639 名前:秋名残・後1/3 :2010/12/03(金) 23:16:25 ID:???
カトック「やれやれ…」
マリュー「まあまあ、カトック先生も如何です? お一つ。
甘いもの、お好きですよね?」
一見すると熊でも絞め殺しそうなゴツイ体格、風貌のカトックであるが、酒もタバコも嗜まず、
キャンディーやガムを常備する、大の甘党であることはすでに周知である。
ビーチャ「(おっさんを共犯にする気かよ、マリュー先生…)」
エル「(それって逆効果なんじゃ…)」
カトック「………」
辺りを見回すと、立ち木とフェンスがうまく風を遮っており、
火の粉が飛んだりと火災の心配も薄い場所である。
傍らには枯れ葉の詰まったゴミ袋が山になっており、その量はおそらく並木道のみならず、
中、高が併設してある学園の広大な敷地、全てを巡って集めたのだろう。
枯れ葉は燃えやすいが、それだけにある程度の火力を維持するには、
膨大な量が必要となるのだ。
これもすべて、“焼き芋”というご褒美があればこそ、だったのだろう。
カトック「…いざって時の用意はしてあるのか?」
言われて、水を満たしたバケツ―普段、廊下に立たされる時の戦友たち―を持ち上げ、
携帯式の消化スプレーまで取り出してみせる少年たち。
カトック「まあったく! こう言う時の準備はいいんだな。
ちゃんと後始末はしとくんだぞ!」
「「「「「「Sir! Yes,Sir!!」」」」」」
カトック「それじゃ、後はお願いします」
マリュー「お任せくださいな」
盛大なため息と共に立ち去ろうとしたカトックではあったが…
カトック「ああ、そうだ」
三歩進んだ所で、足を止める。
ガロード「?」
マリュー「?」
カトック「せっかくだ。 おいガロード、二つばかし寄越せ」
ハマーン「なるほど、ラミアス先生が」
カトック「まったく、あのお人はいつまでたっても気が若いと言うか」
ハマーン「いえ、生徒たちの側に立てると言うのは、大切な資質かと」
カトック「へへっ… ま、苦労を進んで引き受けてくださるんだからありがたいがね」
ハマーン「ふふ… それは、アルザミール先生も同じでは?」
カトック「ぐっ… 性分ってやつぁ、これがどうも…」
ハマーン「とにかく、冷めないうちに頂きましょう。 お茶を入れてきます」
カトック「ああ、それくらいは俺が…」
ハマーン「いえ、丁度一息入れたい所でしたし。 少々お待ちください」
641 名前:秋名残・後2/3 :2010/12/03(金) 23:18:43 ID:???
ガロード「お、最後のひとつはっけーん!」ガサガサ
ビーチャ「あー、最後ってなると、なんか名残惜しいな」
イーノ「まだ食べるの?」
山と積まれた枯れ葉もすべて焼き尽くされ、後には白い灰が残るのみ。
ジュドー「結構、灰って残るんだな」
ナタル「それでは、これはゴミ捨て場に…」
エル「最後の一仕事だね」
ガロード「あ!いやいや! ちょい待った!」
ジュドー「?」
ガロード「灰は全部、このコンテナに入れて欲しいんだ」
コンテナ、と言っても、人が持ち運びできるサイズの箱である。
軍用の、弾薬輸送などで使われる耐熱密閉型のものだ。
ジュドー「どーすんのさこんなもの」
ガロード「芋の代価だよ。 肥料になるんだってさ」
ビーチャ「へぇ~、こんなもんがねぇ…」
エル「焼却炉の灰じゃダメなの?」
マリュー「プラスチックやビニールも一緒に燃やしてますからね。
肥料に使えるのはこんな風に木の葉とか藁とかだけで作ったものでないと」
ジュドー「あ」
ルー「マズ…」
マリュー「さて、では灰を肥料にした時に得られるメリットは何かしら?
ビーチャ・オーレグ君?」
ビーチャ「えええっ!?」
ガロード「んじゃ、俺、ウッソ達にこれ渡して来るから! ティファ、イモ頼む!」
ティファ「えっ? え、ええ」
教師スイッチが入ってしまったマリューから、慌てて逃げ出すガロードたち。
コンテナをカートに載せ、(わざわざ古新聞で作った)袋に詰めた焼き芋を抱えて走り出す。
ジュドー「ひ、卑怯者~~!」
マリュー「違います! 次、モンド・アガケ君!」
モンド「はひっ!」
642 名前:秋名残・後3/3 :2010/12/03(金) 23:19:43 ID:???
スージィ「わーい、焼き芋だー♪」
エリシャ「わ♪ ありがとう!」
オデロ「うひょう、熱々だな!」
ウォレン「アチ、アチ」
ウッソ「ありがとうございます、ガロード兄さん」
ガロード「オレは約束は守る男だかんな。 んで、こっちのコンテナは灰が入れてあるから」
トマーシュ「わざわざすまなかったね」
ガロード「いいっていいって。 んじゃ、行こうぜ、ティファ」
ティファ「ええ」
ウッソ「僕はもうちょっと作業してから帰りますから!」
ガロード「あいよ~」
仲睦まじく、並んで道を行く二人。
エリシャ「…あの二人、歩いてここまで来たのかしら?」
トマーシュ「ん? まぁ、歩いて帰るってことは、そうなんじゃないか?」ホフホフ
マルチナ「学校からここまで、歩いてだと30分くらいかかっちゃわない?」
彼ら園芸部が借りている農園は、郊外の寂れた場所にある。
トマーシュ「まあ、それくらいはかかるだろうが…」
シャクティ「お二人そろってだと、プラス10分と言うところでしょうか」
ウォレン「それが、どうかしたの?」モグモグ
ウッソ「…冷めて、ないですね」
トマーシュ「えっ?」
エリシャ「アツアツね」
マルチナ「ティファさんがずっと抱いてたわよね、おイモ…」
おわり
最終更新:2014年12月13日 20:43