79 名前:76投稿日:03/10/10 01:55 ID:???
ピピピ…ピピピ…
小さな目覚ましを消すと、僕は一つ大きなのびをした。
「う…んぅ…♪」
まだ青い早朝の日差しが微かな鳥の鳴き声と共に、カーテンで閉ざされた窓の向こうから伝わってくる。
ようやく目覚めの緒についた町…遠くから始発電車の走り去る音。足早に出勤する人の足音。そして、朝早くから部活動に向かうのだろうか。可憐にさざめく少女たちの笑い声…
「あフ…」
隣のベッドで寝ている弟…カミーユを起こさないよう躯をそっと起こすと、僕は朝食の準備のため階下へと降りていった。
僕の名はロラン。通信制学校で単位を取得しながら、12人いる兄弟たちの家事を見ている。
父さんや母さんのいない家庭が…寂しくない、わけではないけど…明るくて賑やかで、いろんな人たちが出入りするこの家が、僕は好きだ。
「もう秋なんだなぁ…」
居間のカーテンを開け放つと秋の伸びやかな陽差しがさっ、と斜めに差し込んできた。透明で、柔らかな陽差しがほんのりと室内に満ちてくる…
それから新聞を取りに行くため、玄関から1歩外に踏み出した。
昨晩は少し冷え込んだみたいだ…吐く息はまだ白くないけど、さっきまで布団の中で温まっていた躯が小さく、震える。
「さむぃ…みんなの秋物の服、そろそろ出さないとダメかな?」
ちょっとだけ、鳥肌がたった肌を震わせて…僕は自分の躯を抱きしめるように小さく震わせた。

「ロランたんには私の母親になれる人だ、というか是非とも泣って欲しハァハァ」
「ローラ…私の下にくるんだ…このグエン、決して君に不自由な思いはさせ(略)」
「知りたいのだよ、このモビルスーツとロランたんのことを」
「ユニヴァースっ!!」
今日も今日とてロランを見つめる8つの瞳…そこにロランがいるならば、例え火の中、水の中。
萌え上がる情念を押さえきれない男達よ、今日も。
「「「「ロランたん~♪♪」」」」
「喰らえ、必殺、シャイニングフィンガーッ!!」

「あれ、ドモン兄さん。もう起きていたんですか…?」
僕が新聞を小脇に抱えて戻ろうとすると、3兄のドモンにいさんが門をくぐってきた。
「あぁ…少しばかり体を動かしてきた。庭でトレーニングをしている。何かあったら呼んでくれ」
兄さんを知らない人には、少しばかりぶっきらぼうに聞こえるいつもの口調で、ドモン兄さんは僕の脇を抜けていく。
「はい。すぐ朝食にしますからね♪」


80 名前:76投稿日:03/10/10 01:56 ID:???
ことことと音をたてて御御御付けが香しい湯気をたて、ジャーではお米がくっくっ…ふっふっと炊かれている。
人数分の食事を整えるのは大変だ。
男ばかりの13人兄弟。それも育ち盛りを抱えているうえに、お昼のお弁当の分も用意しなくてはいけないんだから。
御御御付けの隣ではフライパンが黄金色の卵焼きを柔らかく焼き上げ、網の上では鮭の切り身が油を爆ぜながら焼けている…
「…うん、おいし♪」
御御御付けが今日も会心の出来なのに満足して、お玉をひとふり。
「お早う、ロラン」
「お早うございます、アムロ兄さん。」
長兄のアムロにいさんが居間からおはようの挨拶です。
(株)ロンド・ベルの部長。知育玩具のベーシック・モデル“ハロ”を開発し営業もこなすヤング・エリート…
と言うと、ただのエリートにしか聞こえないけど。ぼくたち弟の面倒を見るため文句も言わず働いてくれるしっかり者のお兄さんです。
落ち着いた声で僕に声をかけると、ちゃぶ台の前に座って早速、新聞を広げて寝ている間の情報をチェックしてます…
こういうところを見ていると、ほんとうにぼくたちの“お父さん”にしか見えないな。
「…なんだい、ロラン。何か面白いことでもあったかい」
「え、なんかぼく、笑っていました?」
「嬉しそうに微笑んでいたよ」
慌てて誤魔化して朝食の準備に逆戻りです。
「ん………、お早う、アムロ兄さん、ロラン」
「おはようございます、シロー兄さん。昨日は夜勤から1日中、働き詰めだったんですし…もう少しゆっくり寝ていても良かったですのに。」
「習慣かな…どうしても起きちまうんだ」
少し眠そうな声で、でもきりっとした顔つきで降りてきたのはシロー兄さん。次兄で、警察官をやっています。
正義感が強い人だから、とても似合った職業だと思います…
ただ、前に犯人を捕まえようとして銃撃戦になったとき
「銃身が灼けるまで撃ち続けろっ!」
という命令を部下に言ってしまったせいで、カイさんやフランのようなマスコミの人たちには格好の取材標的になっているようです。
西部K察ばりの派手なシーンが期待できるから。
あ、ご飯が炊けたみたい…うん、もう6合、炊いておこうかな。


