「ふう・・・何とか一通り済んだわね。」

教官が煙草に火を付けた。

「手伝ってもらってすみません、閣下。」

「な~に、いいのいいの、こういう仕事はいつも私がやってたから。」

「思えばそうでしたね、あまりよく覚えてませんが閣下はいつも力仕事を任されていましたね。」

「そうそう、いつも私ばっかりで、お陰で今でもケンカには負けたこと無いわね。」

「そうでしたね、貴方が右腕を斬り落とされた時はもう力仕事を任せられないと周りの子たちは泣いていましたね。」

「で、それよりも私を気遣うべきだって言い出したのも貴方だったわよね。」

「そうでしたっけ?」

「そうよ、でもあの後病院で腕をくっ付けてもらって帰って来たときに一番喜んだのも貴方だったわよね。」

「そりゃあそうですよ、いつも泣いてばかりいた私をよく慰めてくれたじゃないですか。」

「あれ~?そうだっけ?あの頃の事は良く覚えてないのよね・・・ってか思い出したくないって言うか・・・。」

「そうですね・・・。」

教官は煙草を握りつぶす。

「だからこの右腕には感謝しないといけないのよ、まだ使えるんだから。」

今でも覚えている、数十年前の雨の日。

教官はあの日、養護施設の職員に右腕をチェーンソーで切断された。

事故扱いで病院に搬送され、腕は何とか失わずに済んだものの教官は大きな傷を負った。

教官がチェーンソーで戦うのもあの日の事を完全に忘れてしまわないように、とのことらしい。

でもあの日、救急車は二台来ていた、それに教官の右肘の付近には大きな傷があったはずなんだが・・・?

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最終更新:2011年03月26日 18:29