公園のベンチに座った老人が、1人で遊んでいるアルを眺めていた。その視線に気付くアル。
アル「何?」
老人「坊や、1人かい? パパやママはどうしたんだい?」
アル「パパもママもいないよ」
老人「すまない、悪いことを聞いてしまったね。それじゃ寂しいだろう」
アル「寂しくないよ。お兄ちゃんがいっぱいいるんだ。時々喧嘩もするけど」
老人「そうかい。坊やは幸せなんだね」
アル「坊やじゃないよ。アルっていうんだ。幸せかどうかなんてわかんない。考えたことないよ」
老人「アル君か。それが幸せってことなんだよ。健康と一緒さ。風邪を引くと健康になりたいと思うけど、風邪が治ったらそんなこと考えないだろう?」
アル「う~ん、分かんないや」
老人「いまはそれでいい。いつか分かるときがくるだろう。いや、ずっと分からないままのほうがいいかもしれないな」
シローとジュドーは、帰りが遅いアルを心配して探しに来た。
シロー「あ、いたぞ」
ジュドー「何だあのジジィ。おい爺さん、アルに何してるんだ!」
ジュドーは、痩せこけ、髪も髭も真っ白な老人に掴みかかる勢いだ。
アル「おじいさんは悪くないよ。お話してただけなんだ」
シロー「すいません、弟が失礼を」
老人「なに、気にするな。アル君を遅くまで引き止めたワシが軽率だったのだ」
男「ここにおられたのですか。探しましたよ、ジャミトフ様」
シロー「ジャミトフ? もしかして、元首相の……」
ジャミトフ「大昔に引退している。肩書きなど、もうどうでもよい。いまは、夢を忘れた古い地球人の1人にすぎんよ」
男「みな心配しております。さぁ、帰りましょう」
ジャミトフ「ワシに何かあって責任を取らされるのが心配なのだろう? ジャマイカン」
ジャマイカン「そ、そのようなことは……」
ジャミトフ「アル君、またいつか会ったらジジィの話相手になってくれるかな?」
アル「うん」
ジャミトフ「ありがとう。さ、いくぞジャマイカン」
ジュドー「……と、こういうわけさ」
一同「ふ~ん」
ジュドーとシロー、アルは、夕食の席でジャミトフとの出会いを語った。
カミーユ「ジャミトフといえば、政敵を失脚させるためならどんな悪辣な手段もためらわないといわれた人だろ? イメージと違うな」
アル「帰るとき、何だか寂しそうだったね」
アムロ「人は変わるものさ。いろいろあったのだろう……ズズズズズ。ああ、お茶がうまい」
コウ「あの……僕にもお茶……」
最終更新:2017年06月15日 20:05