81 名前:76投稿日:03/10/10 01:57 ID:???
「お早う、ウッソ。今朝のご飯にお野菜が欲しいんだけど」
「あ、お早うございますロランね…兄さん。ちょうどトマトが熟れ頃ですよ?」
御御御付けができたところで火を止めて。僕はエプロン姿のまま庭に降り、その半分を占拠している家庭菜園へ脚を運んだ。
つん、と澄んだ秋の空気が流れる菜園で、朝早くからウッソは野菜の面倒を見ています…。
ウッソ。下から2番目の弟。のわりにしっかりもので、こうして庭の一角に菜園を作って我が家の食卓を賑やかにしてくれています。
余りをご近所にも配ったりもしているけど、無農薬で瑞々しいウッソのお野菜はみなさんに評判です。
「早かったね。どうしたの、今日は?」
朝獲りの新鮮なトマトをもぎながらウッソに聞くと
「なんだか、そんな感じがしたんです」だって。ウッソはスペシャルだからなぁ…。

台所に戻り、軽く水洗いしてよく熟れた真っ赤なトマトに包丁を当てる。すっ…と刃が通っていくと、トマトはかんたんにスライスされる…
しゃきしゃきした歯ごたえを連想させる硬さと、瑞々しさ。
塩を脇に盛っておいてから、ウッソの言葉が気になっていた僕は階段を上がって一室のドアを小さくノックします。
「アル…もう朝だよ。起きなさい?」
「………」
反応がないのを確認してから、ドアを開ける。
机や棚いっぱいに、ところせましと並べられたおもちゃ…プラモデルの山。我が家で一番子供っぽさを醸し出しているこの部屋の片隅。
ベッドの上で固まっている布団の塊…それを抱きかかえるように丸まっている、男の子。
「ほら、アル。朝なんだから起きないと、ご飯を食べる時間がなくなっちゃいますよ?」
「う、うん…」
まだ眠そうな声を出しながら布団から顔を出すのは末っこのアル。くりくりとよく動く瞳をした、元気いっぱいの弟。
…ウッソが起きてきたこと、アルにだけは教えてあげる、っていうのは甘やかしているのかもしれないけど…
朝ご飯が食べられないと、さすがに可哀想だから。
僕はアルがベッドから這い出してもそもそと着替えをするのを手伝ってあげながら、残る弟たちに胸の中で謝った。


82 名前:76投稿日:03/10/10 01:59 ID:???
「うむ、今日も絶好調である!!」
「なんであなたは今日もうちの食卓にいるんですかっ?!」
「あ、お早うございます。ギンガナムさん、カミーユ兄さん。」
「うむ、お早うロラン君。今日もよい匂いだ…これぞ日本の食卓である!」
「おはよう、ロラン。…だからそこはキラの席だって…!」
サムライみたいな髪型をして堂々とうちの食卓に座っているにはギンガナムさん。ご近所さんです。
いっつも、うちに朝食をとりにきます。
(ウッソの勘って、よく当たるよね…さすがスペシャル。アルを起こしておいてよかった…)
その脇で怒っているのはカミーユ。僕と同い年の兄で、ちょっと怒りっぽいけど…女の子みたいに整った目鼻立ちをしていて、すごくもてます。
ジュドーの話では二またとも、三またとも………いいなぁ。

