帝は見つからない。反逆者に連れ出された可能性が高い。
ホテルの最上階に攻め上った彼は、最後まで抵抗していた七人の近衛兵を慎重に調べた。なにか手がかりになるものは?
なにもなかった。
そうこうしているうちに、とうとう行動隊の先頭がホテルの内部に雪崩れ込んできた。クマ吉は抵抗を諦め、投降した。
彼はそのまま辰之助に引き合わされた。

「指揮官は貴様か?」

辰之助の態度はいかにも威圧的である。

「本来なら駐屯地司令のわっふる中佐だが、反逆者との戦闘中負傷された。だから自分が代わりに指揮をとっている」

「反逆者?反逆者とは誰だ?貴様らが反逆者ではないのか?」

「何を言ってるんだ!情報が伝わってないのか?皇帝陛下護衛の近衛兵に反乱分子が紛れ込み、陛下のお命を狙っているというから、我々は上官の命令でそれを阻止する為に出動したんだ!」

クマ吉は声を荒げた。


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11/21 09:59 URBANO BARON(e)
[101]※このSSはフィクションです。
100

「上官とは誰のことだ?わっふるか?」

「そうではない。ヴァイスシュロース総督、副帝神 長門陛下のことだ」

「なら、やっぱり貴様らは反逆者だ」

「なにぃ?!」

クマ吉は我慢できなくなってきた。反逆者呼ばわりされる謂われはない。
あやうく辰之助を殴りつけようとしたクマ吉は、しかし辰之助の一言で凍りついてしまった。

「副帝神 長門は謀叛人だ。奴は皇帝陛下を亡き者とし、クーデターを実行しようとしている」

「なん……だと……?」

「わからなかったのならもう一度言うぞ。貴様の上官、神 長門は、謀叛人だ」

クマ吉は絶句した。はめられた、と思った。膝から力が抜けて、その場に崩れ落ちた。

「知らなかったのなら罪は軽くなるだろう。もっとも無実の近衛兵を全滅させてしまったのは、取り返しのつかないことだが…」

クマ吉はもはや辰之助の話を聞いていなかった。
副帝謀叛。そんなバカげたことがあろうか?

「一つだけ訊くが、皇帝陛下の行方はまったくわからないのだな?」

哀れなクマ吉は、黙って首を振るのがやっとだった。
ならいい、と一言を残して、辰之助は去っていった。
残されたクマ吉は、ただ呆然と地面を見つめていた。
自分たちが神聖だと信じていた副帝は、実際には罪深い謀叛人だったのだ。

少しして、駐屯地からの伝令がやってきた。伝令の兵長はクマ吉にかしこまった敬礼をすると、言った。

「駐屯地司令わっふる中佐、懸命の治療もむなしく亡くなられましたッ!以降アルター・ニュース板地方軍の全権は、クマ吉副官殿がこれを掌握されます!以上!」

生真面目な伝令はそれだけ言うと、うなだれるクマ吉を残して帰っていった。
クマ吉は我が身の不幸を呪った。今や彼は、このホテルで起こったことすべての責任をとらねばならない。
帝国暦2012年2月1日、午前4時20分。まだ夜は明けない。


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11/21 10:00 URBANO BARON(e)

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最終更新:2013年05月09日 20:19
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