所変わってココは先ほどのコンビニからほど近い所にある公園。
立ち話もなんですからとティファを連れてシャクティは公園のベンチに座っていた。
シャクティ「食べます?おいしいですよ」
シャクティは抱えていた袋からパンの耳を取り出してティファに勧める
ティファは無言で頷くとシャクティから受け取ったパンの耳をかじり始める。
ティファ「おいしい…」
シャクティ「でしょう?カロッゾさんの所から頂いたモノなんですけど」
早朝の公園のベンチでモクモクとパンの耳をかじる白黒美少女二人
……端から見るとかなりヘンなシチュエーションだろう(w
シャクティ「バイト捜してるんですか?」
ティファ「……(こくん)」
シャクティ「何に必要なのか聞いてもいいですか?」
ティファ「ガロードにプレゼント…あげたい」
シャクティ「…ヴァレンタインデーのプレゼントですか?素敵ですね」
シャクティの言葉に顔を赤くして俯いてしまうティファ
シャクティ「で、幾らぐらい必要なんですか?」
ティファ「…五万円…ぐらい…」
シャクティ「五万!?結構な額ですけど…ちなみに今いくらぐらい貯まってるんですか?」
ティファはポケットから小さな可愛らしいがま口を取り出すと中を開けてみせる
シャクティ「……これだけですか?」
がま口からティファの手に転がり出たのは500円玉一枚のみだった
ティファ「全然足りません…」
シャクティ「全然というかなんというか…ヴァレンタインデーまで後一週間ないんですよ?」
ティファはシャクティの言葉に困った顔をして首を傾げる
ティファ「無理で…しょうか…?」
シャクティ「……どうしても五万円必要なんですか?チョコだけじゃ駄目なんですか?」
ティファはふるふるふると首を横に振って答える
ティファ「ガロードにはいつも迷惑かけてるから…どうしても…」
シャクティ「…………」
ティファ「…………」
暫く二人とも無言になる…やがて、
シャクティ「……ティファさんの気持ちは良くわかりました。私が何とかしましょう!」
ティファ「シャクティさん…」
シャクティ「その代わり多少辛くても恥ずかしくても我慢して貰いますよ?いいですね?」
ティファ「……(こくり)」
シャクティ「それから今から行くバイトのことはガロードさんには内緒にしてくださいね。」
ティファ「……(こくり)」
シャクティ「勿論、私が教えた事も内緒ですよ?」
ティファ「……(こくり)」
シャクティ「今から紹介するバイトには多少の元手が必要ですがそれはこちらで用意します。」
ティファ「……(こくり)」
シャクティ「そのかわり稼いだバイト代からその分とそれとは別に2割の紹介料を頂きますね。」
ティファ「……(こくり)」
シャクティはまるで凄腕の保険外交員のように立て板に水で説明を始める。
ティファは理解してるのか理解していないのか判らないがシャクティの言葉に一々頷いている。
シャクティ「これから行くバイトの現場では貴女はスーチーパイという二十歳の女性になって貰います。」
ティファ「……スーチーパイ?」
シャクティ「芸名とでも思ってください。本名ではさすがにマズイですから(w」
普通ならこの辺りでなにやらおかしな事になってきていると気付くところなのだが、
天然のティファには全く気付く由もなかった。
時は過ぎてやがてヴァレンタインデー当日
ガロード「ゴメンゴメン!学校が長引いちゃってさ~」
ティファ「……」
ティファは無言で小さく微笑んでガロードを迎える
ガロード「アレ?今日は何時もとリップの色が違うね?」
ティファ「おかしい…ですか?」
ガロード「い、いや…別に…なはははは」
ティファが何気なく唇に指を持っていく仕草にドギマギしながらガロードは慌てて答える
ティファ「?」
ガロード「そ…それより今日はどうしよっか?いつもの店でいい?」
ティファ「……(こくり)」
ガロードはティファと連れだってファーストフード店にやって来ていた。
ティファを席に座らせガロードは二人分の注文をしに行く
ガロード「ティファ、お待たせ。」
ガロードはトレイからティファの前にハンバーガーとポテト、コーラの三点セットを置く
ティファ「ありがとう、ガロード」
ガロード「じゃ、食べようか」
それからガロードは今日学校であった事をティファに面白おかしく話す。
ティファはそれを真剣に聞きながら小さく微笑んだり頷いたりする。
やがてガロードの話が一段落したところでティファが切り出す。
「ガロード、これ」
「え?これってもしかしてヴァレンタインのチョコレート?」
可愛らしくラッピングされた小さな包みを見てガロードのテンションがあがる
「……(こくり)」
「うぉおおおおおおおおお!!」
いきなり大声で人目もはばからずに歓喜の声を上げるガロード
ティファ「ガロード?」
ガロード「さんきゅ!ティファ。すんげ~嬉しいよ!!俺」
ティファ「それともう一つ……」
ガロード「え?まだあるの?俺幸せすぎて死んじゃうかも…」
今度は小さいがずいぶんと高級そうな包装のされた箱をガロードへと差し出すティファ
ガロードはその箱をやや神妙に受け取るとティファに尋ねる