「ふっ…どうやらロランくんは自分の魅力を知らないようだ。君の実力、魅せてもらおう」
「あぁ、ローラぁ…エプロン姿が実によく似合っハァハァ」
「この宇宙で最も可憐で萌える存在…ロランたん…」
「ユニヴァースっ!!」
業の深い男たちよ、今日も(以下略)
「「「「ロランた~ん♪♪♪♪」」」」
「皮を切らせて肉を斬る、肉を斬らせて骨を断ぁつっ!!」

「…あれ?何だか庭で音がしなかったか?」
「お早うございます、コウ兄さん。…そうですか?僕はちょっと気が付かなかったけど」
4兄のコウ兄さん。大学生でフットボール部。ちょっと…影がうすいかな(汗)
さっきだって、アルと同じ部屋なのにぼく…。
それはともかく、兄さんは朝の占いをちょっと神経質そうに眺めている。恋愛運が気になるみたい。
「大丈夫だ、何の問題もない」
「あ、ヒイロ。お早う。…問題?」
いつの間にか座っていたのはヒイロ。いつも無口で、必要最低限のことしか口にしない…
でも、おとなしい訳ではなくって、時々すごく手荒な手段を取ることもある。
どこで習ったのか分からないけど車の運転や銃器・爆発物のスキルを持っている中学生…もちろん、無免許(汗)。
いいのかな…
「少々、ドモンが庭で暴れただけだ、いつものことだろう」
「こら、ヒイロ、兄のことを呼び捨てにするなっ」
ドモン兄さんが戻ってきました。ちょっと息が切れている…そうとう、激しい運動をしたのかな。
「ふむ。ではみんな揃ったところで朝ご飯を頂くとしようか」
「だから、なんであんたがここに座っているんだよ?!」


83 名前:76投稿日:03/10/10 02:02 ID:???
バタバタバタ…
階段を駆け下りる音。
「あ、シーブック兄さん、お早う。ちょうどご飯にするところだよ?」
茶碗にご飯をよそっていると(ちなみにギンガナムさんはマイ箸アンドマイ茶碗を持参です)シーブック兄さんが降りてきました。
少し引きつった顔でギンガナムさんを眺め…ほっと一息、大きく息を吐くと座布団の上に座ります。
「お早う、ロラン。間に合ったか…ちょっと危なかったなぁ」
「昨日は遅かったんですか?」
「ちょっとね、学祭の準備が佳境でさ。疲れてるかもな」
「…知ってるぞ、シーブック。昨日は公園でセシリーさんと話し込んでいたな。随分、盛り上がっていたじゃないか?」
「シロー兄さん!そっそんな遅くまでなんてそんなことはなくてちっともいやほんとだって鉄仮面さんが待ってるしそんな引き留めるだなんてでもセシリーが楽しそうに話して
いるもんだからつい確かに遅くなったら悪いなと思って遅くなったから家まで送っていったら晩飯をごちそうになっちゃっていやほんとやましい気持ちなんてこれっぽっちも」
「…ふ~ん。シーブック兄さんは僕の作ったご飯よりセシリーさんと一緒に食べるご飯の方が美味しいんだ…」
ちょっとだけ、嫉妬…かも?
「あ…いや、ロラン、そんなことはないぞ?!でもさ、セシリーが自分で焼いたパンをごちそうしてくれるっていうから…」
「今から愛妻料理の味に舌を慣らしておこうって魂胆かい?」
「な…アムロ兄さんまで、そんな…ぼくはまだ高校生ですよっ?!」
「はは、そんな慌てるな。でも、ほんと心に決めた相手がいるなら、早いとこ決めておいた方がいいぞ?はっきりさせておかないと10年以上もおあずけをくらうかもしれないからな」
「…ぼくもなんだかそんな予感がします、シーブック兄さん。相当先まで苦労させられるかも…」
「シロー兄さん、それにウッソまで…そんな脅かさないでくれよ」
「いえ。ウッソの言うことに間違いはありません。シーブックさんはきっとその方に振り回され、手足を喪うほどのご苦労をなされることでしょう…」
「うわっ?!い、いぃいつのまにきてたんだい、シャクティ…」
「あ、ごめんねウッソ。さっき卵を持ってきていただいたので朝ご飯をご一緒にと、僕がお誘いしたんです」
「お早うございます、ウッソ、みなさん。…すいません、朝ご飯にお誘いいただいて…」
「いいんですよ。気になさらないで下さい。みんなで食べた方が賑やかで、楽しいですし」
いつの間にかウッソの隣に座っているのはご近所のシャクティさん。1人で暮らしているので、ウッソがなにかと面倒を見ています。
「ふははははは、それにしてもシーブックくん、若いということはおおいに結構!ふむ、このギンガナム、朝から実に嬉しい話を聞かせてもらったものだ」
「あはは…そうですね。さて、兄さんをいじめるのはここまでにして。アルもお腹が空いたみたいだし、そろそろ朝ご飯にしましょう?」
「さんせ~い!ぼくもう、お腹と背中がくっつきそうだよ」
「そうだな。では、みんな…」
「「「「「「「「「いただきます(ま~す)(である!)(…)」」」」」」」」」


