469 名前:1/5 :2015/02/05(木) 00:08:00.30 ID:UGysL7ER0
だいぶ昔に作って放置してたネタ。エニルとプルズを絡ませてみたかった

ロアビィ・ロイの花屋"ロアビル"に、珍しい来客があった。
ロアビィ「おや、珍しいお客さんだね」
ロアビィの視線の先には一人の美女。エニル・エルだ。
エニル「この子らが連れてけってうるさくてさ」
エニルが視線を下した。ロアビィも同じように視線を落とすと、小さな二つの影があった。
ロアビィ「んん?」
とてもよく似た二人の少女だった。おそらく双子だろう。ロアビィは接客用の笑みを作り、少女たちに挨拶した。
プルツー「はじめまして」
プル「こんにちは、おじさん!」
ロアビィ「こんにちは、お嬢さんたち。あと俺はおじさんじゃなくて、お兄さんって呼んでほしいな」
これでもまだ未成年なのだ。
エニル「こっちの元気なほうがプルで、見た感じ落ち着いてるほうがプルツーよ」
ロアビィ「あれあれ、エニルさんソッチ方面に目覚めちゃったの?」
エニル「違うわよ!」
ロアビィ「ひどいわ! アタシとの関係は遊びだったのね!?」
ロアビィがくねくねしながらオーバーに言った。どこから出したのか、ハンカチなど噛んでいる。
それを見たエニルは拳銃を懐から取り出すと、無表情でロアビィの頭上にぶっ放した。そのままロアビィをにらんで、言う。
エニル「調子に乗るな」
ロアビィ「イエス、マム。で、どーしたのよ。親戚ってわけでもないんでしょ?」
さすがにやりすぎたかと思ったロアビィは敬礼で答え、話を続けた。すると、エニルはうんざりした顔で片手を頭に当てた
エニル「色々あって懐かれちゃったのよ」
ロアビィ「ほー」
プル「お花がいっぱいだぁ!」
走り出すプルの背中に、エニルが声をかける。

470 名前:2/5 :2015/02/05(木) 00:09:05.27 ID:UGysL7ER0
エニル「あんたたち! ここの花は売り物なんだから乱暴に扱うんじゃないよ!」
プル「はーい!」
エニル「心配ね…」
プルツー「いくら姉さんでもそこまで子供みたいなことは………」
エニル「しないって言い切れるの?」
エニルが聞くと、プルツーはしばらく逡巡する。そしてどこか悲痛な表情でつぶやいた。
プルツー「できない」
エニル「あの子のお目付け役はアンタくらいしかできないんだから、ほら、一緒に行ってきな」
プルツー「わかった。エニルは見ないのか?」
エニル「こんな狭い店の中、三人で歩いたらほかのお客さんの迷惑でしょ?」
プルツー「…すまない」
エニル「子供が遠慮なんかするもんじゃない。プルが暴れてからじゃ遅いんだ。ほら!」
プルツー「うわっ!」
エニルに背中を押されてプルツーが走っていく。姿が見えなくなったところで、エニルは嘆息した。
エニル「まったく。…なにニヤニヤしてんのよ」
エニルは隣で笑いをこらえているロアビィを恨めし気に睨んだ。
ロアビィ「べっつにぃ? 楽しそうだと思ってさ」
楽しげな顔で言ったロアビィに、エニルはげんなりとした顔をして口を開く。
エニル「休みだってのにいきなり家に乗り込まれて『どっか連れてけ』なんて言われりゃ、意地でも楽しまなきゃ損でしょ」
ロアビィ「やけくそって風には見えないけど」
エニル「うるさい」
ロアビィ「ところで、さっきから俺たちを睨んでるそこのお嬢さんは何かな?」
マリーダ「お気になさらず。その女の監視をしているだけですから」
エニルに向けた視線を変えず、女が言った。しかし表情も声色からしても、お世辞にも友好的とは言い難い雰囲気だ。

471 名前:3/5 :2015/02/05(木) 00:10:34.85 ID:UGysL7ER0
ロアビィ「いや、気にするなって言われても気になるでしょ」
マリーダ「私は騙されんぞ…」
ロアビィ「はあ?」
エニル「あんたはまだそんなこと言ってんの…」
呆れたようにエニルが言った。
ロアビィ「どういうこと?」
エニル「この子、マリーダっていうんだけど。あの子らの妹なのよ」
ロアビィ「…妹? どう見てもあの子らより年上にしか見えないんだけど」
エニル「色々あるのよ」
ロアビィ「あー、そう。フクザツなのね」
ロアビィは特に気にしなかった。気にならないと言えば嘘になるが、他人のプライベートにはあまり踏み込まない主義だ。
エニル「理解が早くて助かるわ」
エニルは満足そうにうなずいた。
マリーダ「ここの店主を使って私を懐柔しようという魂胆なのだろうが、そうはいかない! 
     誰が貴様など信用するものか!」
エニルを指差して、マリーダ。
エニル「…別にあんたに信用されたいわけじゃないんだけどね」
ロアビィ「なんかやけに嫌われてるようだけど、何したの」
エニル「私があの子らの保護者みたいになってるのが気に入らないみたいね」
ロアビィ「なるほど、ジェラシーってやつね」
マリーダ「モデルなどというふしだらな職! 露出度の高いファッション!
     お前のような人間に姉さんたちの保護者を名乗らせてなるものか!」
ロアビィ「モデルってふしだらなもんなの?」
エニル「知らないわよ。あれはバイトみたいなもんだし」
宣伝ついでにモデルの真似事などもしているが、エニルの本業は服屋である。
マリーダ「自分の体を使って男に媚を売るような仕事は大嫌いだ! そんなものは消えてなくなれば――」
勝手にヒートアップしているマリーダを見かねたのか、エニルがマリーダに近づいた。
エニル「ほい」
マリーダ「むぐっ!?」
腕を振りかざして演説を続けるマリーダの口にエニルは何かを放り投げた。
マリーダはわけもわからずそれを呑むと、全身から大量の煙を吹き出した。
ロアビィ「…口の中に何放り込んだの?」
エニル「飴玉」
ロアビィ「いや飴玉って。なんか全身から煙吹いててわけわかんないことになってるんだけど?」
エニル「だいじょーぶだいじょーぶ」
マリーダ「何をする!?」
煙の中から現れたのは――プルにそっくりの少女だった。しかし、元気なプルや落ち着いたプルツーと違い
どこか憂いを帯びた雰囲気をまとっていた。居場所や雰囲気から察するに、先ほどの女性――マリーダだ。
エニル「いい大人が大騒ぎしたら迷惑でしょーが。今日はそのままでいなさい」
マリーダ「ふざけるな!」
十歳程度の子供に"縮んだ"マリーダが声を荒げた。

