「へ~え、ご高説いちいちごもっとも…っと」
後ろから手が伸びてくると、ジュドーの手でひらひらと舞っていたお札をひったくる。
「あ、こら…ビーチャかっ!?」
「へへ…相変わらずぼろい儲けをしてるじゃないか、ジュドー、ガロード」
「なんだ、お前等か。悔しかったらお前等もそういう儲け話、見つけろよな」
「まぁまぁ、そう言わないで、ガロードさん。苦しいときはお互いさま、ってね」
「そういうモンドは、いっつも苦しいよね」
「エルぅ…虐めないでくれよ…」
2人に話しかけてきたのは彼らの学友にして悪友と読む友人たち…ビーチャ、モンド、エル。
癖の強い鈍金色の髪をした生意気そうな少年、背が低くがっしりした体つきの少年…そしてくるくるとカールした髪をリボンで結わえた、大きく丸い瞳が印象的な明るい笑顔の少女。そして…
「ま、お2人さんともきっついこと言わないの。どーせ、今日もさぼる積もりだったんでしょ?」
「エニル…身も蓋もないこと、言わないでくれる?」
ガロードにしなだれかかるようにして身を寄せてくる、年の割に艶っぽい魅力のある少女…エニル。
「オレたち兄弟には明るい未来が待ってるんだから。お前達とは違うの!」
「そんな硬いこといいっこなし、ジュドー」
「そうだよ、おれたち友達だろ?」
「都合のいいときだけ友人面して…」
「ふふ…でも、そんなこと言いながらさぼる気は満々みたいね。お2人さん」
「そうそう、エニルの言うとおり!…もし、私たちがここでロランさんに今のことチクったら…ロランさん、怒るんじゃないかな~?」
「ちっ…勝手なことばかり言ってくれて…」
「まっ。いいじゃないか、ジュドー。確かに困ったときはお互いさまだし」
エニルにその魅惑的な膨らみを
押しつけられ…どこかでれ~っとした顔つきのガロードがジュドーをなだめる。
「そうそう♪ガロードさんの言うとおりだよ、ジュ・ド・ぉ♪」
エルも無意識か、それともエニルの積極的な行為を意識してか…さりげないように見せかけてジュドーの二の腕をとり、自分の胸元に押しつけた。
「…ま、まぁガロード兄貴が言うならしょ、しょうがないか…な」
「そうそう。とりあえず駅前に行ってコインロッカーから私服を取ってこようぜ?オレ…牛丼食いたいな」
「よーっし、それじゃみんなで駅前にレッツゴー♪」
「それはいいけど、エル…そろそろジュドーから離れろよ」
「え?なんのこと?」
「だーかーら、離れろって…!」
「なに怒ってんのよ、ビーチャ。ジュドーは別に困ってないもんね」
「…ま、まぁそりゃ…困ってはいないけどさ」
「だいたい何であんたが怒るのよ、ビーチャ?!」
「そりゃ、おれたちまだ子供だし、そういうことは良くないと、だなぁ!」
「あんたなんかに言われる筋合いじゃないわよ~だ…ね、ジュドー?」
斜めに差していた朝陽が、次第に角度を緩やかに…高い宙の彼方から柔らかな陽差しを投げかけてくる。
透き通るような秋の1日。
賑やかな少年少女の一団が明るく騒ぎ立てながら過ぎ去ってゆくと、そこにはさわやかな風が一つ。
高い…遠い宙まで吹き上げるような風を巻き上げて彼らの声を持ち運んでいった。
宙へ。