84 名前:76投稿日:03/10/10 02:04 ID:???
カチャカチャ…小さく食器が触れ合う音。御御御付けが湯気をたてながら啜られて、ご飯がほっくりと口の中で膨れるこの幸せ…
「あ、シローにいちゃん、次は僕にお醤油ちょうだい」
「う゛ぅ…どこのチャンネルを回しても今日のヲレの運勢って…」
「…美味い」
「ウッソ。頬にご飯粒が…」
「(がつがつむしゃむしゃ)ふん、ロラン…おぉかわりぃぃ!!」
「ふむ…このだしが利いた御御御付け、なかなか出せる味ではない。そして何よりこのお新香…ぬかに実によく浸かっている上、素材の胡瓜もよい出来と見たぞ…!!」
「…全く、なんだってこの人はいつもうちでご飯を食べてるんだろう…」
「分かります?その胡瓜はウッソが作ったのなんです。」
「このトマトも美味しいぞ、ウッソ」
「ありがとうございます、アムロ兄さん。もうシーズンも過ぎてしまったので、これで最後ですけど…小さい温室でも作れば、年中とれるんですけどね。あ、シャクティ…いいって、自分で出来るよ」
「アル、ほらお醤油。うーん…昨日の日昇町の交通事故は7件…死亡事故はゼロ…よし、今日一日も平和だったらいいな」
うちの食卓はとっても賑やかです。卓上を箸が縦横無尽に行き交い、その都度、その下に盛られた卵焼きやお新香、トマトにきんぴらが見る見るうちに無くなっていきます。
そうしながら自分専用として、目の前の小皿に置かれた赤いしゃけの切り身をきちんとガードしているのは、みんなさすがです…
(…いちばん小さなアルも、きっちり守っているもんね…)
やだなぁ、アル…ご近所のクリスさんちにお泊まりするときも、もしかしてあんながっついているのかも…
そんなことを思っていると、毎朝恒例の泣き声が扉のところから聞こえてきた。
「う゛あぁあぁーっ」
「…あ、キラ。お早う」
弟のキラ。優しいんだけど、気が弱いのか…学校でも虐められてるらしく、よく泣きながら帰ってきます。
「う゛あぁあ~あぁーぼっ…ぼくの朝ご飯が…うう゛ぁあぁう゛あぁうあ~」
なぜか我が家の家訓は「弱肉強食」らしく…こうして自分の食べる分もしっかり守らないと、文句も言えない家庭です。
「あう゛ぁうう゛ああうぁあぁあぁ~」
…すごい、みんな無視をして自分の取り分を獲得するのに一生懸命です…
さすがに可哀想なので、僕はそっとキラに紙包みを渡しました。
「(はい、キラ…中におにぎりが入っているから。今、食べるとギンガナムさんに取られちゃうかもしれないから学校でゆっくり食べなさい?)」
「(う゛…ひっく、ありがとう、ロランにいさん…(泣))」
そっと、アムロ兄さんが目配せしてくれます。茶碗を持ちながら片手で拝むような仕草…
なんだかんだ言って、兄さんはみんなのことを心配してくれています♪