472 名前:4/5 :2015/02/05(木) 00:12:15.39 ID:UGysL7ER0
ロアビィ「どういうこと?」
エニル「なんかこの飴を食べると縮むのよ。ちょうどプルたちと同じサイズに」
ロアビィ「…深く追求はしないけどね。うん」
とても気になったが、突っ込むと面倒が増えそうな気がしたのでやめた。
エニル「いつもずーっと辛気臭い顔してたから、前にこれ使ってイジってやったのよね」
そのせいで嫌われてるんじゃないかとロアビィは思ったが口にはしない。
女性の前で余計なことは言わないのが世渡りのコツである。
プル「エニル!」
場がカオスの様相を呈してきたところで、プルたちが戻ってきた。
エニル「なんか買うの?」
プル「うん! ジュドーと、あとエニルに!」
名前もわからない花を渡され、エニルは戸惑った。
エニル「え、私? 別にいいよ」
プル「友達になった記念だと思って受け取ってよ!」
エニル「と、友達?」
プル「そう、友達!」
それを聞いて少し思うところがあったのかエニルは少し黙り、花を受け取った。
エニル「ありがと。じゃあ、もらっておくわ」
プル「ちゃんと面倒見てね!」
エニル「気が向いたらね」
照れくさくなり、そっぽを向きながら花を受け取るエニルを、これまたニヤニヤした顔でロアビィが眺めていた。
プルツー「ところで、なんでマリーダは縮んでるんだ?」
不意に、プルツーが言った。
マリーダ「そこの女にやられました。やはりこの女はあまり信用しないほうが」
ここぞとばかりにエニルへの不信を吹き込もうとするマリーダに、プルはあきれ顔になった。
プル「とか言って、またへンなこと言って怒られたんでしょ」
マリーダ「うっ」

473 名前:5/5 :2015/02/05(木) 00:13:13.99 ID:UGysL7ER0
長女はすべて見抜いていたらしい。図星をつかれてマリーダはたじろいだ。
プルツー「気に入らないというのは仕方ないが、だからといって貶めるのは感心しないな」
マリーダ「すみません…」
プル「プルツーがそんなこと言うなんて。明日は雪でも降るんじゃないの?」
プルツー「姉さん!」
プル「わあ、怒ったー!」
プルツー「待て!」
マリーダ「ああ、姉さんたちあまり走り回ったら…!」
ばたばたと走り回る三人のプル姉妹。ただでさえ狭い"ロアビル"の中でこんなことをすればどうなるか。
案の定、プルが転倒して飾り棚に突っ込んだ。粉砕された多数の植木鉢に埋もれる姉を必死で救出する妹二人。
エニル「あいつら…」
それを見てエニルは頭を抱えながら、今度は横で大笑いしているロアビィをにらんだ。
エニル「何がおかしいのよ」
聞くと、ロアビィは笑いながら答えた。
ロアビィ「いやはや、お母――げふんげふん、お姉さんみたいだなと思ってね」
エニル「うるっさいわね。私の平穏な休みを返してほしいもんだわ」
ロアビィ「いいじゃないの。喧しい生活ってのも悪くないでしょ?」
エニル「…そうかもね」
半ばあきれ気味にエニルはつぶやいた。実際、暇を持て余すよりは悪くない気はした。
そしてようやく笑いが収まったロアビィが言った。
ロアビィ「そうそう、あの子たちが壊したものはきちんと弁償してよね」
エニル「は?」
やっぱり暇な方がいいかもしれない。上機嫌で電卓を叩くロアビィを恨めしげに睨みながら、エニルは思った。

474 名前:通常の名無しさんの3倍 :2015/02/05(木) 07:08:24.42 ID:4gLd/M0U0
473
乙!


ハマーン「御免!」ズイッ
ロアビィ「! い、いらっしゃい」
ハマーン「>>473にてエルピー・プルが破損した物品に関してだが…」ギヌロ
ロアビィ「はひっ!」
ハマーン「損害に関してはザビ家が補填することとなった」
ロアビィ「は、はぁ… あ! いや、あれはもうエニルに」
ハマーン「何か?」ゴゴゴゴゴ
ロアビィ「なんでもありません! サー!」
ハマーン「よろしい。 では請求はいつもの肥料を納品する際に合算して計上するよう」
ロアビィ「了解であります、サー!」
ハマーン「うむ。 邪魔をした」
ロアビィ「………………………………………………………ふひぃ~、相変わらずド迫力ですこと」

ハマーン「やれやれ」
イリア「ギレン閣下ですか?」
ハマーン「ああ。 プル達の諸経費を負担すると言って引いてくださらん」
イリア「それはそれは」

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最終更新:2016年05月06日 19:54