和訳
サムエル・ジョンソンがオックスフォード大学の後援で1755年に『英語辞典』を編集した時、彼は43,500の見出し語しか定義しなかった。しかしジョンソンの作品の直系の子孫であり、最も最近では1980年代に改訂された現在のオックスフォード英語辞典は、50万語以上の定義を含んでいる。この違いは18世紀以降の英語の単語の増加の結果ではなくて、むしろ私たちが日々の意思疎通の中で使っている莫大な数の単語を集めるときの困難さを表すしるしである。大学教育を受けた平均的な英語の話し手は、一般的に10万語以上の基礎的語彙を持っている。さらに、言語のものすごい曖昧さは、それが辞書の中であろうと左辺頭葉皮質の中であろうと、単なる言葉の定義よりもはるかに多くのものが語彙目録にはあることを示している。一つの単語の意味がわかっている時でさえ、それは効果的な意思疎通を生み出すためには文法規則に従って使われなければならないし、ある特定の言葉はいつも正しい文脈の中で理解されなければならない。
神経科学と言語学両方の観点から見ると、言葉と文法についての2つの関連性のある問題は、脳の機能と言語との関係で特に密接な関係がある。最初に、私たちが言語を学ぶことを可能にしている神経組織の性質とはどんなものなのか。そして2番目に、なぜ私たちは言語を学ぼうとするそんなにも深い衝動を持っているのか。これらの問題を扱った20世紀の偉大な人物は、言語学者のノーム・チョムスキーである。なぜなら、彼は脳の構造には興味を持たなかったが、言語の複雑さは大変なものなので、言語は簡単に習得することはできないと主張したからだ。それゆえチョムスキーは言語は人類の進化の中で規定される『普遍文法』に基づかなければならないと提案した。この主張は明らかに正しいが、(なぜなら、基本的な言語の仕組みは、大人の行動を支えている脳の回路のすべての側面と同じように実際には遺伝の結果としての各個人の正常な発達の中で形成されるからだ。)チョムスキーが神経生物学を避けたことは、進化の、つまり発達の観点から見てこの仕組みがどのようにして存在するようになるのか、そしてその仕組みが実際どのようにして言葉と文法を記号化しているのかという中心的な問題を避けていることになる。その仕組みが結局どのようなものであるとわかろうとも、私たちが使っている言語の大部分は明らかに記号と心に浮かぶ映像の間に神経細胞の繋がりを作ることによって習得されている。そのようなものとして、人間の言語は人間の脳の皮質の関係のある部分とそれらを構成している神経細胞が連携する非常に大きな能力を生み出すために、どのように機能しているのかを理解するための豊かな情報源を提供している。そしてその能力は、脳の皮質の全ての機能の一つの基本的な側面であるように見える。
最終更新:2006年09月24日 21:21