ガロード「開けて良い?」
ティファ「……はい」
ガロードは丁寧に包装紙を剥がす。
出てきた箱はガロードの好きな時計メーカーのものだった
ガロード「これって…まさか…」
慌てて箱をあけると其処には銀色に輝く腕時計が鎮座していた
ガロード「ティファ?どうしてコレを?」
ティファ「この前一緒にデパートに行った時…ガロードが真剣に見てたから…」
ガロード「でもこんな高価なモノ…俺に似合うかな?」
そう言いながらガロードは自分の左腕に時計を填めてみる
ティファ「よく似合ってる」
ガロード「そうかなぁ…有り難うティファ」
そう言ってふとデパートのショウケースに並んでいた時の値札を思い出す。
「これ高かっただろ?随分無理したんじゃないの?」
ガロードはティファから一度も物をねだられた覚えがないだけに
嬉しいよりも申し訳ない気持ちが先に立ってしまう
ティファ「バイト…したの」
ガロード「俺のためにわざわざ…本当にありがとう、ティファ一生の宝物にするよ」
ティファはガロードの言葉に耳まで赤くして俯いてしまう。
ガロード「ティファ、ところでどんなバイトをしたの?大変だっただろ?」
ティファはふるふると首を横に振ってガロードに答える
ティファ「…一日でおわったから」
ガロード「い、一日?一日で??」
ティファ「……(こくり)」
とたんにガロードに背中に冷たい物が走る
ガロード(女の子が一日で大金を稼ぐバイトって…いや、ティファに限ってそんな…まさか…)
ティファ「?」
ガロード「あの…あのさ…そのバイトって誰かに紹介してもらったのかな?」
ティファはちょっと困った顔で目を伏せる
ティファ「それは内緒にしてくれって…」
ガロード「あは…あははは…そ、それじゃあしかたないなぁ…」
乾いた笑い声をだすガロード
ガロード「じゃ、じゃあ…どんなバイトなのか…」
ティファ「それも内緒なの…」
ガロードの頭の中でぐるぐるといけないバイトに手を染めるティファの映像が浮かんでは消えていく
ガロード「せ…せめてバイトのお店だけでも教えてもらえないかな……?」
ティファ「……駅前のビルの地下」
ガロード「……それってもしかして…XX(ダブルエックス)っていう店じゃ…」
ティファ「……(コクリ)」
ガロード「モ、モデルしたり?いろんな服着てポーズ取ったりした?勿論したしたしたした下着も…」
ガロードはコーラの入ったコップを持つ手をぷるぷる震わせながら無理に冷静を装うとする
ティファ「お店の人が…筋が良いって…きっと高く売れるって……高く売れる?」
ティファはそこで言葉を切ると小首を傾げてガロードに尋ねる
ティファ「何が……高く売れるの?」
ガロード「あはあはあははははっっっっっっっっっh」
ガロードはうつろな目をして暫く笑ったかと思うといきなりテーブルに両手をつくとティファに頭を下げる
ガロード「ゴメン!ティファ!!大事な用を思い出したから今日はコレで!!この埋め合わせは必ずするから!!」
ティファ「ガロード……?」
ガロードはティファに向かって左腕の時計を目の前に出してニカっと笑う
ガロード「時計…さんきゅうな!!」
そのまま猛ダッシュで店を飛び出していく
ティファ「…………?」
ガロードがその足でブルセラショップXX(ダブルエックス)に駆け込むまでが3分
店内の一番目立つ所に「本日新入荷スーチーパイちゃん(20)」というPOPと共に
目の所にモザイクの入ったティファの顔写真を発見してショックを受けるまでに15秒
店の店員にスーチーパイちゃん(20)の全グッズを購入予約して店頭からsageさせるまでに1分30秒
それから家に戻って自分の小遣いをはたき、尚かつ兄弟全員から金を借りまくって購入資金を工面するまでに25分
ガロード「作戦は一刻を争うんだよ!!!」
合計一時間足らずの間に新人ブルセラモデルのスーチーパイちゃん(20)のグッズは完売になり伝説のアイテムとなった…
その後、伝説のブルセラプリンセス スーチーパイちゃん(20)のアイテムを巡ってガロードと変態仮面四人衆との間で
熾烈な争奪戦が繰り広げられるがそれはまた別の話。
アムロ「ここ最近、毎日ガロードのヤツ居間で何やってるんだ?」
ロラン「ヴァレンタインにプレゼントで貰った時計を手入れしてるんですよ」
シロー「プレゼントを大切にする事は良い事だ」
ドモン「時折顔を赤らめたりぼ~っと宙を眺めてニヤニヤしてるぞ」
シーブック「プレゼントをくれた彼女の事を思い出してるんですよ、きっと」
コウ「いいなぁ…」
ジュドー「俺なんてこの前チョットさわっただけであいつにドツかれたぞ!?」
ウッソ「ボクなんてなんにもしてないのにヘッドロックされましたよ…お前の彼女が悪いって…」
ヒイロ「……(リリーナはバレンタインチョコをくれなかった)」
カミーユ「あんまり磨きすぎるとすり減るんじゃないか?」
アル「まっさかー…でもあの調子で毎日2時間も磨いてたらありえるかもねー」
ガロード「えへへ~~ティファ~♪」
(終わり)
最終更新:2018年10月30日 15:32