「反応無しみたいだね。」
「呑気に言ってる場合?緊急事態よ?」
ゲルトルートは頭を抱えた。
「大丈夫だよ、きっと来夏が策を打ってくれてる。」
「何で分かるのよ。」
「直観さ、伊達に好敵手だった訳じゃない。」
僕は自分で淹れたコーヒーをゆっくりと飲んだ。
「ふぅ、やっぱりインスタントは美味いな。」
「コーヒー飲んでる場合じゃ・・・。」
ゲルトルートが頭を小突き始めたその時。
「・・・来たみたいだよ?」
僕は後ろを指差した。
「来たって・・・え?」
後ろでは道路が2つに割れて巨大なコンテナがそれ以上に巨大なリフトによって地上に運ばれていつつあった。
僕はコーヒーを地面に置くと白衣のポケットに手を入れて後ろを振り向いた。
「成程、飛龍の伝言屋さんか。」
「な、ななななななな何なのよあれ!」
僕たちの目の前ではコンテナから解放された飛龍が羽ばたいていた。
「ワイバーン・ロンド、皇帝のお祖父(じい)さんさ、数年前からこの辺りで過ごしていたらしい。」
「いや、でもこれって・・・」
慌てふためくゲルトルートをよそにワイバーンは猛スピードで飛び立った。
風圧でコーヒーを入れたコップがひっくり返ったが今はどうでもいい。
「飛龍か、見るのは久しぶりだね。」
僕の興味は既に飛龍の方に向いていたのだから・・・。
最終更新:2011年10月19日 16:56