85 名前:76投稿日:03/10/10 02:05 ID:???
「ちょっとカミーユ、早くしなさい!」
「…なんだよ、ファ。そんな急がなくても遅刻なんてしないだろ」
「んもぅ…そんなんじゃなくって!いいから早くなさい!女の子を待たせるなんて最低よ」
「ごめんなさいね、ファさん。もうすぐカミーユ、準備できると思いますから…」
「あ…そんな、ロランさん。お気になさらないでください」
毎朝、カミーユ兄さんのところには“誰か”女の子が迎えに来る。
今日はファさんだ…ご近所にお住まいの、カミーユの幼なじみ。
「まったく…なんだってこんな早いんだよ」
「…いいの!なんだって!じゃロランさん。行ってきますね?」
「行って来るよ、ロラン」
「はい、2人とも行ってらっしゃい」
ファさんがカミーユの腕を引っ張るようにして先を急がせる………
やっぱり、焦ってるみたい。こないだ転校してきた2人の女の子たち…えっと、フォウさんとロザミアさんがカミーユに急接近してきてるみたいで。
こないだはフォウさんが迎えにきてたし…やっぱりもてるな、カミーユって。
(…カミーユ。これから登校なら、一緒に行かない?)
(あ、フォ…)
(ちょっとフォウさんっ、今カミーユは私と話してるんですから邪魔しないでくださいっ)
(ふふ…自分に自信のない女はこれだから。そうしているとますますカミーユに嫌われるわ…?)
(なっ………!!)
(ちょ、ちょっとファ…やめなって)
(あ、お兄ちゃ~ん♪やっと見つけたぁ。ね、一緒に学校に行きましょう♪)
(ねぇカミーユ…色々な思い出、私はあなたと作りたいの…♪)
(カミーユ、なに鼻の下伸ばしてるのよっ…ロザミアさんっ、カミーユから離れてくださいっ!フォウさん、なにカミーユの腕を握っているんですか…っ)
あ。路地の向こう側から女の子が言い争う声が聞こえてくる…鉢合わせしちゃったんだ。
「…行ってくるぞ」
「行って来ます」
「あ、はい…いってらっしゃいね♪」
僕が玄関から次第に遠ざかっていく金切り声を盗み聞きしているとヒイロ、シーブック兄さんが続いて靴を履いて家を出ていった。シーブック兄さんは溌剌と…ヒイロは仏頂面に。


86 名前:76投稿日:03/10/10 02:07 ID:???
「行ってきま~す」
「じゃあ行ってくるよ、ロラン。」
「はい、行ってらっしゃい…あ、襟が曲がってます」
「いいよ、ロラン」
「よくないです…はい♪直りました」
「あ…あの…」
「?」
「あー、クリスお姉ちゃん!」
アルが嬉しそうに飛びついていったのはお向かいのクリスさん…アムロ兄さんの後輩で、しかも今では同じ職場の上司・部下という関係です。
男ばかりのうちを気遣ってか、ときどきお料理を差し入れてくれたり、母親を知らないアルを何かとかわいがってくれる方です。
「あ…と、あの…アルくんを、良かったら学校までお送りしようかと…」
「あぁ、気を遣ってもらってすまないね、クリス。」
「い、いえぇ、そんな、だってご近所ですし…その、ついでに一緒に出勤できますし…そのっご迷惑でなければ、ですけど…」
「構わないさ。僕と君がご近所だということはブライトも知っている。へんな勘ぐりは誰もしないよ。」
「わ~い、お姉ちゃん、早く行こう?」
「アル。はんかちとちり紙は持った?…それじゃ、兄さん、クリスさん…今日もお仕事、頑張ってくださいね♪」
アルを間に挟んでアムロ兄さんがクリスさんと一緒に出勤です。
アルはすごく嬉しそうに…
クリスさんはなんとなく、ですけど頬を赤らめてます。
…悪い噂にならなきゃいいけど。兄さんはそういうとこ、無頓着と言うか…気にしない人だからなぁ。

