仕事を終えてようやく帰宅した時には10時を過ぎていた。
アムロ「ただいまー」
ヒイロ「兄さん、客だ。今はセレーネが応対している」
アムロ「客? 誰だ、こんな遅くに……セレーネが応対するということは、女性か……」
洗面所で身だしなみを整え、応接間に赴く。
セレーネ「あら、兄さん。遅いじゃない」
妹の声はアムロには届いていない。客の姿を見た瞬間に覚えた、懐かしい感覚の中にいたから。
セイラ「久しぶりね、アムロ」
アムロ「はい。セイラさんも、お元気そうで」
空気を察してか、セレーネは「ごゆっくり」と言い残して応接間から出て行く。
アムロ「いつ、こちらへ?」
セイラ「今日の昼間の便で。……ふと、兄さんやあなたに会いたくなってこの街に来たのよ」
セイラの言葉に、少し心臓の動きが速くなったことをアムロは察する。
アムロ「帰るのが遅くなってしまってすいません。だいぶ待たせたと思います」
セイラ「気にしなくていいのわ。あなたが帰って来るまで、兄妹のみなさんとお話ができたから。
みんな、大きくなったわね。私がいたときはあんなに小さかったのに」
アムロ「体が大きくなっただけですよ。頭の中は少しも成長していません。僕も含めて」
セイラは優しい微笑みをアムロに向ける。
セイラ「考え方に差異はあるみたいだけど、みんな立派に育ってるみたいで安心したわ。
特にアムロ……あなた、いい男になったわね」
アムロ「そんな……」
セイラ「この家の大黒柱になってあの子たちを支え、ここまで育て上げたんですもの。
とても立派よ、アムロ」
アムロは俯いて、セイラの顔を直視することはできなかった。
シュウト「姉さん、あの人は誰?」
セレーネ「セイラさんがいたときは、シュウトは生まれてなかったんだっけ。セイラさんは、私と兄さんが
勉強と家事の両立が苦しかった学生時代に、全面的に助けてくれた方よ。今は確か……お医者様
をされてて世界中を回って、貧しい人々の診療に当たられているとか」
シュウト「へぇ、立派な人なんだ」
ジュドー「あの人の兄がシャアだなんて信じられないよな」
ガロード「あの変態にセイラさんのような立派な妹さんがいるなんてな」
カミーユ「シャアにはもったいない人だ」
ウッソ「おなじ妹でもいろいろあるんだなぁ……交換して欲しいな」
セレーネ「ウッソ君、今なんて言ったのかなぁ?」
ウッソ「い、いや! 何も! 言ってませんよ!?」
キャプテン『さっき小声で「交換して欲しいな」と言っていた』
ウッソ「余計なこと言うなよ!」
アムロ「うるさいぞお前たち。お客さんがいるんだ。静かにしろ」
ウッソ「ごめんなさい」
アムロ「騒がしい兄妹ですいません」
セイラ「賑やかでいいわね。本当に・・・」
最終更新:2020年04月12日 20:34