俺、オデロ=ヘンリークは朝から少し焦ってた。
校舎に入る前に、キャンパスを歩いていたウッソとウォレン。
俺の子分達を捕まえて挨拶した時に昨日の晩に起った出来事を聞いたからだ。
ほんの立ち話程度だったから詳しくは聞けなかったが要点はこうだな。
『昨日ウッソ=エヴィンの家にクランスキー姉妹が出向いて行き、園芸部の当番表のことで
話し合いをしている最中に、エリシャさんが貧血を起こして倒れてしまった』という話になっている。
う~ん。不味いなぁ…。あの当番表を作れ、ってウッソに命令したのは俺だしなぁ…。
それでエリシャさんがどう思ってるか知らないけど…ここは一つ。なんとか上手く誤魔化さないと。
俺はエリシャさんを高等部の下駄箱置き場で見つけた。くぅ~っ。今日もエリシャさんは可愛いなぁ!!
「おっはよう!エリシャさん。さっき、ウォレンから聞いたよ。
昨日、ウッソん家で倒れたんだって?今日、学校に来て大丈夫なのかよ?」
「……たいした事ないの。心配しないで。マルチナが少し大袈裟に言い過ぎなのよ」
「……元気なら問題ないんだけど。ま、今日はあんまり無理すんなよな」
フフ~ン。さりげない気遣いを見せた俺。って感じで今のはポイント高かったかな?
「あの…何処まで、聞いているの?」
なんだ?…何処まで聞いているか?だって……ハハァ~ン。アレだ。
エリシャさんは園芸部の当番表のことで俺に聞いているんだな。
よし、ここは俺が潔白だってことを説明しておかないとな。アレは全部ウッソがやった。って事にしてさ
俺も先輩としてウッソ等、後輩の暴走を止められなかった。ちゅ~アレだな。
監督ミスって感じで一応は非を認める線でいくか?
「ウッソの作った園芸部の当番表を見て、妹さんが怒ってるってヤツだろ?……
俺がウッソに指図したとか、なんとか言ってるけど…この俺がそんな事をする筈ないだろう……」
よしよし、エリシャさんは黙って聞いてるぞ。俺の言い分が正しいと思ってる。
これでなんとか誤魔化せるな。
「ごめんなさい。今日は私、教室が遠いから…その話はあとで…」
あれ?なんかエリシャさん、顔色悪いな。やっぱり未だ調子悪いんじゃないのか?
少し表情が優れない…ちゅうか、機嫌が悪い感じだぜ。
俺がエリシャさんと下駄箱の前で話していると、二人のカップルの声が聞こえて来たんだよね。
「放課後、待っているわね」
「分ったよ。演劇部の部室に行けば良いんだろ?」
男の方はシーブック=アノー。工科の奴。俺の子分に当るウッソの兄弟で、人数多いから忘れたけど何番目かの兄さんの筈だ。
女の方はセシリー=フェアチャイルド。学園でも1,2を争う人気者。そりゃ、もぅ上玉だぜ。
ま、俺はエリシャさんの方が良いと思うけどね。
一般論で言うとセシリー=フェアチャイルドは学園の中じゃ、ちょっとした有名人って事になるかな。
で、そのシーブックとエリシャさんが顔を合わせたんだけど。なんかさ、雰囲気が可笑しいんだよ。この二人。
廊下で会って挨拶するのは…。俺も二人が同じクラスだって知ってたし、まぁ、気にはしなかったけどさぁ。
「き、昨日は…その…あの…すいませんでした」
「う、うん」
突然エリシャさんが頭を下げて謝りだしてよぉ。
それでシーブックの方も満更でもねぇ。みたいに返事をしてるんだぜ?
可笑しいだろ?これは。『昨日はすいませんでした』って何だよ!?
昨日の夜。ウッソの家でこいつと、なんかあったのかよ?エリシャさん?……
顔を真っ赤にしてるエリシャさんとシーブック。この二人、怪しすぎる。なんかあるのか?
俺はその日。一日、気がきじゃなくて…授業も手につかないから午後はふけちまった。
学園の公園の中の秘密の場所で寝ると、放課後まで待つ事にした。
ここなら先公にゃ絶対見つからないしな。
俺は6時限目終了のチャイムが鳴ると、猛ダッシュで工科のクラスへと向かった。
が、遅かった…。エリシャさんが居ねぇんだよぉ!!シーブックと何処かへと消えた後だった。
嘘だろ?…信じられねぇぜ。悪い予感が的中した訳だ。
俺、未だ、エリシャさんとなんにも……。ヤバイよぉ…どーすんだよぉ。早く二人を見つけねぇと!
最終更新:2018年12月03日 12:00