サイ・サイシーとディアッカは、ストリートチャーハンファイトの三番勝負を繰り広げていた。
通行人を適当に捕まえて二人のチャーハンを試食させ、評価してもらうこの勝負、
初戦では、ディアッカのチャーハンが食通で知られるアルビオン大学のシナプス教授をうならせた。
普段は徹底的に欠点をこき下ろすシナプス教授が何も言えなかったのだ。
第二戦では、シローの上司でこれまたグルメのコジマ警部がサイシーのチャーハンを食べて、
「う・ま・い・ぞぉぉぉ!!」と叫んだ。二人はしょぼくれたおっさん風情のコジマ警部が巨大化してボストニア城を破壊し、
口からビームを発射する幻影を見た気がした。
ドモンが第三戦はどうなっただろうと二人を見に行くと、二人とも打ちひしがれた様子で慟哭していた。
ドモン「お前ら、男がいい年して何を泣いているんだ?」
サイシー「うっさいやい、ドモンの兄貴みたいな泣き虫に言われたくないや!」
ディアッカ「落ち着けブラザー。とにかく今日はグゥレイトにサッドでメランコリックだぜ」
ドモン「だから何があったっていうんだ?」
サイシー「実は今日は女の人にも判定してもらおうとしたんだ。そしたらカガリってのが来て…」
ドモン「カガリ?…それで?」
キラの友達にそんな名前のがいたなと思いつつ、ドモンは続きをうながした。
ディアッカ「違いのわかる奴には見えなかったから、頼みたくなかったんだけどね…」
(以下回想シーン)
カガリは二人のチャーハンを一口ずつ食べた。
カガリ「何だよコレ、全然味がついてないじゃないか。食えたモンじゃない」
二人ともチャーハンの調理に手抜きはしない。完全な手順で作って味がついていないはずがない。
しかしカガリは、
カガリ「やっぱりMyチリソースがないとな」
ふところから赤いチューブを取り出すと、中身をドボドボとチャーハンにぶちまけ、グジャグジャとかき混ぜた。
サイシー「俺のチャーハンに何すんだよ。せっかくの味が台無しじゃないか!」
ディアッカ「Nooooo!!!」
もはや皿の中身は「チリソースで味にアクセントを加えたチャーハン」ではなく「チリソースのチャーハン和え」と化していた。
それを口に入れ、
カガリ「やっぱ、んめぇぇぇ!!」
(回想終了)
ドモン「…そりゃ、つまり何だ、画家だとしたら自信作の油絵にいきなり赤いペンキをぶちまけられて、
前衛芸術だって言い張られるようなものか」
ディアッカ「グゥレイトに当たってる表現だぜ」
サイシー「もう自信なくなっちゃったよ…。いくら頑張っても理解する人がいないんじゃ無意味だ」
ドモンは二人に鉄拳を叩き込んだ。
ドモン「この馬鹿が!そんなことでへこたれてどうする!男なら信念を貫いてみせろぉぉ!」
ディアッカ「それ、「こけの一念、岩をも通す」ってやつ?グゥレイト!HAHAHA」
ドモンはディアッカにもう一つ鉄拳をプレゼントしてやった。
エレガントなたたずまいの高級フランス料理店にて。
カガリとウズミのアスハ親子がディナーをとっていた。
給仕「こちら、前菜の帆立貝のカルパッチョでございます」
ウズミ「うむ」
そして二人は給仕の目の前でふところからMyチリソースのチューブを取り出し、中身をドボドボぶちまけた。
給仕「Non,Noooonnnn!!!」
ウズミ「うんまぁぁぁい!!」
カガリ「んめぇぇぇぇぇ!!」
それからアスハ親子はスープ、魚料理、肉料理、サラダにデザートと、
全ての料理にチリソースをまんべんなくぶちまけて食したのだった。
トレーズ(副業)「…エレガントから程遠いな。いや、あれはもはや外道と言うべきか…。
来る者はばまずと行きたかったが、あちらの客は次からは予約があっても断りたまえ。
ただし断るにしてもエレガントに」
最終更新:2018年11月12日 15:44