585ある強化人士の追憶2023/01/18(水) 17:20:49.11ID:ChjHL8IW0
その夜、エラン4号は布団の中でマリナに保護される以前の事を思い出していた。
(あの時、僕に助言を与えてくれた『彼ら』はどうしてるのかな…
『彼ら』に会わなかったら、今の自由で充実した暮らしは無かったかもしれない…)
~回想~
あの日、エラン4号はオリジナルのエラン・ケレスの悪ふざけを真に受けて
ペイル家(ペイル社の社宅)を飛び出してしまった。
「はぁっ、はぁっ…!」
とにかくがむしゃらに走った。冗談などではなく、本当に廃棄処分にされるのでは? と思い
必死になって走った。そして、彼は気が付いたら
日登町の路地裏にいた。
「ここは、どこだ…?」
着のみ着のまま、小銭も持ち合わせぬまま、見知らぬ土地にやって来たエラン4号。
素浪人になってしまった彼は、この町でひとりぼっちだった。
「ふぅ、寒いな…」
路地裏に山積みになった新聞紙を毛布代わりにし、吐息を手に吐いて
エラン4号は寒さを凌いでいた。
縁もゆかりもない見知らぬ土地、しかも季節は凍てつく冬。
衣食住全てが不足している今の状況がこのまま続けば、間違いなく行き倒れてしまう。
だからと言ってペイル家に戻ってしまえば、今度こそ廃棄処分になってしまう。
思い悩む彼の前に、2つの人影が姿を現した。
586ある強化人士の追憶2023/01/18(水) 17:23:21.72ID:ChjHL8IW0
「そこの君、どうしたんだい?」
「困っているようなら、僕達が力になってあげよう」
突如エラン4号に話しかけてきた2人組の男性達。
果たして何が目的なのか? 警戒をしつつ、エラン4号は彼らに声をかける。
「誰だか知りませんが、ありがとうございます。実は…」
~経緯説明中~
「なるほど、事情があって家出をして来たのか」
「しかも着のみ着のままで、更にお金も持ち合わせていないなんてね」
「そうなんです。このままじゃ行き倒れてしまうし、だからと言って自宅にも戻れないし…
もう八方ふさがりなんです。どうしたらいいんでしょう?」
エラン4号の悩みを親身になって聞いた男性達。
互いに顔を見やってしばらく沈黙を続けていた。
(兄さん、彼の顔…ようやく思い出せたよ。アスティカシア高専のエラン・ケレスだ。)
(エラン・ケレス、ベネリットグループ御三家のペイル社が擁立した腕利きのパイロットだと聞く。
その彼がどうしてこんな路地裏などにいるのだ…?)
(そこまでは分からないけど…どうするの兄さん? 彼のような男をこんな所で死なせる訳には…)
(分かっている。
せっかくだから、助け船を出してやろうではないか、オルバよ)
(了解、あの共同CEO達に貸しを作っておくのも悪くないかもね)
「あの…どうしたんですか?」
「いや、何でもないよ。そうだ、この状況を打破できるいい方法を教えてあげよう」
「いい方法…?」
「うむ、それはだね…」
587ある強化人士の追憶2023/01/18(水) 17:25:30.14ID:ChjHL8IW0
~数分後~
「あの、本当にこれで…大丈夫なんですか?」
男性達の指示に従い、エラン4号は猫耳カチューシャと肉球手袋と肉球スリッパを着用し
更に「拾ってください」と書かれたシャツに着替えていた。
「ああ、問題はない。そして先ほど話したように猫の真似をするんだ」
「そうすれば、庇護欲の強い人がきっと君を見つけてくれるよ」
半信半疑ではあったが、このままのたれ死ぬよりは遥かに良い。
彼らの言葉を信じ、エラン4号は猫の真似をして待ち続けた。そして…
「かわいそうに。あなた、捨てられてしまったのね。……いいわ、いらっしゃい」
(う、上手く…いった!? これで…もう、寒い思いをしなくて…いいんだ…)
(成功したようだね兄さん、まさかマリナ王女が彼を保護してくれるとは…)
(うむ。これで一安心と言った所か)
物陰からエラン4号とマリナを見守る男性達。2人は彼らの姿が見えなくなるまで、ずっと見届け続けていた。
~回想終了~
(思えば、『彼ら』は僕にとって命の恩人だった。あの2人には感謝してもし切れない。
もし願いが叶うなら、『彼ら』にもう一度会いたい。会って、改めてお礼が言いたいな…)
そして、その願いは神に届く事になる。
次回(エラン4号、フロスト兄弟と再会す。)を待て!
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最終更新:2023年05月29日 12:26