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思い切り遅刻して学校に駆け込んできたカミーユ。
しかし学校の様子がいつもと違った。妙に静かだ。それどころか人気も感じない。
まるで鏡の世界に来たような錯覚を感じる。
が、校門の前でハトにえさをやっているやせた初老の男の存在が、鏡の世界でないのを証明していた。
いつもと違って黒いスーツにサングラスだが、生徒への高圧的な態度は間違いない。
こうるさい学園理事のウォン・リーだ。
成績は良くとも素行はそうでもないカミーユは彼に目をつけられてよく殴られている。
ウォン「珍しい時間に会うな、カミーユ!」
飛び立つハトの群れの後ろからゆっくり歩み寄ってくるウォン・リー。
ウォン「私がこんな時間にいるとは思わなかったのではないかね?」
が、次の瞬間、ありえない速度でまるですべるように彼はカミーユとの間を詰めて拳を何度も突き出し、
打たれたカミーユはまるで後ろから引っ張られるように吹っ飛ばされて壁にぶつかった。
カミーユ「クソッ」
うめくと、壁の上から「私が食い止めるから、カミーユは逃げて」という声とともに黒いレザースーツの女が、
化鳥のようにウォンに飛び掛った。女の格好も黒い髪にサングラス、ウォンに対抗するかのように黒ずくめだ。
ウォンと女はカミーユの動体視力でも捕えがたい超スピードで殴り合いを始めた。
カミーユ「今の俺ではウォンさんには勝てないッ…!ファ、俺を導いてくれ!」
言いつつ彼は逃げ出した。

逃げ出したカミーユは路線バスに飛び乗った。乗客は彼一人。
走り出したバスは停留所に止まらず、どんどんスピードを上げていく。
カミーユ「すいません、このバスどこまで行くんですか?」
振り向いた運転手はウォン・リーの顔をしていた。
ウォン「お前がごめんなさいと言うまでノンストップだ」
カミーユ「ウワアァァァ!!」
カミーユはバスの窓を蹴破って飛び出すと、人気のない静かな町の、バスの来そうにない路地の奥へと駆け出した。

カミーユは住み慣れた町並みの中を逃げ回る。しかし敵もさるもの、どこへ逃げても気配がしていた。
そしてウォン・リーの気配はどこからもするのに、他の人間の気配はない。猫の子一匹として見ない。
雰囲気が全く違っていて、道の両側の建物に押しつぶされる錯覚までしてしまう。
変なプレッシャーばかり感じながら走っていると、急に視界が広がった。ビル街の谷間の広場。
出口は自分が走ってきた路地だけ。他にはない。袋のねずみだ。
空を飛べれば逃げられようが、カミーユは普通の人間だ。ホモアビスという機械の翼を背負わないと飛べない。
ならば…ウォン・リーは人外なのか?
ウォン「そろそろ鬼ごっこは終わりだな、カミーユ!」
今一番聞きたくなかった声とともに四方のビルの窓から黒いスーツにサングラスの男たちが次々飛び降りて来ている。
男たちのサングラスの下の顔はみんなウォン・リーと同じ顔をしていた。

戦って全部のウォン・リーを黙らせるしかない。カミーユは覚悟を決めた。
殴りかかってきた一人目の拳をさばいて、正拳突き。
二人目に目潰し。
三人目を膝蹴り。
四人目を手刀ディフェンス。
「後ろにも目をつけるんだ、カミーユ!」
長兄の声に従って裏拳で後ろから来た五人目もダウン。
「考えるな、感じろ!」
三兄の声のように体が自然に動く。六人目に三角蹴り。
「見える!」
カミーユは叫んだ。七人目に金的。
しかし、奮闘もここまで。倒しても倒しても湧いて出てくる無数のウォン・リーにのしかかられ布団蒸しにされてしまった。

        ノ_,ノ,_ハ
 ノ_,ノ,_ハ   i゚ム゚ ア
  i゚ム゚ ノ_,ノ,_ハレ'       ノ_,ノ,_ハ
   レ' i゚ム゚ ア □)       i゚ム゚ ア
     ノ_,ノ,_ヽノ_,ノ,_ハ    \レ' ノ
 ノ_,ノ,_ヽi゚ム゚i  i゚ム゚ アノ_,ノ,_ハ  □
  Y゚ム゚i (VΛ レΛ i゚ム゚ ア  く \
 ( ∨∪γ ∧\ヽ) レ'i゚ム゚ ア
  ∪ ⊂ゝゝ`Д´νつ∪レ'⊂)



カミーユ「うー、クソッ、こんな所デェ…」
シーブック「いい加減に目を覚ませよ、カミーユ」
カミーユ「へ……俺は何を?」
目が覚めたら、カミーユはいつものベッドの上だった。
周囲に自分が集めたニポポ人形や変な像やらが散らばっている。
ロラン「祭壇から転げ落ちてきたいろんな物の下敷きになってうなされてたんだよ。変な夢でも見てたんじゃないのか?」
カミーユ「……」
夢にしては妙にリアルだった。釈然としないものを感じながらも、
カミーユは学校へ駆け出した。全速力で走っても遅刻だろうが。
シーブックが呼び止める声が聞こえたが、カミーユは気にしなかった。
そして校門の前。やせた初老の男がハトにえさをやっていた。口うるさい学園理事のウォン・リーだ。
ウォン「珍しい時間に会うな、カミーユ!」
飛び立つハトの群れの後ろからゆっくり歩み寄ってくるウォン・リー。
ウォン「私がこんな時間にいるとは思わなかったのではないかね?」
またなのか?身構えるカミーユに初老の男はこう言ってやる。
ウォン「今日は創立記念日で休みなのだからな」

シーブック「今日は創立記念日で休みだって言ってるのに。ま、いいか」
シーブックが見ているテレビでは、ポッキーをくわえたサングラスにコートで決めた男がインタビューを受けていた。
レポーター「今日は、明日公開される大作映画「マ・トリックス リフレッシュ」の、
       ユンファ・ウォンチョコスキー監督にお越しいただきました!」
チョコスキー「ふふふ、よろしく」

(終わり)





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最終更新:2018年11月21日 11:21