323 名前:地球寒冷化作戦 :2012/07/24(火) 23:53:06.55 ID:???
ナナイ「社長、全ての準備が整いました」
シャア「急な思いつきにも関わらず、この短期間でここまで進めてくれるとは……私は感動している。
アムロ、悪いが、今回は勝たせてもらう……」
アムロ「ただいま。ふう、今日も暑かったな」
ロラン「おかえりなさい。早かったですね」
刹那「見えない速さでスーツを脱ぎシャツにトランクス1枚となる、さすが真の
ガンダムだ」
カミーユ「兄さん、大尉が生中継でTVに出ていますよ」
ジュドー「緊急発表があるんだってさ」
アムロ「シャアが?こんな時間に?」
TVには、夕日になりかけの光が差し込むダイクン・グループ本社前で、マスメディアの視線を一身に浴び悠然と佇むシャアの姿が映っていた。
だが、アムロが注目したのはその格好である。
アムロ「ネオジオンの総帥服!? いったい、何をする気なんだ……!?」
シャア「この時間に、この場所に皆さんを呼んだ無礼を、まずは許して頂きたい。
古来、人類の発展は熱量の増加と共にもたらされてきた。焚き火から蒸気機関が生まれ、火力発電が生まれた。
だが、今や人類が生み出した熱により地球は温暖化し、都市部でもヒートアイランドやゲリラ豪雨が引き起こされている!
これが産業を発展させた歴史である!
ここに至って私は人類が今後、排気熱量を増やさない産業スタイルを構築すべきだと確信したのである!
それが、エコ計画『地球寒冷化作戦』を実行する真の目的である!
これによって、ダイクン・グループは低エネルギーの寒冷化企業となる事を宣言する」
ざわざわ
カミーユ「何かと思えば、ただの発表じゃないですか」
アムロ「いや。あの服で演説をするからには、余程の事に違いない……明日から忙しくなるぞ……」
324 名前:地球寒冷化作戦 :2012/07/24(火) 23:54:08.37 ID:???
ナナイ「社長、見事な演説でした」
シャア「センセーショナルな手法で大衆の興味を引く、まずは成功といったところだ。
マスメディアへのレジュメの配布は?」
ナナイ「今報告があって、完了したとの事です」
シャア「そうか。余りはあるか?外にいるジャーナリスト達にも配ってやれ」
ナナイ「はい、社長」
カイ「よう、アムロ。邪魔するぜ」
アムロ「カイか、よく来たな……シャアの事か?」
カイ「察しがいいな。まあ、こんなのオールドタイプでも感づく事だけどな……ほら」
アムロ「『地球寒冷化作戦』……あの発表のレジュメか。どれどれ……
工場の排気熱減少、雨水を濾過し打ち水に、緑化事業推進……中身はありきたりなものばかりだ」
カイ「だが、ここまで大々的に行えば企業アピールになるぜ」
アムロ「ああ。そうだな。それに、シャアがこれだけで終わるとも思えない」
マイ「ただいま。会議があって遅くなりました」
アムロ「やあ、おかえり」
カイ「お、ダイクン・グループの社員のお帰りだな。その会議ってのは例の発表の事かい?」
マイ「ええ。本社の方が来て、生産や営業活動の抜本的見直しをする、と言っていました」
アムロ「子会社にまで徹底しているのか」
マイ「それだけではありませんよ。取引先にも働きかけて、この動きを拡大させるそうです」
カイ「このレジュメにも書いてあるな。その為の援助資金も用意したらしい」
アムロ「何だと!?シャアの奴、どれだけの企業に影響すると思っているんだ」
カイ「シャアの本気、か。これは面白くなりそうだぜ……」
325 名前:地球寒冷化作戦 :2012/07/24(火) 23:55:09.04 ID:???