さて。キラはギンガナムさんに見つからないよう、こっそりと学校に登校したし…ウッソとシャクティさんは学校の家庭菜園を見るため、ご飯を食べてすぐ登校。シロー兄さんは今日、非番なので自室に戻りました。
あ、っと。コウ兄さんは講義が午後から、ということで部屋に戻ってガンプラ作り。
残るは………。
僕は腕まくりをして、お寝坊を決め込んでいる2人をたたき起こしに、気合いを入れて階段を上がっていった。


87 名前:76投稿日:03/10/10 02:08 ID:???
「起きなさ~~~い!もう8時ですよっ!!」
うちは男兄弟ばかりだけど、意外と片付いている方だと思う。
なにしろこれだけ家族がいるとすぐちらかるから、僕がしょっちゅう室内を巡回してかたしてしまうせいもあるかもしれないけど。
…そんな僕でも、唯一手出しができない部屋がここ。
「んぁ~、なんだよ…もうそんな時間かよ」
「ちょっと待ってくれ、あともう5分…」
「2人とも、そんなこと言ってると遅刻しちゃいますよっ!?」
室内は分厚いカーテンに閉ざされてほとんど真っ暗です。壁際に高く積み重ねられた機械が奇怪なオブジェを形取り…足下に転がる工具が昨夜の2人の奮戦を物語ります。
「ほら…さっさと起・き・な・さ・い!!」
室内にずかずかと踏み入ってカーテンを、しゃっ、と開けて窓を開け放つ…陽光に温められて少し、温くなった秋風が頬に心地よく室内に吹き込んできた。
「うわっ?!眩しいよ、ロラン兄…」
「勘弁してくれよ…オレたち、昨日は4時まで仕事をしていたんだ」
「仕事って、どうせジャンクをいじっていただけでしょう。学生の仕事は勉強です!さぁ、早く起きて登校なさい」
ようやく、布団から渋々と顔を向けてくるのは僕の2人の弟…ジュドーとガロード。
2人とも機械いじりが好きで、壊れてしまったものでも簡単に直してしまいます。
その腕と知識を利用して、色々と棄てられてるジャンクを拾ってきては修理して、売っておこづかいにしているようです。
うちにある家電製品…30インチのテレビとかビデオデッキとか、2人が拾ってきて提供してくれてるもので。…実は結構、助かってます。とりわけ、4ドアの巨大冷蔵庫は嬉しかったな…っと、それはさておき。
「ほら…いつまでも寝ぼけていないで。とっとと顔を洗って目を覚ましてきなさい。」
ようやく2人はぶつぶつ言いながら洗面所に向かって。やがてしゃっきりした顔つきで、着替えて降りてきた2人に僕はキラに渡したのと同じ包みを押しつけた。
「はい。もうご飯食べてる時間なんてないだろうから。おにぎり、握っておいたの…授業の前に食べなさい?」
「いつも悪ぃね、兄貴」
「ごほごほ…オレたちがこんな病気でなければ迷惑かけることもないのに」
「寝坊は病気じゃないでしょ…」
ちっとも済まないと思っていない顔つきで、にやにや…にこにこと微笑みながら悪びれずに紙包みを受け取る2人。
僕も怒りきれずについ、苦笑いで送り出してしまう。
「行ってらっしゃい。きちんと学校に行くんだよ?」
「行ってきま~す」
「行ってくるぜ!」
あ、ぼくの言葉にちゃんと返答しなかった。怪しいな…
そう思いつつ、明るく手を振ってくる2人にぼくも微笑み返しながら。
ふと、空を仰ぐと透き通るような青い秋空、白く細くたなびく秋雲。きらきらと透明に輝く秋陽が躯を心地よく照らします…
「…うん。今日はみんなのお布団を干そうかな?」
今日も1日、みんないい日でありますように…♪


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最終更新:2018年11月29日 11:25