「入っていいですか?」
寝ようとしているところにウルスラが声を掛けてきた。
「ええ、いいわよ。」
ウルスラがテントに入ってきた。
「失礼します。」
「何か用なの?」
「ええ、ちょっとお話が。」
ウルスラはテントの中でちょこんと正座した。
「今日のご飯のときにエーリヒと話してましたよね?一体何を話してたんですか?」
「ちょっとフリーガーにならないかって誘われてただけよ。」
「そう・・・ですか。」
ウルスラはゆっくりと、言葉を選ぶように話し始めた。
「エーリヒの撃墜スコアを知ってますか?」
「いいえ、知らないわ。」
「総勢653機、10機撃墜すればエースパイロットと言われる中でも世界最多数です。」
「・・・。」
私は言葉を失った。
撃墜数653、つまり彼は653人もの人間を殺しているのと同じであると言ってもいい。
「エーリヒは罪悪感から規則と規律を異常なまでに重視するようになりました、恐らく「罪」から逃げたかったのでしょう。」
「それで軍規や規則に違反した部下には容赦なく罰を与えました。」
「そしてそれはどんどんエスカレートし、他の部隊の人間にも手を出すようになった頃です、ルーデルに出会ったのは。」
「ルーデルってあのゴーグル掛けてた人?」
「ええ、彼は軍規違反の常習者でね、彼を何とかしないと軍規を違反するものが増える一方だと思ったエーリヒは彼を切りつけたんです、鼻の傷はその時のです。」
「え?でもそんな事したら・・・。」
「ルーデルのおかげでエーリヒの罪は不問になりました、理由は分かりませんがエーリヒはその一件から規則をあまり重視しなくなりました。」
「ルーデルって偉いの?」
「階級はエーリヒと同じ大佐ですよ。」
「大佐?偉いの?」
「偉いですよ、上の下くらいですかね?」
「へえ、凄いんだね。」
「はい、自慢の主人です。」
ウルスラはにっこりと笑うと、私の隣で寝てしまった。
最終更新:2011年03月14日 17:18