数日後…
絹江(TV)『これだけ大規模な計画を進める理由というのは何でしょうか?』
シャア(TV)『今、産業界は革新を求めています。
しかし、それには莫大な資金と影響力が必要です。その為に数多くの者達が挫折してきた。
それをこのダイクン・グループが行おうというのです。いや、行わなければならない。
それは、我々が積み上げてきた利益と信用に対する義務と言えるでしょう』
ブライト「シャアがまた、TVに出ているな」
アムロ「これで何番組目だ?まるで道化だな」
ブライト「だが、ダイクン社の株価はあれから目に見えて上がっている。俺達も早く、手を打たないとな」
アムロ「しかし、その内容が問題だ。同じ路線はシャアが最初に全てやっちまって、2番煎じにしかならない。
かと言って別路線を探るのも……」
ブライト「後を追わせるように仕向ける、それが奴の作戦かもしれんな。とにかく、シャアの動きには注意しなければ」
シャア「計画は順調だな。メディアも、期待以上にアピールしてくれている」
ナナイ「しかし、株価は上がっていますが大赤字です。反動が来る前に回収できる試算はあるのですか?」
シャア「この計画自体、一種の広告だ。資金回収の必要は無い。結果として、回収出来ると信じているがな」
ナナイ「しかし……」
シャア「ナナイ。私はダイクン・グループを、商品を売るだけの企業にするつもりは無い。
人類全てに英知を授け、革新をもたらす存在になるという野心がある。
このプロジェクトは、その為の1手なのだよ」
ナナイ「なら、2手3手があるのですね?」
シャア「勿論だ。その為の会議も重ねてある」
326 名前:地球寒冷化作戦 :2012/07/24(火) 23:55:59.28 ID:???
そのまた数日後
ブライト「シャアが面会を求めている?」
チェーン「ええ。なんでも重要な話があるとか」
ブライト「分かった、第1商談室を開けてくれ」
アムロ「待った、俺も行く」
チェーン「シャアもそう言っていたわ、出来ればアムロにも同席して欲しいって」
アムロ「やあ、ずいぶんと大掛かりな計画を立ち上げたものだな、シャア」
シャア「そう言ってもらえて嬉しいよ。そこで、ラー・カイラムに提案がある」
ブライト「提案?」
シャア「君達が地球寒冷化作戦の主張する事が分かるのなら、私の同志になれ」
ブライト「馬鹿な、我々がダイクン社の計画に乗れというのか?」
シャア「資金の投入は続けるが、計画は独立させる。
環境問題に詳しいアフランシに一切の権限を委譲し、私も作戦に賛同する1人のメンバーになるのだ」
そう言うと、シャアは1枚のリストを見せる。
シャア「これは、私が参加を勧誘する団体の一覧だ」
アムロ「アナハイム、MF協会、クラインカンパニー……一流どころが勢ぞろいじゃないか」
ブライト「これだけの企業を説得しようというのか?」
シャア「だからこそ、ここに最初に来た。
ライバルのダイクンとラー・カイラムが組めば、他も参加しやすくなる」
アムロ「シャア、貴様は何を考えているんだ……」
シャア「企業間を越えた、産業界全体で地球をもたせる時が来ているのだ。
廃熱抑止ノウハウの共有や隣接工場の総合緑化計画を行えば、別個に行うより効果は高い。
私は、その仕組みを作ろうとしているに過ぎん」
ブライト「……ダイクンにとって有利にばかりならない対策はあるんだろうな?」
シャア「望むなら、参加団体には様々な形で計画の中枢に関わって頂きたいと考えている。
その為の役職も、全て空けてある」
アムロ「どうする、ブライト……」
ブライト「……」
327 名前:地球寒冷化作戦 :2012/07/24(火) 23:57:12.53 ID:???
絹江(TV)『本日、MS大手各社が参加する地球寒冷化委員会が発足しました。
これは、先日ダイクン・グループの掲げた地球寒冷化作戦を、産業界全体で推進・実行するための団体で……』
シロー「大掛かりな事になったなあ……」
セレーネ「私のところも参加してるわ。地球に拠点があるものね」
アフランシ(TV)『僕は以前から、温暖化による海水面や水温の上昇に危機感を抱いていた。
今回の代表就任で、僕はその危機感を払拭する任務を負った形だ』
絹江『シャアの傀儡ではという意見もあります』
アフランシ『それは全くの誤解だ。寧ろ委員会の提起人として、リーディング・カンパニーの役目を期待している。
僕らの目は特に厳しくなるだろうね。
いずれにしても、参加する全団体が手を取り合い、共に地球寒冷化作戦を進める事になる』
シュウト「すごいや、みんなで仲良く頑張るんだね」
ドモン「だが、中立団体と言ってもシャアの発案で代表が関係者だからな。
ネオジャパンの人も、参加はしたがダイクン・グループの手柄だと愚痴っていたな」
マイ「資金を出しているのもほぼダイクン社ですし、そう捉えられるのは当然ですね」
アル「アムロ兄ちゃん、こわい顔をして爪をかんでどうしたの?」
カミーユ「仕方ないとは言え、大尉に協力する形になった事が嫌なんだよ」
アル「普段はあんなに仲が良いのにね」
アムロ「(シャアめ……今回は俺達の負けだが、次は勝ってみせるぞ……!)」
おわり
最終更新:2015年10月18日 00:39