突然だが俺の名前はコウ。兄弟で一番ハードボイルドな男さ。いや、首を傾げたかも
しれないが、昨日からそういうことになったんだ。
ウチの兄弟の中で、俺はどちらかといえば目立たなくて地味なほうだ。別に気にしちゃ
いないんだが、少しは気にもする。矛盾してるだろうが、人間誰しも矛盾を抱えて生きて
るのさ。ともかく、俺もキャラを立ててみるかな、と考えた。チェリーな鼻血キャラは俺の
イメージじゃないし。
俺はまず他の兄弟を見回してみた。キャラがかぶっちまったら意味が無いからね。
アムロ兄さんは仕事のできる男で兄弟の長兄として四苦八苦してる父親役、シロー兄さん
は彼女にメロメロな熱血正義漢、ドモン兄さんは暑っ苦しいぐらいパワフルで単純な格闘
バカだ。ここまでが俺の兄貴な。弟たちは、カミーユは中性的な容姿でナイーブなカルシウム
不足、シーブックは極めて普通の好青年で、ロランは一家の母親役で信じがたいほど善良な奴
(あとすごい美人)だ。キラは平穏を望む殺人鬼でスタンドは爆弾……じゃなくて気弱だけど
切れるとヤバイ泣き虫コーディネイター。ヒイロは無表情で沈着冷静な任務オタクで、ジュドー
とガロードはいつも明るくてノリがいい悪ガキコンビだ。二人のキャラは意外とかぶってない。
位置づけは似ているけど、性格はけっこう違うんだな。ウッソは年上好きのマセガキで年上
に可愛がられやすいタイプでもある。アルは可愛い末っ子ってとこだ。まあ、俺の
ガンプラを
アウシュヴィッツに送りたがっている節はあるが。
改めて一通り眺めてみて、足りないのはハードボイルドな渋い男だと気付いた。ヒイロ
は無口だけど、渋いわけじゃないからな。なんていうか、この幸運な残りものはうってつけ
だよ俺に。そういうわけで、俺は昨日からハードボイルドメンとしてやっていくことにした
のさ。
ちょうど今日の朝食にはかたゆでたまごがでてきた。些細な偶然だけど、これも運命から
の励ましだと思うんだ。気合を入れて、いや違う、すこし疲れた感じのほうが雰囲気あるぞ、
日常に倦んだ感じで髪型もオールバックにばっちり、いや、さりげなくきめなくちゃな。
それと、これからは新しいニンジンの断り方も考えた。「ニンジンいらないよ」じゃあ渋みが
足りなすぎるだろ。そう、これからは
「ニンジンなんて女子供の食い物だろ」
と言う。ポイントは、やれやれって顔して低めの声で呟くこと。渋いだろ、いいだろ、これ。
よ~し、頑張ってハードボイルドな男に……また間違えた。少々面倒だが、これから俺は
ハードボイルドな男にならなくちゃならない。やれやれだな。
続く、かどうかはわからない。書けるものなら続けたいが。
最終更新:2018年12月07日 17:15