屋上には紫音が座っていた。

「あら、お帰り。」

紫音は笑顔で私を迎えた。

「ただいま。」

思えば、こうして帰る場所があると言うのはいい事なのだろう、と思い始めた時。

「あ、そうだ。」

私は家の事を思い出した。

私は島の団地に一人で住んでいるのだが、部屋の中に置き忘れたものがあった。

「家に忘れ物してきたんだけど、今から取りに行って間に合うかな?」

「辞めておいた方がいいと思います、明日にしませんか?」

「分かった、明日になったら家に行くわ、付いてきてくれる?」

「もちろんです、任せておいてください。」

紫音はその平原のような胸を叩いた。

「紫音か、久しぶりだな。」

「来夏?どうしてここに?」

「それはこっちの台詞ってもんだ、まあ聞く気はないけどな。」

「そう、でも私は知りたいですよ?」

「うっ・・・栄斗に似て面倒くさい奴だ。」

「お兄ちゃんに似てるってのは褒め言葉ですよ?」

「・・・。」

来夏はしばらく拳を握りしめ精神的葛藤を抑圧する。

「まあいい、とにかく今日はここで待機だ。」

辛うじて平静を取り戻したつもりなのだが声が上ずっている。

私は少し微笑むと明日に備えてオルトロスのメンバーを待つことにした。

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最終更新:2011年03月25日 10:17