256 名前:※代理投下です投稿日:2008/05/29(木) 01:00:12 ID:???
セレーネ「で、兄さんはピアノ弾かないの?」
アムロ「唐突になんだ」
セレーネ「今ウチで流行ってるじゃない楽器やるの。発端になった割には昔話どまりで実演してくれないし」
アムロ「肝心のピアノが地下倉庫で埋まってるんだから仕方ないだろう」
セレーネ「じゃあ行きましょうよ」
アムロ「妹と2人で何が楽しいんだ?」
セレーネ「だったら誰か適当に見繕って」
アムロ「…わかった。だから今捕まえたコウを放してやれ」
コウ「え、一体何なの?」
アムロ「何でもないから気にするな」
コウ「捕まえられたのに何でもないって…」
アムロ「そういえばシーマが」
コウ「あ、そういえばアルとガンプラ…もといザクプラ作る約束があったんだった!」
セレーネ「逃げ足速いわね」
アムロ「お前のコウ捕縛も大概早いぞ。俺はお前たちみたいにリサイタルをやるつもりはないからな」
セレーネ「でも弾いてくれるんでしょ?」
アムロ「今やらないと余計にも面倒なことになりそうだ」
セレーネ「私を口説くと思えばいいじゃない?」
アムロ「妹を口説いてどうするんだ」
セレーネ「クリスもチェーンもアムロは女の前でしか弾かないって言ってたのよ」
アムロ「なら今度ブライトの前で弾いてみるか」
セレーネ「口説くの?」
アムロ「何故そうなる」

地下倉庫に辿り着き、埃も見受けられるピアノに近づく。

アムロ「音は…一応出るみたいだな。調律もしてないんだ。あまり期待するなよ」
セレーネ「構わないわ」

もとより一芸に過ぎないものだ。セレーネにしろアムロにしろ、そこまでの頓着はない。
メカやAIほどには。

アムロの指が旋律を奏で始める。
楽曲は『エリーゼのために』。
有名すぎるほど有名な曲は、セレーネの耳にも馴染みやすく、心地よいものだった。
1人用の椅子に無理やり2人で座った状態でいるセレーネは、アムロを盗み見る。
成る程。普段は口煩いメカオタクのイメージしかない技術屋の兄も、こうして真剣に演奏する様はそれだけで芸術家に変貌したかのようだ。
このギャップは確かに意外性があって、面白いかもしれない。
その例えは普段だらしないAIフェチのセレーネも、フラメンコを踏む姿は華麗なる踊り子せしめたことと同じだが、セレーネ自身に気付きようもない。
セレーネはアムロに背を向け後頭部を肩に預けた形で耳を傾けた。
肩に掛かる重みにアムロはちらりとセレーネを一瞥するが、邪魔だろう体勢も頓着することなく演奏を続けた。


257 名前:※代理投下です投稿日:2008/05/29(木) 01:02:15 ID:???
ジュドー「なるほどね。あーやって女の人口説いてんだ」
コウ「うわっ」
ガロード「しっ、大声出さないでよ。見つかるだろ」
コウ「っていうか、なんでお前たちまでここにいるんだよ?」
ジュドー「コウ兄が怪しい動きしてるから面白そうで着いてきたんだ」
シン「俺は興味ないって言ったのに」
ウッソ「僕も本気でピアノ始めようかな…」
キラ「ウッソがやってもアムロ兄さん的なスキルにはならないと思うよ」
ジュドー「お姉様方が寄ってきてもみくちゃにされるだろうけど、それ別に今と変わらないしなぁ」
シン「むしろピアノいらねぇし」
ガロード「…」
ジュドー「ガロード兄どうしたんだ?」
ガロード「俺がピアノ弾いて隣でティファが俺の肩に頭を寄せて…」
ジュドー「ガロード兄がピアノってイメージ湧かねぇけど、あの2人に自己投影してるのはよくわかったぜ」
キラ「僕が弾いてラクスが隣で…」
シン「ここにも発見」
ウッソ「どこからともなく甘い臭いが…まさか砂糖が…!」
コウ「僕が弾いて隣に…シーマさん…?」
ジュドー「なんか色々あり得なさすぎて想像が拒否する光景だけど、コウ兄のお陰で砂糖が発生しなくて助かったぜ」
シン「その代わりコウ兄が死に掛けだけどな」


258 名前:※代理投下です投稿日:2008/05/29(木) 01:03:18 ID:???
演奏が終わり、倉庫内に静寂が訪れる。

アムロ「気は済んだかセレーネ?」
セレーネ「…(からかうように笑って)やっぱり似合わないわね」
アムロ「やらせといて感想がそれかよ(手の甲で軽く小突く)」
セレーネ「いつもそれ弾くの?」
アムロ「そういうわけじゃないが…誰かさんのせいで覚えさせられたものでな」
セレーネ「昔の彼女?」
アムロ「…大人しく聞いてられなかったヤツが座って聞いてられるようにはなるくいらい時が経てば忘れるか」
セレーネ「?…私?」
アムロ「クリスも気に入ってたな。よく弾かされた」
セレーネ「ごめん。覚えてない」
アムロ「ネタがわかりにくいぞ。俺は妹の恋路を邪魔する気はないから、
     むしろ協力も惜しまないから積極的に恋人を作れ」

2人が外に出ると、そこには茫然自失したコウが置き去りにされていた。

アムロ「…ったく、あいつらはあれだけ大所帯で気付かれないと思ってるのか?」
セレーネ「アムロ兄さんは?」
アムロ「?」
セレーネ「私のフラメンコ、どうだった?」
アムロ「…今更だろう。何も初めて見たわけじゃない」
セレーネ「でも久しぶりだったでしょう?」

セレーネの期待と揶揄を込めた瞳がアムロを見やる。

アムロ「……綺麗だったよ」
セレーネ「……そう?」
アムロ「言わせといて照れるな」
セレーネ「照れてなんかないわよ。兄さんこそ照れてるじゃない」
アムロ「少なくとも妹に言って楽しい台詞じゃないな。ほら、早く寝ろよ」
セレーネ「兄さんもね。おやすみなさい」
アムロ「おやすみ」

その日、互いに言い合いながらも結局は得意の機械弄り、AI弄りに夢中になり
夜更かしした結果寝不足となり、翌日如何にもな風体で居間に集まった。
機械好きにおいては似た者同士の兄妹2人の行動パターンが見て取れたロランは
「恋愛観も足して割る2でもして上手い所で似てくれないかな」と思ったとか思わなかったとか。

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最終更新:2013年09月16日 22:33