571 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/01/24(金) 23:33:16.41 ID:???
十年くらい前

マイ「また失敗か…」
アムロ「どうしたんだ、マイ?」
マイ「夏休みの課題で、何か作っていこうと思ったんだ」
アムロ「それでハロか。調子はどうだ?」
マイ「ぜんぜん。何回作っても失敗するんだ。…もう違うのにしちゃおうかな。ぼくには工作の才能なんかないんだ」
アムロ「そうかな。俺の見立てでは、お前には才能があると思うぞ」
マイ「でも。シロー兄ちゃんみたいにアムロ兄ちゃんの設計図見ながら作ってるのに」
アムロ「ちょっと見せてみろ」
アムロは転がったハロを手に取って、放ってあった工具を使って器用に分解した。マイはなんでもすぐに作ったり、直したりすることができるアムロやセレーネがまるで魔法使いのように見え、憧れていた。
アムロ「思った通り、全体的な組み方は間違っちゃいない」
マイ「間違ってないって…じゃあ、なんで動かないの?」
アムロ「お前、変なところに手を加えただろ」
マイ「う」
あのままでは面白みがないと思って、マイなりに色々と装置を組み込んでみたのだ。
マイ「大事な部分には干渉しそうにないところをいじったつもりだったんだけど…」
アムロ「ハロだって精密機械だ。どこがどことつながっているか、パッと見じゃわからないものさ」
マイ「ごめんなさい…」
アムロ「なんで謝るんだ? そういうチャレンジ精神、兄さんは好きだぞ。失敗したらやり直せばいいんだ
    これからハロの構造をしっかり教えてやるから、よく聞けよ」
マイ「は、はい!」

  •  ・ ・

アムロ「…と、こんなところか。わかったか?」
マイ「うん」
マイの手にあるノートにはアムロに教わったことがびっちりと記されていた。
アムロ「よし。じゃあ、次は自分の思った通りに作ってみろ。兄さんが見てやるから」
マイ「わかった!」

572 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/01/24(金) 23:35:36.26 ID:???
その日の夜…

マイ「できた! できたよ、アムロ兄ちゃん!」
マイハロ「ハロ! ハロ!」
そう言ってマイが持ってきたのは、下半分をすっぱりと切ったような形のハロだった。口も新造されている。
アムロ「これは?」
マイ「ここを、こうするとね」
マイがハロの後頭部(?)をいじると口が開き、奥にある時計が現れた。
アムロ「時計か」
マイ「うん。ちゃんと話し相手にもなってくれるし、スケジュール機能もついてるんだ」
アムロ「凄いな。やればできるじゃないか!」
マイ「合格?」
アムロ「当たり前だろ。合格だ」
マイ「やった!」
マイハロ「マイ! ソロソロ明日ノ支度シロ! 明日ノ十時カラ、シロー達とプールダゾ!」
スケジュールをちゃんと設定していたらしい。見せに来る前に設定するあたり、几帳面なマイらしいと思った。
マイ「わかったよ。じゃ、行くねアムロ兄ちゃん」
アムロ「ああ」
将来の夢を胸に秘め、少年は自室へと走っていった。


自室の天井が見えた。ベッドの中で身をよじると、布団の隙間からひんやりとした風が入ってきた。
冬なのだから当然である。同時に、今まで見たものは夢だったのだと認識してマイは体を起こした。
マイ「昔の夢とはまた、珍しいものを見ましたね」
子供のころの出来事。思えば、あれが自分の技術屋としての始まりだったのかもしれない。マイは枕元に目を向けて言った。
マイ「おはよう、ハロ」
マイハロ「ハロ! 今日モ時間ピッタリダゾ、マイ!」
枕元の古びたハロ時計が答えた。"技術屋"マイの最初の作品は、今日も彼を見守っている。

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最終更新:2016年02月29日 08:06